1. インターネットの仕組み インターネットの基礎となる仕組み パケット交換方式 実用的な仕組みを構築するために採用された階層モデル 利用する上で必要な IP アドレスの知識などを学んで これからの講習に役立ててください 1.1 パケット交換による通信 電話は多数の通信線を交換機で繋ぎ換え送信側と受信側を 1 本の回線で接続して会話を可能にしています この回線交換方式は回線を占有するので通信速度が保障されるが 低速な通信でも 1 本の回線を占有し効率が悪い欠点があります パケット交換方式は通信データに送受信の宛先を付加したパケットを回線に流しパケット交換機によって送信側から受信側へと配送する方式です 1 つの回線を多様なデータ通信に供用できるのが利点です これは郵便物が各郵便局を経由して宛先に届けられる仕組みと似ています 宛先を見つけて配送する仕組みはもちろんですが パケットの大きさ制限や紛失への対応などがも必要です 例えばデータは物ではないので 大きすぎるパケットを途中で複数のパケットに分割したり 紛失したパケットは再送を依頼したりといったことが行われます
1.2 インターネット (Internet) の歴史 1960 年代 1965 年タイムシェアリングシステムで利用者間の連絡用に電子メールが使われるようになった タイムシェアリングシステム (TSS) :1 台の大型計算機を複数のユーザーが時分割で同時に利用する仕組み 電話回線などを利用して遠隔地から利用することも可能だった 1969 年パケット交換方式により北米の大学と研究所の 4 か所を接続し ARPANET が始動 初期にはパケット交換を行う IMP(Interface Message Processor) とネットワーク制御手順 (Network Control Protocol:NCP) が使われた 1970 年代 ARPANET を利用して計算機を遠隔操作する Telnet やファイルを転送する FTP さらに電子メールなどのネットワークを利用するアプリケーションの開発が進みました 1973 年ネットワーク相互間の伝送制御手順 (Transmission Control Protocol TCP) が作られた 1980 年代 1983 年 1 月 1 日からは ARPANET のシステムが NCP から TCP/IP に移行 インターネットが始まった年と言われています ARPANET はインターネットの基幹ネットワークとして機能 狭い意味でのインターネットとは IP( インターネットプロトコル ) で相互接続されたネットワークの事を指します IP では IP アドレス (32 ビットのデータ ) で宛先を識別します IP アドレスは重複しないように管理されています 1984 年 DNS が導入される IP アドレスとドメイン名と呼ばれる名前との対応表を記憶してドメイン名から IP アドレスを引く辞書サービスを提供するシステム 1985 年 NFSNet が作られインターネットの基幹ネットワークとなってゆく ARPANET は 1990 年に解消 1990 年代 1990 年 World Wide Web の最初のサーバとブラウザが作られ 1991 年に発表 1995 年 NSFNet は民間へ移管
1.3 階層モデル 計算機ネットワークのシステムは非常に複雑なので一度に全部を考えることは困難です そこで巧く階層に切り分けて役割分担を行う階層モデルが作られました TCP/IP 参照モデルやその後に作られた OSI 参照モデルがよく知られています ネットワークを利用する機器やプログラムはほとんどが階層モデルに準じて作られています このモデルを知っておくと 今後の話が理解がしやすくなると思います OSI 参照モデル TCP/IP 参照モデル 7. アプリケーション層アプリケーション層 6. プレゼンテーション層 5. セッション層 4. トランスポート層 3. ネットワーク層 WWW や電子メール等のアプリ トランスポート層 TCP UDP 等 インターネット層 2. データリンク層ネットワークインターフェース層 1. 物理層 アプリケーション層 IP Ethernet やトークンリングなど様々な種類が在る 宛先の識別 ポート番号 16 ビット IP アドレス IPv4 は 32 ビット IPv6 は 128 ビット MAC アドレス ( 物理アドレス ) Ethernet は 48 ビット データの形状 データ TCP ヘッダー + データ送受信側のポート番号が TCP ヘッダーに含まれる IP ヘッダー +(TCP ヘッダー + データ ) 送受信側の IP アドレスが IP ヘッダーに含まれる Ethernet では上位層のデータ列に送受双方の MAC アドレス等のデータを追加したフレーム単位で通信を行う WWW やメールなどのアプリケーションプログラムが対応する階層です これらのアプリケーションは直接に通信を行うわけではなくトランスポート層が用意したサービスを利用して IP とポート番号で識別されたアプリケーションと通信を行います トランスポート層 インターネット層を利用してアプリケーション層からの要求に対応するのが役割です 例えばデータ落ちが無いように保障が必要なら TCP が利用できます TCP では IP 層でパケットが失われた場合は失われた部分の再送を送信側に要求します インターネット層 既存のネットワークを相互に繋ぎ IP アドレスで識別される機器の間でパケットの交換を行います 途中のネットワークでデータの長さが制限される場合はパケットを複数のパケットに分割することもこの層の役割です OSI 参照モデルの 3 層目に対応するレイアー 3 スイッチ (L3 スイッチ ) は IP アドレスを見て適切な配送を行うパケット交換機器です 同じ役割を持つものにルータが在ります ネットワークインターフェース層 ネットワークカードや対応したドライバーソフトで処理される部分 通信機器ごとに重複しない MAC アドレスを持ち 送受信の宛先には MAC アドレスが使われます OSI 参照モデルの 2 層目に対応するレイアー 2 スイッチ (L2 スイッチとかスイッチングハブ ) は MAC アドレスを見て適切な配信を行う交換機です
MAC アドレスと言う言葉は聞かれたことが在るかもしれません 重複しない特徴から 通信機器を特定する目的で使われることもあります
1.4 IP アドレスの設定 IP アドレス (Internet Protocol Address) IP アドレスは 32 ビットの値で 2 つの部分から構成されている 前半は機器が直接繋がっているネットワークのアドレスでネットワークアドレスと言います 後半はホストアドレスと言い そのネット内での機器のアドレスです IP アドレス = ネットワークアドレス + ホストアドレス ネットワークの規模によって繋がる機器の数は様々なのでホストアドレス部に使うビット数も様々です ここでネットワークアドレス部とホストアドレス部の区切りを示すためにサブネットマスクが使われます サブネットマスクは 32 ビットの値で前半のビットが 1 の部分がネットワークアドレス 後半の 0 の部分がホストアドレスの部分であることを示します ホストアドレスのビットが全て 0 や 1 のアドレスは特別な意味を持つので機器の IP アドレスとしては使えません 全て 0 はそのネットワークのアドレス 全て 1 はそのネットワーク全体へのブロードキャストを行うアドレス グローバル IP アドレスの割り当て IP アドレスはインターネット内での機器の識別に使われるため 勝手な値を使うことはできません IP の管理機関 日本であれば JPNIC などが各 ISP(Internet Services Provider) に割り振り ISP と契約した利用者に ISP が IP を割り当てるのが一般的です このように IP の管理機関で割り振られた IP はインターネット内で重複することはありません このような IP アドレスをグローバル IP アドレスと言います グローバル IP アドレスを持つ機器の間ならインターネットで双方向の通信が可能です ISP との個人契約の場合は 機器に IP を一時的に割り当てることがほとんどで 使うたびに IP アドレスが変わることになります IP が変わっては困る場合は ISP と固定 IP の割り当て契約が必要です インターネット接続する機器に IP アドレス サブネットマスクなどの情報を自動的に割り当てる DHCP サーバと呼ばれるものがあります DHCP サーバが用意されたネットワークであれば線を繋ぐだけでインターネットに繋がります この割り当ては通常は一時的です Windows のネットワーク設定 ここでは DHCP を使わずに手動で設定する場合の例を示します しかし Windows の既定値では IP アドレスを自動的に取得するとなっています DHCP サーバが動いていて自動取得ができるネットワークであれば以下のような設定の必要はありません IP アドレスは 32 ビットの値 ここで 01 を 32 個書いたのでは人間には分かりにくいので 8 ビットづつを 2 進数とみて 10 進数に変換した値で表現することが多い ドットで区切って 10 進数 4 個を並べるドット付き十進表記が一般的に使われます 32ビットのIPアドレス 2 進数 32 桁を8 桁ごとに区切った表現 00001010 11001000 00001100 10010111 10 進数 4 個での表現 10 200 12 151 上の場合ドット付き十進表記で IP アドレスは 10.200.12.151 と表記 サブネットマスクはネットワークアドレスに対応する部分のビットを 1 にした値です 十進数の 255 は 2 進数の 11111111 なので下の例は上位の 24 ビットがネットワークアドレスであることを示しています ネットワークアドレス部分が同じ IP は L3 スイッチやルータを経由することなく通信が行えますが 違う場合は L3 スイッチへまずはパケットを送ることになります 32ビットのサブネットマスク 2 進数 32 桁を8 桁ごとに区切った表現 11111111 11111111 11111111 00000000 10 進数 4 個での表現 255 255 255 0 上の場合ドット付き十進表記でサブネットマスクは 255.255.255.0 と表記
ゲートウェイは外のネットワークへの出口になる L3 スイッチやルータの IP アドレスです ここではゲートウェイのホストアドレスは 254 となっています 255 にしない理由を考えてください DNS サーバは ibe.kagoshima-u.ac.jp のようなドメイン名に対応する機器の IP アドレスを教えてくれます ここを設定しないとドメイン名では繋がらなくなります この場合でも IP アドレスを指定すれば通信は可能です プライベート IP アドレス 自分のネットワークの内側でのみ有効な IP アドレス 上の画面の IP アドレスはこのプライベート IP アドレスです 従ってこのままではネットワークの外とは繋がりません プライベート IP アドレスに指定できる値は下記のように定められていて上の設定はクラス A の範囲内の値です NAPT クラス A 10.0.0.0-10.255.255.255 クラス B x 16 172.16.0.0-172.31.255.255 クラス C 192.168.0.0-192.168.255.255 パケットのポート番号と IP アドレスを付け替えること プライベート IP アドレスをグローバル IP アドレスに変換して外部との接続を可能にするために使われます 返信を受け取る時は 逆にプライベート IP に戻して当該機器へ配信します この教室の計算機から Web の閲覧を行うときは NAPT によってインターネットに繋いでいます
設定の確認 Windows の場合はコマンドプロンプトを開いてコマンド ipconfig /all とタイプしてエンターキーで実行すると次のようにネットワークの設定を一覧することが可能です