60 金沢星稜大学人間科学研究第 11 巻第 2 号平成 30 年 2 月 要領を主な資料として内容を分析 考察する (1) 乳児保育に関わる ねらい及び内容 の3 視点,1 歳以上 3 歳未満児及び3 歳以上児に関わる ねらい及び内容 の5 領域, 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿, 小学

Similar documents
乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香

新しい幼稚園教育要領について

2部.indd

第2編 旅客営業 第4章 乗車券類の効力

ICTを軸にした小中連携

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/


1 幼児期の教育 保育と小学校教育の違い 幼児期の教育 保育と小学校の教育では 発達の段階の違いだけでなく 教育課程等の違いもあります まずは相互を理解することが必要です 幼児期の教育 保育と小学校教育との間には このように教育課程や指導方法の相違点がある一方で 5 歳児から小学校低学年までの発達の

学習指導要領改訂の方向性

幼保連携型認定こども園教育・保育要領 中央説明会

Taro-自立活動とは

Microsoft PowerPoint - 【吉備HP用】吉備でのお題集.pptx

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1


幼児教育とは: 幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂を受けて

ハンドブックp10-14:東京都教育委員会

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について


Microsoft PowerPoint - 幼稚園教育要領の改訂について

PowerPoint プレゼンテーション

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

基本方針 これまでも幼稚園は幼稚園教育要領に 保育園は保育所保育指針に基づいた幼児教育 保育を展開してきた また 平成 20 年 3 月の大幅な改定により 3 歳児から5 歳児の教育に関する内容では整合性が図られている しかし 統一されたカリキュラムがないことで 幼稚園と保育園の内容に違いがあるかの

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

Microsoft PowerPoint - H29小学校理科

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

吹田市告示第  号

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

3 平成 29 年 3 月に幼稚園教育要領 保育所保育指針 幼保連携型認定こども園教育 保育要領が改訂され 来年度から全面実施されます 新幼稚園教育要領等では 改訂の基本的な方針として 1) 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 の明確化 健康な心と体 自立心 協同性 道徳性 規範意識の芽生え 社会生

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

高松っ子いきいきプラン策定の趣旨 本プランは, 就学前の子どもが幼稚園 保育所 幼保一体化施設など, どこに在籍していても, 等しく質の高い教育 保育を受けられるよう, 各施設が積み上げてきたものを生かしつつ, 今後, 重点的に取り組むための方針や具体的な取り組みを示しています さらに小学校との連携

1 小学校入学前の子どもの学びとは 幼児期の生活のほとんどは 遊びによって占められています 子どもは遊びを中心として 頭も心も体も動かして様々な対象と直接関わりながら 総合的に学んでいます (1) 幼児教育と子どもの学び 幼稚園の遊びの一場面子どもたちがものを転がす遊びに集中しています 子どもたちは

Microsoft Word 教育課程の編成

【参考資料1】審議のまとめ反映版

資料6 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の再整理イメージ(たたき台)

H30全国HP

⑴ ⑵ ⑶ ⑵

改訂幼稚園教育要領と改訂小学校学習指導要領における幼小接続今井康晴 後藤正矢 リキュラムなど様々に展開されている 例えば先行研究においても 幼小接続をふまえた教育活動の研 1, 究 2 また幼小接続の教育課程研究 3 など多岐に及んでいる しかし 本論文の主題とする改訂幼稚園教育要領と改訂小学校学習

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

平成29年度 中学校英語科教育 理論研究

屋外広告物のしおり

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

【160420】とりまとめイメージ目次

ポイント 1: 幼児教育と小学校教育の特徴や違いを理解する 保幼小の円滑な接続に向けて まずは 幼児教育と小学校教育の特徴や違いを理解することが重要です 幼児教育 幼児期の教育では 幼児の自発的な活動としての 遊び を通して 様々な体験や学びの芽生えを積み重ねることができるよう 保育者が環境を構成し

24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

中央説明会 改訂幼稚園教育要領 幼稚園教育要領の改訂について 主な改訂内容 平成29年 7月 文部科学省 初等中等教育局 幼児教育課 1

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

はじめに P1 Ⅰ 豊後大野市幼児教育の現状と課題 P2~3 1 幼児数の変遷... P2 2 幼児教育の現状... P2~3 3 幼児教育の課題... P3 Ⅱ 豊後大野市幼児教育の基本方針 P4~7 1 豊後大野市幼児教育の基本... P4 2 豊後大野市幼児教育のねらい... P5 (1) 育

Microsoft Word - aglo00003.学力の三要素

保育をシンプルにする 1 子どもと現状把握からスタートする子どもの心や体は大丈夫か? もっとこうしてあげたいという願い専門的視点と時代の要請から 2 プランが生まれる! 見通しを持つそうだ こうしよう! ( 例 ) 船であそこへ行こう! (5 つの要素 ) 船 スタッフ プラン 目的 旅の意義園舎

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

Microsoft Word - 02_21 衛星通信車調達仕様書

Taro-renkei.jtd

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007


各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

123

★00 生活科表紙

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の



Microsoft Word - 推進ビジョン(奥付:推進室)


幼児教育部会における審議の取りまとめ

平成 30 年 4 月 1 日 平成 30 年度 第 70 回 日本連合教育会研究大会 桐生大会 大会主題 分科会研究協議題 等 Ⅰ 大会主題及び大会主題設定の趣旨 Ⅱ 分科会研究協議題 研究協議題設定の理由 研究協議の視点 (1) 第 1 分科会国語 (2) 第 2 分科会 社会 (3) 第 3

Microsoft PowerPoint 森ㆨè⁄ªç—¶ã‡™æ´»çfl¨ã†Šã†�ä¿šè‡²å¹¼å–’æŁŽè‡²ã†«éŒ¢ã†Žã‡‰è⁄ªæ²»ä½fi剛強ä¼ı-è³⁄挎(山呣朕絇盋).pptx

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

1 一日の生活の連続性及びリズムの多様性への配慮 (1) 全体的な計画の作成幼保連携型認定こども園教育保育要領第 1 章総則では 幼保連携型認定こども園の 全体的な計画 の作成について示されています 全体的な計画は 保育所保育指針における保育課程 幼稚園教育要領における教育課程に当たります また 全

第4章 道徳

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について(報告)

Microsoft Word - ★資料集1~5.docx

< F2D318BB388E789DB92F682CC8AC7979D F >

file:///D:/Dreamweaber/学状Web/H24_WebReport/sho_san/index.htm

愛媛県学力向上5か年計画

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

乳児保育 (0 1 2 歳児の保育 ) における領域 環境 の内容についての考察 表 1 発達過程区分の変遷 保育士養成課程及び保育現場現行の保育所保育指針 ( 発達過程 ) 新保育所保育指針 乳児保育 (0 1 2 歳児の保育 ) 幼児保育 ( 3 歳以上児の保育 ) おおむね 6 か月未満乳児保

Microsoft Word - 1表紙

幼保連携型認定こども園教育・保育要領告示文

補足説明資料_教員資格認定試験

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

幼稚園教育要領解説

保育所保育指針

幼稚園と小学校の連携の在り方について 学びの連続性 の視点に立って考察する 3 研究内容と考察 (1) 学びの連続性 に立った幼稚園と小学校の連携とは何か中教審の答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について は 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえ 今後の幼児教育の方向性と

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 19 ‚¾Šz”©fi®”Ô.doc

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

<4D F736F F D AAE90AC94C5817A E7793B188C481698D5D E7397A791E58A A778D5A814094F68FE3816A2E646F63>

幼児期の教育と小学校教育の接続について

Transcription:

金沢星稜大学人間科学研究第 11 巻第 2 号平成 30 年 2 月 59 保育内容 5 領域と育みたい資質 能力の関係についての考察 Consideration of the relationship between five areas of nursery school content and the qualities and abilities that are aimed to develop 開仁志 ( 人間科学部こども学科教授 ) Hitoshi HIRAKI (Faculty of Human Sciences, Department of Child Study, Professor) 要旨 2017( 平成 29) 年に告示された保育所保育指針, 幼保連携型認定こども園教育 保育要領では, 乳児保育に関わる ねらい及び内容 として3つの視点が示され,1 歳以上 3 歳未満児及び3 歳以上児に関わる ねらい及び内容 として5 領域が位置付き, 幼稚園教育要領も含め, 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿が小学校以降の学習や生活の基盤の育成につながっていくことが明記された 本研究では, 育ちを理解しやすいように一つの概念図で表した また,2017( 平成 29) 年版の保育所保育指針, 幼保連携型認定こども園教育 保育要領, 幼稚園教育要領では1989( 平成元 ) 年以降に導入された 保育内容 5 領域 の考え方を引き継ぎつつ, 育みたい資質 能力 の概念を新しく盛り込むこととなった それに伴い,2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領等までは 心情 意欲 態度 から捉えていたねらい及び内容を 資質 能力 で捉える変更がなされた 本研究では, 保育内容 5 領域と育みたい資質 能力の関係を考察したところ,5 領域におけるねらい及び内容のコンテンツ ( 中身 ) やプロセス ( 過程 ) に着目すると資質 能力で捉え直しやすいことが明らかになった キーワード 乳児保育 3 視点, 保育内容 5 領域, 育ってほしい 10 の姿, 育みたい資質 能力 1 目的 2017( 平成 29) 年に告示された保育所保育指針, 幼保連携型認定こども園教育 保育要領では, 乳児保育に関わる ねらい及び内容 として3つの視点が示され,1 歳以上 3 歳未満児及び3 歳以上児に関わる ねらい及び内容 として5 領域が位置付き, 幼稚園教育要領も含め, 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿が小学校以降の学習や生活の基盤の育成につながっていくことが明記された ⑴ しかし, 乳児保育の3つの視点と5 領域の関係,5 領域と育ってほしい10の姿,10の姿と各教科等の関係が別々の概念図で示されているため, 乳幼児期から小学校以降の児童期までのつながりが一目ではわかりにくい ⑵ そこで, 本研究の目的 1として, 育ちを理解しやすいように一つの概念図で表すことを目指す また,2017( 平成 29) 年版の保育所保育指針, 幼保連携型認定こども園教育 保育要領, 幼稚園教育要領では1989 ( 平成元 ) 年以降に導入された 保育内容 5 領域 の考え 方を引き継ぎつつ, 育みたい資質 能力 の概念を新しく盛り込むこととなった ⑶ 育みたい資質 能力 は幼児教育から小学校, 中学校, 高等学校教育にわたる長期的な視野で育むものである それに伴い,2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領等までは 心情 意欲 態度 から捉えていたねらい及び内容を今回の改訂 ( 定 ) では 資質 能力 で捉える変更がなされたのである しかし,2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領等と2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領等の保育内容 5 領域におけるねらい及び内容の文章は若干の修正はあるものの, ほとんど同様であるため, ⑷ 新たに捉え直す必要がある そこで, 本研究の目的 2として, 保育内容 5 領域と育みたい資質 能力の関係を考察し明らかにする 2 方法 2017( 平成 29) 年版の幼稚園教育要領, 保育所保育指針, 幼保連携型認定こども園教育 保育要領, 小学校学習指導 59

60 金沢星稜大学人間科学研究第 11 巻第 2 号平成 30 年 2 月 要領を主な資料として内容を分析 考察する (1) 乳児保育に関わる ねらい及び内容 の3 視点,1 歳以上 3 歳未満児及び3 歳以上児に関わる ねらい及び内容 の5 領域, 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿, 小学校各教科等の関係を分析 考察し図式化する (2)5 領域の ねらい及び内容 と 育みたい資質 能力 の関係を分析 考察する 3 結果及び考察 3 1 乳幼児期から小学校以降の児童期へのつながり (1)3 つの視点と5 領域のつながり 2017( 平成 29) 年版保育所保育指針によると, 乳児保育に関わる ねらい及び内容 は, この時期の発達の特徴を踏まえ, 身体的発達に関する視点 健やかに伸び伸びと育つ, 社会的発達に関する視点 身近な人と気持ちが通じ合う, 精神的発達に関する視点 身近なものと関わり感性が育つ としてまとめて示してある ⑸ 3つの視点と5 領域の関係については, 厚生労働省 保育所保育指針の改定に関する議論のとりまとめ (2016 年 12 月 21 日 ) によると, 以下のような説明がある 1 発達の未分化性 乳児期においては, 現行の5 領域で示している保育内容に関する発達が未分化な状況にあることから, 生活や遊びが充実することを通して, 子どもたちの身体的 精神的 社会的発達の基盤を培う ⑹ ここでは,1989( 平成元 ) 年から導入された5 領域の考え方をベースにしながらも, 乳児期の未分化な発達を踏まえた上で視点を3つに整理した経緯が示されている 23つの視点と5 領域の連続性 身近な人と気持ちが通じ合う という視点からは, 主に現行指針の 言葉 人間関係 の領域で示している保育内容との連続性を意識しながら, 保育のねらい 内容等について整理 記載 乳児からの働きかけを周囲の大人が受容し, 応答的に関与する環境の重要性を踏まえ記載 ⑺ 身近なものと関わり感性が育つ という視点からは, 主に現行指針の 表現 環境 の領域で示している保育内容との連続性を意識しながら, 保育のねらい 内容等について整理 記載 乳児が好奇心を持つような環境構成を意識して記載 ⑻ ここでは, どの視点とどの領域との連続性が特に意識されるのかが説明されている 健やかに伸び伸びと育つ という視点については言及が無いが, 図 1から読み取ると, 健康 の領域で示している保育内容との連続性を意識していることが分かる さらに, 保育の内容は養護における 生命の保持 及び 情緒の安定 に関わる保育の内容と, 一体となって展開されることも図 1から読み取れる ( 2 )5 領域と 10 の姿のつながり 2017( 平成 29) 年版保育所保育指針では,3 歳以上児と 同様に 1 歳以上 3 歳未満児にも 5 領域が適用されることと なった 5 領域とはすなわち, 心身の健康に関する領域 健康, 人との関わりに関する領域 人間関係, 身近な 環境との関わりに関する領域 環境, 言葉の獲得に関す る領域 言葉, 感性と表現に関する領域 表現 である 2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領によると, 領域 は, ねらい及び内容 を幼児の発達の側面からまとめ, 示し たものであるとされている ⑼ 幼児期に育ってほしい 10 の姿は, 文部科学省 幼児期の 教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について ( 報告 ) (2010 年 11 月 11 日 ) で示された参考例 12 の姿を手がかりに, 文部科学省 幼児教育部会における審議の取りまとめ (2016 年 8 月 26 日 ) で打ち出された概念であり, 5 領域の 内容等を踏まえ, 特に 5 歳児の後半にねらいを達成するた めに, 教員が指導し幼児が身に付けていくことが望まれる ものを抽出し, 具体的な姿として整理したもの とされて いる ( 図 2 ) ⑽ 図 1 0 歳児の保育内容の記載のイメージ ( 厚生労働省 保育所保育指針の改定に関する議論のとりまとめ 2016 年 12 月 21 日 ) より 図 2 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の整理イメージ ( 文部科学省 幼児教育部会における審議の取りまとめ 2016 年 8 月 26 日 ) より ( 3 ) 小学校学習指導要領における幼児期に育ってほしい 10 の姿の取り扱い 2017 年版小学校学習指導要領第 1 章総則第 2 教育課程の 編成の 4 学校段階等間の接続において, 以下のように説明 60

保育内容 5 領域と育みたい資質 能力の関係についての考察 61 生活, 国語,( 外国語, 外国語活動 ) 等 言葉による 豊かな感性 生活, 音楽, 図画工作体育等 伝え合い 養護 と表現 生活,( 社会 ) 国語, 算数等 道徳, 特別活動等社会生活との関わり 家族, 地域の人 言葉 表現 数量や図形, 標識や文字などへの関心 感覚 身近な人と身近なものと関わり自然との関わ気持ちが通じ合う感性が育つ生活, 体育り 生命尊重 道徳, 特別 活動等 生活,( 理人間関係健やかに環境科 ), 道徳, 道徳性 規範意識 伸び伸びと育つ 特別活動等 の芽生え 思考力の 協同性 健康 芽生え 生活,( 総合 ) 自立心 社会生活との 各教科等 道徳, 特別活動等 健康な 関わり 生活, 体育,( 家庭 ) 道徳, 特別活動等 心と体 情報, 施設 生活,( 社会, 総合 ) 道徳, 特別活動等 図 3 乳児期から幼児期さらに小学校以降の児童期へのつながりを見通す概念図 ( 筆者作成 ) されている ⑾ 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより, 幼稚園教育要領等に基づく幼児期の教育を通して育まれた資質 能力を踏まえて教育活動を実施し, 児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可能となるようにすること 低学年における教育全体において, 例えば生活科において育成する自立し生活を豊かにしていくための資質 能力が, 他教科等の学習においても生かされるようにするなど, 教科等間の関連を積極的に図り, 幼児期の教育及び中学年以降の教育との円滑な接続が図られるよう工夫すること 特に, 小学校入学当初においては, 幼児期において自発的な活動としての遊びを通して育まれてきたことが, 各教科等における学習に円滑に接続されるよう, 生活科を中心に, 合科的 関連的な指導や弾力的な時間割の設定など, 指導の工夫や指導計画の作成を行うこと さらに, 文部科学省 幼児教育部会における審議の取りまとめ (2016 年 8 月 26 日 ) では, 生活科における教育のイメージ の概念図を示し, 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿がどのように小学校の各教科等につながっていく かを表している ( 図 4 ) 図 4 生活科における教育のイメージ ( 文部科学省 幼児教育部会における審議の取りまとめ 2016 年 8 月 26 日 ) より (4) 養護,3 つの視点,5 領域,10 の姿のつながりを踏ま えた小学校教育へ 養護及び乳児保育に関わる ねらい及び内容 の 3 視点 と 1 歳以上 3 歳未満児及び 3 歳以上児に関わる ねらい及 び内容 の 5 領域のつながり ( 図 1),5 領域と幼児期に育 61

62 金沢星稜大学人間科学研究第 11 巻第 2 号平成 30 年 2 月 ってほしい10の姿のつながり ( 図 2), 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿と小学校各教科等のつながり ( 図 4) を参考にして, 筆者なりに整理し図式化したものが, 図 3となる 養護と教育は一体的であり全ての視点や領域, 姿は関連しているが, 特に関連性が深いもの同士と発達の方向性を考え位置づけた 育ってほしい10の姿のうち 思考力の芽生え は小学校の各教科等全てに深く関連する 社会生活との関わり については, 領域との関連から 家族, 地域の人 と 情報, 施設 の 2 つの方向性に分けて示した また, 接続期として幼児期と小学校低学年とのつながりを主に表すため, 中学年以降に導入される理科, 社会, 外国語活動, 外国語, 家庭, 総合的な学習の時間 ( 総合 と略 ) については ( ) で示してある 3 2 5 領域と資質 能力の関係 (1)5 領域,10の姿, 3 つの資質 能力の関係 2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領では,5 領域,10の姿,3つの資質 能力の関係を, 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 が, ねらい及び内容に基づく活動全体を通して資質 能力が育まれている幼児の幼稚園修了時の具体的な姿 と記している ⑿ 無藤 (2017) は, この3つの関係性を以下のように説明している 幼児教育 ( 幼稚園教育 ) を通して子どもが身に付けようとする事柄の中核を資質 能力と呼びます 中略 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 とは, 3 歳 ( あるいは0 歳 1 歳からの長い育ちを通して ) から 5 歳児後半に特に伸びていく5 領域の内容を10に整理したものです 資質 能力は具体的には5 領域の ねらい に反映され, 内容 に示された活動の中で育ち, 幼児教育の修了からさらに小学校へと伸びていきます ⒀ (2) 心情, 意欲, 態度から 3 つの資質 能力へ 2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領では, ねらいは, 幼稚園修了までに育つことが期待される生きる力の基礎となる心情, 意欲, 態度などであり, 内容は, ねらいを達成するために指導する事項 ( 下線筆者 ) であった ⒁ このことから,5 領域のねらいは基本的に心情, 意欲, 態度の3 つから成り立っていた 例えば, 領域 健康 のねらいは以下のとおりである 1 明るく伸び伸びと行動し, 充実感を味わう 2 自分の体を十分に動かし, 進んで運動しようとする 3 健康, 安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける ⒂ 1は心情,2は意欲,3は態度のねらいと考えられる しかし,2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領では, ねらいは, 幼稚園教育において育みたい資質 能力を幼児の 生活する姿から捉えたものであり, 内容は, ねらいを達成するために指導する事項 ( 下線筆者 ) と変化する ⒃ 資質 能力は, 幼児期においては,1 豊かな体験を通じて, 感じたり, 気付いたり, 分かったり, できるようになったりする 知識及び技能の基礎,2 気付いた事や, できるようになったことなどを使い, 考えたり, 試したり, 工夫したり, 表現したりする 思考力, 判断力, 表現力等の基礎,3 心情, 意欲, 態度が育つ中で, よりよい生活を営もうとする 学びに向かう力, 人間性等 の3つである ⒄ 領域 健康 のねらいは 1 明るく伸び伸びと行動し, 充実感を味わう 2 自分の体を十分に動かし, 進んで運動しようとする 3 健康, 安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け, 見通しをもって行動する である ⒅ ( 下線は 2008( 平成 20) 年版との相違点 ) 2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領と2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領における領域 健康 ねらいの文章的な違いは, 見通しをもって行動する の箇所だけとなっている 心情 意欲 態度 は3つの資質 能力のうち 学びに向かう力 人間性等 に含まれる しかし, 文章的な違いがあまり無いため, 残りの 知識及び技能の基礎 思考力, 判断力, 表現力等の基礎 については, ねらいに反映されないままになっているように受け止められかねないと考える 一方,2017( 平成 29) 年版小学校学習指導要領では, 各教科等の目標を3つの資質 能力で示している 例えば, 国語 においては, 以下のようになっている ( 下線筆者 ) 言葉による見方 考え方を働かせ, 言語活動を通して, 国語で正確に理解し適切に表現する資質 能力を次のとおり育成することを目指す (1) 日常生活に必要な国語についてその特質を理解し適切に使うことができるようにする (2) 日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め, 思考力や想像力を養う (3) 言葉がもつよさを認識するとともに, 言語感覚を養い, 国語の大切さを自覚し, 国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う ⒆ さらに, 内容は 知識及び技能, 思考力, 判断力, 表現力等 に分類して示してあり明確である ⒇ 学びに向かう力, 人間性等 は分類としては挙げられていないが, 資質 能力の育成に向けて, 児童の主体的 対話的で深 い学びの実現を図る ことで目標が達成されていくと考えられる 62

保育内容 5 領域と育みたい資質 能力の関係についての考察 63 (3) コンテンツ ( 中身 ) とプロセス ( 過程 ) としての資質 能力小学校学習指導要領に比べ, 幼稚園教育要領 ( 保育所保育指針, 幼保連携型認定こども園教育 保育要領も同様 ) では5 領域のねらい及び内容のどの部分が3つの資質 能力につながっているかが明確とは言いがたい もちろん, 総合的, 一体的に行われる幼児教育でははっきりと区分しないことが基本という考え方もあるだろう しかし, その曖昧性が, 計画を立てねらい及び内容を文章化することを難しくする一因となっているとも言えるのではないか 資質 能力とねらい及び内容,10の姿の関係性を考える手がかりとなるのが, 幼児教育において育みたい資質 能力の整理 ( 文部科学省 幼児教育部会における審議の取りまとめ 2016 年 8 月 26 日 ) である ( 図 5 ) この図は, 5 領域の ねらい及び内容 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 から主なものを取り出し便宜的に分け3つの資質 能力を表す円の中に例示されている 実際は遊びを通しての総合的な指導を通じて育成される 筆者は, 円の例示を資質 能力の具体的なコンテンツ ( 中身 ) と捉え,3つの資質 能力の説明部分を方向目標としてのプロセス ( 過程 ) と捉えると文章化しやすいと考えた このルールに従うと, ねらいの文章は, コンテンツ ( 中身 ) を, ようになっていく, していく プロセス ( 過程 ) として表現できるようになる ( 言葉 ) 日常生活に必要な言葉の理解 ( 表現 ) 多様な動きや芸術表現のための基礎的な技能の獲得 < 思考力 判断力 表現力等の基礎 > ( 健康 ) 振り返り, 次への見通し ( 環境 ) 試行錯誤, 工夫 予想, 予測, 比較, 分類, 確認 他の幼児の考えなどに触れ, 新しい考えを生み出す喜びや楽しさ ( 言葉 ) 言葉による表現, 伝え合い ( 表現 ) 自分なりの表現 表現する喜び < 学びに向かう力, 人間性等 > ( 健康 ) 安定した情緒 ( 人間関係 )( 言葉 ) 思いやり 自信 相手の気持ちの受容 葛藤, 自分への向き合い, 折り合い 話合い, 目的の共有, 協力 ( 環境 ) 好奇心, 探究心 自然現象や社会現象への関心 ( 表現 ) 色 形 音等の美しさや面白さに対する感覚 2 資質 能力の方向目標としてのプロセス ( 過程 ) 動詞 のようになっていく, していく 図 5を基に資質 能力の方向目標としてのプロセス ( 過程 ) のキーワードを抽出すると下記のとおりになる < 知識及び技能の基礎 > 感じる 気付く 分かる できる < 思考力 判断力 表現力等の基礎 > 使う 考える 試す 工夫する 表現する < 学びに向かう力, 人間性等 > 以下の 3 つが育つ中で, よりよい生活を営む ( 心情 ) 味わう 楽しむ もつ 親しむ ( 意欲 ) 十分に する 進んで しようとする 自分から 関わる 深める 取り入れようとする よく する ( 態度 ) 身に付ける 豊かにする 通わせる 図 5 幼児教育において育みたい資質 能力の整理 ( 文部科学省 幼児教育部会における審議の取りまとめ 2016 年 8 月 26 日 ) より 1 資質 能力のコンテンツ ( 中身 ) としての 5 領域のねら い及び内容 名詞 を 図 5 を基に資質 能力のコンテンツ ( 中身 ) に着目して 5 領域の視点で分類すると下記のとおりになる < 知識及び技能の基礎 > ( 健康 ) 基本的な生活習慣や生活に必要な技能の獲得 身体感覚の育成 ( 環境 ) 規則性, 法則性, 関連性等の発見 様々な気付 き, 発見の喜び ( 4 )5 領域のねらい及び内容を資質 能力で捉える 2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領等では 心情 意欲 態度 で捉えていた5 領域のねらい及び内容を,2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領等においては 資質 能力 で捉えるという視点の転換が必要となる 例として, 領域 健康 のねらい 内容を資質 能力の視点で捉えると, 以下のようになる < ねらい > 1 明るく伸び伸びと行動し ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ), 充実感を味わう ( 学びに向かう力 人間性等 ) 2 自分の体を十分に動かし ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ), 進んで運動しようとする ( 学びに向かう力 人 63

64 金沢星稜大学人間科学研究第 11 巻第 2 号平成 30 年 2 月 間性等 ) 3 健康, 安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け ( 知識及び技能の基礎 ), 見通しをもって行動する ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) < 内容 > 1 先生や友達と触れ合い ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ), 安定感をもって ( 学びに向かう力 人間性等 ) 行動する ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 2 いろいろな遊びの中で十分に体を動かす ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 3 進んで戸外で遊ぶ ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 4 様々な活動に親しみ, 楽しんで ( 学びに向かう力 人間性等 ) 取り組む ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 5 先生や友達と食べることを楽しみ, 食べ物への興味や関心をもつ ( 学びに向かう力 人間性等 ) 6 健康な生活のリズムを身に付ける ( 知識及び技能の基礎 ) 7 身の回りを清潔にし, 衣服の着脱, 食事, 排泄などの生活に必要な活動を自分でする ( 知識及び技能の基礎 )( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 8 幼稚園における生活の仕方を知り ( 知識及び技能の基礎 ), 自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 9 自分の健康に関心をもち ( 学びに向かう力 人間性等 ), 病気の予防などに必要な活動を進んで行う ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 10 危険な場所, 危険な遊び方, 災害時などの行動の仕方が分かり ( 知識及び技能の基礎 ), 安全に気を付けて行動 する ( 思考力 判断力 表現力等の基礎 ) 前述したとおり,2008( 平成 20) 年版幼稚園教育要領と 2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領ではねらい及び内容の文章にはほとんど違いが見られなかった しかし, コンテンツ ( 中身 ) やプロセス ( 過程 ) に着目すると資質 能力で捉え直しやすいことが明らかになった 4 まとめ本研究では, 1 育ちを理解しやすいように一つの概念図で表す 2 保育内容 5 領域と育みたい資質 能力の関係を考察し明らかにする の 2 点を目的としていた 目的 1においては, 育ちを一つの概念図で表すことで, 乳幼児期から小学校以降の児童期までのつながりを理解する一助となることができたのではないかと考える 目的 2においては, コンテンツ ( 中身 ) やプロセス ( 過程 ) に着目すると5 領域のねらい及び内容を資質 能力で捉え直しやすいことが明らかになった 心情 意欲 態度 ( 学びに向かう力, 人間性等 ) に 知識及び技能の基礎 思考力 判断力 表現力等の基礎 という資質 能力の捉え方を加えることで, 育ちをつかむ視野の広がりと深まりが生まれ, 乳幼児期から小学校以降の教育への連続性を踏まえた教育を行うことができるようになると考える 本研究では,2017( 平成 29) 年版幼稚園教育要領の領域 健康 の分析に留まった 乳児保育に関わる ねらい及び内容 の 3 視点, 1 歳以上 3 歳未満児及び 3 歳以上児に関わる ねらい及び内容 の5 領域, 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿の文章全てにおいて分析することを今後の課題として取り組んでいきたいと考える 引用 参考文献 ⑴ 文部科学省 (2017) 幼稚園教育要領. 厚生労働省 (2017) 保育所保育指針. 内閣府 文部科学省 厚生労働省 (2017) 幼保連携型認定こども園教育 保育要領. ⑵ 文部科学省 (2016) 幼児教育部会における審議の取りまとめ. ⑶ 同上. ⑷ 前掲 ⑴. ⑸ 厚生労働省 (2017) 保育所保育指針. ⑹ 厚生労働省 (2016) 保育所保育指針の改定に関する議論のとりまとめ. ⑺ 同上. ⑻ 同上. ⑼ 文部科学省 (2017) 幼稚園教育要領. ⑽ 前掲 ⑵. ⑾ 文部科学省 (2017) 小学校学習指導要領. ⑿ 前掲 ⑼. ⒀ 無藤隆 汐見稔幸 砂上史子 (2017) ここがポイント!3 法令ガイドブックフレーベル館.p15. ⒁ 文部科学省 (2008) 幼稚園教育要領. ⒂ 同上. ⒃ 前掲 ⑼. ⒄ 前掲 ⑼. ⒅ 前掲 ⑼. ⒆ 前掲 ⑾. ⒇ 前掲 ⑾. 前掲 ⑾. 前掲 ⑵. 前掲 ⑼. 64