Microsoft PowerPoint - 老後の年金格差(前半)HP用

Similar documents
Microsoft PowerPoint - 老後の年金格差(前半)HP用

第14章 国民年金 

-1-

8-1 雇用保険 雇用保険の適用基準 1 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること 31 日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き この要件に該当することとなります このため 例えば 次の場合には 雇用契約期間が31 日未満であっても 原則として 31 日以上の雇用が見込まれるもの

Microsoft Word - "ç´ıå¿œçfl¨ docx

平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

Microsoft Word -

年金・社会保険セミナー

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 15,250 円 ( 平成 26 年度 ) 付加保険料月額 400

第 2 節強制被保険者 1 第 1 号被保険者頻出 択 ( 法 7 条 1 項 1 号 ) 資格要件 日本国内に住所を有する20 歳以上 60 歳未満の者 ( 第 2 号 第 3 号被保険者に該当する者を除く ) 例 ) 自営業者 農漁業従事者 無業者など 適用除外 被用者年金各法に基づく老齢又は退

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 16,490 円 ( 平成 29 年度 ) 付加保険料月額 400

年金・社会保険セミナー

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

年金額の改定について 公的年金制度は平成 16 年の法改正により永久に年金財政を均衡させる従来の仕組みから おおむね ( 100 ) 年間で年金財政を均衡させる仕組みへと変わった この年金財政を均衡させる期間を 財政均衡期間 という これにより 政府は少なくとも ( 5 ) 年ごとに財政の検証をおこ

年金・社会保険セミナー

年金支給開始年齢図 特別支給の ( 給料比例部分 ) 昭和 29 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 特別支給の退職共済年金 昭和 25 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 退職共済年金 経過的職域加算額 ( 旧職域部分 ) 退職等年金給付 ( 年金払い退職給付 ) 平成 27 年 9 月までの組合

Microsoft Word - T2-06-1_紙上Live_老齢(1)_①支給要件(9分)_

年金・社会保険セミナー

(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

強制加入被保険者(法7) ケース1

第 7 章 年金 福祉 1 年金 日本の公的年金制度は, 予測できない将来へ備えるため, 社会全体で支える仕組みを基本としたものです 世代を超えて社会全体で支え合うことで給付を実現し, 生涯を通じた保障を実現するために必要です 働いている世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てるという方式で

Microsoft PowerPoint - 社会保障・第6回.ppt

52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

国民年金

ライフプランニングと資金計画 問題 1. ファイナンシャル プランナーの顧客に対する行為に関する次の記述のうち 職 業倫理や関連法規に照らし 最も適切なものはどれか 1. 税理士資格を有しないファイナンシャル プランナーが 住宅ローン相談セミナーを開催し その出席者に対して無償で確定申告書の作成代行

しくみ2 厚生年金は基礎年金に上乗せ 厚生年金保険が適用されている事業所に勤めるサラリーマン等は 国民年金と厚生年金保険の2つの年金制度に加入することになります 厚生年金保険から支給される年金は 加入期間とその間の平均収入に応じて計算される報酬比例の年金となっていて 次のように基礎年金に上乗せするか

2 厚年と国年の加入期間がある人 昭和 36 年 3 月以前 20 歳未満および 60 歳以後の厚年の被保険者期間 昭和 36 年 3 月以前の厚年期間のみの人 坑内員 船員 ( 第 3 種被保険者 ) の場合 昭和 61 年 3 月までの旧船員保険の

Microsoft Word - T2-06-2_紙上Live_老齢(2)_①年金額・マクロ(12分)_

Microsoft Word - T2-04-1_紙上Live_被保険者期間と届出_(13分)_

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 医療保険は社会保険を構成する1つです 医療保険制度の仕組みや給付について説明していきます 医療保険制度 医療保険制度は すべての国民に医療を提供することを目的とした制

高齢者福祉

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

ただし 対象期間の翌年度から起算して3 年度目以降に追納する場合は 保険料に加算額が上乗せされます 保険料の免除や猶予を受けず保険料の未納の期間があると 1 年金額が減額される 2 年期を受給できない3 障害基礎年金や遺族基礎年金を請求できない 場合がありますのでご注意ください 全額または一部免除

スライド 0

強制加入被保険者(法7) ケース1

介護保険制度 介護保険料に関する Q&A 御前崎市高齢者支援課 平成 30 年 12 月 vol.1

強制加入被保険者(法7) ケース1

再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

被用者年金一元化パンフ.indd

実技試験 ( 個人資産相談業務 ) 次の設例に基づいて 下記の各問 ( 問 1 ~ 問 3 ) に答えなさい 設例 Aさん (33 歳 ) および妻 Bさん (29 歳 ) は 民間企業に勤める会社員である 平成 29 年 3 月に第 1 子を出産予定の妻 Bさんは 産前産後休業および育児休業を取得

スライド 1

ブック 1.indb

<4D F736F F D208DA1944E348C8E95AA82A982E782CC944E8BE08A7A82C982C282A282C FA967B944E8BE08B408D5C816A2E646F6378>


表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

年金は 万が一のとき もしっかりサポートします! 一般的に 年金 と言いますと 老後の生活を支える 老齢年金 をイメージしますが それだけではありません! 年金には万が一のときに 障害厚生年金 や 遺族厚生年金 が支給される場合があります 障害厚生年金 病気やけがで障害の状態になったときは 厚生年金

153054_FP知識医介_-D-_[本文].indb

年金制度のポイント

平成25年4月から9月までの年金額は

<4D F736F F D AD97DF88C DC58F4994C52E646F63>

< 参考資料 目次 > 1. 平成 16 年年金制度改正における給付と負担の見直し 1 2. 財政再計算と実績の比較 ( 収支差引残 ) 3 3. 実質的な運用利回り ( 厚生年金 ) の財政再計算と実績の比較 4 4. 厚生年金被保険者数の推移 5 5. 厚生年金保険の適用状況の推移 6 6. 基

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

老齢基礎年金 老齢基礎年金を受けられる方 老齢基礎年金は 原則として受給資格期間が 25 年 (300 ヵ月 ) 以上ある方が 65 歳になったときから受けられます 受給資格を満たしているときは 本人の希望により 60 歳から 70 歳までの間で年金を受け始める年齢を変更することができます (17

<89C193FC82CC82A882B782B782DF816992E88C FAB978895D48FE3816A2E786477>

1

2.3.2 公的年金制度の財源と支出 1年間の年金給付費はいくらなのか 公的年金制度の財源には保険料のほかに 積立金の運用収入や税金などがある 1年間でどれだけの金額が年金制度に使われているのでしょうか 以下の図 に 公的年金制度の財源と給付費を示します 財源については 保険料による

Q1 社会保険とはどのような制度でしょうか 会社などで働く人たちが収入に応じて保険料を出し合い いざというときの生活の安定を図る目的でつくられた制度のことで 一般的に健康保険や厚生年金保険のことを 社会保険 といいます 健康保険法第 1 条では 労働者の業務外の事由による疾病 負傷若しくは死亡又は出

平成 31 年 3 月分 (4 月納付分 ) からの健康保険 厚生年金保険の保険料額表 健康保険料率: 平成 31 年 3 月分 ~ 適用 介護保険料率: 平成 31 年 3 月分 ~ 適用 厚生年金保険料率: 平成 29 年 9 月分 ~ 適用 子ども 子育て拠出金率: 平成 30 年 4 月分

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

平成 27 年 10 月から全国市町村職員共済組合連合会 ( 以下 市町村連合会 1 ) が年金の決定 支払いを行います ~ 各種届出等の手続き及び各種相談は 今までどおり共済組合で行います ~ 平成 24 年 8 月 22 日に公布された 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部

v

自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

2/5 ヘ ーシ Q1. 年金通算とは何ですか? A. これまで各企業や基金では 加入者の老後の安定の一助となるよう さまざまな年金制度をつくり運営してきました しかし 従来の終身雇用を前提とした制度では 現代のライフスタイルに対応することが難しくなってきています 転職など雇用の流動化に対応し これ

99321-FP知年金_-D-_[本文].indb

2909_0 概要

CL.J Q.\.eps

平成 30 年 1 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 6 千億円 (1.3%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

平成 30 年 2 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 7 千億円 (1.4%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

年の家族 2-1 世帯モデル設定本章では 3 つの社会変化をもとに世帯モデルを以下のように設定する 1 専業主婦世帯 ( 標準モデル世帯 ) 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加入した夫と 45 年間専業主婦の夫婦 2 生涯単身男性世帯 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加

1. はじめに 自ら変わります 社会保険庁を変えます 社会保険庁ホームページ : 社会保険庁改革リスタートプラン より やるき化 プロジェクト あたりまえ化プロジェクト 見える化 プロジェクト きれい化 プロジェクト 2007/4/14 Copyright

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 02 別添 パンフレット (3)

企業年金のポータビリティ制度 ホ ータヒ リティ制度を活用しない場合 定年後 : 企業年金なし A 社 :9 年 B 社 :9 年 C 社 :9 年 定年 ホ ータヒ リティ制度を活用する場合 ホ ータヒ リティ制度活用 ホ ータヒ リティ制度活用 定年後 :27 年分を通算した企業年金を受給 A

2. 事例 Q&A [1] 公的年金制度の仕組み Q. 私は昭和 37(1962) 生まれの男性で 現在 55 歳のサラリーマンです 何歳からどのような年 金が受け取れるのでしょうか A. 65 歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が それに加えて配偶者が 65 歳になるまで加給年金が 支給されます 確

平成 29 年 1 月度実施実技試験 ( 保険顧客資産相談業務 ) 73

ファイナンシャル プランニングと倫理 関 連法規 Copyright (c) Akira Sugiyama all rights reserved 2

<4D F736F F D2095E982E782B582C996F097A782C28FEE95F181458CE3945B90A FA967B944E8BE08B408D5C A2E646F6378>

被用者年金一元化法

Microsoft Word - 杉山 年金

スライド 1

171030_h1-4_A4

31 Vol.105 わかりいただけたと思います では 地方公務員の皆さんが老後に受け取る年金はどのようなものでしょうか 図2 をご覧ください 共済年金制度から 退職共済年金 国民年金制度から 老齢基礎年金 と 二つの年金がそれぞれ共済組合と日本年金機構から支給されます 退職共済年金は 共済年金を含

退職後の健康保険の任意継続ってなに?

点及び 認定された日以降の年間の見込みの収入額のことをいいます ( 給与所得等の収入がある場合 月額 108,333 円以下 雇用保険等の受給者の場合 日額 3,611 円以下であること ) また 被扶養者の年間収入には 雇用保険の失業等給付 公的年金 健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます

番号制度の実施に伴う社会保障関係システムの改修について 国 都道府県 市町村 市町村 医療保険者等 システム名 社会保険オンラインシステム 労災行政情報管理システム ハローワークシステム 障害者福祉システム 児童福祉システム 生活保護システム 国民年金システム 国民健康保険システム 後期高齢者医療シ

一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

社会保障 国民年金 問題 第 3 号被保険者とは 性別を問わず 第 2 号被保険者 ( 厚生年金保険の被保険者及び各共済組合等の組合員 加入者 ) の被扶養配偶者であって 20 歳以上 60 歳未満の者である 2 第 1 号被保険者の場合は 日本国内に住所を有する必要があるが 第 2 号

Taro-1-国民年金編2015  作成 

2906_0 概要

第 1 号被保険者 資格取得の届出の受理 種別変更の届出の受理 資格喪失の承認申請 ( 任意脱退 ) の受理 資格喪失届出の受理 資格喪失の申出 第 1 号被保険者 任意加入被保険者 付加保険料の納付の申出の受理 付加保険料の納付しないことの申出の受理 に申請 届出または申出をした場合 被保険者 世

< F31322D335F81798ED0984A8E6D817A944E8BE08D8E959E814593BE>

現在公的年金を受けている方は その年金証書 ( 請求者及び配偶者 請求者名義の預金通帳 戸籍謄本 ( 受給権発生年月日以降のもの ) 請求者の住民票コードが記載されているもの ( お持ちの場合のみ ) 障害基礎年金 受給要件 障害基礎年金は 次の要件を満たしている方の障害 ( 初診日から1 年 6か

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

年金改革の骨格に関する方向性と論点について

2004 年の制度改革案の審議中に国会議員の未納問題が話題になり 公的年金の実態は国民の誰もが注目するものになった そもそも公的年金 国民年金は日本の福祉政策の中で最も大きなもののひとつであり 国民皆保険というように国民すべてが加入の義務を負う 国民すべてが働ける間は保険料を納め 老後になると年金を

スライド 1

【作成中】2903_0 概要

Transcription:

老後の年金格差とその是正 社会福祉論 ( 都市と福祉 ) 第 11 回 ( 前半 ) presented by どんどこ森 (http://harlock.web.fc2.com)

本日の講義要旨 雇用形態による待遇格差は 現役労働者の期間だけでなく 老後の生活にも格差をもたらします この理由は 非正規雇用者の所得水準が低いことだけではなく そもそもわが国の公的年金制度が職種毎に分立して構築されているからです このために年金制度の一元化が叫ばれ 実際 徐々に進めれてきましたが 問題の本質は生活保護制度と基礎年金 ( 最低生活水準を保障することを目的とした年金 ) との整合性がうまく取れていないことにあるようです

年金給付の種類 表 6-4 に示したように公的年金制度は 主に三種類の目的の給付を行っています (p150 下から 5 行目 ) 表 6-4. 年金の給付原因別の種類 種類 説 明 老齢年金 加齢による稼得の喪失または減少に備えた年金保険であり 一定の年齢に達すると受給資格を得る 障害年金 病気やケガが原因で一定の障害状態になり 稼得が喪失または減少する場合に備えた年金保険である 世帯にあって年金保険の被保険者または受給者として 遺族年金 生計を維持する者が死亡し 残された遺族が生活に困窮 する場合に備えた保険給付である

老齢年金はなぜ必要か 人のライフサイクルを考えるとき大多数の人は学校教育終了後直ちに就職し 60 歳ないしは 65 歳で定年退職します (p151 7 行目 ) 平均寿命は男性が概ね 80 歳 女性が 86 歳です (p151 8 行目 ) 仮に 22 歳から働き始めて 65 歳で定年退職を迎えるとしても就労期間は 40 年以上にも及び その後に男性は 15 年 女性は 20 年の退職期間 ( いわゆる老後 ) が存在することになります

年金保険の運営原理 年金保険の運営原理は大きく分けて二つあります 積立方式と賦課方式です (p152 年金保険の運営原理 の下 1 行目 ) このうち公的年金制度は主に賦課方式を採用し 民間の年金保険の場合には原理的に積立方式しか採用できません 積立方式では 集められた年金保険料は株式市場や債券市場 場合によっては証券化された不動産投資などによって基金で運用し 配当金や利子収入など運用収益を得ながら回収します (p152 年金保険の運営原理 の下 7 行目 )

年金保険の運営原理 2 賦課方式の運営では 集められた年金保険料は基金で運用されずに その時点で退職期にある人々に年金給付してしまいます (p152 下から 7 行目 ) 稼得期にある労働者から見れば 自分たちが支払った年金保険料は前世代への所得移転として使われてしまい残りませんが 自分たちが退職期に入れば その時点で稼得期にある労働者から同様な所得移転を受けることができますので 結果的に積立方式の年金運営と同様の年金給付を受けることができる

年金保険の運営原理 3 賦課方式の運営を積立方式と比較すると 1 賦課方式の年金運営の方が 運用リスクが小さい 2 急な制度の変更 ( 例えば給付額の引き上げ ) にも対応しやすい 3 物価変動の影響を受けにくい 4 経済成長によって現役労働者の稼得水準が高まると その果実を年金給付額に反映させることも容易 (p153 1 行目 ) などの特徴があります

年金保険の運営原理 4 他方 賦課方式の欠点としては 1 他世代との所得移転 すなわち世代間扶養の原理であるために世代間の人口変動の影響を受けやすい 2 次世代の労働者が必ず年金制度に加入する必要があり 強制加入が可能な公的年金制度のみが採用できる (p153 6 行目 ) などが挙げられます

国民皆年金 わが国は昭和 36(1961) 年以来 国民全員が公的年金制度に加入する権利と義務をもつ国民皆年金体制と呼ばれる制度が構築されています (p153 下から 3 行目 ) 国民皆年金は 労働者の職種ごとに異なる年金制度を用意し それらを組み合わせることによって実現されました (p153 下から 2 行目 )

国民年金 国民年金は職業の有無や職種に関係なく日本に在住する 20 歳以上の者 ( 日本に長期間滞在する外国人を含む ) を対象とした年金保険です (p154 下から 4 行目 ) 被保険者期間は 20 歳から 60 歳までの 40 年間が強制適用期間で 60 歳から 65 歳 ( 平成 29 年 8 月からは資格期間が 10 年未満の者は 70 歳 ) までが任意加入期間です (p154 下から 2 行目 )

国民年金 2 国民年金の被保険者には 第 1 号被保険者 第 2 号被保険者 および第 3 号被保険者の三種類の区分があります (p155 1 行目 ) 第 1 号被保険者とは 第 2 号被保険者でも第 3 号被保険者でもない適用者がすべて含まれます 第 2 号被保険者とは 厚生年金保険や共済年金などに加入する被用者です 故に彼らは被用者年金と国民年金の 2 つの制度に加入することになります 第 3 号被保険者は 第 2 号被保険者の被扶養配偶者が対象になります これはいわゆるサラリーマンの専業主婦 ( 夫 ) ですが 年間収入が 130 万円以上あり 健康保険の扶養となれない者は第 1 号被保険者となります

国民年金 3 国民年金の保険料の納付形態は被保険者区分ごとに異なります (p155 10 行目 ) 第 1 号被保険者は定額保険料を徴収されます 平成 24(2012) 年度は一人月額 14,980 円でした (p155 10 行目 ) 第 2 号被保険者と第 3 号被保険者の保険料は第 2 号被保険が加入する被用者年金制度からまとめて国民年金制度に支払われますので 別途保険料を納付する必要はありません (p155 12 行目 )

国民年金 4 国民年金の給付には基礎年金導入以前から続くものを含めて多くの種類がありますが ここでは主要な年金給付だけを説明します (p155 下から 10 行目 ) 表 6-5 には老齢基礎年金 障害基礎年金 遺族基礎年金の三つの給付を掲載しています (p155 下から 9 行目 )

国民年金 5 老齢基礎年金は 適用対象者が第 1 号被保険者 第 2 号被保険者 あるいは第 3 号被保険者のいずれかの区分で保険料を 25 年間 ( 平成 29 年 8 月からは 10 年間 ) 以上拠出すると受給資格が発生し 原則 65 歳から支給されます (p155 下から 7 行目 ) ただし 被保険者が失業などのために保険料の免除期間があれば その間はカラ期間として受給資格期間に数えられます

国民年金 6 老齢基礎年金の給付額は 表 6-5 に示したように 40 年間の保険料納付を満額とした定額単価額が支給されます (p155 下から 2 行目 ) 保険料納付済期間が 40 年間を下回れば減額され カラ期間も減額対象となります (p155 下から 1 行目 ) 老齢基礎年金は支給開始年齢を 60 歳から 70 歳の範囲内で繰り上げたり 繰り下げたりすることが可能です (p156 2 行目 )

国民年金 7 障害基礎年金は 障害認定された翌月からそれまでの加入期間の長さと関係なく 被保険者に老齢基礎年金満額分の 1.25 倍 (1 級 ) または 1 倍 (2 級 ) を支給します (p157 6 行目 ) 国民年金の遺族基礎年金は 被保険者や老齢基礎年金の受給権者等が死亡したとき その者によって生計を維持されていた 1) 子 (18 歳未満 障害のある子の場合には 20 歳未満 ) のある妻 および 2) 子どもを対象に支給されます (p157 厚生年金保険 の上 5 行目 )

厚生年金保険 厚生年金保険は民間企業の被用者を対象とした報酬比例型の年金保険です (p157 厚生年金保険 の下 1 行目 ) 厚生年金保険の適用は事業所に対してなされます 故に 適用事業所に常時使用される 70 歳未満の者は国籍や性別 年金の受給の有無にかかわらず 一部の者を除いてすべて厚生年金保険の被保険者となります (p157 下から 7 行目 )

厚生年金保険 2 適用事業所の従業員で被保険者とならないのは (p158 4 行目 ) 1 日の所定労働時間数や 1 ヶ月の勤務日数が正規社員 正規職員の四分の三に満たない者 日雇労働者 (1 ヶ月以内 ) や季節的労働者 (4 ヶ月以内 ) 臨時的な事業 (6 ヶ月以内 ) 部門に雇用される労働者などがあります

厚生年金保険 3 厚生年金保険の保険料は 標準報酬額と呼ばれる労働者の所得額に一定割合を乗じた額を労使折半負担で拠出します (p158 8 行目 ) 標準報酬額には標準報酬月額と標準賞与額とがあり 前者は年 4 回以上支給される基本給や残業手当など月々の給料額を指し 後者は年 3 回以内しか支給されない賞与額を指し いわゆるボーナスや見舞金 報奨金などがこれに当たります (p158 9 行目 )

厚生年金保険 4 結果的に 厚生年金保険の保険料は 標準報酬月額と標準賞与額の両方から拠出されるので 年俸に対して課金される総報酬制を敷いていることになります (p158 14 行目 ) なお平成 24(2012) 年度における保険料率は千分の 167.66 でした (p158 下から 11 行目 )

厚生年金保険 5 厚生年金保険の給付も非常に多くの種類があります (p158 下から 10 行目 ) 表 6-6 には 老齢厚生年金 障害厚生年金 および遺族基礎年金の三つが示してあります (p156 下から 6 行目 ) 老齢厚生年金は 厚生年金保険の被保険者期間が 1 ヶ月以上ある者で 老齢基礎年金の受給資格のある者が 65 歳になったときに 老齢基礎年金に上乗せして給付されます (p156 下から 5 行目 )

厚生年金保険 6 給付額は表 6-6 にある複数ある算式にもとづいて計算されますが 大雑把に言って被保険者期間中の平均標準報酬額と被保険者期間の長さに比例して決定されます (p158 下から 3 行目 ) ここで標準報酬額とは標準報酬月額に標準賞与額の十二分の一を加えた額で 平均標準報酬額とはその生涯を通じた平均額で 過去の標準報酬額の記録を所得スライドした上で算定されます

厚生年金保険 7 障害厚生年金は 厚生年金保険の被保険者期間中に障害の原因となる傷病を発症し 障害認定された場合にその翌月から支給されます (p160 10 行目 ) 遺族厚生年金は 被保険者や老齢厚生年金 障害厚生年金の受給権者等が死亡したとき その者によって生計を維持されていた遺族に支給されます (p160 下から 9 行目 )