木造住宅の価格 ( 理論値 ) と建築数 前田拓生 ( 埼玉大学 )
調査概要 ここでは 森 ( 林業 林産業 ) から街 ( 住宅産業 ) までを一元的に管理する事業スキームの ( 同時方程式 ) モデル構築に必要となる木造住宅の価格を推計するとともに 木造住宅の建築数についても考察することを目的として 国土交通省等の統計の分析を行った 木造住宅の価格については ( 公益財団 ) 不動産流通近代化センターが首都圏等の建売住宅の平均価格を掲載している ( ) ( 図表 1~4) しかし この調査データは地域が限定的であるため 日本全体の状況を知ることができない 建売住宅の価格の他 販売数 平均敷地面積 平均建物面積も調査している ( 同センター 212 不動産業統計集 ) そこでここでは住宅価格を土地価格と建築物価格に分け それぞれ国交省 建築着工統計調査報告 都道府県地価調査 より都道府県別 ( 及び全国 ) の住宅価格の理論値を推計した ( 図表 5~ 8)
調査結果 (1) 当該住宅理論値で建築物価格は工事費予定額を使用したが 住宅 1 棟当たりに換算したところ 建築物面積は地域ごとに変動がある ( 図表 5) ものの 金額は関しては時系列的にも また 地域的にも大きな変化はなく 2 万円くらいで一定となっている ( 図表 6) 土地に関して 1 棟当たりの敷地は 東北及び長野で 35m2 くらいと広く 大都市圏を抱える 7 都府県 ( 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 愛知県 大阪府 兵庫県 ) では 1m2 前後と狭いものの 概ね 2m2 で一定していることがわかった ( 図表 7) 価格に関しては上記 7 都府県の変動が飛び抜けて大きく 地域においても違いが大きいが その他の地域においても違いがあることが明らかになった ( 図表 8) 他方 建築数に関しては上記 7 都府県で近年は若干減少傾向ではあるものの 25 万 ~2 万棟の間で安定している しかし その他の地域では平成の前半に 45 万 ~4 万棟ほど建てられていたものが現在では 2 万棟ほどになっている ( 図表 9)
調査結果 (2) ここから以降は同時方程式モデル等で実際に分析をしないと明確には判断できないが 7 都府県以外の地域で住宅建築が大幅に減少しているのは 景気の停滞よる所得減 少子高齢化の影響に加え 地方から都市への人口移動が要因であると考えられる ( 図表 1) にもかかわらず 工事費が地域的な物価動向や時系列的な経済動向等に関係なく 2 万円程度で安定 ( 図表 11) し 工務店数は減少している ( 図表 15) 市場原理が働けば住宅の工事費は低下するはずであるが 工務店の数が減少していることから 建材の流通経路に問題があると推察される したがって 森から街までを一元的に管理することによって流通の無駄を省き また 森に資金を回すことで地域活性化の一助となれば地方の所得が向上し 減少傾向にある地方の住宅件数も増加させることが可能となろう
参考図表 図表 1~15
図表 1. 建売住宅価格と住宅価格 ( 東京 ) (1 円 ) 7, 建売住宅価格と住宅価格理論値 ( 東京都 ) 6, 5, 4, 3, 2, 土地価格 工事費予定額 建売価格 1, 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 出所 公益財団法人不動産流通近代化センター 212 不動産業統計集 国交省 住宅着工統計 注 1) 土地価格は都道府県地価統計の当該地域の地価に当該地域の建売住宅敷地面積を掛けた値 (a) 注 2) 工事費予定額は地域別の居住専用建築物の 1m2 あたりの金額に当該地域の建売住宅の建物面積を掛けた値 (b) 注 3)(a)+(b) の値は当該地域の平均的な土地価格込の住宅価格の理論値と考えられる
図表 2. 建売住宅価格と住宅価格 ( 千葉 ) (1 円 ) 45, 建売住宅価格と住宅価格理論値 ( 千葉県 ) 4, 35, 3, 25, 2, 15, 1, 土地価格 工事費予定額 建売価格 5, 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 出所 公益財団法人不動産流通近代化センター 212 不動産業統計集 国交省 住宅着工統計 注 1) 土地価格は都道府県地価統計の当該地域の地価に当該地域の建売住宅敷地面積を掛けた値 (a) 注 2) 工事費予定額は地域別の居住専用建築物の 1m2 あたりの金額に当該地域の建売住宅の建物面積を掛けた値 (b) 注 3)(a)+(b) の値は当該地域の平均的な土地価格込の住宅価格の理論値と考えられる
図表 3. 建売住宅価格と住宅価格 ( 埼玉 ) 45, (1 円 ) 建売住宅価格と住宅価格理論値 ( 埼玉県 ) 4, 35, 3, 25, 2, 15, 1, 土地価格 工事費予定額 建売価格 5, 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 出所 公益財団法人不動産流通近代化センター 212 不動産業統計集 国交省 住宅着工統計 注 1) 土地価格は都道府県地価統計の当該地域の地価に当該地域の建売住宅敷地面積を掛けた値 (a) 注 2) 工事費予定額は地域別の居住専用建築物の 1m2 あたりの金額に当該地域の建売住宅の建物面積を掛けた値 (b) 注 3)(a)+(b) の値は当該地域の平均的な土地価格込の住宅価格の理論値と考えられる
図表 4. 建売住宅価格と住宅価格 ( 神奈川 ) (1 円 ) 8, 建売住宅価格と住宅価格理論値 ( 神奈川県 ) 7, 6, 5, 4, 3, 2, 土地価格 工事費予定額 建売価格 1, 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 出所 公益財団法人不動産流通近代化センター 212 不動産業統計集 国交省 住宅着工統計 注 1) 土地価格は都道府県地価統計の当該地域の地価に当該地域の建売住宅敷地面積を掛けた値 (a) 注 2) 工事費予定額は地域別の居住専用建築物の 1m2 あたりの金額に当該地域の建売住宅の建物面積を掛けた値 (b) 注 3)(a)+(b) の値は当該地域の平均的な土地価格込の住宅価格の理論値と考えられる
全国計北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄 図表 5. 都道府県別の住宅 1 棟当たり床面積 (m2/ 棟 ) 16. 木造住宅 1 棟あたりの床面積 ( 居住専用建築物 ) S64 年 ~H22 年 15. 14. 13. 12. 11. Max +1σ -1σ Min 1. 9. 8. 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 をもとに前田が推計 グラフの見方は次ページ
前ページの都道府県別に表れている図形の説明 床面積 Max +1σ 変動の平均値 -1σ Min 年数 前ページのグラフでは一つの図形で床面積の時系列変化を表している 統計上 平均値から ±1σ で全体の 68% が含まれることになる
全国計北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄 図表 6. 都道府県別の住宅 1 棟当たり工事費 3 (1 円 ) 木造住宅 1 棟あたりの工事費予定額 ( 居住専用建築物 ) S64 年 ~H22 年 25 2 15 1 Max +1σ -1σ Min 5 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 をもとに前田が推計
全国計北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄 図表 7. 都道府県別の住宅 1 棟当たり敷地面積 (m2/ 棟 ) 45. 住宅 1 棟あたりの敷地面積 S64 年 ~H22 年 4. 35. 3. 25. 2. 15. Max +1σ -1σ Min 1. 5.. 出所 国土交通省 都道府県地価調査 をもとに前田が推計
全国計北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄 図表 8. 都道府県別の住宅 1 棟当たり土地価格 住宅 1 棟あたりの土地価格 (1 円 ) S64 年 ~H22 年 12 1 8 6 4 Max +1σ -1σ Min 2 出所 国土交通省 都道府県地価調査 をもとに前田が推計
北海道青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄 図表 9. 都道府県別の住宅の建築数 5. 45. 4. 35. (1 棟 ) 木造住宅の建築数 ( 居住専用建築物 ) S64 年 ~H22 年 3. 25. 2. 15. Max +1σ -1σ Min 1. 5.. 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 をもとに前田が推計
図表 1.7 都府県とその他地域の住宅の建築数 (1 棟 ) 5. 木造住宅の建築数 45. 4. 35. 3. 25. 2. 15. 1. 5.. S64 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 7 都府県その他 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 都道府県地価調査 をもとに前田が推計注 1)7 都府県は埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 愛知県 大阪府 兵庫県 注 2) その他は 7 都府県以外の道府県 図表 8 及び 9 より 7 都府県とその他に分類した
図表 11.7 都府県とその他地域の工事費 (1 円 / 棟 ) 21, 木造住宅 1 棟当たり工事費予定額 2, 19, 18, 17, 16, 15, 14, 13, 12, S64 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 7 都府県その他 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 都道府県地価調査 をもとに前田が推計注 1)7 都府県は埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 愛知県 大阪府 兵庫県 注 2) その他は 7 都府県以外の道府県
図表 12.7 都府県とその他地域の土地価格 (1 円 / 棟 ) 6, 木造住宅 1 棟当たり土地価格 5, 4, 3, 2, 1, S64 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 7 都府県その他 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 都道府県地価調査 をもとに前田が推計注 1)7 都府県は埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 愛知県 大阪府 兵庫県 注 2) その他は 7 都府県以外の道府県
図表 13. 日本域の住宅価格と建築数 日本の住宅価格 ( 理論値 ) と建築数 (1 円 / 棟 ) (1 棟 ) 5, 8. 45, 4, 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 7. 6. 5. 4. 3. 2. 1.. S64 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 1 棟当たり工事費予定額 (1 円 ) 1 棟当たり敷地額 (1 円 ) 木造住宅戸数 (1 戸 ): 右メモリ 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 都道府県地価調査 をもとに前田が推計注 1) 住宅価格 ( 理論値 ) は 1 棟当たり敷地額 +1 棟当たり工事費予定額
図表 14.7 都府県とその他地域の住宅価格と建築数 7 都府県の住宅価格 ( 理論値 ) と建築数 (1 円 / 棟 ) (1 棟 ) 8, 5. (1 円 / 棟 ) 8, その他道府県の住宅価格 ( 理論値 ) と建築数 (1 棟 ) 5. 7, 6, 5, 45. 4. 35. 3. 7, 6, 5, 2 万棟 45. 4. 35. 3. 4, 25. 4, 25. 3, 2, 1, 2. 15. 1. 5. 3, 2, 1, 2. 15. 1. 5. S64 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 1 棟当たり工事費予定額 (1 円 ) 1 棟当たり敷地額 (1 円 ) 木造住宅戸数 (1 戸 ): 右メモリ 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 都道府県地価調査 をもとに前田が推計注 1)7 都府県は埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 愛知県 大阪府 兵庫県 注 2) 住宅価格 ( 理論値 ) は 1 棟当たり敷地額 +1 棟当たり工事費予定額. S64 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 1 棟当たり工事費予定額 (1 円 ) 1 棟当たり敷地額 (1 円 ) 木造住宅戸数 (1 戸 ): 右メモリ 出所 国土交通省 建設着工統計調査報告 都道府県地価調査 をもとに前田が推計注 1) その他道府県は埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 愛知県 大阪府 兵庫県を除く道府県 注 2) 住宅価格 ( 理論値 ) は 1 棟当たり敷地額 +1 棟当たり工事費予定額. 7 都府県の建築数も H8 年からは 1 万棟ほど減少しているが その他の地域では 2 万棟の減少となっている なお 7 都府県の工事費予定額 (H23 年 ) は 1875 万円 その他地域では 1926 万円 土地価格は 7 都府県で 183 万円 その他地域で 76 万円 したがって 7 都府県の住宅価格は 375 万円 その他地域で 2686 万円となっている
1987 1988 1989 199 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 212 図表 15. 日本の建築業者数の推移 ( 事業者 ) 7, 個人 小建築業者と中 大建築業者 6, 5, 4, 3, 2, 1, 個人 小建築業者 中 大建築業者 出所 国土交通省 建設業許可業者数調査の結果について ( 表 -5) 注 ) 小建築業者は資本金 5 万円未満 ( それ以上を中 大建築業者 ) とした