マンション向け太陽光発電の基礎知識
日本の太陽電池出荷量 ( 国内 ) 2005 年太陽光発電の設置補助金が終了したことで 出荷量が減少 2009 年度より補助金が復活したことで 出荷量が急増 2010 年度も前年を大幅に上回る勢いで出荷数量が延びている また 出荷量のうち住宅用途が大半を占めていることがわかる しかしながら 住宅用の大半は戸建住宅において設置されており 共同住宅での設置は微量と思われる 補助金復活 補助金終了
太陽光の世界で使用する単位 建築の世界では m m2 m3の単位が頻繁に使用されるが 太陽光の世界ではW( ワット ) が使用される これは 同じ面積の太陽光パネルであっても 使用されている素材はさまざまで 発生する発電電気量が異なる為 一様に面積で機器の評価をすることができないことによる 出力 200w のパネル 仮に 200w の太陽光パネルを 5 枚繋げた機器は 1000w(1.0kW) の発電設備となり 年間の予想発電量は 1000kwh 程度になる 発電量の 40% を売却した場合 下記の計算式で収益計算を行うことができる 節電料金 =1000kwh 60% 電気購入単価 5 枚接続すると 1kW の太陽光発電設備 売電料金 =1000kwh 40% 電気売却単価 20 枚接続すると 4.0kW の太陽光発電設備 一般家庭の電気が賄える程度の出力
太陽電池モジュールの種類 太陽電池モジュールの種類は右表のように大別される 発電効率や性能 保証内容を加味しながらコストと合わせて検討が必要 シリコン系 結晶系 単結晶シリコン太陽電池 多結晶シリコン太陽電池 単結晶または多結晶のシリコン基板を使用したタイプで 発電効率が優れている 現在 最もたくさん生産されているタイプの太陽電池 非結晶質系 アモルファスシリコン太陽電池 ガラス または金属等の基板の上に 薄膜状のアモルファスシリコンを形成させて作る 将来の低価格化が期待されている太陽電池 化合物半導体系 結晶系 単結晶化合物半導体太陽電池 多結晶化合物半導体太陽電池 化合物半導体太陽電池とは複数の元素を主原料としたもので 単結晶と多結晶のものがある 単結晶の太陽電池には 人工衛星などの特殊用途に使われているものなどがある 多結晶のものには 用途や使用方法に合わせて多様な材料や構造のものがある
発電の仕組み 太陽光パネル ( 太陽電池モジュール ) は複数のセルで構成されており セルは 2 種類の半導体をあわせて作られている セルに光があたる事で 半導体内の原子が + と - に引き寄せられることで電気が発生する 光 - が集まる N 型半導体 + が集まる P 型半導体 セル 断面 太陽電池モジュール 80w~250w/ 枚 建物での利用方法 太陽光パネルで作られた電気は一定の枚数ごとに接続箱で束ねられるが この時点では直流の為 パワーコンディショナで交流に変換されてから消費されることになる 太陽光電池は電気を貯めることはできない為 発電した電気はその場で使用し 余った電気は電力会社の系統に流れていく ( 売る ) ことになる 接続箱 太陽電池アレイ ( モジュールを複数繋げたもの ) 直流 (DC) 交流 (AC) 専用ブレーカー 分電盤売電 WH 買電 WH パワーコンディショナ ( インバーター ) 消費
導入方式 (3 種類 ) 主な導入方式は下記の 3 種類で それぞれの方式ごとに長所 短所があるため 物件ごとに選定が必要 1 専有部戸別連係方式 太陽光パネルで発電した電気を直接各戸に供給する方式 各戸が電気の売り買いを行うことができる 戸建てシステムの集合体とほぼ同等のシステム 現在一部の限られたシステム供給者でのみ設置が可能 1 特売電コスト設置スペース戸数省エネ行動新築既築 徴 100 万 / 戸 10 m2 / 戸不問 難 2 共用部連係方式 従来からある方式で マンションの共用部にのみ連係する方式 発電した電気は共用部で消費され 余剰電力は電力会社に買い取ってもらうことが可能 2 特売電コスト設置スペース戸数省エネ行動新築既築 徴 約 750 万 /10kW 棟 60 m2 / 棟小規模 可 共用 3 高圧一括受電方式 ESP 事業者がマンション全体の電気を高圧にて供給する方式を構築し その電気に太陽光発電の電気を上乗せして建物に分配する方式 3 特 徴 売電 コスト 安 設置スペース 不問 戸数 大規模 省エネ行動 新築 既築 共用 ESP 事業者
補助金 設置補助金はさまざまな団体が補助金を支給しており 10kW を境に事業用 家庭用で大別される 毎年度 各団体の補助金は流動的であり常に最新の情報を確認しておく必要がある 右記は 2010 年度の体系図 システム容量 10kW 未満 ( 家庭用 ) 国 (J-PEC) 支給額 70,000 円 /kw( ただし設置費 65 万 / 以下 ) 対象者個人または個人事業主を含む法人他事前申請 取得後 17 年は処分不可 都道府県 ( 例 : 東京都 ) 支給額 100,000 円 /kw 対象者個人 法人 管理組合他事後申請 ク リーン電力債権を都に譲渡 区市町村 ( 例 : 世田谷区 ) 支給額 70,000 円 /kw( 上限 20 万 ) 対象者個人 管理組合を含む住宅に居住する者他事前申請 抽選による支給 システム容量 10kW 以上 ( 事業用 ) 新エネルギー事業者支援対策事業 支給額設置費用の最大 1/3 対象者事業者他公募による申込みの中から審査後決定 地域新エネルギー等導入促進事業 支給額設置費用の最大 1/2 対象者地方公共団体 非営利民間団体他公募による申込みの中から審査後決定
余剰電力買取制度 2009 年 11 月より実施された新たな買取制度 太陽光発電の普及を促す為 早く設置するほどメリットが高くなるように単価設定される 48 円が大きく取り立たされているが 48 円で買い取ってもらえるのは住宅用の低圧供給で 10kw 未満を設置した場合でその他の発電設備を併設していない場合に限られる 電力会社が買い取るのは自己消費した後に残る余剰電力に対してであり 欧州の買取制度の主流である全量買取とは異なる制度といえる 電気を買い取る側である電力会社は 買い取り分の負担増となるため 電力サーチャージとして全ての電気契約者から負担分を徴収することとなっている ( 国民全員の負担 ) 太陽光発電設備からの余剰電力買取金額 ( 円 /kwh 税込み ) その他の発電設備 燃料電池など 住宅用 ( 低圧供給 ) 非住宅用 ( 高圧供給 ) 太陽光発電設備容量 太陽光単独 その他の発電設備を併設 太陽光単独 その他の発電設備を併設 10kW 未満 48 円 39 円 24 円 20 円 10kW 以上 24 円 20 円 買取期間と買取価格の見直し 買取期間 10 年間 48 円 /kwh 48 円 /kwh 42 円 /kwh? 年度ごと低減? 円 /kwh 平成 21 年度 平成 22 年度平成 23 年度平成 24 年度 平成 31 年度平成 32 年度平成 33 年度
その他の制度 エネ革税制 エネルギー需給構造改革投資促進税制 省エネルギーに優れた機器の普及を促進する為の税制優遇措置 対象設備を取得したお客様が 税制上の待遇措置を受けることができるというもの 1 適用を受けることができる者 確定申告書を提出する法人及び個人が エネ革税制 の対象設備を適用期間内 ( 平成 16 年 4 月 1 日から平成 24 年 3 月 31 日まで ) に取得し その後 1 年以内に事業の用に供した場合 2 優遇措置 対象設備 ( 新品に限る ) を適用期間内に取得し その後 1 年以内に事業の用に供した場合 次のいづれかが選択により認められる 1 特別償却 普通償却のほかに 取得価格の 30% 相当額を償却額として 必要経費または損金参入することができる ただし 当期に償却不測額がある場合は 翌年度に限り その不足分を償却することができる 特に 平成 21 年 4 月 1 日から平成 23 年 3 月 31 日までに取得された機械は取得価格の全額 (100%) を償却額として 必要経費または損金に参入することができる 2 税額控除 ( 中小企業者などに限る ) 当期税額の 20% 相当額を限度とし 取得額の 7% 相当額を税額控除することができる ただし 控除限度超過額については 翌年度に限り繰り返すことができる
設置のポイント 陸屋根での固定方法 マンションの屋上はほとんどが陸屋根であり 一定の傾斜角を確保して設置する太陽光パネルを設置するとなると 傾斜角を確保する為の架台が必要になる また 架台やモジュールを設置するための工法が防水工法との関係で限られており その選択が難しい 従来より一般的な固定方法としてはコンクリート基礎による架台設置方法となるが コンクリート基礎の重量が 200kg 程度以上と重く 建物への影響が大きい したがって既存建築物へのコンクリート基礎の設置は建物構造の観点から不可能に近く 別の工法による設置が望まれる 最近ではさまざまなメーカーから設置するための工法 金物が提案されており設置条件によって選定することが可能になってきている 加えて固定方法によって防水保証が一定期間取得できるか確認が必要になる コンクリート基礎による設置 長所 短所 防水シートに溶着させる金物で設置 長所 個数に対する強度が高い 新築で採用する場合ではコストが安い 多くの建設会社にて施工実績が豊富 重量が重い 既築で採用する場合は設置不可能 施工時間が長い 防水メーカーによって実績有り 施工時間が短い 軽量 短所 防水工法が指定される 外断熱防水ができない メーカーが限られている 専用の金物で設置 長所 軽量で比較的安価 施工時間が短い 防水構造を選ばない レベル調整機能有り 短所 実績が少ない 流通量が少ない
設置のポイント 鉄骨架台を選択した場合の種類 全面設置型 ( 一体型 ) パターン 鉄骨架台を利用して設置する場合 架台の組み方において数種類の方法が見受けられる 設置容量と屋根の広さの関係や 固定方法やコストを考慮して選択することが必要になる また マンションの場合で専有部戸別連係方式を検討した場合は 7~9 階程度以上は 屋上面積が足りなくなることから全面設置型パターンになりやすい さざ波型パターンは低層マンション向け 多段列設置パターンは商業施設や公共建築で多用されるケースが多い 限られた屋根面積に最大限モジュールを設置したい場合に利用される 設置角度は 5 ~10 程度が多い さざ波設置型パターン 屋根面積に多少余裕がある場合に利用される 段数は 1 2 段程度で 設置角度は 20 ~30 程度が多い 比較的軽微な設置に向いている 多段列置型パターン 屋根面積に多少余裕がある場合に利用される 段数は 2~5 段程度で 設置角度は 20 ~45 程度が多い 設置高さが高くなるケースが多い
設置のポイント 電力受給契約の流れ 太陽光発電システムを設置し 売電を行う場合は電力会社と電力受給契約を結ぶ必要がある 右記に一般的な流れを記載している 電灯契約申込 ( 電気使用の申込 ) と電力受給契約は同時申請が望ましいとされているが 電力受給契約が後の場合も認められることがある なお 電灯契約と電力受給契約の契約者は同一とする必要があるので注意が必要 また 設置補助金を申請して受給する場合 補助金申請者と電力受給契約者が同一でなければならない お客様 電気工事店 計画検討 計画検討 事前協議 電力受給契約 契約書提出 設置工事 連係立会い 運転開始 電力会社 事前協議 電力受給契約 電力受給契約に必要な書類 1 電気使用申込書 2 電力受給契約申込書 3 低圧配電線への系統連係協議依頼票 5 単線結線図 ( 配線図 ) 6 漏電遮断機の仕様がわかる資料 7 認証証明書 ( 写 ) 4 保護機能の整定範囲および整定値一覧表
設置のポイント 電気設計の注意点 ( 単線結線図 ) 右図の単線結線図は戸別連係システムの場合の単線結線図である 一般戸建用の結線図と大きな違いは無いが マンション特有の注意点があり注意を要する 1 屋上からのケーブル長が長い為 電圧降下計算を行い 必要なケーブルサイズを決定すること 2 東京都で補助金を取得する場合は必要 3 電力会社により 接続位置の指導が入る場合有り 4 2 4 接地線は単独線にする必要有り 5 通信線の工事区分の確認 6 ケーブル幹線の工事区分の確認 1 5 7 太陽光用ブレーカーは逆接続可能型を選定 5 7 3
まとめ 例 1 新築の太陽光マンション 2009 年補助金が復活したことにより 戸建用の太陽光発電システムは市場規模が大きく拡大した しかしながら マンションへの供給は依然として少なく 潜在的なニーズは非常に高いと想定される 太陽光発電システム単独での設置に限らず 新築工事や改修工事といった営業のツールの 1 つとして 太陽光発電システムを利用することは非常に強力な武器になると予想される 例 2 改修工事と同時設置の太陽光発電システム 例 3 賃貸マンションや店舗 事務所屋上での太陽光発電システム