2. 企業会計の資本金 と 学校法人会計の基本金 それぞれの会計の目的の違い 1) 事業を始めるためには 営利企業であれ学校であれ 元手 ( 創設及び当面の運営に係る資金 ) が必要です 企業はその元手を準備するために たとえば株式会社であるならば 株式という形で多くの人々から出資金を集め 出資者は

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立及び運営のための資産を取得するのです 2) 私立学校を創立するためには 校地 校舎 機器備品 運営資金が必要です これらの元手 ( 財産 資金 ) は 個人または多数人による財産の寄付により準備されます この寄附された財産の取得価額が基本金となります それゆえ 第 1 号基本金は校地 校舎 機器備

財務の概要 (2012 年度決算の状況 ) 1. 資金収支計算書の概要 資金収支計算書は 当該会計年度の教育研究活動に対応するすべての資金の収入 支出の内容を明らかにし かつ 当該会計年度における支払資金の収入 支出の顛末を明らかにするものです 資金収支計算書 2012 年 4 月 1 日 ~201

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資金収支計算書 平成 30 年度の収支状況を資金収支計算書の流れでみると 収入額は平成 31 年度新入生の入学時納付金の前受金等を含め 195 億 5,975 万 4 千円となり 前年度より繰越された 40 億 5,576 万 3 千円を加えると 収入合計は 236 億 1,551 万 7 千円とな

3 貸借対照表 当該年度末時点での資産 負債 基本金の状況を表し 財政状態を明らかにするものです 資金収支計算書と事業活動収支計算書は単年度の収支状況を表すもので 貸借対照表は今までの財政活動における積み重ねの結果を表すものです 貸借対照表は学校法人会計基準第 4 章に掲げられており 基本的には企業

資金収支計算書 : 当該会計年度の学校法人全体の諸活動の収入及び支出の内容と 支払資金 ( 現金及びいつでも引き出すことができる預貯金 ) の収入及び支出のてん末を明らかにしたものです 本法人の平成 29 年度の資金収入総額 762,413 千円に前年度繰越支払資金 590,765 千円を加えた資金

『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

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学校法人明治大学 理事会御中 独立監査人の監査報告書 市東康男公認会計士事務所 平成 29 年 5 月 30 日 公認会計士市東康男 太田周二公認会計士事務所 公認会計士太田周二 私たちは 私立学校振興助成法第 14 条第 3 項の規定に基づく監査報告を行うため 平成 27 年 3 月 30 日付け

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

学校法人明治大学 理事会御中 独立監査人の監査報告書 太田周二公認会計士事務所 平成 30 年 5 月 31 日 公認会計士太田周二 平公認会計士事務所 公認会計士平善昭 私たちは 私立学校振興助成法第 14 条第 3 項の規定に基づく監査報告を行うため 平成 27 年 3 月 30 日付け文部科学

財産目録の概要 資産の部では 基本財産が前年度末に比べて 8 億 6,711 万 7,226 円減の 208 億 9,949 万 9,939 円となり 運用財産が前年度末に比べて 9 億 8,029 万 2,610 円増の 211 億 2,209 万 88 円となりました 資産の部合計は 420 億

学校法人加計学園平成 28 年度財務の概要 貸借対照表 ( 表 1) 資産の部 科 目 平成 29 年 3 月 31 日 ( 単位 : 円 ) 本年度末前年度末増減 固 定 資 産 有 形 固 定 資 産 土 地 建 物 その他の有形固定資産 特 定 資 産 そ の 他 の 固 定 資 産 流動資産

学校法人明星学園浦和学院高等学校 さいたま市緑区代山 /Fax 平成 30 年 6 月 30 日 平成 29 年度財務状況の公開について 本学園では一年間の教育活動を通じた財務状況について生徒 保護者の皆様をはじめ関係者の方々

Microsoft Word - 学校法人会計の仕訳.docx

財産目録の概要 資産の部では 九州保健福祉大学生命医科学部新設により基本財産が前年度末に比べて 4 億 7,101 万 3,339 円増の 233 億 360 万 6,821 円となり 運用財産が前年度末に比べて 6 億 716 万 5,719 円増の 231 億 5,143 万 7,985 円とな

2

2018( 平成 30) 年度 12 月補正予算の概要 ページ Ⅰ.2018( 平成 30) 年度 12 月補正予算の内容 1 Ⅱ.2018( 平成 30) 年度 12 月補正予算書の概要 3

平成30年度財務情報

学校法人会計基準の改正について①(省令編)2

平成 30 年度予算について 平成 30 年度予算は, 平成 30 年 3 月 16 日の理事会で承認されました 平成 30 年度 (H ~ H ) 予算の資金収支予算の概要, 事業活動収支予算の概要は以下のとおりです 1 資金収支予算の概要資金収支予算は, 当該会計年度の教

Microsoft Word - 13kessan.doc

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

収入に関しては 学生生徒等納付金収入が予算比 5,311 万円減 手数料収入が予算比 2,765 万円増 寄付金収入が予算比 6,926 万円増 補助金収入が予算比 1,511 万円減 資産運用収入が予算比 3 万円の増 雑収入が予算比 3,168 万円増となりました 事業収入が予算比 1 億 1,

平成14年度予算の概要

科目当年度前年度増減 [ 負債の部 ] 流動負債未払金 3,44,15,654 3,486,316,11-46,3,357 給付金未払金 3,137,757,265 3,192,611,196-54,853,931 年金未払金 287,13, ,91,778 7,228,646 その他未

Microsoft Word - 公益法人会計の仕訳


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2019 年度予算の概要 学校法人 明治大学

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平成13年度決算について

財務比率推移 ( 過去 5 年間 ) ( 単位 :%) ( 単位 :%) 比率算式平成 26 年度比率算式平成 27 年度平成 28 年度平成 29 年度平成 30 年度 1 帰 属 収 支 差 額 比 率 帰属収入 - 消費支出 59.2 帰属収入 54.4 事業活動収支差額比率 基本金組入前当年

決算書目次 1 収支計算書 (1) 収支計算書総括表 1 (2) 一般会計収支計算書 2 (3) 基金特別会計収支計算書 4 2 正味財産増減計算書 (1) 正味財産増減計算書総括表 6 (2) 一般会計正味財産増減計算書 7 (3) 基金特別会計正味財産増減計算書 8 3 賃借対照表 (1) 賃借

綿貫財団会計

収入に関しては 寄付金収入が予算比 1,485 万円増 雑収入が予算比 1,13 万円増となりました 補助金収入が予算比 4,557 万円減 事業収入が予算比 4,949 万円減となりました 収入の計は予算比 1 億 9,857 万円減の 93 億 5,711 万円となりました また 支出に関しては

計算書類等

平成30年度収支予算


つばめ保育園サービス区分貸借対照表 平成 27 年 3 月 31 日現在 資 産 の 部 負 債 の 部 当年前年当年前年増減度末度末度末度末 流動資産 35,328,927 流動負債 8,366,092 現金預金 31,069,025 事業未払金 2,777,912 現 金 0 その他の未払金 6

 資 料 2 

法人単位貸借対照表 平成 29 年 3 月 31 日現在 第三号第一様式 ( 第二十七条第四項関係 ) 法人名 : 社会福祉法人水巻みなみ保育所 資産の部当年度末前年度末 増減 負債の部当年度末前年度末 流動資産 23,113,482 23,430, ,370 流動負債 5,252,27

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

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Ⅰ 平成 24 年度高鍋町財務書類の公表について 平成 18 年 6 月に成立した 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律 を契機に 地方の資産 債務改革の一環として 新地方公会計制度の整備 が位置づけられました これにより 新地方公会計制度研究会報告書 で示された 基準モデル

< BD90AC E93788DE096B18F94955C8B7982D18EFB8E788C768E5A8F912E786C73>

学校法人東京電機大学 Annual Report 2016 財務の概要 ( 平成 27 年度 ) 千円単位および百万円単位等で表示する際に単位未満を四捨五入しているため 端数調整のため差異が生じる場合があります また 予算 決算において すべて 0 円の科目は表示を省略しています 学校法人会計基準の

7. 貸借対照表平成 29 年 3 月 31 日 資産の部 科目本年度末前年度末増減 ( 単位円 ) 固定資産 193,510,269, ,879,922,182 1,630,347,244 有形固定資産 149,448,403, ,593,555,535 3,145,151

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

事業活動計算書 第 2 号の 様式 サービス活動増減の部益費用収サービス活動外増減の部益費用至平成 26 年月 3 3 日収( 自 ) 平成 25 年 月 6 日 7 )( 勘 定 科 目 当年度決算 (A) 前年度決算 (B) 増減 (A)-(B ) 介護保険事業収益 95,62, ,

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貸借対照表 平成 31 年 3 月 31 日 ( 単位 円 ) 資産の部 科目 本年度末 前年度末 増 減 固定資産 ( 20,743,777,148 ) ( 20,495,357,106 ) ( 248,420,042 ) 有形固定資産 < 11,495,234,530 > < 11,115,77

第4期 決算報告書

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

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法人単位事業活動計算書 当年度決算 (A) 前年度決算 (B) 増減 (A)-(B) サービス活動増減の部収益会費収益 4,402,000 4,559, ,000 寄附金収益 764, ,846 37,643 経常経費補助金収益 25,283,623 25,257,870 2

第6期決算公告

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科目印収納科目一覧

WWFジャパン 2007年度(平成19年度 第37期)決算報告書

H29zaimu.pdf

highlight.xls

h18財務諸表NCTD-FS_ xls

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第4期電子公告(東京)

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 当年度 前年度 増減 Ⅰ 資産の部 1. 流動資産現金 普通預金 34,426,784 48,558,060 14,131,276 定期預金 1,500,000 1,500,000 0 未収金 76,321,3

貸借対照表 ( 平成 20 年 3 月 31 日 ) ( 厚生年金勘定 ) ( 単位 : 円 ) 科 目 金 額 資産の部 Ⅰ 流動資産 現金及び預金 11,313,520,485 有価証券 13,390,000,000 販売用不動産 93,938,423,482 未収金 389,813,000 未

3. 基本財産及び特定資産の財源等の内訳 基本財産及び特定資産の財源等の内訳は 次のとおりです 科目当期末残高 ( うち指定正味財産からの充当額 ) ( うち一般正味財産からの充当額 ) ( うち負債に対応する額 ) 基本財産投資有価証券 800,000,000 (662,334,000) (137

第3 財務の概要

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

名 称 株式会社文教サービス 事業内容 文具 書籍 事務機器の販売 不動産賃貸借仲介 旅行業 保険代理店 清掃業他 資本金 15,000,000 円 30,000 株 学校法人の出資状況 15,000,000 円 30,000 株 総出資金額に占める割合 100% 出資の状況 昭和 56 年 12

財務諸表に対する注記 1. 継続事業の前提に関する注記 継続事業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況はない 2. 重要な会計方針 (1) 有価証券の評価基準及び評価方法 満期保有目的の債券 償却原価法 ( 定額法 ) によっている なお 取得差額が少額であり重要性が乏しい銘柄については 償却原価

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

①別紙様式第13号 貸借対照表

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4 地方公営企業会計基準の見直しの影響 ( 概要 ) 地方公営企業会計基準の見直しのため 平成 23 年度に地方公営企業法施行令等を改正し その改正内容が平成 26 年度予算 決算から全面的に適用となっている (1) 見直しの趣旨 昭和 41 年以来大きな改正がなされていない地方公営企業会計制度と国

資金収支計算書 平成 29 年 4 月 1 日 から 平成 30 年 3 月 31 日 まで ( 単位 円 ) 収入の部 科 目 予 算 決 算 差 異 学生生徒等納付金収入 ( 2,709,614,000 ) ( 2,709,613,825 ) ( 175 ) 授業料収入 1,861,579,00

Microsoft Word 決算短信修正( ) - 反映.doc

日本基準基礎講座 資本会計

平成16年度

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Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度


平成 28 年度貸借対照表 平成 29 年 3 月 31 日現在 公益財団法人神奈川県下水道公社

ほくほくフィナンシャルグループ (8377) 2019 年 3 月期 4. 補足情報 株式会社北陸銀行の個別業績の概要 2019 年 5 月 10 日 代表者 ( 役職名 ) 取締役頭取 ( 氏名 ) 庵栄伸 問合せ先責任者 ( 役職名 ) 執行役員総合企画部長 ( 氏名 ) 小林正彦 TEL (0

Taro-class3(for.st).jtd

計算書類等

Microsoft Word - 訂正短信提出2303.docx

科目 2016 年度活動計算書 2016 年 4 月 1 日から 2017 年 3 月 31 日まで 特定非営利活動に係る事業 特定非営利活動法人 POSSE ( 単位 : 円 ) その他の事業合計 Ⅰ 経常収益 1. 受取会費正会員受取会費 1,052,000 1,052,000 賛助会員受取会費

株 主 各 位                          平成19年6月1日

目   次

財務諸表に対する注記 1. 継続事業の前提に関する注記 継続事業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況はない 2. 重要な会計方針 (1) 有価証券の評価基準及び評価方法 満期保有目的の債券 償却原価法 ( 定額法 ) によっている なお 取得差額が少額であり重要性が乏しい銘柄については 償却原価

目次財務諸表 1. 貸借対照表 貸借対照表内訳表

Transcription:

学校法人会計の特徴と企業会計との違い 1. 概要 1) 学校法人とは 私立学校法に基づき文部科学省をはじめとする所轄庁の認可を受けて設立される法人です 学校教育法で定める学校 ( 幼稚園 小学校 中学校 高等学校 中等教育学校 特別支援学校 大学及び高等専門学校 ) は 同法第 2 条により国 地方公共団体 学校法人のみが設置できることが原則になっています それゆえ 学校法人は公教育の一翼を担っていることから高い公共性が求められるとともに それぞれの私立学校の特性 ( 建学の精神 ) に基づきその自主性を重んじた教育活動等を行っていく責務が課されているのです ちなみに は が設置している大学です 本法人の名称は創立者渡辺辰五郎先生に由来します 2) 学校法人は 学校法人会計基準に基づき会計処理され 学校法人が行う公共的な教育等を支える財政 経理を明らかにするとともに 財務諸表等を作成し 財務情報の公開が義務付けられています 学校法人会計に基づく財務諸表 ( 計算書類 ) は 国や地方公共団体から補助金を受けるための条件であり提出が義務付けられています 3) 学校法人会計 企業会計とも 一般原則としての1 真実性の原則 2 複式簿記の原則 3 明瞭生の原則 4 継続性の原則に基づき 会計処理を行い計算書類を作成している点は同じです 4) また どちらの会計も上記の原則に基づき 適正な財務会計情報を利害関係者に提供する点でも同じであり そのために公認会計士の法定監査が義務付けられています 公認会計士による監査は 企業は会社法 金融商品取引法 学校法人は私立学校振興助成法に基づき行われるものである 5) 学校法人会計と企業会計の大きな違いは その収支計算の目的にあるといえます 企業会計は 一会計期間の収益と費用から当期利益を算定し経営成績を明らかにすることがその目的です 学校法人会計は 一会計期間の事業活動収入と事業活動支出を算定し 基本金組入前当年度収支差額を算定し さらにそこから基本金組入額を控除し当年度収支差額を求め その均衡状態を明らかにすることが目的です また この目的の違いは 企業会計の資本金 と 学校法人会計の基本金 の制度 趣旨によく表れているといえます 次にこの資本金と基本金の違いについて説明します 1 / 6

2. 企業会計の資本金 と 学校法人会計の基本金 それぞれの会計の目的の違い 1) 事業を始めるためには 営利企業であれ学校であれ 元手 ( 創設及び当面の運営に係る資金 ) が必要です 企業はその元手を準備するために たとえば株式会社であるならば 株式という形で多くの人々から出資金を集め 出資者はその事業の経営成績により配当金を受ける権利を得ます その集まった出資金が 貸借対照表の資本金となり 事業創立及び運営のための資産を取得することができるのです 2) 私立学校を創立するためには 校地 校舎 機器備品 運営資金が必要です これらの元手 ( 財産 資金 ) は 個人または多数人による財産の寄付により準備されます この寄附された財産の取得価額が基本金となります この基本金は 第 1 号から第 4 号基本金まで 4 つに分類され 貸借対照表に表示されます 第 1 号基本金は 校地 校舎 機器備品等の固定資産の取得価額の合計です 第 2 号基本金は 中長期事業計画を実現するための資金積立を前もって基本金とするものであり たとえば新たに学校等を設置するためや現設置学校等の規模拡大のために積み立てる金銭等資産です 第 3 号基本金は 学生へ給付する奨学金の運用原資 ( 基金 ) であり 継続的に保持し運用していく金銭等資産です 第 4 号基本金は 学校を運営していくための資金である恒常的支払資金相当額 ( 年間支払総額の 1/12 程度 ) です なお第 2 号基本金及び第 3 号基本金は 学校法人の中長期的な事業計画に基づいた基本金組入れ計画表に基づき 貸借対照表の基本金に組入れることが厳格に定められています 3) 以上のように 企業会計は経営成績を明らかにし出資者への利益配当を確定することが主な目的であり 学校会計は設置学校を安定して永続的に運営していく財産を保持するために基本金組入後の収支均衡を明らかにし健全な財政基盤を保持することを主な目的としている点に大きな違いがあると考えます 3. 各種計算書類 1) 学校法人会計基準に基づく決算の計算書類は 資金収支計算書 事業活動収支計算書 貸借対照表からなります その他内訳表等の附属表が添付されます 企業会計においては 損益計算書 貸借対照表 キャッシュフロー計算書が必須の計算書類となっています 2) 資金収支計算書 ( 学校法人会計 ) とキャッシュフロー計算書 ( 企業会計 ) 学校法人会計の資金収支計算書 企業会計のキャッシュフロー計算書のどちらの計算 2 / 6

書も 発生主義で会計処理される学校法人会計の事業活動収支計算書及び企業会計の損益計算書を補完し 事業活動収支計算書及び損益計算書では表すことのできない一会計期間の実際の資金 ( 現金 預金 ) の有り高を示します 企業会計のキャッシュフロー計算書は 営業活動 投資活動 財務活動ごとに資金の有り様 有り高を示します 資金収支計算書は 学校におけるすべての収入と支出活動の資金のてんまつ 有り様 有り高を示しています また資金収支計算書の付属表である活動区分資金収支計算書では 学校法人の活動を教育活動 施設整備等活動 その他の活動に区分し その資金の流れを表示しています これらの計算書類は 資金が何によって生み出され どのように使われているかを示し 発生主義で会計処理される事業活動収支計算書及び損益計算書では把握しがたい事業運営における資金ショート ( 不足 ) を防ぐために有用なものです 発生主義とは 現金の収入 支出 ( 受け渡しの ) の時点ではなく 収益と費用の対象となる事実が起きた時点で計上を行う会計原則のこと 活動区分資金収支計算書は 学校法人会計基準の改正により 平成 27 年度決算から導入されたものである 3) 事業活動収支計算書 ( 学校法人会計 ) と損益計算書 ( 企業会計 ) 以下に両計算書の基本的な計算構造により その特徴 趣旨 目的を見ていきます 1 損益計算書 ( 企業会計 ) の基本的計算構造は以下のとおりです 当期の収益 - 当期の費用 = 当期純利益 2 事業活動収支計算書 ( 学校法人会計 ) の基本的計算構造は以下のとおりです 事業活動収入 - 事業活動支出 = 基本金組入前当年度収支差額基本金組入前当年度収支差額 - 基本金組入額 = 当年度収支差額 事業活動収入とは 一会計期間における学生納付金等 負債にならない収入の総額である 事業活動支出とは 当該会計期間の費用の総額である 基本金組入額とは 当該会計期間に取得した固定資産 ( 建物 設備等 - 学校が保持すべき資産 ) を主とし 取得当初から取得財源を確保しなければならないものの総額である なお事業活動収支計算書は これまで消費収支計算書と呼ばれていたものであるが 学校法人会計基準の改正により 平成 27 年度決算から導入され 上記の計算構造となり さらに経常的な収支である教育活動収支及び教育外活動収支と臨時的な収支である特別収支に区分されている 教育活動収支差額と教育活動外収支差額を合計したものが経常収支差額となる 経常収支差額と特別収支差額を合計したものが基本金組入前当年度収支差額である 上記の計算構造からもわかるように 学校が保持しなければならない資産等に係る 支出額である基本金組入額を 事業活動収支差額 ( 基本金組入前当年度収支差額 ) か ら控除し その収支均衡を図るところに 学校法人会計の特徴があります これは学 3 / 6

校を運営するために必須の財産を安定かつ永続して保持していくための仕組みである と考えます 4) 貸借対照表学校法人会計 企業会計ともに同じ名称である貸借対照表は 計算書構造としてはほぼ同じ構造であるといえます 下記に示す等式の左辺である 資産 は 資金の運用状態を表し 右辺である 負債 + 資本金又は基本金 は資金の調達源泉を表しています 企業会計では 資産 = 負債 + 資本金という等式が成り立ちます 学校法人会計では 資産 = 負債 + 基本金という等式が成り立ちます 以上の等式からも分かることですが 自己資金の部分 ( 資本金又は基本金 ) の名称が異なっているように資本金と基本金では その制度 趣旨 目的も大きく異なっています その違いの特徴は 上記 2. で述べたとおりです 4. 各勘定科目の説明 1) 資金収支計算書の勘定科目 A) 学生生徒等納付金収入 : 授業料 入学金 施設設備維持充実費等 学生 生徒から納付される収入 B) 手数料収入 : 入学検定料 成績証明書等各種証明書の発行手数料等として受け取る収入 C) 寄付金収入 : 個人 法人からの寄付金の受け入れに係る収入 用途指定のある特別寄付金と用途が指定されていない一般寄付金がある D) 補助金収入 : 国や地方公共団体から交付される補助金 E) 資産売却収入 : 学校の資産 ( 土地 建物 有価証券等 ) を売却して得る収入 F) 付随事業 収益事業収入 : 学校の附属事業 ( 保育所等 ) 補助活動( 食堂 学寮等 ) 企業等からの受託事業で得られる収入のほか収益事業に係る収入 G) 受取利息 配当金収入 : 預金等の利息 国債 社債等有価証券の利息 教室等の施設の貸し出しによる収入等学園資産の運用に係る収入 H) 雑収入 : 主に退職金財団及び東京都私学財団からの交付金収入 その他学校法人に帰属する収入 I) 借入金等収入 : 銀行等からの借り入れ J) 前受金収入 : 入学手続き時に受け取る翌年度入学の学生 生徒の入学金等 4 / 6

K) その他の収入 : 前期末の未収入金に係る収入等 上記の各収入以外の収入 L) 資金収入調整勘定 : 期末未収入金 前期末前受金が該当し当該年度には現金の受け取りがないものを控除するための勘定 M) 前年度繰越支払資金 : 前年度から繰り越された支払資金総額 N) 人件費支出 : 教職員に支給する本俸 期末手当 役員に支払う報酬 教職員の退職金等 O) 教育研究経費支出 : 教育研究のために支出する経費 P) 管理経費支出 : 理事会に係る経費 学生 生徒等の募集経費等 教育研究経費以外の経費 Q) 借入金等利息支出 : 借入金に係る利息 R) 借入金等返済支出 : 借入金元本の当年度返済分 S) 施設関係支出 : 建物 構築物等の取得のための支出 T) 設備関係支出 : 教育研究機器備品 図書等の取得のための支出 U) 資産運用支出 : 有価証券の購入や特定資産 ( 預金 ) 積み立てのため支出 V) その他の支出 : 前期末未払金支払い支出 前払い金支払い支出等 上記以外の支出 W) 資金支出調整勘定 : 期末未払い金 前期末前払い金が該当し 当該年度には現金の支出がないものを控除するための勘定 X) 次年度繰越支払資金 : 次年度へ繰り越される支払資金総額 2) 事業活動収支計算書の勘定科目 A) 学生生徒等納付金 : 資金収支計算書と同じ B) 手数料 : 資金収支計算書と同じ C) 寄付金 : 資金収支計算書の寄付金収入から施設設備関寄付金を除き 施設設備以外の現物寄付 ( 消耗品 ) を加えた収入 D) 経常費等補助金 : 資金収支計算書の補助金収入から同じ施設設備関連補助金を除いた収入 E) 付随事業収入 : 学校の附属事業 ( 保育所等 ) 補助活動( 食堂 学寮等 ) 企業等からの受託事業で得られる収入 F) 雑収入 : 資金収支計算書の同収入に現金収入のない図書値引き額の調整等に係る収入を加えたもの G) 受取利息 配当金 : 資金収支計算書と同じ H) 資産売却差額 : 資産売却額が帳簿価額を超えた差額 I) その他の特別収入 : 臨時的収入である施設設備関連の補助金 寄付金 現物寄付金 J) 人件費 : 資金収支計算書と同じだが 退職金は前年度まで積み立てている退職給与引当金を控除した額 そのほか将来的な準備である現金支出のない退職給与引当金繰入額を加えたもの K) 教育研究経費 : 資金収支計算書と同じ そのほか現金の支払いのない減価償却額 5 / 6

L) 管理経費 : 資金収支計算書と同じ そのほか現金の支払いのない減価償却額 M) 徴収不能額等 : 徴収不能の債権に係る額及び徴収不能の虞のある債権に関するその見込額 N) 借入金等利息 : 資金収支計算書と同じ O) 資産処分差額 : 資産の帳簿残高が当該資産の売却収入金額を超える場合の差額 資産処分時の帳簿残高 ( 除却損 ) P) その他の特別支出 : 臨時的な支出である災害損失や過年度修正額 3) 貸借対照表の勘定科目 A) 固定資産 : 貸借対照表日後 1 年を超えて使用される資産をいい 土地 建物などの有形固定資産と有価証券や特定資産 ( 特定目的の積立金 ) 等のその他の固定資産からなる B) 流動資産 : 貸借対照表日後 1 年以内に使用される現金 預金等の資産 C) 固定負債 : その支払期限が貸借対照表日後 1 年を超えて到来する長期借入金や退職給与引当金等の負債 D) 流動負債 : その支払期限が貸借対照表日後 1 年以内に到来する短期借入金等の負債 E) 第 1 号基本金 : 学校法人が設立当初に取得した固定資産で教育の用に供される価額又は新たな学校の設置若しくは既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために取得した固定資産の価額 F) 第 2 号基本金 : 学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産の額 G) 第 3 号基本金 : 基金として継続的に保持し かつ 運用する金銭その他の資産の額 H) 第 4 号基本金 : 学校法人の運営のため恒常的に保持すべき資金 I) 繰越収支差額 : 過年度からの事業活動収支計算の結果 累積された当年度収支差額の収入又は支出の超過額 6 / 6