最高裁○○第000100号

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

最高裁○○第000100号

最高裁○○第000100号

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

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平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

最高裁○○第000100号

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

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平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

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平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

発信者情報開示関係WGガイドライン

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

判決【】

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

平成 27 年 12 月 9 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 11 月 6 日 判 決 東京都荒川区 < 以下略 > 原 告 株式会社オールビユーテイ社 同訴訟代理人弁護士 山 本 隆 司 同 植 田

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ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

(イ係)

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

めた事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実 ) (1) 当事者ア原告は, 映画プロデューサーである ( 甲 1,2) イ被告は, 新聞社であり, ウェブサイト 朝日新聞デジタルAJW を運営するものである (2) 原告の著

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本教材の利用について 本教材は 平成 28 年度特許庁産業財産権制度問題調査研究 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 ( 請負先 : 国立大学法人大阪大学知的財産センター ) に基づき作成したものです 本教材の著作権は 第三者に権利があることを表

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同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

主位的に自筆証書 ( 後述の本件文書 ) による遺言に基づいて遺贈を受けたこと, 予備的に死因贈与を受けたことを主張して, 不当利得 ( 主位的 ) 又は死因贈与契約 ( 予備的 ) に基づく3000 万円 ( 内金請求 ) 及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成 27 年 12 月 5 日か

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

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(2) ピュア型 / キャッシュ非作成型 (Limewire,Gnutella 等 ) 検索検索検索見つかると直接接続検索検索検索 図 Limewire の仕組み 1 情報管理サーバーを持たない 2ファイルの検索はバケツリレー方式で行う 3ファイルが見つかった後はピア ツー ピア通信でファイルの送受

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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平成  年(オ)第  号

freee・マネーフォワード特許訴訟の解説

被 告 株式会社日本ジャーナル出版 東京都江戸川区 < 以下略 > 被 告 I 東京都港区 < 以下略 > 被 告 J 同所被 告 K 上記 4 名訴訟代理人弁護士山 上 俊 夫 主 文 1 被告株式会社日本ジャーナル出版, 同 J 及び同 Kは, 連帯して, 原告らそれぞれに対し80 万円及びこれ

ます 運送コンシェル は会員の皆さまの IP アドレス クッキー情報 ご覧になった広告 ページ ご利用環境などの情報を会員の皆さまのブラウザから自動的に受け取り サーバ ーに記録します 取得情報の利用目的について 運送コンシェル または 運送コンシェル が認める団体( 以下 運送コンシェル 等 とい

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

審決取消判決の拘束力

宇佐美まゆみ監修(2011)『BTSJ入力支援・自動集計システム』、及び

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第 1 請求 1 被告は, 別紙 1 被告製品目録記載の製品 ( 以下 被告製品 という ) を製造し, 販売し, 貸し渡し, 又は販売若しくは貸渡しのために展示してはならない 2 被告は, 被告製品及び半製品 ( 別紙 2 被告意匠目録記載の構成態様を具備しているが製品として完成するに至らないもの


た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

像 記載の各画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント1のアカウントの保有者, 2 ツイッターにおいて, クライアントコンピュータが, 別紙流通情報目録 1⑸ 記載の URL のウェブページにアクセスした際に, タイムラインに表示される自ら投稿した各短文投稿 ( 以下, ツイッタ

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1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

O-27567

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

はじめに 当書では ST1100R と外付けハードディスクを接続して録画した番組を 指定の手順で NAS にムーブする手順を案内しています 各ページに記載の注意事項を よくお読みの上 実施してください 実施の手順 1 NAS の準備 P.3 2 宅内ネットワーク機器の切り離し P.4 3 ST110

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平成 26 年 11 月 26 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 26 年 ( ワ ) 第 7280 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 26 年 9 月 12 日 判 決 埼玉県北葛飾郡 < 以下略 > 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 深 町 周 輔 同 春 山 修 平 東京都品川区 < 以下略 > 被 告 ビッグローブ株式会社 同訴訟代理人弁護士 平 出 晋 一 同 髙 橋 利 昌 同 山 口 雅 弘 同 太 田 絢 子 主 文 1 被告は, 原告に対し, 別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要本件は, 原告が, 別紙ウェブページ目録記載 1のURLにより表示されるウェブページ ( 以下 本件サイト という ) において氏名不詳者 ( 以下 本件発信者 という ) がアップロードした同目録記載 2のファイルに含まれるプログラムとされる制作物 ( 以下 発信者プログラム という ) は, 原告の創 1

作に係るプログラムとされる制作物 ( 以下 本件パッチ という ) の複製物ないし翻案物であり, 本件発信者の行為は原告の複製権又は翻案権及び公衆送信権を侵害するものであることが明らかであるから, 本件発信者に対し損害賠償請求権を行使するために本件発信者に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告に対し, 別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 争いのない事実以外は, 証拠等を末尾に記載する ) (1) 当事者等原告は, 本件パッチを制作した者である 被告は, インターネット等のネットワークを利用した情報通信サービス, 情報提供サービスその他情報サービスの提供等を業とする株式会社であり, 特定電気通信役務提供者 ( プロバイダ責任制限法 2 条 3 号 ) に該当する ( 弁論の全趣旨 ) (2) ア本件サイトは, インターネットに接続してアクセスすれば誰でも閲覧することが可能であり, また, 誰もが同サイト上にアップロードされているファイルやプログラムをダウンロードすることが可能である イ発信者プログラムは, 平成 25 年 12 月 30 日午前 3 時 29 分 25 秒に, IPアドレス122.131.252.61を使用して, 被告の提供するインターネット接続サービスを経由して, 本件サイトにアップロードされた (3) 被告は, 本件発信者に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報 ( 以下 本件発信者情報 という ) を保有している 2 争点 (1) 権利侵害の明白性の有無 2

ア本件パッチがプログラムの著作物に該当するか イ発信者プログラムが本件パッチの複製物ないし翻案物にあたるか (2) 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無第 3 争点に対する当事者の主張 1 争点 (1) ア ( 権利侵害の明白性の有無 - 本件パッチがプログラムの著作物に該当するか ) ( 原告の主張 ) (1) 本件パッチは, 平成 7 年に株式会社バンダイから発売された家庭用ゲーム機 スーパーファミコン 用ゲーム SDガンダム GNEXT ( 以下 本件ゲーム といい, そのプログラムを バンダイプログラム という 甲 2) に関して, 原告がそのバグ等を改善するために作成したパッチプログラム ( ソフトウェアの不具合の修正や小規模な更新をするために用いられる, 差分情報のみのプログラム ) である 原告は, 吸い出し機 によって吸い出した本件ゲームのオブジェクトコードを snes9x Debugger というエミュレーター( 甲 26) により逆コンパイル ( 甲 27) し, 人間に理解容易なアセンブリ言語 ( ニーモニックコード ) に変換して, プログラムの改造 制作を行っている (2) 原告の改造は多岐にわたるが, 以下ではモビルスーツ対モビルスーツの戦闘画面 ( 甲 29) における 角システム に関する 色の切り替えにかかるプログラム ( ファイル名 : cs MSbattle cs palette 甲 30の2 以下同ファイルのうち, 甲 30の2の1 頁目 27 行目ないし3 頁目下から4 行目の部分 別紙原告主張 (1) 記載のコード を 本件色切替パ ッチ という ) に焦点を当て, その条件設定や動作設定を説明することでその創作性を述べることとする なお, 角システムとは, ユニット ( モビルスーツなどのキャラクター ) のレベルが上がったときに, ユニットの名前や, 色, グラフィックが変化するというシステムである 3

別紙原告主張のとおり, 本件色切替パッチでは, いくとおりもの条件設定が行われ, 条件充足の有無を処理して, その結果に従って一定の動作要求を行う旨プログラムが組まれている また, 原告独自の動作要求 ( 各テーブルやスタック間でのデータの移動等 ) を適宜織り込んでいる 特に, 別紙原告主張 (4) 及び (5) のとおり本件色切替パッチではCPU 内の各テーブルを [$00:30B6][$00:30B8] という空きメモリ容量にて処理する形に変更する形でコーディングすることにより, 以降のコーディングをシンプルな記述とすることを可能とし, またそれにより負荷を小さくしたり, 別紙原告主張 (5) のとおり本格処理に先行して一部処理を行う形でのコーディングをすることで後の本格処理の際の負荷を抑えることができた これらの創意工夫によるコーディングの結果, 本件色切替パッチ適用時の処理の高速化と動作の安定性の確保を実現することができたものである 原告は, 様々な条件設定や構成, 条件と条件との関連や動作要求との紐づけの方法がある中で, 試行錯誤の結果, 多大な労力と時間を費やし, 上記のとおり, 本件色切替パッチ適用時の処理の高速化と動作の安定性を確保することが可能な条件設定 動作要求の組み合せ, ないしコーディングを完成させたものである 一連の組み合わせないしコーディングについては表現の幅は相当広いものであることは明らかであるから, 本件色切替パッチに創作性が認められることは明らかである (3) したがって, 本件パッチのうち, 少なくとも本件色切替パッチが プログラムの著作物 にあたることは明らかである ( 被告の主張 ) (1) 原告の主張は争う (2) 本件パッチは, それ自体がコンピュータ上で機能するいわゆる プログラム ではない バンダイプログラムに対し本件パッチを当てることで ( す 4

なわち, 本件パッチによりバンダイプログラムのオブジェクトコードの一部を上書きし, コードを付加するなどして書き換え ) 所期の機能を発揮するようであるが, 本件パッチを当てることでバンダイプログラムの同一性が失われる訳ではなく, あくまでプログラムとして動作するのはバンダイプログラムである したがって, バンダイプログラムとは別個に, 本件パッチ自体を表現するなら, バンダイプログラムを改変するためのデータ列というほかない 加えて, 原告が創意工夫をしたとする箇所の多くは, 別の著作物であるバンダイプログラムを前提として, そのソースコード等を入手することなくそのオブジェクトコードを改変する ( すなわち, バンダイプログラムのアルゴリズムの流れや色 形等の設定を変更する ) という通常であれば無理な作業を行うことから生じているものであるように思われる したがって, 原告の困難かつ多大な努力と, それらの創意工夫は, 原告の個性による創作 創造というよりは, 専らバンダイプログラム自体の原状に規定 拘束された, ある種の必然的な制作作業というべきものであって, 著作物における, 制作者の個性の表現ともいわれる創作性とはおよそ異なるものであるように思われる 2 争点 (1) イ ( 権利侵害の明白性の有無 - 発信者プログラムが本件パッチの複製物ないし翻案物にあたるか ) ( 原告の主張 ) (1) アセンブリ言語によるニーモニックコードとそれをコンパイルした機械語によるオブジェクトコードとは1 対 1の関係にあるところ, スターリングソフト ( 甲 19) を使用して, 本件パッチと発信者プログラムをオブジェクトコードレベルで対比すると, 前記 1で述べた本件色切替パッチの部分については, 両プログラムのオブジェクトコードは完全に一致する また, 本件パッチと発信者プログラムは, 結果として得られるゲーム画面 5

も類似している ( 甲 29) 色の変化が生じる条件( 特定の軍に 所属 すること, レベル が上がること) も同一である そのため, 本件発信者は, 発信者プログラムにおいて, 本件パッチ ( の複製物であるオブジェクトコード ) をそのままコピーして使用していることが強く推認でき, 発信者プログラムは本件パッチを複製ないし翻案したものであることは明らかである (2) 本件パッチへの依拠については, 本件発信者自身, 当時から自認しているところであるし, 原告による発信者情報開示請求後においても 請求人プログラムの無断改変等 過去ホームページ上で改変の上での配付についての許諾条件を記載しており発信者も過去二度に渡って個人的に許諾を得ております ( 乙 1 2 頁目 根拠 3~ で始まる段落内) と, 発信者プログラムが本件パッチに依拠して創作したものであることを自認している (3) したがって, 発信者プログラムは本件パッチと実質的に同一か, 少なくともその本質的特徴を直接感得し得る程度の改変しか加えていないものであるから, 本件パッチを複製又は翻案したものであるというほかない ( 被告の主張 ) 不知 3 争点 (2)( 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無 ) ( 原告の主張 ) 原告は, 本件発信者に対し, 本件パッチの権利侵害を理由として, 不法行為に基づく損害賠償請求等の準備をしており, そのためには, 本件発信者情報が必要であって, 開示を求める正当理由がある ( 被告の主張 ) 不知第 4 当裁判所の判断 1 争点 (1) ア ( 権利侵害の明白性の有無 - 本件パッチがプログラムの著作物に 6

該当するか ) (1) 本件パッチが プログラム ( 著作権法 2 条 1 項 10 号の2) に該当するか プログラム とは, 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう ( 著作権法 2 条 1 項 10 号の2) とされている 証拠 ( 甲 30の2,36ないし38( 以上枝番のあるものは枝番を含む 以下同じ )) 及び弁論の全趣旨によれば, 以下の事実が認められる 本件パッチは, バンダイプログラムに関し, 原告がそのバグ等を改善するために作成したパッチ ( ソフトウェアの不具合の修正や小規模な更新をするために用いられる, 差分情報のみのもの ) であり, 本件色切替パッチは, 本件ゲームのモビルスーツ対モビルスーツの戦闘画面 ( 甲 29) における 角システム ( ユニット ( モビルスーツなどのキャラクター ) のレベルが上がったときに, ユニットの名前や, 色, グラフィックが変化するというシステム ) に関する 色の切り替えにかかるプログラム ( ファイル名 : cs MSbattle cs palette のファイルのうち, 甲 30の2の1 頁目 27 行目ないし3 頁目下から4 行目の部分 ) である 本件色切替パッチは, アセンブリ言語により記述されたもので約 100 行のコードからなり, 一定の条件の下で当該モビルスーツの色彩が変更されるようにするために, バンダイプログラムから登場機体番号, 登場機体の所属, 登場機体のレベルに関する情報を読み出し, 一定の加工を行った上で, 用意しておいたデータベース ( 甲 36) の情報と対照し, 条件 a, 条件 o 1, 条件 o2 の成否を判定して, 所定の場合には色の切替動作を行うようにしたものである 以上のとおり, 本件パッチのうち, 少なくとも本件色切替パッチは, 複数の指令を組み合わせて電子計算機を機能させ, 所定の場合には色の切替動作 7

を行い, 所定の場合にはこれを行わないという1つのまとまった仕事ができるように構成されているものと認められるから, プログラム に該当する (2) 著作物性の有無アプログラムの著作物性の判断基準ある表現物が, 著作権法の保護の対象となる著作物に当たるというためには, 思想, 感情を創作的に表現したものであることが必要であり ( 著作権法 2 条 1 項 1 号 ), 創作的に表現したものというためには, 作成者の何らかの個性が発揮されたものであることが必要である この点は, プログラムであっても異なるところはないが, プログラムは, 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの ( 著作権法 2 条 1 項 10 号の2) であり, 所定のプログラム言語, 規約及び解法に制約されつつ, コンピュータに対する指令をどのように表現するか, その指令の表現をどのように組み合わせ, どのような表現順序とするかなどについて, 著作権法により保護されるべき作成者の個性が表れることになる したがって, プログラムに著作物性があるというためには, 指令の表現自体, その指令の表現の組合せ, その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり, かつ, それがありふれた表現ではなく, 作成者の個性, すなわち, 表現上の創作性が表れていることを要する そして, 創作的 に表現されたというためには, 厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく, 作成者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが, 他方, プログラムの具体的記述自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表現が想定できない場合や, 表現が平凡かつありふれたものである場合には, 作成者の個性が表現されたものとはいえないから, 創作的な表現であるということはできない 以上を前提に検討する 8

イ前記 (1) のとおり, 本件色切替パッチは, 情報の読み出し, 加工, データベースとの照合などの処理を行うものであり, そのために種々のコマンドを組み合わせて表現している しかるところ, 本件色切替パッチと同じ目的を達成するためのコマンドやその組み合わせ, その順序には, 例えば以下のとおり, ほかにも多様な選択肢がある ( ア ) 本件色切替パッチでは, 別紙原告主張 (3) の部分 3のコード ( 以下 部分 3 という 以下他のコードも同様 ) の3 行目ないし4 行目において,ANDコマンドを用いて A テーブルに保存されたデータの値と数値 00FF との論理積を求め,BNEコマンドによりデータの値が 00 でない場合には指定された場所までジャンプするようにしている ここで,ANDコマンドは, 二進数で考え, 各桁において, 二つの値の両方とも1の時のみその桁は1に, 一方でも0なら0となるとともに, ゼロフラグを変更しうるコマンドであり ( 甲 38の15),BNEコマンドはゼロフラグがゼロの時, 指定された場所までジャンプするコマンドであるが ( 甲 38の12), これらに代えて A テーブルの値と指定された値の引き算を行い, 両者が等しい場合にゼロフラグを 1 に変更するCMPコマンド ( 甲 38の10) を用いて, A テーブルに保存されたデータの値と, 値 00 の比較を行った上で,BNEコマンドと組み合わせても, 本件色切替パッチ同様の処理結果となると考えられる ( イ ) 本件色切替パッチでは, 部分 20の2 行目において,BNEコマンドを使用し,3 行目以下において 角システム 不採用の場合の処理について記述し,6 行目以下において 角システム 採用の場合の処理について記述している ここで,BNEコマンドの代わりに, ゼロフラグが1の時, 指定され 9

た場所までジャンプするコマンドであるBNQコマンド ( 甲 38の12) を用いた上で, 角システム 採用の場合の処理を先に, 角システム 不採用の場合の処理を後に記述しても, 本件色切替パッチと同様の処理結果となると考えられる ( ウ ) 本件色切替パッチでは, 部分 5において,(i) Y テーブルへ [ $00:30B8 ] の値を代入し ( 以下 処理 (i) という ),(ii) [$00:30B8] に X テーブルからの情報をコピーし( 以下 処理 (ii) という ),(iii) A テーブルへ[$00:30B6] の値を代入する ( 以下 処理 (iii) という ) という順序としている ここで,[$00:30B8] に保存された情報の上書きを防ぐため, 処理 (i) の後に処理 (ii) を行うことは必要であるが, 処理 (iii) は処理 (i) 及び処理 (ii) とは無関係な処理であるから, 処理 (iii) を行ってから処理 (i), 処理 (ii) を行うという順序でも, 処理 (i) の次に処理 (iii) を行い, 最後に処理 (ii) という順序でも, 本件色切替パッチと同様の処理結果となると考えられる ( エ ) 本件色切替パッチでは, 部分 19において,DATA1ないし3のいずれに割り振られた場合でも, A テーブルに情報を読み出し, 一定の処理をした上で, フラグに関係なく指定された場所までジャンプする BRAコマンド ( 甲 38の12) により, 部分 19の末行のTAXコマンドにジャンプするようにし, さらに部分 20の処理に移るようにされている ( すなわち,DATA1ないし3のいずれに割り振られた場合であっても, 同一のTAXコマンドが適用される ) ここで,DATA1ないし3の各部分の末行のコマンドの代わりにT AXコマンドを用い, さらにBRAコマンドで部分 20にジャンプするように記述することでも, 同様の処理結果となると考えられる ( オ ) 本件色切替パッチでは, 部分 5において [$00:30B6] に保存してお 10

いたバンダイプログラムの登場機体の機体番号に対応した原告が作成した角システムデータベースのシート1( 甲 36の1) の登場機体番号 ( シート1のA 列 ) のデータ ( 以下 シート1Aデータ という ) を A テーブルにコピーし, 部分 6においてASLコマンドを3 回用いて8 倍とし,PHAコマンドでそれをスタック領域に保存し, 部分 7において再度 [$00:30B6] からシート1Aデータを A テーブルにコピーし, シート1AデータをASLコマンドで2 倍にしたものにADCコマンドを用いてシート1Aデータを加え ( すなわちシート1Aデータを 3 倍とし ), それにASLコマンドを2 回用いて, 最終的にシート1A データを12 倍としている すなわち, 本件色切替パッチでは, 部分 5ないし7において, シート 1Aデータを8 倍した値及びシート1Aデータを12 倍した値を作成し, 順次スタック領域に保存しているものである ここで, 例えば, 部分 6のASLコマンドを2 回使った時に ( すなわち, シート1Aデータが4 倍された時に ), 当該値を [$00:30B6] に保存しておき, 部分 7では [$00:30B6] に保存しておいたシート1Aデータが4 倍された値を A テーブルに読み出し, これを2 倍にした上で, [$00:30B6] に保存してあるシート1Aデータが4 倍された値を加算することでも, シート1Aデータを12 倍した値を作成することは可能と考えられる ウ以上のとおり, 数値の突合及びそれに伴う条件分岐にいかなるコマンドをどのように組み合わせるか, 条件が成立する場合としない場合の処理をどのような順序で記載するか, どのタイミングでテーブルないしメモリ領域間で情報を移動させるか, 共通する処理があるときに共通する部分をまとめて記述するかそれとも個別に記述するかなどについて, 本件色切替パッチと異なる表現を採用しても, 本件色切替パッチにおいて実現される処 11

理と同様の処理を行うことが可能である そして, 使用可能なコマンドは多数存在すること ( 甲 38), 本件色切替パッチのコード数は約 100 行あることからすれば, 全体としてみれば, 本件色切替パッチにおいて実現される処理を行うために用いうるコマンド, その組み合わせ及び表現順序の選択の余地は大きいものというべきである 原告は, それだけの選択の余地がある中で, 工夫を凝らして本件色切替パッチを作成したものであるから ( 甲 14), 本件色切替パッチは, ありふれた表現ではなく, 何らかの作成者の個性, すなわち, 表現上の創作性が表れていると認められる (3) したがって, 本件パッチのうち, 少なくとも本件色切替パッチは, プログラムの著作物であると認められる 2 争点 (1) イ ( 権利侵害の明白性の有無 - 発信者プログラムが本件パッチの複製物ないし翻案物にあたるか ) (1) 本件色切替パッチと発信者プログラムの当該部分をオブジェクトコードレベルで対比すると, 両プログラムのコードは完全に一致すると認められる ( 甲 34の1) アセンブリ言語によるニーモニックコードとそれをコンパイルした機械語によるオブジェクトコードとは1 対 1の関係にあるので ( 弁論の全趣旨 ), 発信者プログラムの当該部分は本件色切替パッチの複製物であるといえる なお, 本件色切替パッチのコードの分量に照らせば, 本件発信者が, 本件色切替パッチに依拠して発信者プログラムの当該部分を再製したものであることは明らかである したがって, 発信者プログラムのうち, 少なくとも本件色切替パッチに対応する部分は, 本件パッチの一部である本件色切替パッチの複製物に該当する 3 争点 (2)( 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由 ) 12

(1) 上記 1 及び2によれば, 本件発信者の行為は原告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであることが明らかである 原告は, 本件発信者に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意向を示しているところ, 上記損害賠償請求権の行使のためには, 被告の保有する本件発信者情報の開示を受けることが必要である (2) したがって, 原告には, 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認められる 第 5 結論以上によれば, その余の点について検討するまでもなく, 原告の請求は理由があるからこれを認容することとし, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 29 部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 西村康夫 裁判官 石神有吾 13

( 別紙 ) 発信者情報目録 122.131.252.61 というIPアドレスを用いて, 平成 25 年 1 2 月 30 日午前 3 時 29 分 25 秒に, 別紙ウェブページ目録記載 1のURLにより表示されるウェブページに同目録記載 2のファイルをアップロードした者 ( 本件発信者 ) に係る, 下記の情報 1 氏名又は名称 2 住所 3 電子メールアドレス ( 電子メールの利用者を識別するための文字, 番号, その他の符号 ) 14

( 別紙 ) ウェブページ目録 1 URL http://< 以下略 > 2 ファイル名 gnext_r-form_ver3.86β.7z 15