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原産地証明書の種類と内容 内容 用途 根拠協定 / 法律など 一般原産地証明書 原産地証明書発給の要請 : (1) 輸入国の法律 規則に基づく要請 (2) 契約や信用状の指定ただし 記載事項はあくまで発給機関の定める発給規則に基づいて作成される 契約および L/C 条件が発給規則に矛盾しないように注

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015発給申請.xls

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のですか? (Q2-10)VNM( 非原産材料の合計価格 ) とは何の価額を使用するのでしょうか? (Q2-11) 関税番号の変更 ( 関税番号変更基準 (CTC)) とは何でしょうか? (Q2-12) 関税番号変更基準 (CTC) について どのレベルまでHSコードをさかのぼる必要がありますか?

目次 1. はじめに 2. 原産地基準 3. 原産地証明制度 4. 税関での手続き 本パンフレットは 税関での適正な手続きを行っていただくために 原産地規則についての基礎的な理解を深めていただくことを目的として作成したものです 理解しやすさの観点から 法令の用語と異なる用語を使用した部分 全てのEP

EPA に基づく原産地証明書とは 日本はこれまでに複数の国や地域と経済連携協定 (EPA:Economic Partnership Agreement 以下 EPA と 記載します ) を締結しています EPA を活用すると 日本から EPA 締約相手国に輸出をする際 通常の関税率よりも低い関税率

The Sanwa Bank Limited

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Microsoft PowerPoint - <セット版>180115_EPAの概要と原産地規則.pptx

原産資格を立証するために整えるべき保存書類の例示と考え方

目次 協定の構造 インドネシア特恵原産地規則 とは? インドネシア特恵税率適用のための条件 原産地証明書関係 特恵基準 A B C 品目別規則 ACU DMI FGM インボイスが第三国で発行される場合 原産資格を与えることとならない作業 積送基準

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EPA 利用になぜ原産地証明書が必要か? 日本 タイ経済連携協定は二国間の取り極めであり その特典である EPA 特恵関税は当該国の原産品に限り適用される 従って 当該物品が原産品であることを確認し それを証明する必要がある 例えば 第三国から輸入した物品を 日本からタイに再輸出するケースでは適用さ

TPP11 協定 (CPTPP) の概要目次 協定の発効要件 税率差 : 国別譲許における税率適用国決定ルール 国別セーフガード その他 国別関税割当 牛肉の適用税率 ( 日豪 EPA 税率との比較 ) 輸入後のTPP 特恵税率の要求 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 Comp

原産地規則説明会資料平成 30 年 3 月 経済連携協定 (EPA) に係る 原産地規則の概要 - 輸入食品を中心に - 東京税関業務部総括原産地調査官

一九二〇 経過的セーフガード措置 とは 第六 三条(経過的セーフガード措置の実施)2に定める措置をいう 第六 二条世界向けのセーフガード1この協定のいかなる規定も 千九百九十四年のガット第十九条の規定及びセーフガード協定に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない 23に規定する場合を除く

2. 両協定の主な内容両協定締結後は 貨物やサービス貿易における更なる開放 優遇措置のほか 投資 政府調達 知的財産権 人の移動 ビジネス環境整備など 幅広い範囲での提携により 締約国間の貿易 投資の往来が従来より円滑に進むことが見込まれる (1) AHKFTA 貨物貿易香港 ASEAN 間の貨物貿

目次 日ベトナム経済連携協定に係る留意点 協定の構造 ベトナム特恵原産地規則 とは? ベトナム特恵税率適用のための条件 原産地証明書関係 原産地基準 完全生産品 品目別規則 累積 僅少の非原産材料 同一の又は交換可能な材料 インボイスが第三国で発行される場合 原産資格を与えることとならない作業 直接

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2. 原産地基準 ( 原産品とは ) 11

Microsoft PowerPoint - TPP11&日EU実務編.pptx

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EPA に関する各種試算 試算 1 EPA のマクロ経済効果分析 (3 ページ ) 内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき 川崎研一氏 ( 内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官 ) が分析 WTO はじめ広く関係機関が活用している一般均衡モデル (GTAP モデル ) を使用 EPA

1 関税法上の用語の定義 輸入 外国貨物を本邦に引き取ること輸出 内国貨物を外国に向けて送り出すこと 外国貨物 1 輸出の許可を受けた貨物 2 外国から本邦に到着した貨物 ( 外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む ) で輸入が許可される前のもの内国貨物 1 本邦にある貨物で外国貨物でないもの

本日の説明事項 1. 特恵税率と原産地規則 2. 原産地基準 ( 原産品とは ) 3. 積送基準と手続的要件 4. その他 2

ITI

1.EPA の輸出創出効果と課題 (1) 日本の EPA の現状 分類 EPA 締約国 地域 ( 発効月 ) 発効済み (13 協定 ) 交渉中 (10 協定 ) 2002 年シンガポール (11 月 ) 2005 年メキシコ (4 月 ) 2006 年マレーシア (7 月 ) 2007 年チリ (

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特定原産地証明書発給申請マニュアル(案)

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目 次 1. 経済連携協定 (EPA) とは? 3-10 頁 2. 経済連携協定 ( 物品貿易に関する協定 ) の利用 頁 3. 経済連携協定税率と譲許 頁 4. 経済連携協定の原産地規則 頁 5. 経済連携協定の特定原産地証明書 頁 6. その他 5

本マニュアルについて EPA( 経済連携協定 ) は 2018 年 6 月現在 15 個の協定が発効しており 今後も増える見込みです これらのEPA 原産地規則はそれぞれ 協定本文 附属書 運用上の手続規則等に加え 関連する国内法 政令及び基本通達等から成り立っており 業務に当たっては それぞれの該

財務省貿易統計

文書管理番号

TBT( 貿易の技術的障害 ) 貿易救済 ( セーフガード措置等 ) 政府調達 も高いレベルの措置を導入 維持できるとされている ) 個別品目の輸入解禁や輸入条件の変更について, 従来よりTPP 交渉参加国より要請されてきた案件が, 交渉参加のための条件とされ, あるいはTPP 協定に付随する約束を

本誌に関するお問い合わせはみずほ総合研究所株式会社調査本部菅原淳一 電話 (03) まで 本資料は 情報提供のみを目的として作成されたものであり 法務 貿易 投資等の助言やコンサルティング等を目的とするものではありま

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目次 協定の構造 タイ特恵原産地規則 とは? タイ特恵税率適用のための条件 原産地証明書 原産地基準 WO PE PS 品目別規則 ACU DMI インボイスが第三国で発行される場合 原産資格を与えることとならない作業 積送基準 財務省関税局業務課

1. 累積規定の覊束性一般的に FTA 原産地規則における累積規定は 締約国において累積規定の適用を可能にする措置を採ることについて締約国を拘束し 要すれば 当該規定の受け皿となる国内法令を整備することとなるが FTA 利用者が累積規定を実際に使用するか否かについては任意規定であって 輸出国 生産国

ITI

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五三 輸入者 とは 原産品を輸入する者であって 当該原産品について関税上の特恵待遇を要求するも(d) のをいう 材料 とは 物又は物質であって 産品の生産において使用されるもの(構成要素 成分 原材料(e) 及び部品を含む )をいう 非原産材料 とは この章の規定に従って原産品とされない材料(原産品

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メキシコの投資環境 輸出規制メキシコにおいては 石油化学製品派生品を輸出する際に輸出事前許可が必要である 経済省貿易細則 判断基準の細則 同添付 において 経済省管轄の輸出規制品目について定められている 図表 16-2 輸出時にメキシコ経済省からの事前許可が必要な品目 分類

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政策目標 5-2: 多角的自由貿易体制の維持 強化及び経済連携の推進並びに税関分野における貿易円滑化の推進 1. 政策目標の内容自由貿易の推進は我が国の対外経済政策の柱であり 力強い経済成長を実現するためには 自由貿易体制を強化し 諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があるというのが 政府全体と

財務省貿易統計

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ドーハ ラウンド交渉の一分野である貿易円滑化については 平成 26 年 11 月のWTO 一般理事会において 貿易円滑化協定に関する改正議定書 が採択され 今後 3 分の2 以上の加盟国が受諾した時点で本協定は発効することになりました 各 WTO 加盟国がこの協定を実施することにより 貿易規則の透明

牛田論文ブック.indb

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仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

本日の説明事項 1. 特恵税率とは? 2. 原産地規則とは? 3. 積送基準 4. 税関における手続 2

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Sea-NACCS 利用者研修 【通関編】

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

タイトル□□□□□□□□□□

2011 年 12 月現在ジェトロ貿易投資相談課 ASEAN- オーストラリア ニュージーランド FTA(AANZFTA) に関する輸入通関手続き 国名 通常の通関手続き ( 輸入申告 ) に必要な書類 FTA 特恵税率を申告する輸入通関に必要な書類 第三国で積み替えた場合の輸入通関に必要な書類 三

Ⅰ. 繊維品輸出実績 (1) 類別輸出実績換算円レート = 類別 項目 2014 年 1 月 ~ 12 月 2013 年実績 金額 ( 千ドル ) 前年同月比金額 ( 千ドル ) 前年同期比構成比金額 ( 千ドル ) 前年比構成比 紡織用繊維及びその製品 ( 合計 ) 743,383 9

1. 経済連携協定 (EPA) 自由貿易協定 (FTA) とは 自由貿易協定 (FTA:Free Trade Agreement) 特定の国や地域の間で 物品の関 税やサービス貿易の障壁等を削減 撤廃することを目的とする協定 経 済連携協定の主要な内容の一つ 経済連携協定 (EPA:Economic

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H25年6月関税協会(食料品)

マレーシア 輸入申告書 (Custom Form No.1 FOB が RM20,000 を超える場合は Custom Form No. 1A ) インボイス パッキングリスト 輸入許可証 ( 必要な品目の場合 ) 船荷証券 (B/L) または Air Way Bill (AWB) 適用除外のレター

関西 EPA 研究会 ( 仮称 ) 参加のご案内 2 国間から TPP まで - アジアの EPA/FTA を総合的に 2011 年 1 月 主催 : 関西地区 16 商工会議所 拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます ご高承の通り わが国の経済連携協定 (EPA) は シンガポール (2

類業組合等に関する法律 ( 昭和 28 年法律第 7 号 ) 第 86 条の6 第 1 項の規定に基づく酒類の表示の基準において原産地を表示することとされている原材料及び米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律 ( 平成 21 年法律第 26 号 ) 第 2 条第 3 項に規定す

2 第五条関税の撤廃第六条輸出税第七条輸入及び輸出の制限第八条蒸留酒の地理的表示の保護第九条物品の貿易に関する小委員会第十条統一規則第十一条定義第二節衛生植物検疫措置第十二条権利及び義務の再確認第十三条照会所第十四条衛生植物検疫措置に関する小委員会第十五条第十五章の規定の不適用第三節強制規格 任意規

Microsoft Word - 規則11.2版_FSSC22000Ver.4特例.doc

FTA・EPAアドバイザリー

EPA に基づく原産地証明書とは 日本はこれまでに複数の国や地域と経済連携協定 (EPA:Economic Partnership Agreement 以下 EPA と記載します ) を締結しています EPA を活用すると 日本から EPA 締約相手国に輸出をする際 通常の関税率よりも低い関税率 (

ASEAN、中国のFTA と自動車・自動車部品貿易

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

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サービス交渉 DDA のサービス交渉が停滞する中 2012 年 12 月 21 の有志国が今までの FTA 等で達成した水準を基に新協定 ( 新サービス貿易協定 :Trade in Services Agreement) を作成する交渉を開始することで合意 日 米 EU 諾 豪 加 香港 パナマ コ

Transcription:

日 タイ経済連携協定 原産地規則について 2007 年 10 月

EPA/FTA 原産地規則の概要 1. 原産地規則とは 非特恵と特恵 一般的な構成 2. 日 タイEPAにおける原産地規則の概要 原産品 累積 積送基準 原産地証明手続 義務及び検認 3. 世界の FTA 原産地規則 世界三極のデファクト 東アジアの現状 1

1. 原産地規則とは 特恵と非特恵 (1) 特恵とは特定の国に対して関税引き下げ等特別の便益を与えること 一般特恵 (GSP) 発展の遅れている国に対して日本の国内法に基づき一方的に関税引下げ 自由貿易協定 (EPA/FTA) 特定の二国間又は地域として協定を締結し 相互に関税引下げ等を行う (2) 非特恵とはいわゆる通常の貿易に関するものであり 代表的なものは世界貿易機関 (WTO) 体制下での貿易関係を指す WTO 加盟国 ( 現在 151) に対しては発展度合等を問わず 全ての加盟国に対して同じ関税率その他の貿易上の条件を適用 ( 最恵国待遇原則 ) EPA/FTAでの特恵税率の適用 自由貿易協定 (EPA/FTA) 又は一般特恵 (GSP) での便益関税を適用して貨物を輸入したい者は : 輸入貨物についていずれの制度下の便益関税を受けたいのかを特定( 例えば日 マレーシアEPA 日 メキシコ EPA GSP 等 ) し 輸出国側で必要となる手続きについて輸出者と相談 輸出者は貨物が 原産地規則 を満たしていることを示す 原産地証明書 を取得し輸入者に送付 輸入者は輸入申告の際に特恵関税を受けたい旨申請( 自動的に最も有利な関税率が適用されるわけではない ) し 輸出者から入手した 原産地証明書 を税関に提出 特恵関税適用の可否を輸入国税関が決定 ( なお輸出者は原産地証明書の内容が真正なものであることを立証する資料を一定期間保管する義務あり ) 2

1. 原産地規則とは 特恵原産地規則 協定締約国の原産品であるか否か ( 産品が特恵を受ける資格を有するか否か ) を特定するためのルール 第三国による特恵のタダ乗りを防止することを主眼に設計される ( 注 1)EPA/FTA 等では 輸入国税関は原産品に特恵税率を適用する 輸入者は 税関に対して原産地証明書を提示することにより 当該輸入品が特定の EPA/FTA の原産地規則に基づく原産品であることを主張する 税関では当該証明書の真正性や付随書類を適宜審査の上 適用税率を決定する ( 注 2)EPA/FTA 交渉では 具体的な産品毎に原産品に適用する特恵関税率 ( 譲許税率 ) と同様 原産地規則も交渉する 仮に相手国の産業界が絶対に満たせないような ( 又は節税効果を相殺してしまうような高コストな ) ルールを押しつければ たとえ譲許税率上は無税としても 相手国から原産品が輸入されて来ることはないので 非譲許と同じ効果を生む こうした観点から 各国はセンシティブ品目の交渉に関して 原産地規則を言わば 第二の関税率 として活用する場合が尐なくない 非特恵原産地規則 特恵貿易以外の目的 すなわち通関統計 WTO 協定税率適用 貿易救済措置適用 原産地表示等のために輸入品の原産国を特定するルール 原産か非原産かではなく 必ずいずれかの原産国を特定する 当該国内で实質的な生産プロセスが实施されたか否かを主眼に設計される 3

1. 原産地規則とは FTA 原産地規則の一般的構成 1. 原産品の定義次のうちのいずれかを満たす産品 (a) 完全生産品 (b) 原産材料のみからなる産品 (c) 实質的加工要件 個別品目規則 ( ) 2. 实質的加工要件の具体的な判断基準等 付加価値基準の詳細な計算方法 累積規定 第三国からの迂回輸入防止規定 ( 原産資格を附与しない軽微な加工の定義 直送基準 ) 3. 特恵待遇附与に係る締約国間の手続 原産地証明の発給手続 原産地証明の真正性にかかる検認手続 特恵税率の適用を拒否する根拠規定等 ( ) 個別品目規則は 各タリフライン (HS6 桁 ) 毎に産品の原産資格判定ルールを規定 具体的には 関税番号変更基準や付加価値基準 加工工程基準といった方法を用いて記述する ( 後述 ) 4

2. 日 タイ EPA における原産地規則 ( 前半 ) 原産地規則 ( 後半 ) 原産地証明書及び関連手続 第 28 条原産品 ( 完全生産品 関税分類番号変更基準 付加価値基準等 ) 第 29 条累積第 30 条僅尐の非原産材料第 31 条原産資格を与えることとならない作業第 32 条積送基準第 33 条組み立てていなか又は分解してある産品第 34 条代替性のある産品及び材料第 35 条間接材料第 36 条附属品 予備部品及び工具第 37 条小売用の包装材料及び包装容器第 38 条船積み用のこん包材料及びこん包容器 原産地規則章 ( 日 タイ協定第三章 ) 第 39 条関税上の特恵待遇の要求第 40 条原産地証明書第 41 条照会に対する回答第 42 条輸出に関する義務第 43 条原産地証明書に基づく確認の要請第 44 条原産品であるか否かについての確認のための訪問第 45 条原産品であるか否か及び関税上の特恵待遇の決定第 46 条秘密性第 47 条虚偽申告に対する罰則及び措置第 48 条雑則第 49 条原産地規則に関する小委員会 別添 ( 附表 1) 品目別規則 (PSR) HS 条約で定めているタリフライン (6 桁 ) 毎に品目別規則を規定 別添 ( 附表 2) 原産地証明書への記載事項 運用手続 (OP: 協定とは別途 原産地規則や証明手続の具体的な实施運用手順を定めた文書 ) 原産地証明書の申請 発給についての詳細な手続き 原産資格判定の計算例 必要な書類の一覧 原産地証明書の様式等について記載 5

2. 日 タイ EPA における原産地規則 原産品 ( 第 28 条 ) (a) 完全生産品 一ヶ国内で原材料レベルから全て生産 育成 採取された産品 典型例は農水産品( 動植物 魚介類等 ) 鉱物資源 (b) 原産材料のみから生産される産品 他国から輸入した原材料を用いて生産された原産部品を含む( 例えば 国内の部品サプライヤーで生産される部品と内作部品のみを用いて最終製品を製造する場合など 従って 最終製品には非原産の原材料は使用されていない ) (c) 非原産材料を用いて生産される産品 ( 個別品目規則 ) 第三国からの輸入部品 材料を一部又は全部用いて生産した産品の原産資格判定方法 具体的な基準は以下の3 種 : 1 関税番号変更基準 (CTC: Change in Tariff Classification) 2 付加価値基準 (RVC: Regional Value Content 又はVA: Value Added Criteria) 3 加工工程基準 (SP: Specific Process rule) 原産地証明書の申請に当たっては上記 (a)~(c) のいずれに該当する原産品であるかを特定する必要有り ( それぞれ A(WO) 判定 B(PE) 判定 C(PS) 判定 に対応 ) 6

2. 日 タイ EPA における原産地規則 附属書 2 ( 品目別規則 ) 1 関税番号変更基準 (CTC: Change in Tariff Classification) 1. 当該産品を 原産品 と判定するための条件となる具体的な生産 加工プロセスを 使用する材料 部品の関税番号からの 桁数の変更 により記述する方法 使用する部品や材料が第三国 ( 日本 タイ以外の国 ) からの輸入品であっても 所要の CTC ルールを満たせば生産される産品に原産資格付与 CC (Change in Chapter: 類変更 ( 上 2 桁変更 )) CTH (Change in Tariff Heading: 項変更 ( 上 4 桁変更 )) CTSH (Change in Tariff Sub-Heading: 号変更 ( 上 6 桁変更 )) 2. 一般的に 類変更 (CC) が最も上流の素材レベルからの生産を意味し 締約国内でのより広範な裾野産業からの生産 加工作業の实施を要件とすることとなり 困難度の高いルールとなる 逆に 号変更 (CTSH) の場合 類似の産品の仕様変更等によっても原産資格が得られる可能性が生じ 容易に原産資格が入手できる反面 第三国産品による タダ乗り のリスクも相対的に高くなる 7

HS 番号 ( 関税番号 ) とは 類 ( 二桁 ) 項( 四桁 ) 号( 六桁 ) 細分( 日本は九桁 : 国によって異なる ) があり 二桁から六桁まではHS 条約によって世界的に統一 貿易される物品を番号によって分類しており 関税率表 通関統計 貿易救済措置における物品の特定等 貿易における物品の特定に使用 桁数が増えるほど物品を細かく区分けすることとなる (HS 番号の構造の例示 ) 84( 類 ) 機械類及び電気機器並びにこれらの部分品等 84.82( 項 ) 玉軸受及びころ軸受 ( ベアリング ) 8482.10 玉軸受 8482.20 円錐ころ軸受 8482.30 球面ころ軸受 8482.40 針状ころ軸受 8482.50 その他の円筒ころ軸受 8482.80 その他のもの ( 玉軸受ところ軸受を組み合わせたものを含む ) 部分品 8482.91 玉 針状ころ及びころ 8482.99 その他のもの 二桁 四桁 六桁 8

1.2 桁レベルの変更 (CC) の例 関税番号変更基準 (CTC) の例 A 国 ( 第三国 ) タイ 日本 なめし皮 輸入し加工 革かばん 日本に輸出 41.11 42.03 上二桁が変更 (41 類 42 類 ) 注 : 二桁ベースの変更は CTH 及び CTSH も満たすことになる 2.4 桁レベルの変更 (CTH) の例 B 国 ( 第三国 ) 輸入し組立 日本 A 国 ( 第三国 ) 部品 85.29 タイ 部品 85.29 部品 85.29 四桁が変更 (85.29 項 85.28 項 ) 液晶テレビ 85.28 日本に輸出 9

3.6 桁レベルの変更 (CTSH) A 国 ( 第三国 ) 関税番号変更基準 (CTC) の例 日本 タイ 玉 ( 部分品 ) 8482.91 輸入 組立 ベアリング 日本に輸出 国内調達 8482.10 他の部分品 ( 原産材料 ) 六桁が変更 (8482.91 号 8482.10 号 ) 関税番号変更基準 (CTC) は非原産の材料にのみ適用 原産材料は番号変更の有無を見る必要なし 非原産材料の関税番号が記載されている書類 ( 輸入時のインボイス等 ) を保管する必要 必要に応じ 輸出する産品の関税番号と突合し 求められる関税番号の変更が起こっていることを立証 10

僅少の非原産材料 ( デミニマス規定 : 第 30 条 ) 関税番号変更基準 (CTCルール) の適用に当たり : CTCを満たさない非原産材料の価額の合計が産品の価額の10% 以下 ; 又は 繊維製品(50~63 類 ) については CTCを満たさない非原産材料の重量の合計が産品の重量の10% 以下の場合には これらの非原産材料は考慮しなくてよい CTCでは全ての非原産材料について必要な関税番号の変更が起こる必要があるが 例外として 僅尐な額又は量のものであれば関税番号変更が起こらない場合でも問題なく使用でき 産品の原産資格が否定されることはない 付加価値基準では そもそも相当程度の額の非原産材料が使用可能 ( 閾値が40% であれば60% は非原産材料を使用可能 ) であり 僅尐な額であれば使用可能な範囲に包含されるため デミニマスの適用なし ( 非原産材料の価額の合計が10% 以下であればその産品は原産資格ありということ ) この規定は農産品については一部 (19 類 ~24 類 : 価額の 7% 以下 ) を除き適用されない 衣類の原産地ルール : CC(HS2 桁の変更 )+ 特定の加工要件 A 国 ( 第三国 ) B 国 ( 第三国 ) 綿糸 CTC ルール OK タイ 日本 部分品 ( ポケット ) 62.17 ポケットの重量が衣類の 10% 以下 CTC を満たすか否か考慮しなくて良い ( ルール満たさずともそのまま使える ) 52.06 CTC ルール満たさない 綿織物 衣類 62.05 EPA 下で日本に輸出 11

2. 日 タイ EPA における原産地規則 原産品 (28 条 ) 附属書 2 2 付加価値基準 (QVC: Qualifying Value Content) 1. 締約国内における生産 加工等に伴い形成された付加価値を価額換算し 当該付加価値が一定の基準値 ( 敷居値 ) を超えた場合に 当該産品に原産資格を付与する方法 敷居値が高いほど難度の高いルールとなる 2. 一般的に CTC に比べて域内での調達や産業集積を管理し易く また敷居値を高く設定することで第三国産品のタダ乗り防止やローカルコンテント的な性格を持たせることも容易 他方で 原産性の立証を行う際の産業界の作業負担が小さくなく また部材サプライヤーが納入先からコスト情報の開示を要求される 服飾 宝飾品のように販売ブランドによって販売価格が大きく変動し得るような品目には不向き 為替や原材料市況の変動に左右される等の問題がある < 日 タイ協定では以下の方法で付加価値率を計算 > Q.V.C(%)= FOB-V.N.M FOB 100 ( )QVC: 原産資格割合 ( 締約国における付加価値 ) FOB: 産品の取引価額 ( 本船渡しベース ) VNM: 非原産材料 ( 第三国からの輸入部品等 ) の合計価額 QVCの閾値 ( 最低ライン ) は原則 40% ( 注 ) 付加価値の算出に当たっては 累積規定を適用し 相手締約国の原産部品も自国の原産部品と見なして 計算に組み入れることが可能 12

部品 1 日本 A 国 ( 第三国 ) 部品 2 (A 社 ) 完成品 部品 1 ( 非原産 :$100) 部品 2 ( 非原産 :$200) V.N.M (D 社 ) 部品 Q (C 社 ) 部品 X( 原産 ) 部品 3 (B 社 ) 部品 X( 国内 ): 原産 関税番号変更 部品 P タイ EPA 下で輸出 部品 3 ( 原産 :$300) 部品 Y( 輸入 ): 非原産部品 Z( 内作 ): 原産生産コスト+ 利益 部品 Y 部品 4 ( 原産 :$100) ( 原産 ) 原材料 ( 金属等 ) B 国 ( 第三国 ) 完成品の付加価値 生産コスト + 利益 $300 FOB 価格 =$1,000 (E 社 ) 部品 4 ( 国内 : 原産 ) QVC= $1,000-$300(1+2) =70% $1,000 13

原産資格割合 (QVC) の計算における非原産材料価額の扱い 非原産材料の価額 =CIF ベース ( 不明な場合は国内での確認可能な最初の支払い価格 ) 輸出産品の生産に使用される原材料 ( 国内調達パーツ等 ) の中に非原産材料 ( 輸入サブパーツ等 ) が使われていたとしても 当該原材料が原産品と判断される場合にはこれを 100% 原産と扱って良く 従ってこの非原産材料の価額を VNM に加える必要はない (28 条 7: ロールアップ ) 原材料が非原産と判断された場合には たとえ当該非原材料の中に締約国 ( 日本又はタイ ) 原産の材料が含まれていたとしても この原産材料の価額は考慮されない ( 原産部分を差し引くことなく 当該非原産材料の価額全体を VNM に含める ) ( ロールダウン ) 14

V.N.M 輸出 部品 2 完成品 部品 1 ( 非原産 :$300) 部品 2 ( 非原産 :$200) 部品 3 ( 原産 :$300) (A 社 ) 非原産と判断されたら一部原産が入っていても当該部品全体を非原産と扱う ( 原産材料 A の価額 $50 は差引けない ) < ロールダウン > 非原産材料価額 =$300 原産材料価額 =$300 付加価値 = 部品 1 サブパーツ A: 原産 $50 サブパーツ B: 非原産 $200 生産コスト + 利益 $50 取引価格 =$300 部品 3 サブパーツ X: 原産 $100 サブパーツ Y: 非原産 $100 $300-$200 = 33% ( 非原産 ) $300 (C 社 ) (B 社 ) サブパーツ B サブパーツ Y 部品 4 ( 原産 :$100) 生産コスト + 利益 $300 原産資格有りと判断されたら一部非原産が入っていても当該部品全体を原産と扱う ( 非原産材料 Y の価額 $100 を差引く必要なし ) < ロールアップ > サブパーツ Z: 原産 $50 生産コスト + 利益 $50 取引価格 =$300 原産資格の基準値 : 40% 以上 FOB 価格 =$1,200 付加価値 = $300-$100 $300 = 66% ( 原産 ) 15

2. 日 タイ EPA における原産地規則 原産品 ( 附属書 2) 3 加工工程基準 1. 締約国内で特定の生産 加工工程が实施された場合に 当該産品への原産資格を付与する方法 使用する材料 部品や 工程の内容を具体的に記述するのが特徴 2. 産品と材料が同一の号に含まれる場合等 CTC では規定できない工程をカバーでき 産業界の立証コストは CTC 同様低廉というメリットを有する一方で 関税番号に依存せずに材料や工程の定義範囲を明確にする必要が生じ 一般的にはあまり使用されていない 世界的には化学品や繊維製品で当該基準を使用される場合が尐なくない 事例 : アパレル製品に関する 2 工程ルール ( 次頁参照 ) アパレル製品に関し日本は 糸 生地 ジャケット という 2 工程ルールを関税撤廃の前提条件として提案 合意に至っている この場合例えばタイの企業は 中国製の糸を使うことは可能であるが 先ずアパレルを縫製するための生地を国内で当該糸から生産する必要がある (ASEAN 域内から生地を調達することも可能 ) 16

アパレル製品の原産地ルール CC(HS 2 桁の変更 ), 但し織物類からの変更の場合を除く 締約国において特定の形状に裁断され かつ縫製されることを条件とする 加工工程基準の例 ( アパレル製品 ) 糸を輸入し織物を製造 その後アパレルに 日本 日本原産の織物を使用し衣類に加工して日本に輸出 タイ 中国 毛織物 (HS 51.12) 織物 (HS 51.12) 1 毛糸 (HS 51.07) 3 ( 裁断 縫製 ) ジャケット (HS 62.03) 2 毛織物 (HS 51.12) 非原産の織物を輸入し使用 織物類からの変更を除く 非原産の織物を輸入して使用するのは 原産品たる織物を使用する必要あり 上記のケースでは タイ原産又は日本原産の織物 を用いて タイで 裁断され かつ縫製される 必要あり 17

2. 日 タイ EPA における原産地規則 累積 (accumulation:29 条 ) 基本概念 タイの原産品 X が 日本で生産される産品 Y の材料として使用される場合 産品 Y の原産資格の判定に際して 産品 X も日本の原産材料と見なすルール タイ( 日本 ) 原産たる産品 Xを 日本 ( タイ ) 原産と見なす いわば 締約国間での原産資格の相互認証 規定であり 特恵原産地規則では通常盛り込まれているもの 更に 異なった協定間での原産資格の相互認証を図る实験的な試みも欧州ではなされているものの 品目別ルールは各協定毎に特定の譲許関係を前提に交渉 設定されたものであることから 第三国による迂回輸入を誘発する危険性も指摘されている 18

積送基準 (32 条 ) 日本 発給当局 日本 タイ間を直接輸送 又は第三国を一定条件の下に経由しなければ原産資格を失う タイ 税関 c/o 原産地証明書 1 直接輸送 c/o 輸出者 c/o 輸入者 積送基準 (32 条 ) (a) 他方の締約国から直接輸送 ; 又は (b) 積替え又は一時蔵置のために一又は二以上の第三国を経由して輸送される場合には 積卸し及び産品を良好な状態に保存するために必要な作業以外の作業が行われないこと 2 積替え 一時蔵置 2 の場合 : 通し船荷証券の写し 又は 第三国の税関等が提供する証明書その他の情報であって 当該第三国で積卸しや保存のための作業等以外が行われていないことを証明するもの のいずれかを提出 保税地域 シンガポール 3 通関し加工後再輸出 19

2. 日 タイ EPA における原産地規則 原産地規則と原産品判定 EPA 特恵対象品目 ( 必要情報のシステム入力 ) A B 判定 原産性基準 28 条 非原産材料の抽出 HS 番号確認 C 判定 判定基準 28 条 PSR 非原産材料 or 原産材料の抽出 価額確認 ( 必要情報のシステム入力 ) 関税分類変更基準 加工工程基準等 ( システム入力 ) 付加価値基準 ( 必要情報のシステム入力 ) HS 番号変更 OK 積送基準 32 条 閾値クリア 原産資格割合 no OK OK 24 条 僅少規定 日本の原産品 協定 28 条及び附属書 2( 品目別規則 ) 以外に 29 条 ~38 条の個別に適用する規則に適宜従う必要がある 20

原産地証明書発給の基本的な流れ 日本 タイ 生産者 産品が原産品であることに関する記録の保管 (5 年 ) 発給した原産地証明書に係る記録の保管 (5 年 ) 生産者による証明資料提出 又は 証明資料提出 依資頼料提出 輸出者 証明書発給申請 証明書発給 指定発給機関 ( 商工会議所等 ) 指発定給監機督関 < 輸出 > 原産地証明書の送付 ( 原産地証明書に基づく情報提供 確認要請 ) 輸入者 原産地証明書の提出 特恵関税率の適用 経済産業大臣? タイ税関当局 ( 関係者の同意の上で回答 ) 21

2. 日 タイ EPA における原産地規則 原産地証明における輸出者 ( 生産者 ) の主な義務と検認 (verification) 対応について 原産品でなかったこと等の通知義務 ( 日タイ協定第 42 条 原産地証明法第 6 条 ) 1 証明書の発給を受けた物品が特定原産品でなかったこと (5 年 ) 2 申請書の記載又は資料の内容の誤りにより証明書の記載に誤りが生じたこと (1 年 ) 3 証明書に記載された事項に変更があったこと (1 年 ) 4 生産者が提出した資料の内容に誤りがあったこと (1 年 ) について 上記括弧内の期間に指定発給機関等に遅滞なく書面により通知する義務 書類の保存義務 ( 日タイ協定第 42 条 原産地証明法第 7 条 ) 輸出者 生産者が 特定原産地証明書の発給を受けた物品に関する書類であって 物品が特定原産品であることを明らかにするために提出された資料の内容が事实であることを証するために必要な情報を含む書類を 当該証明書の発給を受けた日以降 5 年間 保存する義務 原産品であるか否かについての確認 (Verification) への対応 ( 日タイ協定第 43 条 第 44 条 原産地証明法第 30 条 ) 輸入国税関は 輸出国政府当局に対し 輸入される貨物が原産品に当たるか否かについて原産地証明書を基に情報提供を要請できる また 輸出国の政府当局が 輸入国政府当局の立会の下に 生産者施設を訪問し情報収集することを要請できる この要請への対応は任意であるが 回答しないと特恵関税適用が拒否される可能性がある 22

2. 日 タイ EPA における原産地規則 日タイ協定発効直後の経過措置について ( 運用手続き規則 12 条 ) 協定発効時に相手国へ輸送中の産品又は一時蔵置されている産品のための経過規定 協定発効時にすでに船積みしており タイへ輸送中又は一時蔵置されている原産品ついては 遡及発給された原産地証明書を提出の上 規則に従って特恵関税を要求することができる c/o ( 船積日より後なので 遡及発給 された原産地証明書を提出 ) 日本 ( 船積み ) 発効日 11/1 ( 原産地証明書発給開始 ) タイ ( 通関 ) 原産地証明書上の HS 番号の記載について HS 条約は 2007 年 1 月に改訂 我が国でも 2007 年 1 月 1 日よりこれを施行 従って現在 輸出入申告やインボイス作成等通常の貿易手続きでは 2007 年版 HS を使用 他方 日 タイ EPA 協定は改訂前の 2002 年版 HS で合意 締結されており 同協定に基づく原産地証明書上求められる HS 番号の記載は 2002 年版 HS に基づき行う必要あり 23

3. 世界の FTA 原産地規則 Europe (EU 型 ) Asia (AFTA 型 ) Americas (NAFTA 型 ) EEA 協定の加工工程基準と付加価値規準の co-equal がベース 東欧 中東 アフリカ アジアとの間の各協定でも同じ規則を採用 アジア地域においてハブとなっている原産地規則は AFTA の付加価値規準 ( 先頃 CTC との co-equal 導入を決定 ) 他方 米 EU と個々に締結している FTA ではそれぞれ米 EU ベースの規則を採用 関税番号変更基準をベースに政治的に重要な品目については付加価値規準を導入 付加価値の算出方法についても関心の高い品目については 原価方式 原産材料積み上げ方式 により より緻密な原産資格の計算を要求 米州大陸に加え アジア 中東 アフリカとの間の各協定も同規則で統一 EU East Asia Korea-Singapore US-Singapore NAFTA Japan-GCC EFTA-Singapore China-Asean Japan-Mexico EU-Mexico US-CAFTA Euromed Asean India ASEAN US-Australia Japan-Chile US-Chile EU-South Africa 韓 泰 馬 比 アセアン Singapore-Australia Singapore-NZ メキシコ FTAA EU-Chile シンカ ホ ール シンカ ホ ールは AFTA 日星 米星 EFTA 星 韓星と 5 種類の原産地規則を締結 24

3. 世界の FTA 原産地規則 NAFTA と AFTA 原産地規則の対比 AFTA 例外を除き品目毎のルール設定なし ( 付加価値基準の一律適用 ) 統一は困難 ルールの不整合 NAFTA 品目毎にルール設定 ( 関税分類変更基準が主 自動車関係のみ付加価値 ) 税関による第三者証明 手続の不整合 自己証明 運用の不整合問題運用の不整合 出口 ( 原産地証明の発給審査 ) 入り口 ( 輸入国税関による審査 ) 双方の手続に係る運用のバラツキの問題であり AFTA 対 NAFTA という構図の問題ではない AFTA の实施に関し ASEAN 各国税関の運用が異なるという問題も顕在 なお 企業へのインパクトは 出口の運用の不整合問題の方が総じて大きい 日本の場合 同一の協定の实施に際して 日本の運用が相手締約国側のそれよりも一方的に厳しい 又は高コストなものとならないよう 産業界が大きな関心を有している实情あり (AFTA 系派生グループ ) 中国 -ASEAN 日本 -ASEAN インド -ASEAN 韓国 -ASEAN 等 (NAFTA 系派生グループ ) 北米各国が中南米やアジア諸国と個別に締結するバイ協定等 25

3. 世界の FTA 原産地規則 ( 参考 ) 東アジアの現状 東アジア地域ではハブとなる ASEAN の AFTA 原産地規則 ( 付加価値 40%) がデファクト スタンダード (AFTA の最大ユーザは域内各国の日系企業 ) これに対し日本は各バイ協定で関税番号変更基準と付加価値基準との選択制 (co-equal) を提案 例外はインド CTC と付加価値の 2 種類のルールを同時に満たすことを要件とする 原産地証明取得コストの高いルールを採用 中 アセアン VA40% 韓 アセアン CTH or VA40% 日 アセアン CTH or VA40% 印 アセアン CTSH and VA35% タイ CTH/CTSH or VA40% シンガポール AFTA VA40% フィリピン CTH/CTSH or VA40% ( 注 ) 表示されている原産地規則は あくまでも基本原則 例外品目はそれぞれに存在 ( 改訂ルール ) CTSH or VA40% ブルネイ CTSH or VA40% マレーシア CTSH or VA40% インドネシア CTSH or VA40% 豪 アセアン CTH or VA40% 26