人口問題研究 (J.ofPopulationProblems)-(0.)pp.8~ 都道府県別にみた女性の年齢 ( 歳階級 ) 別出生率および合計特殊出生率 :0 年 研究所ではわが国の都道府県別出生力に関する指標の一つとして, 国勢調査年次, および0 年以降は毎年, 女性の年齢別出生率および合計特殊出生率を算出 公表している ). 今回は0 年の結果について概説する. 女性の年齢別出生率および合計特殊出生率の算出に用いた資料は次の通り. 出生数 ( 日本人のみ ): 厚生労働省政策統括官 ( 統計 情報政策担当 ) 平成 8 年人口動態統計中巻 人口 ( 日本人人口 ): 総務省統計局 人口推計 ( 平成 8 年 0 月 日現在 ) 年齢別出生率は 歳階級別に算出した. ただし, 母の年齢別出生数の 歳未満は~ 歳に,0 歳以上は~ 歳に含めたうえで,~ 歳,~ 歳の出生率の分子とした. なお, 出生数の年齢不詳分は, 既知の ( 不詳を除く ) 年齢階級別の分布に応じて按分した. 算出に用いた出生数が日本人であるため, 分母人口として日本人人口が用いられている. ( 別府志海 佐々井司 ) 主要結果今回算出された全国の0 年における合計特殊出生率は, 都道府県別にみると, 最も出生率の高い沖縄県 () と最も低い東京都 (.) との差は0. ポイントである. その間においては, 九州各県を中心に西日本の地域が比較的高い値を示しており, 反対に大都市を抱える地域では顕著に低くなる傾向がみられる ( 表 ). 母の年齢別出生率には, 地域間の特徴的な違いが観測される ( 表 ). 全国ならびにほとんどの都道府県において,~ 歳の出生率が他の年齢のそれに比して高くなる傾向にあるが, 島根県, 福島県, 岩手県, 宮崎県など 県では~ 歳よりも~ 歳の出生率が顕著に高い. 合計特殊出生率の水準と年齢別出生率のパターンとの関係は明確ではないものの, 比較的若い年齢, とりわけ0 歳代における出生率が高い地域ほど, 総じて合計特殊出生率も高くなる傾向がみられる. 合計特殊出生率の水準をもとに つの地域を選定し, 年齢別出生率のパターンの特徴を考察したものが図 である. 0 年合計特殊出生率の高い 県 ( 沖縄県, 島根県, 宮崎県 ) はいずれも,0 歳代と 歳代前半における出生率が全国水準と比して顕著に高い. なかでも沖縄県は0 歳代後半と0 歳代前半, ならびに 歳代と 歳代前半における出生率が顕著に高い. 宮崎県と長崎県はともに出生率 であるが,0 歳代前半と 歳代前半の出生パターンが異なっている. 一方, 出生率の低い地域でも年齢別出生パターンの差異が観測される. 東京都では 歳代後半と 歳代前半における出生率が全国水準に比して高いものの, 逆に0 歳代と 歳代前半で極めて低い. 宮城県と京都府はともに出生率 と全国値よりも ) 厚生省人口問題研究所 ( 石川晃 ) 都道府県別人口の出生力に関する主要指標昭和 年 ~0 年 研究資料第 号,8 年 月別府志海 佐々井司 都道府県別女性の年齢 ( 歳階級 ) 別出生率および合計特殊出生率 :0 年 人口問題研究 第 巻第 号,0 年 月,pp.8~. 8
0. ポイント低いが, 宮城県では 歳代における出生率の低さが, 京都府では0 歳代の低さが影響しており, その要因が異なる. 次に, 平均出生年齢と合計特殊出生率との関係をみたものが図 である. 概して, 平均出生年齢と合計特殊出生率との間には負の相関関係がみられる. ただし, 各都道府県が直線上に並んでいるわけではなく, 多くの地域が全国水準を基準として合計特殊出生率が高く, かつ平均出生年齢が低い象限に混在しており, 出生率が高く出生年齢が高い象限に大都市を抱える都府県が, そして北海道 東北地方の多くが出生率, 出生年齢ともに低い象限に分布する傾向がみられる. 都道府県別に合計特殊出生率の時系列変化をみると ( 表 ), 概ね全国値の推移に即した動きが観測される. すなわち,00 年ごろまで低下を続けていた出生率が近年すべての地域において上昇傾向にある. ただし, 出生率の上昇が緩慢になる地域も散見され始めており,0 年から0 年にかけては出生率上昇地域が 府県に留まっている. なお, 地域間の分散の程度を表す変動係数等が一定水準で安定的に推移する一方で, 合計特殊出生率の都道府県平均が合計特殊出生率の全国値を上回る状態が80 年以降続いていることから, 人口規模の大きい都道府県における出生動向が長期間にわたり全国の出生率に強い影響を及ぼしていることが示唆される. また女性の平均出生年齢は, 全国的にみると80 年以降上昇基調にあるが, 変動係数等の推移にみられるように, 都道府県間の格差は若干拡大傾向にある ( 表 ). 合計特殊出生率に対する出生順位別の内訳を示したものが図, 表 である. 都道府県間の変動係数をみると高出生順位ほど大きくなっていることから, 高順位の出生水準ほど地域間格差が大きいことが示唆される. ただし, 出生順位別にみて都道府県格差が比較的小さい第 子出生率においても, 最も高い香川県, 沖縄県 ( ともに0.8) と最も低い奈良県 (0.) との間に0. ポイント以上の差がある. 出生順位別出生率の特徴が合計特殊出生率の違いを明確に説明しているのが, 沖縄県と東京都である. 沖縄県の高出生率は第 子以上の出生率の高さに, 東京都の低出生率は第 子および第 子以上の低出生率に起因していることが明確である. 併せて, 出生順位別に出生時の母の平均年齢をみると ( 図, 表 ), 概して, 出生年齢の高い地域ほど出生率が低くなる傾向がある. しかし, 出生年齢と出生率とは必ずしも直線的な相関関係にあるとは言えない. 例えば, 北海道や秋田県などでは平均出生年齢が比較的若いにもかかわらず, 合計特殊出生率は全国値を大きく下回っている. その一方で, 滋賀県や愛知県における出生年齢は全国のそれとほぼ同じであるにもかかわらず, 合計特殊出生率は比較的高い. 更なる考察には地域特性を踏まえた詳細な分析が必要となる.
図 特定地域の年齢別出生率 :0 年 図 平均出生年齢と合計特殊出生率 :0 年
図 合計特殊出生率と出生順位別合計特殊出生率 :0 年 図 出生順位別平均出生年齢 :0 年
表 都道府県別, 女性の年齢別出生率および合計特殊出生率 :0 年都道府県女性の年齢別出生率 ( ) 合計特殊出生率平均年齢 ( 歳 ) 総数 ~ 0~ ~ ~ ~ ~ ~ 8 0 8 0 8 全国北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄平均標準偏差変動係数 %...8....0.........8.8.8...8.0.....0.80.8.0..0.0.........8.8.....8...0.0...0.8..00....00.8.......8....0.8...8...0.0.8.........00. 0... 8.......8..8........8.8 8.00.00 8.8....8 8....8.80.....0..8.0..0......8.8.. 8.0... 8..0. 0.0 8..0 0..8.. 0. 8.0.. 0....8.0.0... 8..0.8 8. 8. 00.0 00. 0.. 0..8 8. 88.80 0.0 0. 0.8 0. 0. 08. 08..0.0.8 0.8 8..8.. 0 8.8 00. 0. 0. 0. 8.0. 0. 00. 0.0 8.8..08 0.8. 0.0. 00.. 0. 0. 00.8 0. 0. 08. 0.8 0.8 8.. 00.00.8 0.0 0.8.8 0. 08. 0..0 0.0 0...0.. 0..80... 8.8..08.......80..00.0..8. 8.8. 0...08.8.. 0...8... 8..0 8.08.08..0.. 8...0.. 8.8.00. 0..0. 8.8... 0...0.. 0. 0...8.8 0.8 0. 8.88..0 0.8 0.0 0... 0.. 8...88 0...00.8 0.0 0.0.8 8. 0.8.. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0.8 0. 0. 0.8 0. 0.0 0. 0. 0.0 0. 0.0 0. 0. 0. 0....... 8.....0.80.8...0..0..8.8..8....8......8 率算出の分母人口は, 日本人女性人口,000 についてのものである. 平均 ( 出生 ) 年齢 = x. f x f x 変動係数 (%)= 標準偏差 / 平均 00
表 都道府県別, 合計特殊出生率 :0~0 年都道府県 0 年 0 年 0 年 80 年 0 年 000 年 00 年 00 年 0 年 0 年順位 8 0 8 0 8 全国北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄平均標準偏差変動係数 %. (.)..8.8.....0..80................80.8.08.08.0..8.8.....0...8..0.0... 0.. (.00)..8...0.0....0...8...0....0..0..8.0.8.0..8...8.0......0...0.0 (.)...0.88.8......8...0..0.0.0.0....0....08.0..0.0.8......8....0 0.. ().8.8...8.8.8...88..8..8.80.80.8.8.....80.0.8.8...8...8.8.8..8. ()........8.8... 0.. ()....0.8.8.....8.0. (.).........00...8.......... 0. 8. ().........8.........8.00 ()......8.. 8.0 ()..... 8. - 8 8 8 0 0 率算出の分母人口は,0 年は総人口,0 年以降は日本人人口による. 全国の () 内の数値は, 分母人口に日本人女性人口を, 年齢区分は各歳別率を用い算出したものである. 変動係数 (%)= 標準偏差 / 平均 00
表 都道府県別, 平均出生年齢 :0~0 年 ( 歳 ) 都道府県 0 年 0 年 0 年 80 年 0 年 000 年 00 年 00 年 0 年 0 年順位 8 0 8 0 8 全国北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄平均標準偏差変動係数 %.......0.00..8....0.0 8.0.00..8...8........0 8.88 8. 8.8 8.8 8.. 8.. 8...8.0.8......8.8...8.88. 8.0 8. 8.8 8. 8. 8. 8. 8....8.8. 8.80.............8..0.0.8.8.. 8. 8.0.8.. 8.0. 0...8..08...8.... 8. 8..0 8.8 8..0.8.8.0 8.0 8......8 8...8.8....0...0... 8.0.0 8.... 8....8..........8..88 8.80 8.....0 8. 8...8...8 8..88.8.8...8....8.....0 8.00.8... 8..0 0. 8.8 8.8 8.0 8. 8.8 8. 8. 8.8 8. 8. 8.8...0.8 8. 8. 8. 8... 8.0 8. 8. 8. 8.8. 8. 8.8 8. 8.0 8.8 8.0 8. 8. 8. 8.8 8. 8. 8.8.08 8.8.0 8. 8.0 8.8 8.. 8. 0.....0...8. 8...8....8.......8......... 8......0.08 8..0.....8..... 0..................8.0.88.0.0.0.8..8....0.08...0.........8.8...8.... 0......0......8.......0..0..0...8.8..00.0..8...08.....0.8.0. 0...........8..0.0...08..80.........0..0..0.......8 0.....0.80.8...0..0..8.8..8....8......8-0 8 8 0 8 率算出の分母人口は,0 年は総人口,0 年以降は日本人人口による. 平均 ( 出生 ) 年齢 = x. f x f x 変動係数 (%)= 標準偏差 / 平均 00
表 都道府県, 出生順位別合計特殊出生率および平均出生年齢 :0 年都道府県合計特殊出生率平均年齢 ( 歳 ) 第 子第 子第 子以上第 子第 子第 子以上 8 0 8 0 8 全国北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄平均標準偏差変動係数 %..... 8. 0.0 0. 0. 0. 0. 0.8 0. 0.0 0. 0. 0.0 0. 0.8 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0.8 0. 0. 0. 0. 0. 0.8 0. 0. 0. 0. 0.8 0.0. 0. 0. 0. 0. 0.8 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0.0 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0.0. 0. 0. 0. 0. 0. 0.0 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0.0.0....0.80.8...0..0..8.8..8....8......8.0.8. 8..8.. 8........8..0.8.........0.0.0..0... 8.80.. 8....0 8..08 8. 8..0 8.. 0..08.00....0.....8..8.88....0......0....8.8...8.0.... 0.0.0...8.8..8...0..8..8.8.8........0......8.....0.8.....0...8..8..8.8. 0.. 表 の注参照.