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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

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Transcription:

順天堂大学 医療 健康 No. 1 新規の作用機序による悪性リンパ腫治療抗体の樹立 ~ がん細胞に大きな穴をあけて破壊する ~ 概要順天堂大学医学部病理 腫瘍学講座の松岡周二助教と理化学研究所統合生命医科学研究センターの石井保之 ( ワクチンデザイン研究チームリーダー ) らの研究グループは 悪性リンパ腫細胞や成人 T 細胞白血病 (ATL) 1 細胞を今まで知られている仕組みとは異なった機序で死滅させる抗体 (4713モノクローナル抗体 :mab4713) を樹立しました これにより 今までの抗がん剤や分子標的薬で治療できなかった患者さんや再発した患者さんに対し 効果的な治療薬の開発が見込まれます 本研究成果は米科学雑誌プロスワン PLOS ONE に( 日本時間 :2016 年 3 月 31 日 ) 公開されました 本研究成果のポイント 免疫細胞や補体を必要とせず直接がん細胞を破壊する抗体を樹立 本抗体は耐性株が出現し治療抵抗性を得た再発がんにも高い効果 再発悪性リンパ腫や成人 T 細胞白血病の患者さんに対する新規治療薬開発の可能性 背景悪性リンパ腫は血液腫瘍のなかで最も頻度の高い疾患で日本では年間 1 万人以上が発症します 非ホジキンリンパ腫の一種であるB 細胞リンパ腫や成人 T 細胞白血病において有意な治療効果を示す抗体医薬が開発されていますが 一部の効果がみられない患者さんや 一度寛解しても 標的分子を欠失した耐性株が出現し 再発する患者さんも多いのが現状です そのため 多くの種類の悪性リンパ腫に対して傷害活性を有し かつ悪性リンパ腫や白血病細胞に選択的に有効で 耐性株の出現しにくい分子標的治療薬の開発が望まれています 内容私たちの研究グループは 多くの悪性リンパ腫を傷害する抗体を樹立することを目的に実験を行いました まず 通常行われているように標的分子のペプチドを免疫したり 1 種の悪性リンパ腫で免疫するのではなく 複数の悪性リンパ腫で免疫したマウスの抗体産生細胞を用いて融合細胞を作製し 悪性リンパ腫細胞への細胞傷害活性を指標にスクリーニングしました その結果 複数の分子 (HLA クラスII 分子群 2 のDP DQ DR 3 ) に結合し 多くの悪性リンパ腫に傷害活性を有する抗体を得ました

この抗体はごく短時間で巨大な穴を血液がん細胞に直接あけるという特徴的な作用をもち かつ 補体非依存性に傷害活性を示しました ( 図 1. 図 2) また 本抗体(mAb4713) を注射することにより 悪性リンパ腫細胞を移植したマウスの生存を有意に延長しました ( 図 3) さらに正常な細胞に対しては傷害活性が無いことも確認しました したがって この抗体は血液のがん細胞だけを攻撃することが判りました No. 2 今後の展開今までの分子標的薬治療では一度寛解しても 標的分子を欠失した抗がん剤耐性がん細胞が出現 増殖することによって再発することがあります しかし本抗体はHLAクラスII 分子群のDP DQ DR のいずれにも反応することから がん細胞に生じた一つの遺伝子変異では がん細胞はこの抗体の攻撃から回避することが出来ません したがって本抗体存在下では 従来の分子標的薬に比べ 耐性がん細胞の出現を抑えることができます また この抗体は補体や ADCC( 抗体依存性細胞傷害 ) 活性 4 に頼らず 腫瘍細胞に直接巨大な穴を開けて破壊する ( アナポコーシス ) 新たな作用機序をもつため ( 図 2) 再発例も含めた悪性リンパ腫や白血病の患者さんに対して効果的な治療効果を発揮できると考えられます したがって大変有望な抗体医薬候補となります cell line cell type 細胞傷害活性 (%/2 時間 ) L428 Hodgkin lymphoma 92 Daudi Burkitt lymphoma 56 C1R B cell lymphoma 65 HT B lymphoblast 68 ATL-55T ATL 52 ATL-2 ATL 73 ED-40810 ATL 69 正常人末梢血 0 図 1: 各種リンパ腫由来の細胞に抗体 (mab4713) を添加した細胞障害活性計測の結果 ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫の代表的な細胞株や悪性度の高い成人 T 細胞白血病 (ATL) の細胞株に抗体 (mab4713) を添加して 2 時間以内に何 % の細胞が死ぬかを示している いずれの悪性リンパ腫細胞や成人 T 細胞白血病細胞にも高い細胞障害活性を示した

% 生存率 News & Information No. 3 図 2: 抗体 (mab4713) はがん細胞に大きな穴をあけて破壊する ホジキンリンパ腫細胞への抗体 (mab4713) 投与後に撮影した電子顕微鏡像では 細胞中央に巨大な穴が形成されている 僅か 30 分で従来の補体を利用した細胞死やパーフォリンがあける穴の 200 倍の直径の穴が形成されることから 速く強い細胞傷害活性が認められる RAJI 細胞移植 (mab4713) 2 回目投与 100 80 60 40 20 0 (mab4713) 1 回投与 コントロール抗体投与 対照群 2 回投与群 1 回投与群 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 リンパ腫細胞移植後の生存日数 図 3: マウスにヒトバーキットリンパ腫細胞を移植した系での生存曲線 免疫不全マウスにバーキットリンパ腫の細胞株 (RAJI 細胞 ) を生着させ 1 回または 2 回抗体 (mab4713) を静脈注射したところ コントロール抗体を投与した群に比べ有意に生存を延長させた

No. 4 用語解説 1. 成人 T 細胞白血病 (ATL, Adult T-cell leukemia 成人 T 細胞白血病 / リンパ腫, leukemia/lymphoma): 腫瘍ウイルスである HTLV-1 感染を原因とする白血病 もしくは悪性リンパ腫である 日本における A TL による年間死亡者数は約 1,000 人であり 平成 10 年以降の 10 年間に減少傾向はみられていない 2. HLAクラスII 分子 : HLA(human leukocytes Antigen=ヒト白血球抗原 ) は遺伝子の第 6 染色体短腕部に存在する主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) の産物 クラスI 分子群は赤血球を除くほぼ全ての細胞と体液に分布し クラスII 分子はマクロファージや樹状細胞 リンパ球のB 細胞 活性化 T 細胞など限られた細胞にのみ発現している移植や免疫反応で重要な分子 3. DP,DQ,DR : HLAクラスII 分子にはHLA-DP,HLA-DQ,HLA-DRの3 種類があり それぞれの遺伝子座にコードされている α 鎖とβ 鎖の2つの重合体からなり 免疫反応ではヘルパー T 細胞に抗原を提示する役割を担う 4. ADCC( 抗体依存性細胞傷害 )(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity; ADCC): 標的細胞の表面抗原に結合した抗体のFc 部位がナチュラルキラー細胞 マクロファージ 好中球などの細胞のFc 受容体と結合することで 抗体依存的に誘導される細胞傷害活性

113-8421 東京都文京区本郷 2-1-1 順天堂大学医学部 医学研究科 No. 5 本研究成果は 米科学雑誌プロスワン (PLOS ONE: http://journals.plos.org/plosone/ ) に ( 日本時間 3 月 31 日 ) 公表されました doi: 10.1371/journal.pone.0150496. 英文タイトル :Establishment of a therapeutic anti-pan HLA-class II monoclonal antibody that directly induces lymphoma cell death via large pore formation 日本語訳 : 悪性リンパ腫細胞に大きな穴をあけて殺す抗汎 HLA クラス II 抗体の樹立 著者 :Shuji Matsuoka, Yasuyuki Ishii, Atsuhito Nakao, Masaaki Abe, Naomi Ohtsuji, Shuji Momose, Hui Jin, Hisashi Arase, Koichi Sugimoto, Yuske Nakauchi, Hiroshi Masutani, Michiyuki Maeda, Hideo Yagita, Norio Komatsu Okio Hino 研究助成先 : 本研究は 文部科学省学術研究助成基金助成基盤研究 (C) 課題番号 15K06880 研究課題名 : 新規抗悪性リンパ腫治療抗体の樹立方法の確立と治療応用への研究 の支援を受け 理化学研究所 創薬基盤ユニットとの共同研究で実施しました 抗体 (mab4713) の特許情報 ( 米国公開特許 ): Publication number: US2013/0236470 ( 特許公報発行予定 :US9,303,083) Title of Invention: THERAPEUTIC AGENT FOR MALIGNANT TUMORS EXPRESSING MHC CLASS II Inventors: Shuji Matsuoka, Yasuyuki Ishi Assignees: Juntendo Educational Foundation, Riken ( 日本特許 ): 特許第 5884139 号 MHC クラス II を発現する悪性腫瘍の治療薬 発明者 : 松岡周二 石井保之 特許権者 : 学校法人順天堂 国立研究開発法人理化学研究所 研究内容に関するお問い合せ先順天堂大学医学部病理 腫瘍学講座助教松岡周二 ( まつおかしゅうじ ) TEL: 03-5802-1039 FAX:03-5684-1646 E-mail: matsuoka@juntendo.ac.jp 本成果の知財に関するお問い合せ先順天堂大学研究推進センター宇張前有希子 ( うちょうまえゆきこ ) TEL:03-5802-1590 FAX:03-5802-1715 E-mail: kenkyusuisin@juntendo.ac.jp 取材に関するお問い合せ先順天堂大学総務局総務部文書 広報課植村剛士 ( うえむらつよし ) TEL:03-5802-1006 FAX:03-3814-9100 E-mail: pr@juntendo.ac.jp http://www.juntendo.ac.jp