事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

Similar documents
事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部 運輸交通 情報通信グループ第二チーム 1. 案件名国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 和名国際空港保安能力強化プロジェクト英名 The Project for Security Improvement of International Ai

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

2008年6月XX日

ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部法 司法チーム 1. 案件名国名 : ブラジル連邦共和国案件名 : ( 和文 ) 地域警察活動普及プロジェクト ( 英文 )Project on Nationwide Dissemination of Community Policing 2. 事業の

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

政府説明資料

政府説明資料

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

事業事前評価表

事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agr

は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Pres

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C E8ED88ABC F288DC58F4994C5816A2E646F63>

事業事前評価表

評価調査結果要約表 1. 案件の概要 国名 : バングラデシュ人民共和国 案件名 : 小学校理数科教育強化計画フェーズ 2 分野 : 教育 - 初等教育 援助形態 : 技術協力プロジェクト 所轄部署 : 人間開発部基礎教育第一課 協力金額 ( 評価時点 ): 約 3.84 億円 協力期間 (R/D)

(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

プロジェクト ( 年 ) 独 (KfW): 西ナイル地区に特化した配電網の拡充 小水力の開発 ( 年 ) 3. 事業概要 (1) 事業の目的ウガンダにおける産業活性化が期待できる地方において 長距離配電線 (33kV 配電線 ) の資機材の調達 据付を行うことによ

<4D F736F F D E968BC68E96914F955D89BF955C C90BC8C6F8DCF89F1984C816A8DC58F4994C52E646F63>

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) JST 中間評価 1 の実施要領 平成 29 年 6 月改定 JST 国際部 SATREPS グループ 1. 地球規模課題国際科学技術協力 (SATREPS) プロジェクトの中間評価について SATREPS は JST による研究支援お

政府説明資料

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C D935393B990AE94F58E968BC B A816A2E646F63>

政府説明資料

事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

事業事前評価表

事業事前評価表

政府説明資料

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

の理解と参加を促進し, 開発協力を支える社会的基盤をより一層広げ, 強化するために, NGO/ 市民社会 (CSO) との連携が推進されるべきことが謳われたところである 以上の経緯と背景の下に NGO と ODA の連携に関する中期計画 ~ 協働のための 5 年間の方向性 ~ が策定されることとなっ

政府説明資料

(Microsoft Word - \216\226\221O\225]\211\277\225\\ doc)

政府説明資料


研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

Microsoft Word - 事前評価

架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 SATREPS) 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名 ( 科学技術 ) 食料安全保障を目指した気候変動対応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装英名

区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

事業事前評価表

事業事前評価表

政府説明資料

政府説明資料

政府説明資料

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ 1. 案件名国名 : バングラデシュ国案件名 : 和名橋梁維持管理プロジェクト 有償勘定技術支援 英名 Bridge Management Capacity Development Project 2. 事業の背景と必要性

番号 : 国名 : バングラデシュ担当部署 : 人間開発部基礎教育グループ基礎教育第一チーム案件名 : 小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ 3 詳細計画策定調査 ( 評価分析 ) 1. 担当業務 格付等 (1) 担当業務 : 評価分析 (2) 格付 :3~4 号 (3) 業務の種類

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

政府説明資料

政府説明資料

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C F8BC F91BA8A4A94AD B D815B83938E968BC6816A2E646F63>

仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

<4D F736F F D A F E968BC68E96914F955D89BF955C E646F63>

政策目標 6-2: 開発途上国における安定的な経済社会の発展に資するための資金協力 知的支援を含む多様な協力の推進 1. 政策目標の内容自由かつ公正な国際経済社会の実現やその安定的発展に向け 開発途上国における貧困の問題や気候変動等の地球環境問題等の課題への対応を含む国際的な協力に積極的に取り組むこ

政府説明資料

第 3 章事業事前評価表 ( 技術協力プロジェクト ) 1. 案件名ブルキナファソ国学校運営委員会支援プロジェクト 2. 協力概要 (1) プロジェクト目標とアウトプットを中心とした概要の記述本プロジェクトは ブルキナファソ国内 2 州 ( 中央プラトー州 東部中央州 ) において 州 県 CEB

アクションプランの構成

内部統制ガイドラインについて 資料


援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部資源 エネルギーグループ第二チーム 1. 案件名国名 : ザンビア共和国案件名 : 和名ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康 経済リスク評価手法および予防 修復技術の開発英名 The Project for Visualization of

文部科学省セミナー 国際協力機構における大学との連携(国際協力機構)

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

事業事前評価表

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

事業事前評価表

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

新設 拡充又は延長を必要とする理地方公共団体の実施する一定の地方創生事業に対して企業が寄附を行うことを促すことにより 地方創生に取り組む地方を応援することを目的とする ⑴ 政策目的 ⑵ 施策の必要性 少子高齢化に歯止めをかけ 地域の人口減少と地域経済の縮小を克服するため 国及び地方公共団体は まち

<4D F736F F D B834E90568B4B C48C8F8E96914F955D89BF955C979D8E9690E096BE8DC58F492E646F63>

(2) 当該国における地震防災分野の開発政策と本事業の位置づけネパール政府は 2009 年に災害リスク国家管理戦略を制定し 対象災害の一つとして地震を上げている 地震防災分野は 2009 年に設置された National Platform for Disaster Risk Reduction にお

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

第1章 評価の目的と実施方法

DDL12Prnt001

自己点検・評価表

< F2D E968BC681698E968CE3816A817A C8250>

17 石川県 事業計画書

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

untitled

事業事前評価表

事業事前評価表_新様式

事業事前評価表

政府説明資料

27 年度当初予算 28 年度要求主な増減理由円)平 7 単 位 2 : 8 百年万度予訳(成 ( 目 ) 啓発広報費 2 平成 26 年度限りの経費 ( 重要事項に関する戦略的国際広報諸費に統合 ) 計 0 0 算内

Microsoft PowerPoint 榔本è−³äººè³⁄挎.pptx

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

政府説明資料

ASEANにおける教育の充実と経済成長

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

研究内容 2016 年 9 月時点 自治体の協力を得つつ 国立教育政策研究所や外部の研究者 有識者により実証研究を実施 関連施策の費用と効果について把握 分析 研究テーマ実施主体研究内容 ( 学力 非認知能力等 ) 国立教育政策研究所 埼玉県 大阪府箕面市等 国立教育政策研究所等 都道府県 :6 程

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

政府説明資料


政府説明資料

(3) その他 全日制高校進学率の向上を図るため 更に公私で全体として進学率が向上するよう工夫する そのための基本的な考え方として 定員協議における公私の役割 を次のとおり確認する 公立 の役割: 生徒一人ひとりの希望と適性に応じて 多様な選択ができるよう 幅広い進路先としての役割を担い 県民ニーズ

指標名単位 4 年度 5 年度 6 年度 7 年度 8 年度 9 年度 事業の活活動量動 指実標績の数値化 計画 実績 記述欄 数値化できない場合八代市と北海市との友好関係を深めるため受入れを行うものであり 数値化することは困難である 指標名指標設定の考え方単位 4 年度 5 年度 6 年度 7 年

Transcription:

- 貧困削減戦略支援 (PRS) 無償の PDCA サイクルの強化 - 財政支援型援助を巡る国際的な議論のポイント 1. 被援助国政府 ドナー双方が注意すべき点 1 より効果を意識した現地プログラムの運営 2 モニタリング 評価の共同実施による効率性 信頼性の向上 国際 NGO 等が独自のセクター レビューを実施しているケースもあるが 参加ドナーが単独でモニタリング 評価を行うケースはない模様 3 現地プログラムに関する被援助国政府機関およびドナーの現地実施体制の強化 4 被援助国政府のアカウンタビリティの向上 2. ドナーが注意すべき点 1 資金拠出に係る基本方針の明確化 2 他援助モダリティの補完性 PRS 無償の PDCA サイクル強化取組み状況 (2013 年 2 月現在 ) 1. 現地プログラム形成プロセス 合同モニタリング 評価への参画の強化 ( 技術協力プロジェクトや専門家等との戦略的連携 ) 2. 事前評価 の実施および公開 導入 公開を開始 ( 別添 事前評価表 : バングラデシュ貧困削減支援無償 ( 教育 ) http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2012_1260700_1_s.pdf 複数年度継続する案件については 基本的に毎年度事前評価表を作成し公開 支援対象プログラムの前年の達成状況を事前評価表に記載 < 確認事項 > PRS 支援対象プログラムの内容 我が国及び JICA の援助方針との整合性 他のドナーの対応と役割分担 先方政府 ドナー共同の実施 モニタリング評価体制 日本の他のプロジェクト型援助との連携 効果 先方政府 ドナー共同作成したリザルツ フレームワークの指標に基づく成果の達成状況 ( 毎年度 ) 別添 1

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バングラデシュでは 1990 年に義務教育法を制定し 同年の 万人のための教育世界会議 にて 万人のための教育 (EFA: Education for All)( 基礎教育の完全普及を目指す国際枠組み ) に署名後 ドナーの支援を得ながら 初等教育の拡充を図ってきた その結果 初等教育の総就学率は 1990 年の約 76% から 2010 年には約 97% に向上 純就学率は 1990 年の 60.5% から 2002 年には 86.7% に 2010 年には 95.6% に向上した しかし 第 5 学年までの修了率は 1990 年の 40.7% から 2005 年には 52.1% 2010 年には 60.2% と 依然として低い水準にあるほか 進級率 内部効率 ( 小学校卒業に要する年数 ) 等も更なる改善が必要な状況である これらの指標の低さは 特に教育の質の低さがその大きな要因の一つと考えられることから 教育の質の更なる改善が必要とされている 2008 年に実施された全国学習到達度評価においては 各教科の学習到達目標 ( 全項目 ) を十分に達成した 5 年生児童の割合は 算数 (3.22%) 理科(2.38%) 英語(2.24%) において低い数値となっており 児童の学習理解度が低い水準に留まっていることが課題とされている 特に教育の質の改善に向けて喫緊に対応が必要とされている事項としては 学校現場での教授法と児童の学習の向上 カリキュラムと教科書の改訂 教員研修の実施能力の強化等があげられる (2) 当該国における初等教育セクターの開発政策における本事業の位置づけと必要性バングラデシュ政府は 第 6 次五か年計画 (2011~2016) において 人材開発( 教育 保健 ) を重点分野の 1 つとして位置づけており 貧困削減と経済成長には質の高い教育の普及が必須であるとしている 同政府は 1990 年に義務教育法を施行し初等教育を義務化し EFA の署名 初等教育開発計画 (1998/99 年度 ~2003/04 年度 )(Primary Education Development Program:PEDP) 第 2 次初等教育開発計画 (2004/05 年度 ~2009/10 年度 ) (PEDP2) を実施するなど 初等教育の完全普及を目指してきた 2010 年には 政府のミレニアム開発目標や EFA 達成へのコミットメントを反映した国家教育政策が承認された PEDP2 により 就学率など一定の量的側面の改善を果たしたが 質的問題は依然として課題となっており その対応として PEDP2 の後継プログラムである 第 3 次初等教育開発計画 (2011/12 年度 ~2015/16 年度 )(PEDP3) が策定された PEDP3 は PEDP2 で改善が不十分であった課題への対応に引き続き取り組みつつ これまでの 教育の質の改善 をさらに具体化し 質の高い教育の完全普及 を目標に掲げながら より具体的には 教室レベルにおける子どもの学習の改善 を目標として 1 学習と指導の改善 2 参加と格差是正 3 分権化と効果向上 4プログラム計画 運営能力強化の 4 つのコンポーネントを重点分野として実施する計画となっている PEDP2 PEDP3 ともに ドナーは主にセクター財政支援型の協力によりプログラムの実施を支援してきており PEDP3 では参加する 9 ドナー全てが財政支援を実施している 我が国も PEDP2 においては技術協力のみを実施していたが PEDP3 では 技術協力と合わせて財政支援による協力も行っている 2012 年 5 月に PEDP 3 の初年度の進捗 課題 次年度計画について協議する合同年次評価が実施され 年次活動計画に沿って順調に活動は実施されており 初等教育就学率や修了率など主要な指標は改善傾向にあることが確認された 一方で 児童の学習達成度等における地域間 学校間格差などの課題は依然深刻であり 次年度以降も引き続き PEDP3 の中で我が国が重点としている教育の質の改善 ( 児童の学力向上 教師教育強化 教科書改訂等 ) 及び格差是正に係る取り組みを強化していくことが合意された

(3) 初等教育セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績 JICA 国別分析ペーパーにおいて 社会の脆弱性克服のため 基礎教育を含む人間開発が重点課題であると分析しており 対バングラデシュの国別援助方針 (2012 年 6 月 ) における重点目標としても 人間開発 が定められ その下に 基礎教育の質の向上 プログラムを設けて 基礎教育への支援を実施することとしている JICA は PEDP2 の枠組みの下で 小学校理数科教育強化計画 (2004 年 ~2010 年 ) を実施し 教員用指導書の開発とそれを用いた教授法改善への技術協力を実施してきた 教員用指導書は PEDP2 の資金により全国の教員訓練校および小学校に配布されるなど 我が国の技術協力の成果はバングラデシュ政府および他ドナーから高く評価された PEDP3 においては 引き続き教育の質の改善に資する技術協力プロジェクト ( 小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ 2(2010 年 ~2016 年 ) ) ボランティア( 小学校教諭 理数科教師 ) 個別専門家( 教育アドバイザー ) による支援を行うとともに PEDP3 を支援する全ドナー間の合意文書に基づき貧困削減戦略支援無償による財政支援も実施することとし 他ドナーと共同でのモニタリング等を通じてプログラムの円滑な実施を支援している 我が国は PEDP3 の初年度から 貧困削減戦略支援無償による財政支援を実施している (4) 他の援助機関の対応 PEDP3 は 全 9 ドナー ( アジア開発銀行 オーストラリア カナダ イギリス 欧州連合 (EU) 日本 スウェーデン 国連児童基金 (UNICEF) 世界銀行) がその実施を支援している 我が国を含む全ドナーが財政支援を実施している 3. 事業概要 (1) 事業の目的本事業は バングラデシュ政府の PEDP3 において 他ドナーと協調しつつ被援助国の制度 枠組みを最大限活用することを前提とした財政支援を行うことにより プロジェクト型支援等の成果の政策への反映と普及展開を図り もって PEDP3 のプログラム目標である質の高い初等教育の完全普及の達成に寄与する (2) プロジェクトサイト / 対象地域名バングラデシュ国全土 (3) 総事業費 / 概算協力額支援対象プログラム全体の想定資金規模総額 :8,366.5 百万ドル ( 約 6,693 億円相当 )(5 年間 ) うち 本事業概算協力額 ( 日本側 ):25 億円 ( 約 20 百万ドル相当 )(5 年間 ) 今次 (2012 年度 ) 5 億円 (4 百万ドル相当 ) アジア開発銀行 320 百万ドル ( 当初 4 年間 ) オーストラリア 56 百万ドル カナダ 65 百万ドル イギリス 190 百万ドル EU70 百万ドル スウェーデン 45 百万ドル UNICEF0.5 百万ドル 世界銀行 300 百万ドル ( 当初 4 年間 ) バングラデシュ政府約 7,300 百万ドル (4) 事業実施スケジュール ( 協力期間 ) 支援対象プログラム :2011 年 7 月 ~2016 年 6 月 (60 か月 ) 本事業の贈与実行時期 :2013 年 1 月 ( 予定 ) (5) 事業実施体制 1) 支援対象プログラム責任機関 : バングラデシュ国初等 大衆教育省 2) 先方政府 参加ドナー共通のモニタリング 評価実施体制 : PEDP3 の実施 モニタリング 評価については 全てバングラデシュ政府と参加ドナーとが合同で実施することとし 具体的な方法については合意文書を締結し確認している ドナー資金はバングラデシュ政府の口座に直接拠出され バングラデシュの財政制度に基づいて管理 支出される ドナー資金を含む予算執行管理は初等教育局財務課が担当し 四半期ごとに財務報告書を作成し 2

参加ドナーに提出される 1 年間の成果を合同で評価し 次年度の計画について協議を行う場として 合同年次レビューが年 1 回 5 月に開催される この結果を踏まえて 次年度の年次活動計画が策定され 7 月から新年度が開始する その他に プログラムの進捗を確認する年 2 回の合同進捗確認会合 資金支出と調達の適切性を確認する年 1 回の合同年次会計レビューがある 我が国も このすべてのプロセスに参画し 進捗の確認等を行っている 3) 現地における日本側の ドナー合同モニタリング 評価への参加体制大使館の担当官及び JICA 事務所の教育担当所員及び現地職員 教育アドバイザー専門家が 各種会合等へ参加している (6) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境社会配慮 1 カテゴリ分類 :B 2 カテゴリ分類の根拠 : 本協力対象事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) に掲げる影響を及ぼしやすいセクター 特性及び影響を受けやすい地域に該当せず 環境への望ましくない影響は重大ではないと判断されるため 3 環境許認可 : 本事業に係る環境影響評価 (EIA) 報告書は 同国国内法上作成が義務付けられていない 4 汚染対策 : 教育関連施設の工事中に発生する粉塵及び騒音については 同国国内の排出基準を満たすよう仮囲いの設置及び作業時間の制限等の対策がとられる予定である また 施設増設による汚水氾濫を防ぐために 施設設計時に施設からの排水を考慮した排水路整備等の対応が取られる予定である 5 自然環境面 : 事業対象地域は 国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず 自然環境への影響は最小限であると想定される 6 社会環境面 : 本事業は 一部用地取得及び非自発的住民移転を伴う可能性がある 移転は同国国内手続き及び SMF( 社会管理フレームワーク ) に沿って取得が進められる 7 その他 モニタリング : 本事業では インフラ整備を実施する地方行政工学局が工事中に 大気質 騒音等をモニタリングする 2) 貧困削減促進 : 就学率等における家計の所得による格差の縮小を目指した活動を支援 3) 社会開発促進 : 就学率等における男女間格差の解消を目指した活動を支援 (7) 他事業 ドナーとの連携 役割分担 1) 日本の他事業との連携 小学校理数科教育強化計画フェーズ 2(2010 年 ~2016 年 ) 及びボランティアによる現場レベルでの活動及び個別専門家による政策レベルでのインプットと連携 財政支援を通じて PEDP3 に参画することにより PEDP3 の枠組みの中で技術協力の成果を政策 制度に反映し 広く初等教育セクター全体に資することが期待される 2) 参加ドナーとの連携 役割分担 PEDP3 を支援する他ドナーは主に財政支援による協力を行っており PEDP3 参加ドナーとは共同で PEDP3 の円滑な実施とプログラム目標の達成を支援している (8) その他特記事項特になし 4. 外部条件 リスクコントロールバングラデシュ政府の初等教育にかかる方針が変更されず PEDP3 が計画通り継続される 5. 過去の類似案件の評価結果と本事業への教訓 (1) 類似案件の評価結果インドネシア国の 開発政策支援借款 の事後評価結果等から 財政支援型の援助の成果発現の 3

ためには政策レベルでの議論と現場レベルでの技術協力との連携が重要であるとの教訓が得られ ている (2) 本事業への教訓 本案件においても 初等教育の質の改善という成果の発現のために 本事業による財政支援 個 別専門家による政策レベルでのインプットと技術協力プロジェクトによる活動との連携を取りな がら進めていく計画である 6. 評価結果 以下の内容により本案件の妥当性は高く また 有効性が見込まれると判断される (1) 妥当性 2(2) に記載のとおり 本事業はミレニアム開発目標や EFA 達成を目指すバングラデシュの開 発政策及び我が国の援助方針との整合性がある また 我が国が 初等教育の質の改善のために実 施している技術協力プロジェクト等から得られる知見を 制度 政策の策定段階でインプットする ことにより具体的な政策 制度に反映していくためには 本事業を活用して PEDP3 の政策対話に参 画することが重要である (2) 有効性 ( 支援対象プログラムの評価指標等 ) 1 定量的効果 指標名 基準値 最新値 (2011 年 ) 目標値 (2016 年 ) 支援対象プログラム終了時 初等教育 (5 年生 ) 修了 60.2(2010 年 ) 71.3 75 率 (%) 純就学率 (%) 95.6(2010 年 ) 98.7 98 小学校卒業試験合格率 91.2(2010 年 ) 97.26 ( 今後設定 ) (%) 卒業までに要する年数 8.0(2010 年 ) 7.2 7.0 学習達成度 (3 年生 ) (2008 年全国学力試験結果 ) 算数 64.5 国語 ( 今後設定 ) 算数 67 国語 59 60.6 学習達成度 (5 年生 ) (2008 年全国学力試験結果 ) 算数 69 国語 63 算数 67.3 国語 67.3 ( 今後設定 ) 2 定性的効果 効率的かつインクルーシブで公正な初等教育システムの確立 子どもに優しく有効な教育環境の 提供 7. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる主な指標 6.(2) 1のとおり (2) 今後の評価のタイミング 支援対象プログラムの終了時点で被援助国政府や参加ドナーにより実施される共同レビューま たは評価に日本政府 /JICA が参加し実施 以上 4