4 水稲における追肥等の同時防除技術の確立
4 水稲における追肥等の同時散布技術の確立 [ 調査目的 ] 水稲栽培では 良食味指向が強まる中で 追肥 ( 穂肥 が控えられる傾向があった また 従来の無人ヘリコプターの積載能力の限界から 追肥への無人ヘリコプターの利用はなかった しかし 規制緩和により 小麦と同様に いもち病防除時期に 防除作業と同時に追肥を行うことが可能となった このため 水稲についても と農薬の同時施用技術に関する基礎データの収集 解析を行う Ⅰ 落下分散 [ 調査内容 ] 1 調査場所長野県小諸市山浦農林航空技術センター静岡県浜松市ヤマハ発動機株式会社春野テスト場 2 調査期間平成 28 年 1 月 22 日 2 月 2 日 2 月 17 日 3 散布資材 表 15 散布資材略称 名称 成分 含量 住友 住友尿素入り窒素加里化成 窒素 17% 内アンモニア性窒素 9.1% 水溶性加里 1% クミアイ クミアイ尿素入り窒素加里 窒素 14% 内アンモニア性窒素 9.0% 可溶性リン酸 化成 % 内水溶性リン酸 % 水溶性加里 1% 空散 空散水稲追肥 306 窒素 30% 溶性加里 % 溶性苦土 % 4 使用機種 装置機種 :FAZER 散布装置 : 粒剤 同時処理装置および L-41 5 調査方法飛行ラインに直交する調査線上に 1m 間隔で 21 点 容器および地上約 80 センチメートルの高さに 1 辺 5 センチメートルの箱型のミラコート紙を設置し 中央部を 1 パスづつ散布飛行した 散布液は青色の色素で着色し ミラコート紙に付着した散布液滴の痕跡を画像処理し数値化した 容器にトラップされたは調査点別に計量した あわせて 回収した表面の着色液の付着状況を観察した 飛行諸元の組み合わせはを表 16 に示す なお 調査 1~6 は 調査場所の制約から農薬の散布ができず着色水としたため 7~12 で実際の農薬を散布装置 L-41 を使用して 落下分散状況の確認を行った の吐出量の調査は 散布装置吐出口を袋で覆い ホバリング状態で一定時間吐出させ計量した 散布資材の吐出量 ( メタリング開度または散布ボリウム は 飛行諸元に対応する必要量に近い値に設定した なお 飛行間隔は 7.5m を想定した 飛行速度は散布飛行中の 30m 区間の飛行時間から換算した 飛行高度は 無人ヘリコプターオペレータの達観による 散布中の風向風速は デジタルハンド風向風速計 26D-BⅡ( 株式会社太田計器製作所製 等により測定した なお 風等の影響がない条件での落下分散状況を調査することにより 屋外での調査結果を補完するために 農林航空技術センターの屋内散布装置により 調査を行った - 187 -
高さ 3.25m でレールに懸架した散布装置を 15Km/h の速度で走行させ 直交する調査線上に m 間隔で 17 点容器を設置して トラップされた資材を調査点別に計量した 走行速度は 15Km/h 飛行間隔は 5m を想定した 表 16 散布資材 飛行速度km /h 飛行高度 m 散布量 反復 1 住友 + 13 3 50 kg /ha 3 2 着色水 20 8L/ha 3 クミアイ+ 13 50 kg /ha 4 着色水 20 8L/ha 5 空散 + 13 50 kg /ha 6 着色水 20 8L/ha 7 アミスタートレボン 10 3 8L/ha 2 8 SE 4 8L/ha 9 8 倍 15 3 8L/ha 10 4 8L/ha 11 20 3 8L/ha 12 4 8L/ha [ 調査結果 ] 1 散布条件粒剤散布装置のメタリング開度と吐出量の関係を表 17 に示す この結果により 設定する飛行速度に対応する粒剤散布装置のメタリング開度に調節した 散布条件を表 18 に示す 飛行速度は 計画値に概ね近い値であった また 風速は 実施基準で定められている 3m/s 以下の条件であった 2 落下分散落下分散状況を図 18~19に示す 飛行間隔 5mまたは7.5m 重ねた場合の計算上の変動係数を表 19に示した 住友の同時散布は ともに変動係数は 概ね均一の目安である30% 以下であり 均一な散布が可能であると考える クミアイは 変動係数は問題なかったが の変動係数は 全般に均一な値ではなかった の外見は 住友もクミアイも大きな違いが無いことから 同時散布することが影響したとは考えにくいと思われる 機体横方向からの風の影響により の落下分散との分散にズレが生じていることがあるが 調査時の状況から 瞬間的に基準値を超える風速になったことによるものと思われる アミスタートレボンSEの落下分散は いずれの飛行諸元においても均一な散布であることが確認できた 図 2 同時散布装置の装置は ノズル位置が現行の散布装置 L-41と同様であることから 装置が異なっても落下分散は同様の傾向を示すものと考えられるため 同時散布においても 均一な散布が可能であると考える 屋内での落下分散調査では いずれのも後方から見て左に寄る傾向が認められた 図 2 3 との干渉落下分散調査時に散布した着色液のへの付着状況を観察したところ 付着はわずかであり 状況からのトラップ容器内に付着した着色液にが接触して付着したことも考えられることから 干渉の影響は無いと考える - 188 -
[ まとめ] 3 種のと農薬の落下分散結果は 飛行速度 10km /h~20km/h 飛行間隔 5mまたは7.5mの現行の実施基準の範囲内で均一な散布が可能であることかが確認された と散布液の干渉は少なく 同時散布は可能であると考える 表 17 吐出量調査メタリング資材名開度 吐出量kg / 分 住友 10 8.40 13 12.84 クミアイ 11 8.44 14 18 空散 12 8.64 15 12.29 表 18 調査条件 資材名 飛行高度 飛行速度 実測速度 風向 風速 粒剤メタリンク 散布ホ リウム 1-1 3m 13Km/h 12.9 NW 2.5 10 9 1-2 11.2 NNW 2.3 住友 1-3 12.3 WNW 0.7 + 2-1 20Km/h 18.4 NNW 13 19 水 2-2 18.7 ENE 1.1 2-3 19.4 E 1.7 3-1 13Km/h 13.5 NNW 11 9 3-2 12.6 ENE クミアイ 3-3 12.8 NW + 4-2 20Km/h 19.4 WNW 14 19 水 4-2 20.3 SW 0.9 4-3 19.6 ESE 5-1 13Km/h 12.5 WNW 1.1 12 9 5-2 12.8 SSW 1.2 空散 5-3 12.7 NE 0.6 + 6-1 20Km/h 18.9 ESE 15 19 水 6-2 18.6 SSE 2.1 6-3 19.3 NW 1.7-189 -
表 18 調査条件つづき 資材名 飛行高度 飛行速度 実測速度 風向 風速 粒剤メタリンク 散布ホ リウム 7-1 3 10Km/h 18.9 S 1.2-7-2 19.3 WSW - 8-1 4 18.9 S 1.1-8-1 18.9 WSW 1.3-9-1 3 15Km/h 16.4 WNW 1.1 - アミスター速度連動 9-2 17.7 S - トレホ ンSE 機能に 10-1 4 15.2 SSW - 8 倍依存 10-2 15.2 S 1.7-11-1 3 20Km/h 1 S 1.6-11-2 11.3 SSE 0.6-12-1 4 13.2 W 1.7-12-2 13.2 W 0.6 1~6の飛行方向はNW SE 7~12はWSW ENE 表 19 飛行諸元と変動係数の関係 変動係数 資材名 飛行高度 飛行速度 7.5m 重ね 5m 重ね 1-1 3m 13Km/h 15.5-21.1-1-2 15.3 28.7 26.4 26.9 住友 1-3 14.2 18.7 2 25.7 + 2-1 20Km/h 22.4 2 13.8 21.4 水 2-2 21.9 9.0 12.6 9.9 2-3 31.1 35.2 8.8 27.3 3-1 13Km/h 16.1 103.7 9.9 80.2 3-2 25.8 46.7 15.7 39.6 クミアイ 3-3 20.7 7 6.8 44.9 + 4-2 20Km/h 35.1 50.1 18.6 4 水 4-2 2 20.1 13.8 15.7 4-3 22.3 59.1 21.4 59.1 5-1 13Km/h 13.6 - - 5-2 20.7-27.2 - 空散 5-3 20.1-11.8 - + 6-1 20Km/h 18.5-16.4 - 水 6-2 32.7-23.2-6-3 33.1-8.4-7-1 3 10Km/h - 25.3-2 7-2 - 25.6-22.6 8-1 4-19.1-18.8 8-1 - 24.4-13.5 9-1 3 15Km/h - 33.3-3 アミスター 9-2 - 24.9-13.7 トレホ ンSE 10-1 4-8.7-14.3 8 倍 10-2 - 20.3-15.8 11-1 3 20Km/h - 64.8-28.9 11-2 - 14.7-9.7 12-1 4-1 - 9.2 12-2 - 14.9-11.9-190 -
住友 13 km /h 住友 13 km /h 05 住友 13 km /h 住友 20 km /h 住友 20 km /h 住友 20 km /h 70 クミアイ 13 km /h クミアイ 13 km /h クミアイ 13 km /h 50 70 20 70 15 1 8.0 クミアイ 20 km /h クミアイ 20 km /h 2.5 3.5 1.40 1.20 25 100 0 50 0 0 0 0 0 0 クミアイ 20 km /h 2.5 0.80 0.60 0.40 0.20 0-191 -
空散 13 km /h 空散 13 km /h 空散 13 km /h 0 0 0 0 空散 20 km /h 空散 20 km /h 空散 20 km /h 0 0 0 0-192 -
0 0 150 0 0 0 0 住友 住友 住友 0 0 3.50 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 クミアイ クミアイ クミアイ 0 0 0 0 0 0 0 150 0 0 0 0 0 0 0 3.50 0 0 0 空散 空散 空散 0 0 150 0 3.50 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0-193 -
2.5 アミスター 3m 10 km /h アミスター 3m 10 km /h アミスター 4m 10 km /h 1.6 1.4 1.2 0.8 0.6 0.4 0.2 アミスター 4m 10 km /h アミスター 3m 15 km /h アミスター 3m 15 km /h 2.5 2.5 14 1.4 1.2 0.8 0.6 0.4 0.2 アミスター 4m 15 km /h アミスター 4m 15 km /h アミスター 3m 20 km /h 20 25 2.5 0 アミスター 3m 20 km /h アミスター 4m 20 km /h アミスター 4m 20 km /h 15 15 0 0 0-194 -
Ⅱ 崩壊調査 [ 調査の内容 ] 1 調査場所長野県小諸市山浦農林航空技術センター 2 調査期間平成 28 年 2 月 10 日 3 散布資材 表 20 散布資材 略称 名称 成分 含量 住友 住友尿素入り窒素加里化成 窒素 17% 内アンモニア性窒素 9.1% 水溶性加里 1% クミアイ クミアイ尿素入り窒素加里化成 窒素 14% 内アンモニア性窒素 9.0% 可溶性リン酸 % 内水溶性リン酸 % 水溶性加里 1% 空散 空散水稲追肥 306 窒素 30% 溶性加里 % 溶性苦土 % 4 調査方法テストスタンドに設置したヤマハFAZERの粒剤散布装置 L-4Aに予め目開き 1.4mmの篩にかけ製造 流通過程で生じた粉 欠片を除いたを2kg搭載し 吐出口をビニル袋で覆い全量を吐出させた 回収したを同様の篩にかけ 粉 欠片と篩上に残ったものの重量を計量した 篩の目開き1mm [ 調査結果 ] 落下分散調査において 散布後回収したに割れ粒はほとんど見られなかった 予備調査で 吐出中に粉立ちが認められたことから 粉状のものについて篩分けを行った 表 21 の結果に示すように散布装置によるの崩壊はごくわずかであった 表 21 崩壊状況 資材名 回収量粉 破片崩壊率 (g (g (% n1 住友 1996 3 0.15 n2 1998 2 0.10 n3 2000 2 0.10 n1 クミアイ 2000 2 0.10 n2 2000 1 5 n3 1999 1 5 n1 空散 2000 <1 - n2 1999 <1 - n3 2001 2 0.10 [ まとめ ] 散布装置によるの崩壊などの影響はごくわずかであり 問題はないと考える - 195 -
Ⅲ 腐食調査 [ 調査の内容 ] 1 調査場所長野県小諸市山浦農林航空技術センター 2 調査期間平成 28 年 1 月 30 日 ~2 月 19 日 3 散布資材 表 22 散布資材 略称 名称 成分 含量 住友 住友尿素入り窒素加里化成 窒素 17% 内アンモニア性窒素 9.1% 水溶性加里 1% クミアイ クミアイ尿素入り窒素加里化成 窒素 14% 内アンモニア性窒素 9.0% 可溶性リン酸 % 内水溶性リン酸 % 水溶性加里 1% 空散 空散水稲追肥 306 窒素 30% 溶性加里 % 溶性苦土 % 4 調査方法ヤマハFAZERの粒剤散布装置 L-4Aのインペラを1/3に切断し 片面半分の表面をヤスリで研磨したものおよび散布装置吐出口付近の機体スキッドのボルトとナットの一部分の表面をヤスリで研磨したものをバットに入れたに埋め込んで 定温器の中に入れ 21 日間放置した ボルト ナットは 各ごと5 組とした インペラの材質は アルミ表面に硬質アルマイト処理 ボルト ナットは 鉄表面に亜鉛メッキ [ 調査結果 ] 試験期間中の定温器内の平均気温は2 湿度は64.8% であった 放置期間後 住友 クミアイは 粒が膨潤し インペラ ボルト ナットにこびりついている状態であったので 腐食程度が不明にならない程度に水洗し スポンジ ブラシ等でを落としてから観察した 住友 クミアイはインペラの研磨なし以外は すべて腐食が認められた 研磨ありのインペラは 表面が灰色にささくれ立つ部分が散見された ボルト ナットの研磨なしは 粒が接触していた部分のメッキが白く浮き上がる状況 研磨部分は 錆で赤く変色している状況であった 空散は 腐食が無 ~ 微であり ごくまれに変色した部分が認められる程度であった 表 23 表 23 による金属腐食の有無インペラ ボルト ナット 研磨なし研磨あり 研磨なし 研磨あり 研磨なし研磨あり 住友 無 有 有 有 有 有 クミアイ 無 有 有 有 有 有 空散 無 無 無 ~ 微 無 無 無 ~ 微 [ まとめ ] の種類によっては 資材に直接接するインペラおよび 接触の可能性のある機体スキッド周辺の金属部品に 摩耗等の条件が重なった場合 腐食等の影響を及ぼす場合があるので 洗浄等の注意が必要と考える - 196 -