3 労働条件 - これだけは知っておきたい法的知識 - わりましちんぎん給料 ( 賃金 ) については 最低賃金 や残業した時の 割増賃金 など 労働時間や休暇については 8 時間労働制 や 年次有給休暇 などが法律で定められていま 1 賃金 (1) 賃金とは 給料 手当 賞与 ( ボーナス ) などの名称にかかわらず 働いたこと の対償として支払われるすべてのもの をいいます 労働基準法第 11 条 昇給 諸手当 ( 通勤手当 住宅手当 家族手当など ) 賞与や退職金などについては 法律に定めがありません 労働契約 就業規則などで決められることです (2) 賃金の支払方法は 1 通貨で 2 直接本人に 3 全額を 4 毎月 1 回以上 5 一定の期日を定めて 支払わなければならないことになっています 労働基準法第 24 条 賃金を通貨以外の現物で支払うことは 原則的に禁止されています 銀行振込は 労働者の同意があれば可能です 所得税の源泉徴収など他の法令で定めがある場合や 労働組合費 社内預金など労使が書面による協定で合意した場合については 賃金からの控除が認められます ここがポイント! - 最低賃金 - 大阪府の最低賃金は時間額 936 円です ( 平成 30 年 10 月 1 日から ) 最低賃金制度 とは 最低賃金法に基づいて 国が賃金額の最低限度を定めたものです 使用者は その金額以上の賃金を支払わなければなりません 労働契約で最低賃金に達しない賃金額を定めても その部分は無効とされ 最低賃金が労働条件になります 最低賃金には 都道府県ごとに決定される 地域別最低賃金 と 特定の業種について定められた 特定最低賃金 の 2 種類があり 両方の最低賃金が同時に適用される場合には いずれか高い方の最低賃金が適用されます 地域別最低賃金は パート アルバイト等を含むすべての労働者に適用されます 1
2 労働時間 - 仕事の始まりから仕事の終わりまで - (1) 労働時間とは 労働者が使用者の指揮監督のもとにある時間のことです 実際に仕事をしている時間のほか 仕事の準備や後始末なども 使用者の命令があればその時間も労働時間となります 1 法定労働時間と所定労働時間 労働基準法では 原則として 1 日の労働時間を 休憩時間を除き 8 時間以内 1 週間の労働時間を 休憩時間を除き 40 時間以内と定めています これを法定労働時間といいます ( ただし 従業員 10 人未満の商業 映画 演劇業 ( 映画の製作の事業を除く ) 保健衛生業 接客娯楽業については 特例措置で週 44 時間以内です ) 労働基準法第 32 条 第 40 条 所定労働時間とは 労働契約や事業場の就業規則で定められている労働時間のこと です 法定労働時間よりも長い所定労働時間を定めることはできません 2 変形労働時間制業務の繁閑や特殊性に応じて 一定の要件の下に 一定期間を平均して週 40 時間を超えない範囲で 1 日及び 1 週間の法定労働時間を緩和する制度です 変形労働時間制を実施する場合には 就業規則や労使協定で定めておく必要があり さらに労働基準監督署長への届出が必要な場合があります 変形労働時間制には 1 か月単位 1 年単位の変形労働時間制 労働者が自ら始業時刻及び終業時刻を決定できるフレックスタイム制などがあります 労働基準法第 32 条の 2~5 3みなし労働時間制と裁量労働制変形労働時間制のほか 法定労働時間を弾力的に運用する制度として 事業場外で労働し 労働時間の算定が難しい場合に所定労働時間労働したものとみなされる みなし労働時間制 や 業務の性質上 業務の遂行や方法や時間の配分などに関し 労使協定や労使委員会の決議で定められた時間を労働したものとみなす 裁量労働制 があります これらの制度は対象となる職種 業務が限定的で 労使協定の締結等 具体的な制約や手続きが法律で定められています 労働基準法第 38 条の 2~4 2
3 休憩時間使用者は 労働時間が 6 時間を超える場合においては少なくとも 45 分 8 時間を超える場合においては少なくとも 1 時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません また 休憩時間は原則として一斉に与え 自由に利用させなければなりません 労働基準法第 34 条 4 休日休日とは 労働契約において労働義務がないとされている日をいいます 使用者は 労働者に対し 毎週少なくとも 1 日か 4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えなければなりません これを 法定休日 といいます 労働基準法第 35 条 5 時間外 休日労働と割増賃金 (1) 時間外労働 とは 所定労働時間又は法定労働時間を超えて働くこと 休日労 働 とは 法定休日に働くことをいいます (2) 使用者が 法定労働時間 (1 日 8 時間 : 週 40 時間 ) を超えて または法定休日に働かせるためには あらかじめ 労働者の過半数で組織する労働組合 過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結んで 所轄の労働基準監督署長に届けておかなければなりません この協定は 労働基準法第 36 条に基づくことから 36( さぶろく ) 協定といわれています 労働基準法第 36 条 時間外労働については 長時間にならないよう 36 協定の上限時間の基準が設け られています 時間外労働に関する基準 ( 一般労働者の場合 ) ( 単位 : 時間 ) 期間 1 週間 2 週間 4 週間 1 か月 2 か月 3 か月 1 年 限度 15 27 43 45 81 120 360 H21..5..29 厚生労働省告示第 316 号 P91 働き方改革関連法について の Ⅰ1 参照 3
(3) 深夜労働 とは 午後 10 時から午前 5 時までの間に働くことをいいます (4) 法定時間外労働 休日労働 深夜労働をさせた場合 使用者は労働者に対し 通常 の賃金より割り増しした賃金を支払わなければなりません 労働基準法第 37 条 各々の割増率と計算式は以下のとおりです 1 法定労働時間を超える残業 2 法定休日の労働 3 深夜労働 25% 以上 ( 注 1) 時間外労働が深夜労働に及んだ場合 50% 以上 法定休日に深夜労働をした場合 35% 以上 ( 振替休日は除く ( 注 2)) 60% 以上 25% 以上 注 1 1 か月 60 時間を超える時間外労働については 使用者は労働者に対し 50% 以上の割増賃金を支払わなければなりません 注 2 法定休日に労働をしても 事前に休日の振替を行った場合 割増賃金が不要で すが 振替によって週の労働時間が法定労働時間を超えるなどの時間外労働が 発生した場合は 割増賃金の支払が必要となります 注 3 1 か月 45 時間などの限定基準 ( 限度時間 ) を超える時間労働については 使用者は 25% を超える割増賃金率とするよう努めることとされています 労働基準法第 36 条第 2 項 P91 働き方改革関連法について の Ⅰ4 参照 ここがポイント! - 割増賃金の計算式 - 通常賃金の 1 時間分の賃金 割増率 時間数 例えば 時給 1,000 円で 深夜労働にならない範囲で法定時間外労働を 2 時間した場合 1,000( 円 / 時間 ) 1.25 2( 時間 )= 2,500( 円 ) となります 月給制の場合 通常の賃金の 1 時間分の額は 月の所定賃金額 月 ( 平均 ) 所定労働時間数で計算します 月 ( 平均 ) 所定労働時間数 =1 日の所定労働時間数 年間所定労働日数 12 か月 通常の賃金の 1 時間分の額を計算する際 計算から除外できる手当は家族手当 通勤手当 別居手当 子女教育手当 住宅手当 臨時に支払われた賃金 1 か月を超える期間ごとに支払われる手当です これ以外の手当は 通常の賃金に含めなければなりません 手当の名称が除外できる賃金と同一であっても 趣旨や金額の根拠によっては算入する必要があります 労働基準法第 37 条第 5 項 4
6 年次有給休暇 - 休日以外の休み - (1) 年次有給休暇とは 賃金をもらいながら 自分の希望する所定労働日に休みを取ることができる制度です 会社があるかないかを決めるのではなく 労働基準法で定められた権利です 労働基準法第 39 条 (2) 労働者が 雇われた日から 継続して働き 働く日と決まっている日数 ( 所定 労働日数 ) の 8 割以上出勤した場合 使用者は 10 日の有給休暇を与えなければなり ません その後 労働者が 1 年を経過するごとに同じく所定労働日数の 8 割以上出勤 すれば 使用者は < 表 1> の日数の有給休暇を与えなければなりません P91 働き方改革関連法について の Ⅰ3 参照 < 表 1> 年次有給休暇の付与日数 週所定労働日数が 5 日以上または週所定労働時間が 30 時間以上の労働者 勤続年数 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 以上 付与日数 10 日 11 日 12 日 14 日 16 日 18 日 20 日 (3) パート アルバイトなど 所定労働時間 日数の短い労働者にも その週または年あたりの所定労働日数に応じて 使用者は < 表 2> の日数の有給休暇を与えなければなりません 労働基準法第 39 条第 3 項 < 表 2> 年次有給休暇の付与日数 ( 短時間労働者 ) 週所定労働日数が 4 日以下かつ週所定労働時間が 30 時間未満の労働者 週所定労働日数 4 日 3 日 2 日 1 日 勤続年数年間所定 6 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年労働日数 以上 169 日 ~216 日 7 日 8 日 9 日 10 日 12 日 13 日 15 日 121 日 ~168 日 5 日 6 日 6 日 8 日 9 日 10 日 11 日 73 日 ~120 日 3 日 4 日 4 日 5 日 6 日 6 日 7 日 48 日 ~72 日 1 日 2 日 2 日 2 日 3 日 3 日 3 日 5
過労死等防止対策推進法について < ものしり豆知識 > 過労死をゼロにし 健康で充実して働き続けることのできる社会へ 毎年 11 月は 過労死等防止啓発月間です 近年 わが国において過労死等が多発し大きな社会問題となっています 過労死は 本人はもとより その遺族や家族だけでなく社会にとっても大きな損失です 過労死等がなく 仕事と生活を調和させ 健康で充実して働き続けることのできる社会を実現するため 平成 26 年 11 月に過労死等防止対策推進法が施行されました 同法では 過労死等の防止のための対策として 国が 調査研究 啓発 相談体制の整備 民間団体の活動に対する支援などを行うことが定められています 大阪府や市町村においても 国と連携し 啓発などに取り組んでいくこととされています 6
年少者の保護 1 最低年齢児童 ( 満 15 歳に達した日以後の最初の 3 月 31 日が終了するまでの者 ) を労働者として使用することは 禁止されています ただし 非工業的事業で児童の健康 福祉に有害でない軽易な業務や映画制作や演劇など事業の種類等によっては 労働基準監督署長の許可を受けて児童を使用することができるという例外があります 労働基準法第 56 条 2 未成年者の労働契約親権者または後見人 ( ) が 未成年者に代わって労働契約を締結することは禁止されていますので 未成年者の労働契約は 未成年者が自ら締結することになります ただし 未成年者が締結した労働契約がその未成年者に不利であると認められる場合には 親権者 後見人または所轄の労働基準監督署長は その労働契約を将来に向かって解除することができます 未成年者は 独立して賃金を請求することができます 親権者または後見人は 未成年者の賃金を代わって受け取ってはいけません 労働基準法第 58 条 第 59 条 後見人 親権者のいない未成年者の財産管理などを行う人 3 深夜業年少者 ( 満 18 歳未満 ) を深夜 ( 午後 10 時 ~ 午前 5 時 ) に働かせることは原則として禁止されています ただし 次の例外があります 交替制で使用する満 16 歳以上の男性 交替制による事業において労働基準監督署長の許可により午後 10 時 30 分まで労働させる場合など 農林水産業 保健衛生業 電話交換業務の従事者 非常災害時の時間外 休日労働 労働基準法第 61 条 7
4 危険有害業務の就業制限及び坑内労働の禁止年少者 ( 満 18 歳未満 ) を 危険な業務 重量物 毒劇薬を取扱う業務 有害ガスの発生場所 高温 高圧の場所等で働かせることは禁止されています また 坑内 ( ) で労働させることも禁止されています 労働基準法第 62 条 第 63 条 坑内 炭鉱 鉱山やトンネルの中 < ものしり豆知識 > - いやゆるブラック企業ってどんな会社なの - ブラック企業についての明確な定義はありませんが 一般的な特徴として 1 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す 2 賃金不払残業やパワーハラ スメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い 3 このような状 況下で労働者に対し過度の選別を行う などが挙げられています このような企業に就職してしまった場合の対応としては 第一義的には会社に対 して問題点の改善を求めていくことが考えられます しかしながら 新入社員が単 独で会社に問題点の改善を求めて交渉等をするのは現実的には非常に難しいと考え られます したがって 一人で抱え込まず 問題点に応じて 外部の関係機関や労 働組合に相談することも有効な手段と考えられます ( 厚生労働省ホームページ 確かめよう労働条件 より引用 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/zenpan/q4.html) 8