ルギー性接触皮膚炎症候群と診断されました 欧州医薬品庁は昨年 7 月にケトプロフェン外用薬に関するレヴュー結果を公表し 重篤な光線過敏症の発症は10 0 万人に1 人程度でベネフィットがリスクをうわまること オクトクリレンが含まれる遮光剤が併用されると光線過敏症のリスク高まることより最終的に医師の処

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1. 接触皮膚炎とは? 接触皮膚炎は かぶれ と一般によばれています これは外かかゆら皮膚についた化学物質が原因となって 皮膚に痒みや痛みを起 は こさせ 赤くなる 腫れる ぶつぶつがでる ただれるなどの炎 症をおこす病気です かぶれには 刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎があります そして

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ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

痛症 ( 筋 筋膜性 痛症, 変形性脊 症, 間 症, ), 変形性関節症, 関節周囲炎, 炎, 周囲炎, 上腕骨上 炎 ( テニス 等 ) 関節リウマチにおける関節局 の鎮痛 3 下記 患の 性症状 ( 血行障害, 筋痙縮, 筋 縮 ) を伴う場合の鎮痛 消炎 痛症 ( 筋 筋膜性 痛症, 変形性


( 別添 ) 御意見 該当箇所 一般用医薬品のリスク区分 ( 案 ) のうち イブプロフェン ( 高用量 )(No.4) について 意見内容 <イブプロフェン ( 高用量 )> 本剤は 低用量製剤 ( 最大 400mg/ 日 ) と比べても製造販売後調査では重篤な副作用の報告等はない 一方で 今まで

線に及ぶ 4 パッチテスト 光パッチテストで多数の陽性物質が検出されるが それらの抗原によるアレルギー反応は直接原因ではない 5 病理組織学的に湿疹 皮膚炎群の所見を示し 時に真皮内に異型リンパ球の浸潤がみられる などです なお 現在までに本疾患の原因は解明されていません 慢性光線性皮膚炎の臨床像次

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本マニュアルの作成に当たっては 学術論文 各種ガイドライン 厚生労働科学研究事業報告書 独立行政法人医薬品医療機器総合機構の保健福祉事業報告書等を参考に 厚生労働省の委託により 関係学会においてマニュアル作成委員会を組織し 社団法人日本病院薬剤師会とともに議論を重ねて作成されたマニュアル案をもとに

2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

発育阻止濃度 (minimum inhibitory concentration: MIC) や最小殺真菌濃度 (minimal fungicidal concentration: MFC) を指標に判断します MIC でみますと 白癬菌に対して MIC が小さい すなわち 抗真菌作用が強いのは ラ

2014 年 7 月 3 日放送 第 64 回日本皮膚科学会中部支部学術大会 3 シンポジウム 2-3 接触皮膚炎の最新情報 新潟大学医歯学総合病院皮膚科講師伊藤明子はじめに本日は 接触皮膚炎の最新情報 と題しまして 先日 名古屋で開催されました第 64 回日本皮膚科学会中部支部学術大会の講演よりお

6) 装飾業従事者 : 洗浄液香料 メントール オークモス 7) 生花 葬祭業従事者 : チューリップ 菊 8) 農業従事者 : 農薬 ダニコール ジマンダイセン 石灰硫黄合剤 9) 養豚従事者 : 豚の飼料 オラキンドックス カルバドックス 10) その他 : 石油金属加工油 次亜塩素酸ソーダ 住

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

も見られます 刺激性皮膚炎は乾燥 鱗屑 亀裂などの症状を示し 通常瘙痒は強くありません 一方 アレルギー性接触皮膚炎 ( 図 1) では そう痒を伴い 紅斑 丘疹 びらん 痂皮などの急性湿疹 また慢性化すると苔癬化などの慢性湿疹の病像を呈してきます アレルギー性接触皮膚炎では 手から前腕だけでなくそ

2016 年 6 月 2 日放送 第 45 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 1 共同研究シンポジウム -1 パッチテスト試薬共同研究委員会より 藤田保健衛生大学アレルギー疾患対策医療学教授松永佳世子はじめに第 45 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 共同シンポジウム-1 においてパッチテス

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

2015 年 8 月 27 日放送 第 78 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 3 シンポジウム2 基調講演薬疹の最新動向と今後の展望 昭和大学皮膚科教授末木博彦 はじめに本日は薬疹の最新情報と今後の展望についてお話しさせていただきます 最初に薬疹の概念が変遷しボーダレス化が進んでいるというお話 続

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スライド 1

アトピー性皮膚炎におけるバリア異常と易湿疹化アトピー性皮膚炎における最近の話題に 角層のバリア障害があります アトピー性皮膚炎の 15-25% くらい あるいはそれ以上の患者で フィラグリンというタンパク質をコードする遺伝子に異常があることが明らかになりました フィラグラインは 角層の天然保湿因子の

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スライド 1

とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

した つまり 従来から研究されてきた IgE/Fc RI を介した活性化経路は 肥満細胞活性化の一面に過ぎず むしろ生体防御の見地からすると 感染に対する防御こそ肥満細胞の機能の中心的な役割である可能性も出てきたのです この一連の研究は 肥満細胞は何もアレルギーを起こすために存在しているのではなく

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

DLST の実際実際に DLST を行う手順を簡単にご説明します 患者末梢血をヘパリンや EDTA 添加の採血管で採取します 調べる薬剤の数によって採血量は異なりますが, 約 10 20mL 採血します. ここからフィコール比重遠心法により単核球を得て 培養液に浮遊し 96 穴プレートでいろいろな薬

資料 2-4 イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策について 平成 23 年 6 月 23 日平成 23 年度薬事 食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 ( 第 2 回 ) 1. イソプロピルアンチピリン製剤の安全性に係る調査結果報告書 ( 別紙 ) 1 ページ

膚炎における皮膚バリア機能異常の存在を強く支持する結果が得られています ダニアレルゲンの性質即ちドライスキンの状態では 皮脂膜や角層 角層間物質に不都合があるため アレルゲンや化学物質が容易に表皮深部ないし真皮に侵入し炎症を惹起し得るうえ 経表皮水分喪失量も増加することが容易に想像されます ではダニ

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

相互作用DB

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

1 MRSA が増加する原因としては皮膚 科 小児科 耳鼻科などでの抗生剤の乱用 があげられます 特にセフェム系抗生剤の 使用頻度が高くなると MRSA の発生率が 高くなります 最近ではこれらの科では抗 生剤の乱用が減少してきており MRSA の発生率が低下することが期待できます アトピー性皮膚炎

されていません 今後社会全体に向けての啓発活動が必要と思われます 一方 クロムは革製品 塗料 インク セメントなど あまり金属にみえないものに入っていま す 足底全面の重症の湿疹とともに全身に撒布疹がある難治性の患者さんがおられました 革靴の切れ端を水に浸したものとク ロムのパッチテストが強陽性を示

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

ポプスカイン0.75% 注シリンジ 75mg /10 院 Popscaine 75mg /10 院 / 筒 丸石 薬価 円 / 筒 効 硬膜外麻酔 用 ( 注 )1 回 150mg ( 本剤として20 院 ) までを硬膜外腔に投与 禁 大量出血やショック状態, 注射部位またはその周辺に

ステロイド療法薬物療法としてはステロイド薬の全身療法が基本になります 発症早期すなわち発症後 7 日前後までに開始することが治療効果 副作用抑制の観点から望ましいと考えられす 表皮剥離が全身に及んだ段階でのステロイド薬開始は敗血症等感染症を引き起こす可能性が高まります プレドニゾロンまたはベタメタゾ

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を身につけることが必要です 図 1,2,3 臨床像から初めに他の疾患で あると考えても 少しでも合致しない 点があれば鏡検を行うようにします 極言すれば 初診時には念のため 全 例鏡検していくくらいの意気込みで ちょうどよいです そして 他の疾患と考えて治療を開 始したが 予想どおりの改善が見られ

デュピクセントを使用される患者さんへ

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患者向医薬品ガイド

第3章 調査のまとめ

会長 日本製薬団体連合会会長 日本一般用医薬品連合会会長 米国研究製薬 工業協会会長 欧州製薬団体連合会会長及び一般社団法人日本医薬品卸業連合 会会長あてに発出することとしているので申し添えます

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

Microsoft Word - 【資料2】副作用症例_set

3 ドライアイ は 医師の診療が必要である疾患と言われて いるため OTC の効能効果として認められない 4 ドライアイの適応についても 医師の診断を受けた患者 に 限定することで認めてほしい 5 防腐剤が入っていない使い切りの製剤を作ってほしい また 一般の人がドライアイか乾き目を判断するのは難し

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

日本内科学会雑誌第98巻第12号

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

( 別紙 1) 一般用医薬品のリスク区分の変更手順について 平成 21 年 5 月 8 日医薬品等安全対策部会 1. 平成 21 年 6 月から薬事法に基づく 一般用医薬品の販売におけるリスク区分が実施されることとなっている また 医薬品等安全対策部会は 薬事法第 36 条の 3 第 3 項の規定に

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

1 分析の主旨 ビタミン剤 うがい薬 湿布薬 保湿剤に関しては 医療費適正化の観点か ら 診療報酬改定で様々な対応を行ってきている 本分析は 2012 年度から2016 年度 ( 平成 24 年度から平成 28 年度 ) の調剤レセプトのデータを用いて これらの医薬品の薬剤料 数量等の推移を示したも

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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Microsoft Word - 日薬連宛抗インフル薬通知(写).doc

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

患者向医薬品ガイド 2019 年 5 月改訂 デュピクセント皮下注 300mg シリンジ この薬は? 販売名一般名含有量 (1 製剤中 ) デュピクセント皮下注 300mg シリンジ Dupixent 300mg Syringe for S.C. Injection デュピルマブ ( 遺伝子組換え

2009年8月17日

Microsoft Word - ジュビダームビスタ同意説明書_201602_JAP docx

講演1 「アトピー性皮膚炎を理解するために」

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ヒアルロン酸ナトリウム架橋体製剤 特定使用成績調査

ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

Point

01-02(先-1)(別紙1-1)血清TARC迅速測定法を用いた重症薬疹の早期診断

患者向医薬品ガイド

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C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

規制改革会議公開討論資料

Microsoft Word - 薬食安発1128第9号

301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

経皮吸収型鎮痛消炎貼付剤 外皮用インドメタシン貼付剤 1. 改訂内容改訂後 ( 下線部は追加 変更箇所 ) 4. 妊婦 産婦 授乳婦等への使用妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に対しては治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ使用すること 妊婦に対する安全性は確立していない 厚生労働

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

2014 年 12 月 4 日放送 第 113 回日本皮膚科学会総会 3 教育講演 8-3 アレルギー接触皮膚炎の原因物質とその臨床的特長 東邦大学医療センター大森病院スキンヘルスセンター 臨床教授関東裕美 はじめに皮膚に抗原が接触することで生じる湿疹反応は 発症の経緯や臨床経過について患者からの訴

序 蕁麻疹は, 皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎, 接触皮膚炎などの湿疹 皮膚炎群, せつとびひ, 癤などの感染症と並ぶ, ありふれた疾患 ( コモンディジーズ )( 群 ) である. その病態は, 皮膚マスト細胞の急激な脱顆粒により説明され, 多くの場合は抗ヒスタミン薬の内服によりマスト細胞から遊離

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

針刺し切創発生時の対応

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放射線併用全身化学療法 (GC+RT 療法 ) 様の予定表 No.1 月日 経過 達成目標 治療 ( 点滴 内服 ) 検査 処置 活動 安静度 リハビリ 食事 栄養指導 清潔 排泄 / 入院当日 ~ 治療前日 化学療法について理解でき 精神的に安定した状態で治療が

161 家族性良性慢性天疱瘡

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接触皮膚炎・湿疹なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

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美容皮膚科に関するアンケート今回 2つのアンケートを紹介します まず 初めに 皮膚科医による美容皮膚科への取り組み実態 の調査として 2007 年に行われた日本臨床皮膚科医会会員 4,073 名への 美容皮膚科に関するアンケート です このアンケート調査は 回収率は 30.35% と高く 美容皮膚科

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から (3) までの具体的な予定については添付 2 の図のとおりですので申し添 えます

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

Transcription:

2011 年 9 月 1 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 2 教育講演 2 外用剤による接触皮膚炎の現況 東京医科歯科大学大学院皮膚科教授横関博雄 はじめに接触皮膚炎の原因抗原の中では医薬品の頻度が高く 特に抗菌薬や非ステロイド系消炎薬 (NSAIDs) の外用薬によるものの頻度が高いと考えられています これらの外用薬が湿疹や潰瘍病変に使用された場合には 症状の悪化 難治化といった形をとるため 接触皮膚炎と診断することが難しいことがあります また複数の外用薬による接触皮膚炎の場合 主剤である薬剤の交叉反応によるだけでなく 含有されている基剤 防腐剤などが原因のこともありますので注意が必要です 最近 医療費削減のため増加している市販薬 (over the counter drug: OTC) は 複数の抗菌薬 消炎鎮痛薬 鎮痒薬 消毒薬などを含有しているため 容易に接触皮膚炎を起こしやすくまた 原因究明のため 詳細な問診が必要になります また 医薬品による接触皮膚炎は 同系の内服薬や注射薬が広く使用されているため これら薬剤との交叉反応を含めて全身性接触皮膚炎としての薬疹がしばしば誘発されます ケトプロフェンによる光アレルギー性接触皮膚炎症候群まず 皮膚病診療に松立先生が報告なさっていたケトプロフェンによる光アレルギー性接触皮膚炎症候群の一症例をご紹介いたします 症例は75 歳の女性で現病歴は 約 3 年前よりほぼ毎日ケトプロッフェンテープを貼付 露光部に貼付したときに貼付部位に皮疹が出現しました 2008 年 9 月上旬より全身にそう痒伴う皮疹が出現したため皮膚科の受診となりました 皮膚症状はケトプロッフェンテープ貼付部位に境界鮮明な紅斑が認められその周囲から全身に多形紅斑様の紅斑が多発しています 診断は光パッチテストの結果ケトプロッフェンによる光アレ

ルギー性接触皮膚炎症候群と診断されました 欧州医薬品庁は昨年 7 月にケトプロフェン外用薬に関するレヴュー結果を公表し 重篤な光線過敏症の発症は10 0 万人に1 人程度でベネフィットがリスクをうわまること オクトクリレンが含まれる遮光剤が併用されると光線過敏症のリスク高まることより最終的に医師の処方でのみ使用されるべきと勧告しました 一方 本邦では薬事 食品衛生審議会安全対策調査会が ケトプロフェン外用薬について 欧州より光線過敏症の副作用が少ないことを理由に一般用の国内販売継続としました 逆に ケトプロッフェン貼付薬を薬剤師による情報供給が必須な 第 1 類薬 から必要でない 指定第 2 類 に規制緩和しました しかし ケトプロフェンによる光線過敏症は決して本邦でも少なくなく副作用報告が十分にされていないのが現状でこの緩和は問題があると思います 今後 ケトプロフェンテープ クリーム ゲル 液などの OTC 薬が安易にコンビニで購入されOTC 薬による光アレルギー性接触皮膚炎が多発する可能性が高くなると考えられています 接触皮膚炎を起こす消炎鎮痛外用薬接触皮膚炎を起こすと報告されている消炎鎮痛外用薬とその OTC によく配合されている局所麻酔薬や鎮痒外用薬をまとめてお話します 消炎鎮痛外用薬に配合される主剤の NSAIDs は いずれも接触皮膚炎を起こしますが ブフェキサマクやイブプロフェンピコノールは感作性が高いことで知られています ブフェキサマクを主成分とする医師処方箋の必要な医薬品軟膏は発売中止となりましたが ブフェキサマクは依然 各種のOT C 薬に含まれているため 今後 OT C 薬の抗炎症外用薬によるアレルギー性接触皮膚炎が問題になってくると思われます こ

れらの NSAIDs 外用薬はそれらの内服薬が広く服用されているため 接触感作の成立に伴い全身性接触皮膚炎としての薬疹がしばしば誘発されるため注意が必要です 市販の消炎鎮痛薬の外用薬には 局所麻酔薬が配合されていることが多いのが問題になっています 以前からエステル型の局所麻酔薬による接触皮膚炎が報告されていますが 最近は アミド型局所麻酔薬やアセトアニリド誘導体局所麻酔薬による接触皮膚炎の報告が増えています また鎮痒薬として OTC の消炎鎮痛外用薬に配合されている塩酸ジフェンヒドラミン クロタミトン L-メントールの接触皮膚炎も頻度は高くはありませんが生じることがあるので注意が必要です ルリコナゾールによる接触皮膚炎次に皮膚病診療にて鈴木先生が報告したルリコナゾールによる接触皮膚炎の症例を紹介します 症例は78 歳 女性です 主訴は両足のそう痒を伴う紅斑局面です 現病歴は約半年前より足爪白癬がありましたが無治療でした 加療目的で2008 年 6 月に近医に受診し足爪白癬と診断されルリコナゾールクリーム 液の外用後 84 日頃に痒みを伴う紅斑が出現してきました この症例の特徴はラノコナゾール ルリコナゾールによるパッチテストともに陽性ですが ラノコナゾールにより感作の可能性は少なく 交叉性のため陽性になったと考えられました ラノコナゾールに関しましては 第 1 類薬の水虫治療薬でラノコナゾールのスイッチO TC 薬が指定第 2 類薬に改正となり販売されています 現在 ラノコナゾールが簡単にコンビニ等で購入可能でありラノコナゾールの使い回しによる接触皮膚炎が増加する可能性が今後多くなるのではと危惧しています 抗菌外用薬による接触皮膚炎次に 抗菌外用薬による接触皮膚炎を説明します 接触皮膚炎を起こすことが報告されている抗菌薬の外用薬をアミノグリコシド系と非アミノグリコシド系に分けてまとめてみますと アミノグリコシド系抗菌薬は比較的感作性の高い医薬品で フラジオマイシンはその中で高率に感作を起こすことが知られています フラジオマイシンにかぶれた患者はゲンタマイシン アミカシン カナマイシンなどのその他のアミノグリコシド系抗菌薬と交叉反応することが報告されていま

すので 同じ系統の外用薬を使用した場合交叉反応により接触皮膚炎を起こし 同じ系統の注射薬や内服薬を使用した場合には全身性接触皮膚炎としての薬疹が誘発され可能性もあり注意が必要です また 抗真菌外用薬による接触皮膚炎に関しては 1980 年代後半よりイミダゾール系抗真菌薬が頻用されるようになってその接触皮膚炎が増加しています 同じ系統の抗真菌薬の間では交叉感作が多く報告されているため 外用を変更する場合は系統の異なる外用薬に変更した方が良いと考えられています この症例のようなビニルイミダゾール系の外用薬による接触皮膚炎の報告はまだ多くはありませんがラノコナゾールがOTC 薬として容易に購入できるようになると今後 接触皮膚炎の症例が増加する可能性があります 消毒薬 潰瘍治療薬ほか消毒薬 潰瘍治療薬は かつて接触皮膚炎が多かったマーキュロクロム チメロサールなどの水銀消毒薬やピオクタニンは 現在殆ど使用されなくなったため それらの接触皮膚炎の報告は著明に減少しました しかし最近では 消毒薬はアレルギー性接触皮膚炎だけでなく 刺激性接触皮膚炎の報告も多く 肉芽形成を阻害するため 潰瘍や創部に対しては極力消毒薬の使用を控える傾向にあります 坐薬 膣錠は 感作され易い抗菌薬や局所麻酔薬が配合されているため これらの配合薬が原因薬剤となり全身型接触皮膚炎としての湿疹型薬疹がしばしば誘発されます まとめ外用薬による接触皮膚炎をまとめますと 接触皮膚炎の原因アレルゲンの中では医薬品の頻度が高い 抗菌薬や非ステロイド系消炎薬の外用薬によるものの頻度が高い 医薬品の外用薬で感作され内服薬で発症する全身性接触皮膚炎を引き起こすこ

とがある 多彩な臨床を呈する ステロイド外用薬によるものも稀に見られる これらの外用薬が湿疹や潰瘍病変に使用された場合 症状の悪化 難治化といった形をとるため 接触皮膚炎の診断困難 複数の外用薬による接触皮膚炎の場合 主剤である薬剤の交叉反応 基剤 防腐剤などが原因のこともある 今後 ジェネリック医薬品 OTC 薬による接触皮膚炎が増加 以上 外用薬による接触皮膚炎の現状と今後の可能性に関してお話しました