学生アルバイトの労働条件に関する自主的な点検について 厚生労働省は 昨年 11 月 9 日に 大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査 の結果を公表いたしました 本調査は 販売 ホテル 飲食 娯楽 教育 医療 介護 建設 配送 引越 等 幅広い業種を対象に アルバイトを経験した大学生等に対して行ったものです 調査結果では 労働条件の明示が適切にされなかった 準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった など 労働基準関係法令違反のおそれがある回答のほか 採用時に合意した以上のシフトを入れられた 一方的に急なシフト変更を命じられた 試験の準備期間や試験期間にシフトを入れられたなど 学業とアルバイトの適切な両立への影響が疑われる回答もありました そのため 昨年 12 月 22 日 厚生労働省労働基準局長より協会に対しても 学生アルバイトの労働条件の確保 について要請がありました そこで 協会は 厚生労働省の学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表を参考に 特に重要な項目について 解説を付記いたしましたので 会員各位におかれましては 改めてこの機会に自主的な点検をお願いいたします なお 厚生労働省は労働者 事業主に対し 労働条件ポータルサイト 確かめよう労働条件 (http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/) による情報発信を行っているほか 平日夜間 休日に 労働者や事業主の方々から無料で相談を受ける 労働条件相談ほっとライン (0120-811-610) を開設しております 1
学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表 労働基準関係法令に違反する事項 労働条件の明示 1 アルバイトを雇い入れる際 賃金や労働時間などの労働条件を記載した書面を交付していますか 解説 労働条件を明確にすることは全てのトラブル防止の基本です そこで 労基法では 労働者との間で労働契約を締結するに際し 特に重要な事項 ( 労働契約の期間 就業場所 業務内容 始業 終業時刻 残業の有無 休憩時間 休日 休暇 就業時転換 賃金の決定 計算 支払の方法 締切 支払の時期 退職に関する事項 ) については文書で示すことを使用者に義務付けています たとえ短期間のアルバイトでも 雇用に際しては 雇用契約書や労働条件通知書で労働条件を明示するようにしましょう 就業規則 2 アルバイトを含め 常時 10 人以上の労働者を使用する場合 就業規則を作成し 所轄の労働基準監督署長に届け出ていますか 解説 多数の労働者を公平かつ統一的に扱うためには労働条件や職場の規律について明確に定めておく必要があります 正社員とアルバイトやパートタイマーとでは労働条件が異なることが多いので 正社員用の就業規則とは別にアルバイト パートタイマー用の就業規則を用意することが望ましいでしょう 3 就業規則をアルバイトに周知していますか 解説 就業規則が周知されていないと懲戒処分の効力が認められないなどの不都合が生じるため 使用者は就業規則を必ず周知 ( 作業場の見やすい場所に常時掲示するか備え付ける あるいは配布するなど ) するように心がけてください 労働時間 4 所定の労働時間は 週 40 時間 1 日 8 時間以内となっていますか 商業や接客娯楽業などの業種のうち 常時 10 人未満の労働者を使用する事業場は 44 時間 5 アルバイトに法定労働時間を超えて労働させる場合 時間外労働 休日労働に関する協定 ( いわゆる 36 協定 ) を締結し 所轄の労働基準監督署長に届け出ていますか 2
解説 労基法は労働時間の上限として週 40 時間 1 日 8 時間時間と定めており これを超えることは罰則の対象となります 但し 労働者の過半数加入組合または過半数代表者との間の労使協定でこれを超える労働時間を定めて所轄の労働基準監督署長に届け出れば例外的に時間外労働をさせることが許されます ( 36 協定 ) 36 協定は必ず文書化し 労働基準監督署長に届け出なければなりません 届け出が受理されないと 36 協定の効力は生じません 36 協定により延長できる限度については基準があり 通常は 1 ヵ月 45 時間 1 年間 360 時間等とされています しかし 事業所によってはそれでは足りないことがあるので 特別の事情がある場合は限度時間を超えて時間を延長することもできます ( 特別条項付 36 協定 ) 休憩 休日 年次有給休暇 6 1 日の労働時間が6 時間を超えた場合には少なくとも 45 分 8 時間を超えた場合には少なくとも1 時間以上の休憩を 労働時間の途中に与えていますか 7 少なくとも週 1 日もしくは4 週に4 日以上の休日を与えていますか 解説 労基法では 休日については週 1 日 もしくは 4 週を通じて 4 日以上と定めています 週休 2 日制をとる会社でも 労基法が義務付けた休日は 1 日だけです 休日については労働時間の長短に関わらず毎週 1 回付与しなければなりません アルバイトやパートタイマーであっても 週 1 日もしくは 4 週に 4 日以上の休日を与えなければなりません 8 アルバイトに 勤務日数に応じて年次有給休暇を付与していますか 解説 労基法第 39 条は 雇い入れから 6 か月間継続勤務し所定労働日の 8 割以上勤務した労働者に対して 毎年一定日数の有給休暇を与えなければならないとしています ( 初年度は最低 10 日間 以後継続勤務年数 1 年ごとに一定日数加算 ) 継続勤務年数 6 ヶ月 1 年 6 ヶ月 2 年 6 ヶ月 3 年 6 ヶ月 4 年 6 ヶ月 5 年 6 ヶ月 6 年 6 ヶ月以上付与日数 10 11 12 14 16 18 20 アルバイトやパートタイマーのように所定労働日数が少ない労働者に対しても 出勤日数に応じた比例付与が認められています 比例付与の対象となるのは週所定労働時間が 30 時間未満で 所定労働日数が週 4 日以下または年間 216 日以下の労働者です 具体的には以下の日数が付与されます 3
週所 継続勤務年数 定労 働日 数 年間所定労 働日数 6 ヶ月 1 年 6 ヶ月 2 年 6 ヶ月 3 年 6 ヶ月 4 年 6 ヶ月 5 年 6 ヶ月 6 年 6 ヶ月 4 日 169~216 日 7 8 9 10 12 13 15 3 日 121~168 日 5 6 6 8 9 10 11 2 日 73~120 日 3 4 4 5 6 6 7 1 日 48~72 日 1 2 2 2 3 3 3 使用者は年次有給休暇日について労働者に対して賃金を支払わなければなりません その金額は 1 平均賃金 (3 ヶ月間に支払われた賃金総額 3 ヶ月間の総暦日数 ) 2 通 常の賃金 3 健康保険法の標準報酬月額の 3 種類があります どの方法で賃金を支払う かは就業規則に定めておく必要があります (3の場合は労使協定必要) 賃金 9 賃金は 毎月 決まった支払日に その全額を支払っていますか 10 都道府県ごとに定められている最低賃金額以上の額を支払っていますか 11 規律違反やミスをしたことを理由に 就業規則に記載なく罰金等を課していませんか 解説 労働者が秩序に従って労務に従事しないと 事業の円滑な運営はできません そのため 使用者は 企業秩序に反する行為をする労働者に対して 就業規則に定めるところに従って懲戒処分を行うことができます しかし 懲戒処分は社内で課せられる一種の刑罰なので その根拠が就業規則に明記されていなければなりません 具体的には懲戒の対象となる事由 それに対する懲戒の種類 程度が定められていなければなりませんし その内容が労働者に周知されていなければなりません ですから 就業規則に定めのない罰金を課すことはできません 懲戒処分として減給処分を定めることはできますが 減給は 一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え 総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない とされています ( 労基法第 91 条 ) なお 労基法第 16 条は 使用者は 労働契約の不履行について違約金を定め または損害賠償額を予定する契約をしてはならない と定めています そのため 遅刻 1 回について罰金 5000 円 と言うようなルールを課すことはできません 割増賃金 12 週 40 時間 1 日 8 時間を超えた時間外労働については 通常の賃金の 25% 以上 休日労働については 通常の賃金の 35% 以上の割増賃金を支払っていますか 13 午後 10 時から午前 5 時までの深夜労働については 通常の 25% 以上の割増賃金を支払っていますか 4
解説 午後 10 時から午前 5 時までの深夜に労働させた場合に 通常の賃金に 25% 以上加算 ( 割増 ) した割増賃金を支払わねばなりません 午後 10 時までを 早番 午後 10 時以降を 遅番 として それぞれ別の時給で募集している店舗も少なくありませんが もし 午後 10 時まで勤務していたアルバイトが引き続き遅番の時間帯も勤務する場合は午後 10 時以降の賃金は それまでの時給を 25% 上回る金額でなければなりません 解雇 退職 14 解雇する場合 少なくとも 30 日前に予告するか 30 日以上の平均賃金 ( いわゆる解雇予告手当 ) を支払っていますか 労働基準関係法令に違反するおそれがある事項 労働時間 15 タイムカード等の客観的な記録から確認するなどにより 実際に働いた時間を適正に把握していますか 16 準備や片付けの時間を労働時間としていますか 解説 賃金支払いの対象となる労働とは 使用者に指揮命令下にある労働です ( 労基法第 32 条 労働契約法 6 条 ) ですから 労働時間とは 単にタイムカードを打刻した出勤時刻 退勤時刻の間を言うのではなく 労働者が使用者の指揮監督の下にある時間を意味します 逆に言えば タイムカードで打刻された出勤時間前や退勤時間後であっても 使用者から時間的 場所的拘束を受けていたり 実質的に義務付けられた行為の場合は 使用者の指揮監督下にあると言えるため労働時間に含まれます 勤務前の準備には様々なものがありますが 労働者は労働を提供できる状態にしなければならないので ユニフォームに着替える時間は労働時間ではありません 他方 勤務前後の用具の片づけや掃除は 本来 業務の一環としてなされるべきものなので それが毎日のルーティン作業となっている場合は労働時間に含まれます たまたま休憩室が散らかっているのに気付いたので片づけた程度ならば労働時間には当たりません 賃金 17 賃金を一方的に引き下げていませんか 解説 賃金などの労働条件は労使間の契約 ( 労働契約 雇用契約 ) によって定められます そのため 使用者が一方的に賃金を引き下げることは許されません 但し あらかじめ就業規則 ( 賃金規定 ) において業務変更に伴い賃金の変更が定められている場合や 合理的理由に基づいて就業規則が変更された場合は 賃金の減額も有効とされる場合があります その場合でも労働者に対する十分な説明が必要です 5
健康診断 18 1 年以内毎に1 回 定期に健康診断を実施していますか 解説 使用者は常時使用する労働者に対して雇い入れ時や毎年定期に健康診断を実施しなければなりません ( 労働安全衛生法第 66 条 ) アルバイトやパートタイマーも 期間の定めのない契約による者 週所定労働時間数が同じ業務につく正社員の 3/4 以上である者については健康診断を実施することが義務付けられています また 正社員の週所定労働時間の 1/2 以上 3/4 未満のアルバイトやパートタイマーについても健康診断の実施が望ましいとされています 深夜業等の業務に常時従事する場合 6ヶ月以内ごとに1 回 定期的に健康診断を実施する必要があります 学業とアルバイトの両立のために特に配慮が必要な事項 以下の事項は 学生の本分である学業とアルバイトの両立のために特に配慮が必要です 解雇 退職 19 アルバイトが退職を申し入れているにもかかわらず 人手不足等を理由に 継続して働くことを強要していませんか 解説 労働者はいつでも退職を申し入れることができ 期間の定めのない雇用契約においては 労働者の退職届後 2 週間が経過することで労働契約は終了します ( 民法 627 条 1 項 ) ですから 退職届が出されて 2 週間が経過すれば労働者との労働契約は終了します 確かに 年末年始の繁忙期などに学生アルバイトに急に辞められると店舗の運営に支障をきたします 使用者がアルバイトの退職を拒んだり 無理な条件を押しつけて退職を思いとどまらせることはできません 学生アルバイトが帰省やテストで辞めることを見越したうえで計画的に人材募集をすることが望まれます シフト 20 相手の同意を得ることなく 一方的にシフトの決定 変更を行っていませんか 解説 多くのアルバイトを使用する外食店舗では アルバイトの勤務日や勤務時間をシフト表によって定めることが一般的です 勤務日や勤務時間も重要な労働条件で 労使の同意によって決められるのが原則です 使用者が労働者の同意を得ることなく一方的にシフトを変更することはできません 学生アルバイトは日々の生活や学校の授業とバランスを取りながらシフトを調整しているので 使用者としてもその点に十分な配慮をお願いいたします 21 試験の準備期間や試験期間中になどに 学生の希望に反してシフトを入れていませんか 解説 試験の準備期間や試験期間中など 学生が学業に時間を割く必要がある際は 本人の意向を確認の上 できるだけシフト設定に当たり配慮することが必要です 6