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⑨ ひび割れ計測システム KUMONOS 比較対象技術 人間によるクラックスケールを用いた計測と位置の記録 技術の概要 従来コンクリート表面のひび割れ調査は人間によるスケッチ クラックスケールによる 幅の測定が行われている KUMONOS は 光学測量器のファインダーに内蔵されたク ラックスケールにより き裂幅を測定するとともに き裂位置 両端部等 の三次元座 標 任意座標 を記録する これらの計測は遠隔操作が可能であり 高所や離れた場所 への適用が容易である 20m離れた位置のき裂幅を 0.1mmの高精度で測定できる 調 査対象のコンクリート壁面などのき裂分布のデジタル化に役立つ 詳細情報 巻末資料 No.32 ひび割れ計測システム KUMONOS KUMONOS の概要 ⑩ 赤外線画像と可視画像による診断 HIVIDAS 比較対象技術 調査員による直接目視やハンマー打撃による打音検査 技術の概要 本技術は 人による目視 打音調査の代替とした調査診断技術で 高感度赤外線サーモ グラフィによる熱画像 パッシブ法 と 高解像度デジタルカメラによる可視画像の視 野 撮影範囲 を合わせて連続的に同時撮影し 画像処理により うき はく離 や ひ び割れ等 を抽出し変状展開図を作成する 本技術の活用により 従来は 調査員によ る直接目視や打音検査に対して 個人差がなく 再現性が高くなり 品質の向上を図る ことができる 詳細情報 巻末資料 No.35 赤外線画像と可視画像による診断 HIVIDAS 撮影機材 61 61

(3) コンクリート配合 化学成分 1 X 線 CT 法による硬化コンクリートの物性評価比較対象技術 :X 線平面透過法によるコンクリートの物性評価技術の概要 :X 線 CT 法によるコンクリート診断とは 医療診断の分野で広く使用されている X 線 CT スキャナを用いて 短時間で高精度にコンクリート内部の鮮明な画像を得ることができる技術である 実際には医療用 X 線 CT スキャナよりも管電圧の大きい産業用 X 線 CT スキャナを使用する X 線 CT 画像は定量的な分析が可能で コンクリートの断面画像から骨材や空隙を抽出することにより骨材率や空隙率などの情報が得られる また いくつかの断面画像を重ね合わせることにより 可視化による3 次元的な空間分布状況の把握が可能となる このほか 物体の X 線の吸収係数が密度と高い相関にあることを利用して 骨材やモルタル部の密度を評価することにより コンクリートの水セメント比や単位セメント量などの配合や強度を推定することが可能である また 劣化した部分の密度が変化することにより 劣化深度の評価ができるほか ひび割れなどを可視化することができる 診断にあたっては 対象となるコンクリート構造物からボーリングによりコア供試体を採取し これを用いて X 線 CT 撮影を行う必要がある 詳細情報 : 巻末資料 No.44 X 線 CT 法による硬化コンクリートの物性評価 モルタル 1500 空隙 骨材 空隙モルタル骨材 t w CT value K 1000 w モルタル 骨材 -モルタル 平均 CT 値 境界 CT 値 CT ( a-m ) = 空隙 -500 モルタル 1092 各ボクセルに与えられたCT 値境界 CT 値 (X 線吸収率を表す ) を分析 CT ( p-m ) = MCT し 空隙 モルタル 骨材のし 361 =811 きい値を適切に求める 0-500 0 500 1000 1500 2000 2500 CT 値 頻度 材料構成定量化法によるコンクリート構成材料の定量化 62 62

(4) モニタリング 1 光ファイバによる構造物モニタリングシステム OSMOS: オスモス 比較対象技術 : コンクリートひずみゲージ技術の概要 : OSMOS: オスモス は光ファイバを利用した変位測定方法の 1 つで 光ファイバの中を赤外線が透過するとき 経路の曲線部で赤外線の一部が外部に漏洩し ファイバ内を透過する赤外線の強度が変化するという性質 ( マイクロベンディングの原理 ) を用いて センサー両端間の相対変位を高精度に安定して測定するものである 耐久性が高く 地震時の構造物の応答も測定できるため 構造物のヘルスモニタリング手法としても利用できる 詳細情報 : 巻末資料 No.43 光ファイバーによる構造物モニタリングシステム (OSMOS: オスモス ) 63 63

② FBG 光ファイバセンシング技術による構造物健全性監視 比較対象技術 電気式計測機器 OTDR や BOTDR による光ファイバ計測機器 技術の概要 FBG センシングでは 光ファイバ上に形成された長さ約 1cm の 回折格子の集合体 FBG がセンサの機能を持つ FBG に生じるひずみによって反射波長が変化する特性を利用し 波長変化量を計測することによりひずみを求めることができる FBG センシングは 従 来から使用されている電気式計測技術に対し 非通電 無誘導性により 防爆性が要求 される環境でも計測が可能であり また雷や工事用の高圧電流等によるノイズが生じず データの信頼性低下を防ぐことができるという特長を有する また 信号伝送時の低損 失性により伝送ケーブルを数 km 延長することが可能なため 計測室を任意の遠隔地に配 置することができる さらに光ファイバはガラス製であることから 従来の電気式計測 器に比べ 長期間の使用にも十分耐えうる性能を持っている FBG センシングは 1μの 分解能で読み取り 5μ以下の計測誤差でひずみを検出することが可能であり またひず みゲージのようにセンサ素子として機能する この特性を利用し ひずみだけでなく変 位や傾斜 あるいは水圧等を FBG 上のひずみに変換する機構をもつ TDM 方式による FBG 光ファイバ計測器を開発し 建設分野に適用している 詳細情報 巻末資料 No.42 FBG 光ファイバセンシング技術による構造物健全性監視 透過光 紫外線(UV) 波長 光ファイバ 直径125μm 波長 ひずみ 入射光 クラッド B=neff λ1 t1 回折格子 透過光 FBG3 λ2 λ3 距離L2 t2 距離L3 t3 Δλ2 反射光 Neff 平均実効屈折率 Λ グレーティング周期 λb FBGの反射光波長 波長 t=0 FBG によるひずみ計測 t1 光強度 コア FBG2 反射光 距離L1 光強度 反射光 波長計測装置 FBG1 光強度 紫外線(UV) 入射光 光強度 光強度 入射光 波長 t2 波長 t3 時間 時間分割多重化方式 TDM の原理 ③3Dスキャナによる変状調査 比較対象技術 遠方目視および近接目視観察 技術の概要 覆工コンクリート表面を3Dレーザースキャナで測定し 変状などで段差が発生した箇 所を抽出する 段差箇所は測定後 タブレットPCの画面上で展開したコンター図とし て迅速に確認できる 覆工2 3スパン 約20 30m区間 を一度に計測でき 検 出できる段差の精度は約3mmである 詳細情報 巻末資料 No.33 3Dスキャナによるトンネル変状調査 3Dスキャナ測定状況 64 64 結果の一例

④遠隔操作無人探査機による水中構造診断 比較対象技術 潜水士による構造物の目視点検および簡易点検の代替技術として有用 技術の概要 水中調査ロボット Cetus-Ⅴ は 潜水士による構造物の目視点検および簡易点検の代 替技術である 目視点検の代替えとして 低濁度では LED 照明と操作用 前面 カメラ 高濁度では音響カメラにより 構造物を俯瞰できるとともに LED 照明と計測用カメラ により 高解像度で構造物の状態を観測可能である 詳細情報 巻末資料 No.34 遠隔操作無人探査機による水中構造物診断システム システム概要図 ⑤小径孔による内部診断 棒状スキャナ 比較対象技術 直径 100 コアによる抜き取り調査 技術の概要 一般のコア抜きによるコンクリート検査では 穿孔の際に鉄筋を切断する可能性があり ます 棒形スキャナは 小径の検査孔を穿孔し 孔内にイメージセンサを挿入してコン クリート内部をスキャニングすることにより 鉄筋を切断することなく簡易にコンクリ ート内部の展開画像を作成できる検査技術です 詳細情報 巻末資料 No.36 小径孔を利用したコンクリート構造物の内部診断技術 棒形スキャナ 棒状スキャナ装置の外観と検査手順 65 65

(5) 診断 ( 劣化予測 その他 ) 1 ニューラルネットワークによる鉄筋腐食進行予測比較対象技術 :( 独自技術他 ) 技術の概要 : コンクリート中の鉄筋の腐食状態を構造物の調査結果に基づき予測する手法であり いつどのような補修を行えばよいかの評価 提案の技術的根拠を提供できる 各々の要因と腐食進行の予測モデルが不明確で 多数の要因を複合して取り扱う場合に適する 現状のまま対策を講じない場合の腐食進行を予測する場合や さらに複雑な要因となる断面修復や表面被覆などの対策後の腐食進行について予測する場合には 数値データとして予測結果を得ることが可能である また 劣化予測結果を用いてライフサイクルコスト (LCC) の計算も可能であり 補修方法や補修時期の最適な組み合わせも算定することができる 詳細情報 : 巻末資料 No.48 鉄筋コンクリート構造物のニューラルネットワークによる鉄筋腐食進行予測 ニューラルネットワークによる腐食限界 調査結果を用いる予測方法の一例 2 鋼 コンクリート複合桟橋の LCC 評価システム比較対象技術 : 技術の概要 : 鋼 コンクリート複合桟橋の LCC 評価システムは 鋼管および鉄筋コンクリート部材からなる複合桟橋を対象とした 適切な維持管理のための意思決定支援ツールである その特徴は 以下のとおりである 従来は上部工 下部工を各々個別に対象とした対策の検討が一般的であったが 個別ではなく 一括した検討を考慮することができる 桟橋全体の耐力レベルまでを評価し 桟橋構造全体としての LCC 評価が可能な劣化進行予測モデルを適用した 詳細情報 : 巻末資料 No.49 鋼 コンクリート複合桟橋の LCC 評価システム 66 66

③音波を用いた大深度地中探査技術 比較対象技術 独自技術 他 技術の概要 地中構造物の補修 補強で直上に施設がある場合や 海底トンネル等の場合 掘削やチ ェックボーリングが困難となる そこで 地中にて音波を送受信し位置を解析する装置 とソフトウェアを開発した 深度 100m 以上 伝搬距離 100m 以上の性能の低周波大出 力発振器 深度 100m 以上の水圧に耐えられる 土中直接挿入型の受信機である また 専用の発信器用アンプ 受信機用アンプ 発信側と受信側で正確な時刻を測定できる高 精度同期装置とそれらの解析ソフトを備えている 詳細情報 巻末資料 No.47 音波を用いた大深度地中探査技術 67 67

2.5 調査 診断技術の現状と将来展望コンクリートの調査 診断技術 ( 特に非破壊診断技術 ) については 1930 年代頃から研究が始められている これは 施工によってコンクリートの品質が大きく変動することが当時から懸念されていたためと考えられる 当初は強度推定法が研究対象の中心であったが 測定機器の開発や改善 コンクリートに対する要求性能の多様化などに伴って ひび割れや空隙などの内部欠陥 鉄筋腐食などの探査法などの調査 診断へと発展してきた 1989~1991 年には ( 社 ) 日本コンクリート工学協会に コンクリートの非破壊試験方法研究委員会 が設置され 強度推定法ばかりでなく 電磁波レーダ法 アコースティック エミッション (AE) 法 赤外線サーモグラフィ法などの内部探査法に関する研究について活発な議論が行われた これらの技術は 最近になってコンクリートの品質管理や健全度診断のための補助手段としての重要性が増大しつつある (1) 調査 診断技術の現状 a) 強度推定技術これまでに提案されているコンクリート強度推定のための非破壊検査法は 被測定物を損傷させない純非破壊法と 局部的に損傷させる局部破壊法とに大別できる コンクリートの実強度は破壊してみなければ得られない特性値であるため 破壊せずに推定する反発硬度法や超音波速度法などの純非破壊法では根本的な限界があり推定精度の大幅な向上は期待できない これに対して 局部破壊法はコンクリートを局部的ではあるものの直接破壊することで強度を評価するため 純非破壊法と比較して精度の面である程度信頼性が高いことが期待できる 1 反発硬度法 ( 純非破壊法 ) 反発硬度法は 測定が容易であることから世界各国で最も多用されている方法であり 多くの国で規格または指針が制定されている しかし 反発硬度は使用するハンマーの種類 打撃方向 被測定物の拘束度 コンクリート表面の平滑度などの外的要因 コンクリートの配合条件 養生条件 材齢 中性化などの内的要因などによっても影響を受けるため 強度の傾向を把握することができても強度を高精度に推定することは困難である 2 超音波速度法 ( 純非破壊法 ) 超音波速度法はコンクリート内部の平均的な特性を測定の対象とする試験方法であり 実構造物に適用することが容易であることから 反発硬度法と並んで広く使用されている 従来の超音波速度法は超音波縦波パルスの伝播速度を測定することが多いが 横波の伝播速度を測定して強度を推定する方法も報告されている 3 衝撃弾性波法 ( 純非破壊法 ) 打撃するインパクタ ( 鋼球 ) と受信センサの距離を変化させながら弾性波の伝搬時間を測定し 距離と伝搬時間の関係から弾性波速度を求め 強度推定を行う方法である 衝撃弾性波法によるコンクリート強度推定方法はiTECS 法と表面 2 点法の2 種類に分類され どちらも土木構造物の表面劣化 部材厚さ 内部欠損および強度等を推定する技術として実績のある診断手法である 4 小径コア法 ( 局部破壊法 ) 構造物のコンクリート強度は 通常直径 100mm 程度の抜取りコアを用いた圧縮強度試験によって判定されることが多い 直径 100mm のコアを構造物の複数の箇所から抜き取ることは 経済的および時間的な制約 修復の必要性等を考慮すると実施が困難となる場合がある このため 直径 20mm 程度の小径コアを用いた判定方法が提案され 実用化されている この方法は直径 100mm 程度のコアを抜き取ることによる問題点を解決する有用な方法と考えられる 68 68

5 ボス供試体法 ( 非破壊法 ) ボス供試体とは 構造物と一体化させて成形した供試体 ( 直方体 ) を構造物から割り取ったものである ボス (BOSS) は Broken Off Specimens by Splitting を意味する 構造物のコンクリート強度を直接検査することができる手法で 2005 年に ( 社 ) 日本非破壊検査協会で ボス供試体の作製方法及び圧縮強度試験方法 (NDIS 3424) が規格制定された その翌年に 微破壊 非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定試行について が 2009 年に 微破壊 非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定を用いた品質管理について ( 国官技第 344 号 )) が国土交通省から通知され本格運用されている この試験方法は コンクリート構造物の内部を損傷させることなく容易に供試体の採取ができ 供試体採取後の補修などの問題を解消することができる さらに 採取後のボス供試体は 成形を必要としないため 手間をかけることなくコンクリート構造物の圧縮強度試験 耐久性試験を実施することができる b) ひび割れ診断 内部探査技術コンクリートの調査 診断技術 ( 特に非破壊診断技術 ) は強度推定を目的とするものが多く 金属のように内部探傷を目的とするものは少なかった しかし コンクリート構造物の劣化診断の必要性が高まるにつれて コンクリートのひび割れ 内部欠陥 鉄筋位置などを調査する技術が開発されてきた 1 超音波法 衝撃弾性波法超音波法は 超音波がコンクリート内を伝播する速度を計測し その速度からコンクリート内部の状況を調査する方法である 計測技術の向上に伴って微弱な信号も高感度に検出できるようになったことから 伝播 検出された超音波の周波数特性に着目した内部探査法が確立されつつあり コンクリート構造物の劣化度評価への適用性が検討されている 衝撃弾性波法は コンクリートに対する反射波測定を目的とした試験方法である コンクリート内の鉄筋 空洞 モルタルの浮きなどを測定した研究成果が報告されている 2 赤外線法赤外線は電磁波の一種で 原子と分子の振動回転によって放射される不可視光である コンクリートの内部検査のための赤外線の応用としては 物体から放射される赤外線の強さからその表面温度を測定する方法と 物体に赤外線を照射してその反射吸収特性を測定する方法とがある 前者は赤外線サーモグラフィと呼ばれ 構造物の表面温度の分布状況から仕上げモルタル タイルのはく離箇所 漏水箇所などの調査に幅広く活用されている この方法の最大の特徴は 欠陥部が視覚的に確認できることにある 後者は 物体に光線を照射した場合に物性に応じて光線の反射吸収特性が異なることを利用して物性変化の状況を調査する方法で マルチスペクトル法と呼ばれる検査方法などがある 実用化には今後の研究が待たれる 3 電磁波レーダ法コンクリート中に 500MHz~1GHz 程度の電磁波をアンテナから発射し コンクリート中の異物からの反射波を検出する調査方法である 赤外線サーモグラフィ法と同様にコンクリート中の鉄筋 埋設物 空洞などが視覚的に観察できる 現在 コンクリート中の鉄筋探査方法として広く実用化されており 測定装置を車に搭載して走行しながら道路内の欠陥部などを観測する調査技術にも適用されている 現状では画像の読み取りに経験を有すること コンクリート表面に最も近い鉄筋より深い位置の鉄筋や欠陥の検出が困難なこと リンギングの影響が大きいことなどの問題が残されているが 迅速に測定できかつ適用範囲も広い 69 69

4 X 線法 X 線法は コンクリート中を透過した X 線透過画像からコンクリート内部の状況を調査する方法である コンクリートの内部探査のための非破壊検査法としては最も直接的で確実な方法である コンクリートの X 線吸収が著しいため 携帯式 X 線装置を用いた場合の X 線透過能力は前方散乱線を除去するために X 線グリッドを使用した場合で 45cm 程度が限界であるとされる このため 近年 X 線源の高エネルギー化や検出側に発光倍増管を用いたシステムの開発 パソコンを使用した画像処理による画質の向上が試みられている 5 アコースティック エミッション (AE) 法アコースティック エミッションとは 固体が破壊するときに発生する応力波のことをいう したがって 前述の各種非破壊検査法が特定時期におけるコンクリートの状態を調査する方法であるのに対して 非破壊検査法としての AE 法は構造物の供用時 ( 荷重変動時 ) における動的非破壊検査法として位置づけられるものである また カイザー効果を利用してその構造物が過去に受けた荷重の大きさを推測する方法や AE 発生頻度の多少により コンクリートの劣化状態を予測する方法にも適用されている さらに コンクリートの破壊メカニズムの解明や破壊源探査のための有効な手段として活用されている c) 鉄筋腐食診断技術コンクリート中の鉄筋の腐食度を早期にかつ非破壊的に推定する方法を確立することは コンクリート構造物の適切な補修 補強時期を決定することや残存供用年数を判定する上できわめて重要である 現在までに提案されているコンクリート中の鋼材腐食を診断する各種非破壊検査法としては 自然電位 分極抵抗法 コンクリート抵抗法 交流インピーダンス法 磁気法 AE 法 衝撃弾性波法などがある 1 自然電位法 分極抵抗法自然電位法とは 鉄筋が腐食することによって生じる腐食電流の結果としての電位を照合電極による電位との差として測定するものであり 鉄筋腐食度の非破壊推定法として最も多用されている方法である ASTM( 米国材料試験協会 :American Society for Testing Materials) および BS( 英国規格 :British Standards) では 既に鉄筋腐食度の推定方法として標準化している また 分極抵抗法とは 鉄筋表面の電位が変化する現象から腐食速度の指標を得る診断方法である 自然電位法と分極抵抗法については 最近多くの研究者によって自然電位に及ぼすコンクリートの含水率 炭酸化深さ 塩素イオン量 かぶり厚さなどの影響について実験と解析の両面から研究されている 自然電位は比較的容易に測定できるため 鉄筋腐食診断のための有用な方法として期待されているが 実用面においては各種因子の影響について必ずしも十分に解明されていない状態であり 今後の研究の進展が望まれている (2) 今後の展望と課題 1 調査 診断技術の精度向上たとえば 非破壊検査でコンクリート強度を推定する場合 種々の方法 強度式が提案されており 得られる値もどれを選択するかで変化する このように 維持管理で的確な判断をするには 検査技術の精度向上が望まれる また 各検査の精度向上を期待するだけでなく 別の非破壊検査によるクロスチェックや微破壊検査などの詳細設計を行うことも必要となる 2 非破壊検査技術の開発 応用コンクリートの分野では 強度推定を目的とした非破壊検査技術以外はコンクリートの調査に特化して開発された技術は少なく 金属などの他分野で開発された技術をそのまま利用していることが多い 70 70

今後は他分野の研究にも注視し 高性能検査機器を開発することが重要となると考えられる 特に医療分野で進展の著しい X 線トモグラフィ法 超音波断層写真法 核磁気共鳴法などのコンクリート分野への適用が期待される 3 非破壊検査技術の積極的な活用コンクリートの非破壊検査は 構造物に何らかの劣化 損傷の兆候が現れたときに その状況や原因を特定する目的で使用されることが多く 補助的 補完的な利用であったといえる 今後はコンクリート施工時の品質管理 ヘルスモニタリング 性能規定に対応した ( 継続的な点検手法として ) より積極的な活用方法について検討する必要がある 4 総合的調査 診断システムの確立個別の調査 診断技術を組み合わせて総合的調査 診断システムを開発することが重要な課題である 一例として 車両搭載型トンネル内覆工コンクリートの自動診断システム等が挙げられる また 調査 診断結果の評価システムとして ファジー集合論やニューラルネットワークに基づくエキスパートシステムの開発が有効と考えられる 既存施設の維持管理 更新は 我が国の社会基盤整備における最も重要な課題の 1 つである このため 精度の高い調査 診断技術が不可欠であり 既存構造物の環境データや劣化の経年データを収集 分析 データベース化し さらに非破壊検査技術等の劣化診断技術の精度向上を図っていく必要がある また 構造物の調査 診断技術は発展途上にあって 完成されたものではないことを踏まえた上で 各々の技術の長所をうまく利用していくことが今後の維持管理 更新には必要と考えられる < 参考文献 > 1) 2013 年制定コンクリート標準示方書 維持管理編 : 土木学会 平成 25 年 10 月 2) 効率的な補修 補強を目指して : 牛島栄 コンクリート工学 Vol.48 No.5,2010 年 5 月 3) 港湾の施設の維持管理技術マニュアル : 沿岸技術研究センター 平成 19 年 10 月 4) 港湾コンクリート構造物維持管理実務ハンドブック : 沿岸技術研究センター 平成 21 年 9 月 5) 水力発電設備の凍害実態調査 : 小山慎一郎ほか 電力土木 No.330 2007.7 6) 電力土木コンクリート構造物の劣化実態調査 : 参納千夏男ほか 電力土木 No.333 2008.1 7) 凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化予測に関する基礎的研究 : 野口博章 学位論文 2007.9 8) コンクリート工学耐久性 寒中コンクリート詳説 : 山海堂 1993.3 9) コンクリート構造物の凍害劣化要因の検討 : 草間祥吾ほか 寒地土木研究所月報 No659 2008.4 10) 北海道におけるコンクリート構造物維持管理の手引き ( 案 ): 北海道土木技術会コンクリート研究委員会コンクリート維持管理小委員会 2006.3 11) コンクリート診断技術 14[ 基礎編 ]: 日本コンクリート工学協会 2014 12) 北陸支社管内コンクリート構造物の補修補強対策実施マニュアル ( 案 ): 日本道路公団北陸支社 2002.3 71 71