( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

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という ) は 282 件 (29.7%) 同加算を算定し ていない施設 ( 以下 従来型 という ) は 496 施設 (52.2%) であった また 在宅強化型老 健 ( 以下 在宅強化型 という ) は 137 件 (14.4%) 介護療養型老健 ( 以下 療養型 は 35 件 (3.7%)

1.2 設置形態一般型のうち単独で設置している施設 ( 以下 単独型 という ) は 22.8% 他の事業と併設している施設 ( 以下 併設型 という ) は 77.2% であった 認知症対応型のうち単独型は 23.1% 併設型は 76.9% であった 1.3 事業規模 2 一般型のうち小規模型施設

2. 療養型病院 (1) 機能性の状況 療養型病院 施設数 ( 施設 ) 470 病床数 ( 床 ) 利用率 90.3 在院日数 ( 日 ) 92.7 入院外来比 0.52 新患率 日平均患者数 ( 人 ) 入院 外来 床当たり医業収益 ( 千円 )

病床規模は 300 床未満の病院が全体で 82.5% と中小規模の病院が大半を占め 一般病院で 81.7% 療養型病院で 93.4% 精神科病院で 64.0% だった ( 図表 3) 平成 28 年医療施設 ( 動態 ) 調査によると 299 床以下の病院の割合は全体の 82.1% であることから

2 収支の状況 一般病院の収支の状況は次のとおりです 1 収益構造として 総収益に占めるの割合は96.0 に占める収入の割合は69.1 同収入の割合は26.7 でした 2 に対する費用の割合は 人件費率 52.4 前年度比 0.1ポイント増 医療材料費率 21.5 同 0.3ポイント増 給食材料費率

( 図表 1) 特別養護老人ホームの平米単価の推移 ( 平均 ) n=1,836 全国東北 3 県 注 1) 平米単価は建築工事請負金額および設計監

1 福祉施設の動向 1.1 特養 平米単価は平成 22 以降初めて低下 近年は高止まりの様相を呈す 地域別では首都圏 近畿地方等で平均を上回る (1) 平米単価 平米単価は 全国平均および首都圏ともに平 成 22 を底に上昇傾向にあったが 平成 29 は初めて低下した ( 図表 1) 長期的にみ れ

1. 病院経営の鍵となる指標 病床利用率の推移 1.1 病床稼働率は平均80 強 病院報告 病床稼働率と病床数の不思議な関係 は入院収益そのものに直結します人件費や設備投資などの固定費が多い病院 全病床 6 精神病床 5 は 病床稼働率が一定の水準を下回ると一気に赤字経営に陥りますそのた

1.2 回答者の属性回答病院の設置主体は医療法人が 81.7% 社会福祉法人が 7.4% 社会医療法人が 5.7% であった ( 図表 1) ( 図表 1) 設置主体 5.7% 4.6% 0.6% n=175 医療法人 7.4% 社会福祉法人 ( 図表 3) 療養病床割合 ( 対総病床数 ) n=1

第2章 食品卸売業の経営指標

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3 流動比率 (%) 流動資産流動負債 短期的な債務に対する支払能力を表す指標である 平成 26 年度からは 会計制度の見直しに伴い 流動負債に 1 年以内に償還される企業債や賞与引当金等が計上されることとなったため それ以前と比べ 比率は下がっている 分析にあたっての一般的な考え方 当該指標は 1


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第3 法非適用企業の状況

1. 法人の概要 様式 1-1 公益財団法人神戸都市問題研究所企画調整局 住所 電話 078(252)0984 神戸市中央区浜辺通 5 丁目 1 番 14 号神戸商工貿易センタービル18 階 FAX 078(252)0877 ホームページアドレス

財務比率推移 ( 過去 5 年間 ) ( 単位 :%) ( 単位 :%) 比率算式平成 26 年度比率算式平成 27 年度平成 28 年度平成 29 年度平成 30 年度 1 帰 属 収 支 差 額 比 率 帰属収入 - 消費支出 59.2 帰属収入 54.4 事業活動収支差額比率 基本金組入前当年


(2) サマリー情報 1 ページ 1. 平成 29 年 3 月期の連結業績 ( 平成 28 年 4 月 1 日 ~ 平成 29 年 3 月 31 日 ) (2) 連結財政状態 訂正前 総資産 純資産 自己資本比率 1 株当たり純資産 百万円 百万円 % 円銭 29 年 3 月期 2,699 1,23

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4 地方公営企業会計基準の見直しの影響 ( 概要 ) 地方公営企業会計基準の見直しのため 平成 23 年度に地方公営企業法施行令等を改正し その改正内容が平成 26 年度予算 決算から全面的に適用となっている (1) 見直しの趣旨 昭和 41 年以来大きな改正がなされていない地方公営企業会計制度と国

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一企業当たりの事業所数は 14. 事業所 ( 前年度差.6 事業所減 ) 常時従業者数 499 人 ( 前年度比.8% 減 ) 売上高は 23.4 億円 ( 同 2.9% 減 ) 製造企業の一企業当たりの売上高は 億円 ( 前年度比 3.9% 減 ) 営業利益は 1 億円 ( 同.6%

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注記事項 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) : 無 新規 社 ( 社名 ) 除外 社 ( 社名 ) (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 有 2 1 以外の会計方針の変更 : 無 3

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

大分類小分類建設工事の種類 総合工事業 土木建築工事業土木工事業 ( 土木工事が完成工事高の8 割以上 ) 建築工事業 ( 土木工事が完成工事高の2 割未満 ) 設備工事業職別工事業 前記による土木一式工事 舗装工事 しゅんせつ工事 水道施設工事 造園工事建築一式工事電気工事 管工事 機械器具設置工

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公営企業の経営指標等の分類について. データベースの加工方法について ( ファイル DB( 加工用 ) 参照 ) 内容参照 総務省自治財政局公営企業課 ( 平成 年 月 0 日 ) の資料 4 公営企業の経営指標等 に表紙から連番をふる 資料 4 に含まれている全ての指標を抽出し 連番をふる DB(

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Research Report 2017 年 12 月 26 日経営サポートセンターリサーチグループチームリーダー本地央明 平成 28 年度医療法人の経営状況について 福祉医療機構のデータに基づき 平成 28 年度の医療法人の経営状況について分析を行った 収支は平成 28 年度診療報酬改定の影響などを受け増収減益であり 事業収益対事業利益率は前年度比 0.3 ポイント低下の 2.4% 赤字法人の割合は前年度の 18.1% から 2.3 ポイント拡大の 20.4% であった なお 人件費率は 前年度から 1.7 ポイント増の 58.1% となっており 人件費の増加が減益の主因と考えられる 事業収益規模別の経営状況を比較したところ 従事者 1 人当たり年間事業収益は事業収益 10 億円未満の法人が 7,629 千円であるのに対し 事業収益 40 億円以上の法人は 9,221 千円となっており 従事者 1 人当たり年間事業収益および労働生産性は正比例の関係にあった また 事業収益規模が大きいほど赤字法人割合も減少していた これらのことから 事業収益規模が大きい法人ほど効率的かつ安定的な経営を行っている状況がうかがえた 黒字法人と赤字法人を比較したところ 赤字法人は人件費率をはじめとする費用に関する経営指標が総じて高い状況にあり 費用を賄うだけの収益が十分に得られていない状況にあった 人材確保が困難な昨今の状況を踏まえると 職員数や給与水準を下げることなどにより費用を削減するのではなく 収益増加を目指すことが経営改善への第一歩であるといえるだろう はじめに福祉医療機構では 毎年度 貸付先の経営状況について調査を行っており このほど 貸付先より提出された財務諸表データを用いて 平成 28 年度の医療法人の経営状況について 961 法人を対象に分析を行った 本レポートでは 医療法人の経営状況を確認した後 事業収益規模別の経営状況 黒字法人と赤字法人の経営状況を分析することで 平成 28 年度の医療法人の経営状況を概観する なお 今回の分析は医療法人の財務分析を中心としており 病院の機能性等の分析については 平成 28 年度病院の経営状況について において報告しているのでそちらを参照されたい 1 サンプルの属性 1.1 事業収益規模事業収益 1 10 億円未満の法人が 25.4% 10 億円以上 20 億円未満の法人が 27.3% 20 億円以上 30 億円未満の法人が 15.8% 30 億円以上の法人が 31.5% となっており 事業収益 20 億円未満の法人が約半数であった ( 図表 1) 1.2 従事者数従事者数 100 人未満の法人が 18.6% 100 人以上 200 人未満が 24.2% 200 人以上 300 人未満が 18.5% 300 人以上 400 人未満が 11.6% 400 人以上 500 人未満が 8.1% 500 人以上が 18.9% となっており 200 人未満の法人が約 6 割であった ( 図表 2) 1 事業収益には 医業収益のほかに介護老人保健施設事業など介護事業等からの収益も含む ( 以下記載がない場合は同じ ) 1

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n=961 24.2% 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所 : 福祉医療機構 ( 以下記載がない場合は同じ ) 注 ) 数値は四捨五入のため 内訳の合計が合わない場合がある ( 以下記載がない場合は同じ ) 2 平成 28 年度の決算状況 収支は診療報酬改定や人件費の増加などを受け増収減益 財務に大きな変化はなし 平成 28 年度の事業収益は平成 28 年度診療報酬改定の影響などを受け 前年度から 63 百万円増加し 2,892 百万円であった ( 図表 3) 一方で 事業費用は医業収益の増加額を上回る 71 百万円増加の 2,822 百万円であった この結果 事業利益は 70 百万円となり 事業収益対事業利益率 ( 以下 事業利益率 という ) は前年度の 2.7% から 0.3 ポイント低下し 2.4% であった 事業費用に係る経営指標のなかでも とくに人件費率が前年度から 1.7 ポイント増の 58.1% となっていたことから人件費の増加が事業費用増の主因であることがわかる また 事業利益率が低下したことに伴い赤字 2 法人の割合も前年度の 18.1% から 2.3 ポイント拡大の 20.4% となっていた なお 純資産比率などの財務面の経営指標については大きな変化はみられなかった ( 図表 3) 平成 27 年度 平成 28 年度医療法人の経営状況 ( 平均 ) 区 分 平成 27 年度 n=1,335 平成 28 年度 n=961 差 (H28-H27) 従事者数 人 316.1 334.7 18.6 事業収益 千円 2,828,427 2,891,508 63,081 事業費用 千円 2,751,401 2,821,988 70,587 事業利益 千円 77,026 69,521 7,505 人件費率 % 56.5 58.1 1.7 経費率 % 20.5 20.6 0.1 減価償却費率 % 4.6 4.7 0.0 経常収益対支払利息率 % 0.8 0.7 0.1 事業収益対事業利益率 % 2.7 2.4 0.3 経常収益対経常利益率 % 3.2 3.0 0.2 従事者 1 人当たり年間事業収益 千円 8,948 8,640 308 従事者 1 人当たり人件費 千円 5,053 5,022 31 純資産比率 % 39.7 42.0 2.4 固定長期適合率 % 79.8 79.0 0.8 流動比率 % 223.7 229.4 5.6 赤字法人割合 % 18.1 20.4 2.3 2 経常利益が 0 円未満を赤字法人とした 2

さらに 決算状況の年度での変化をより細かく確認するために 平成 27 年度と平成 28 年度における 2 事業年度連続で財務諸表データが存在する法人同士 ( 同一法人 ) での比較を行った ( 図表 4) 事業収益 事業費用ともに増加しているが やはり費用が収益を上回って増加していることから 事業利益率は 2.4% と前年度から 0.4 ポイント低下しており 同一法人同士の比較でも同様の結果が得られた 費用に目を向けると 医療材料費 給食材料費は減少してるものの 人件費がやはり増加しており人件費増が費用増加の要因であることがわかる 人件費の上昇要因である従事者数は 344.3 人 と前年度から 13.3 人増加しているが 従事者 1 人当たり人件費は 5,011 千円と前年度とほぼ横ばいであったことから 従事者数の増加が人件費増加の要因であるといえる 平成 28 年度診療報酬改定においては 前回の診療報酬改定からの流れを受け 医師 看護師などの医療従事者の負担軽減の観点から看護補助者や医師事務作業補助者の配置に係る加算がより評価されたことや在宅復帰率などが厳格化されたことに伴い 看護 医師事務補助者やセラピストが増加したことがその要因の一つであろう なお 財務面の経営指標にあまり変化はみられなかった ( 図表 4) 平成 27 年度 平成 28 年度医療法人の経営状況 ( 同一法人 平均 ) 区 分 平成 27 年度 n=867 平成 28 年度 n=867 従事者数 人 331.0 344.3 13.3 事業収益 千円 2,921,937 2,960,956 39,018 事業費用 千円 2,839,459 2,890,464 51,005 ( 人件費 ) 千円 1,664,552 1,725,255 60,703 ( 医療材料費 ) 千円 331,614 324,393 7,221 ( 給食材料費 ) 千円 114,913 96,798 18,114 ( 経費 ) 千円 594,373 607,671 13,298 ( 減価償却費 ) 千円 134,008 136,346 2,338 事業利益 千円 82,478 70,492 11,987 当期純損益 千円 57,420 47,145 10,275 人件費率 % 57.0 58.3 1.3 医療材料費率 % 11.3 11.0 0.4 給食材料費率 % 3.9 3.3 0.7 経費率 % 20.3 20.5 0.2 減価償却費率 % 4.6 4.6 0.0 経常収益対支払利息率 % 0.8 0.7 0.1 事業収益対事業利益率 % 2.8 2.4 0.4 経常収益対経常利益率 % 3.4 3.0 0.4 従事者 1 人当たり年間医業収益 千円 8,827 8,600 227 労働生産性 千円 5,278 5,264 14 従事者 1 人当たり人件費 千円 5,029 5,011 18 労働分配率 % 95.3 95.2 0.1 資産 千円 3,577,759 3,604,292 26,533 負債 資本 千円 3,577,759 3,604,292 26,533 純資産 千円 1,467,198 1,514,856 47,658 純資産比率 % 41.0 42.0 1.0 固定長期適合率 % 79.2 78.9 0.3 流動比率 % 230.8 229.9 0.9 借入金比率 % 53.1 57.4 4.3 赤字法人割合 % 16.4 20.4 4.0 差 3

3 事業収益規模別にみた経営状況 事業収益規模が大きいほど効率的に経営している傾向 事業収益規模が大きいほど労働生産性は高く 赤字法人割合も低下 事業収益規模別の経営状況を分析するために 事業収益規模別に比較した ( 図表 5) まず 従事者 1 人当たり年間事業収益に着目すると 事業収益 10 億円未満の法人が 7,629 千円であるのに対し 事業収益 40 億円以上の法人は 9,221 千円となっており 事業収益規模が大きくなるほど高くなっていた また 労働生産性についても同様に事業収益規模が大きくなるほど高くなっており これらのことから 事業収益規模が大きいほど効率的に経営していることがわかる しかし 事業利益率をみると 事業収益規模別であまり違いはみられなかった一方で 従事者 1 人当たり人件費は 事業収益 10 億円未満の法人が 4,156 千円 事業収益 40 億円以上の法人が 5,352 千円となっており 事業収益規模と比例して高くなっていた このことから 医業法人においては 事業規模拡大により得られた収益を従事者に還元することなどにより職員確保に努め より高い医療機能を提供していると考えられる なお 赤字法人割合は 事業収益が 10 億円未満で 21.7% 10 億円以上 20 億円未満で 23.3% と比較的高い割合であったのに対し 30 億円以上 40 億円未満で 16.7% 40 億円以上で 17.9% となっており 事業収益規模が大きい法人ほど経営が安定している状況にあった ( 図表 5) 平成 28 年度医療法人の経営状況事業収益規模別 ( 平均 ) 区 分 10 億円未満 n=244 10 億円以上 20 億円未満 n=262 20 億円以上 30 億円未満 n=152 30 億円以上 40 億円未満 n=108 40 億円以上 n=195 従事者数 人 85.1 185.0 304.4 412.0 828.8 事業収益 千円 649,562 1,478,495 2,435,179 3,449,456 7,642,012 事業費用 千円 632,830 1,449,859 2,377,756 3,354,003 7,456,437 事業利益 千円 16,732 28,636 57,422 95,453 185,574 当期純損益 千円 12,158 20,018 45,235 87,495 100,397 人件費率 % 54.5 58.1 59.4 58.8 58.0 医療材料費率 % 7.6 8.9 9.0 9.6 12.8 給食材料費率 % 4.2 4.0 3.5 3.5 2.8 経費率 % 26.4 22.2 21.0 20.8 19.4 減価償却費率 % 4.7 4.8 4.7 4.5 4.6 経常収益対支払利息率 % 0.9 0.8 0.7 0.7 0.7 事業収益対事業利益率 % 2.6 1.9 2.4 2.8 2.4 経常収益対経常利益率 % 3.3 2.8 2.9 3.7 2.9 従事者 1 人当たり年間事業収益 千円 7,629 7,990 8,001 8,372 9,221 労働生産性 千円 4,366 4,825 4,969 5,193 5,644 従事者 1 人当たり人件費 千円 4,156 4,639 4,754 4,924 5,352 労働分配率 % 95.2 96.2 95.7 94.8 94.8 純資産比率 % 45.2 46.2 43.7 44.6 39.2 固定長期適合率 % 76.4 76.5 76.9 79.5 80.6 流動比率 % 297.6 295.7 261.8 226.0 203.5 借入金比率 % 67.2 62.6 56.4 60.8 56.4 赤字法人割合 % 21.7 23.3 19.1 16.7 17.9 4

4 黒字法人 赤字法人別にみた経営状況 全体の約 2 割が赤字法人 赤字の主因は人件費率の高さ 収益規模を拡大することなどにより効率的な経営を 黒字法人と赤字法人を比較すると 赤字法人の方が従事者数 事業収益ともに黒字法人よりも若干低いものの大きな違いはなく ほぼ同規模であると考えられる ( 図表 6) しかしながら 赤字法人は事業費用が 32,835 千円高いうえに 事業収益は 181,735 千円低くなっており 事業収益の差のほうが収支における影響が大きく 従事者 1 人当たり年間事業収益も黒字法人よりも 147 千円低くなっていた つまり 赤字法人は費用が高いこともさることながら 費用を賄えるだけの収益が十分に確保できていないことがわかる 実際に 赤字法人の人件費率は 61.0% と黒字法人よりも 3.5 ポイント高く 人件費率以外の費用に関する経営指標も総じて高い状況にあった 人材確保が困難な昨今の状況を踏まえると 職員数や給与水準を下げることなどにより費用を削減するのではなく 稼働率の上昇や各種加算の算定に積極的に取り組むことで収益増加を目指すことが経営改善への第一歩であるといえるだろう ( 図表 6) 平成 28 年度医療法人の経営状況黒字法人 赤字法人別 ( 平均 ) 収支区分 黒字法人 n=765 赤字法人 n=196 差黒字法人 - 赤字法人 従事者数 人 337.8 322.3 15.5 事業収益 千円 2,928,574 2,746,839 181,735 事業費用 千円 2,815,291 2,848,126 32,835 事業利益 千円 113,283 101,288 214,571 当期純損益 千円 89,522 124,338 213,860 人件費率 % 57.4 61.0 3.5 医療材料費率 % 10.6 12.6 2.0 給食材料費率 % 3.2 3.4 0.1 経費率 % 20.5 21.0 0.6 減価償却費率 % 4.4 5.7 1.3 経常収益対支払利息率 % 0.7 0.9 0.2 事業収益対事業利益率 % 3.9 3.7 7.6 経常収益対経常利益率 % 4.6 3.3 7.9 従事者 1 人当たり年間事業収益 千円 8,669 8,522 147 労働生産性 千円 5,361 4,940 422 従事者 1 人当たり人件費 千円 4,979 5,196 217 労働分配率 % 92.9 105.2 12.3 純資産比率 % 45.1 30.0 15.1 固定長期適合率 % 76.7 87.9 11.1 流動比率 % 247.9 165.7 82.2 借入金比率 % 54.0 77.2 23.3 おわりに平成 28 年度の医療法人の経営状況は 平成 28 年度診療報酬改定の影響などを受けて増収減益となっており 経営状況が厳しくなっていることがうかがえる 現在 平成 30 年度診療報酬改定の議論がされているところである 当然のことながら 当 該改定内容と自法人の経営状況 医療機能を見比べながら 慎重に経営の舵取りを行っていくことが必要となるであろう 本レポートが医療法人の経営の安定化の一助となれば幸いである 5

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