(4) 在日米国人心理学者による逆翻訳 (5) 在米米国人心理学者による内容の検査と確認 (6) 予備調査 本調査の対象東京都 千葉県の小児科クリニック 市役所 子育て支援事業に来所した 12~35 か月 30 日齢の健康な乳幼児とその養育者 537 組を対象とした 本調査の内容本調査の質問紙には

Similar documents
論文内容の要旨

様式 3 論文内容の要旨 氏名 ( 神﨑光子 ) 論文題名 周産期における家族機能が母親の抑うつ 育児自己効力感 育児関連のストレス反応に及ぼす影響 論文内容の要旨 緒言 女性にとって周産期は 妊娠 分娩 産褥各期の身体的変化だけでなく 心理的 社会的にも変化が著しいため うつ病を中心とした気分障害

中カテゴリー 77 小カテゴリーが抽出された この6 大カテゴリーを 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーの構成概念とした Ⅲ. 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーリストの開発 ( 研究 2) 1. 研究目的研究 1の構成概念をもとに 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーリストを

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

<4D F736F F D F4B875488C097A790E690B C78AAE90AC838C837C815B FC92E889FC92E894C5>

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名小山内秀和 論文題目 物語世界への没入体験 - 測定ツールの開発と読解における役割 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 読者が物語世界に没入する体験を明らかにする測定ツールを開発し, 読解における役割を実証的に解明した認知心理学的研究である 8

(Microsoft Word

Microsoft Word - manuscript_kiire_summary.docx

教育工学会研究会原稿見本

(Microsoft Word \227F\210\344\226\203\227R\216q\227v\216|9\214\216\221\262.doc)

Microsoft Word 今村三千代(論文要旨).docx

研究成果報告書

問題 近年, アスペルガー障害を含む自閉症スペク トラムとアレキシサイミアとの間には概念的な オーバーラップがあることが議論されている Fitzgerld & Bellgrove (2006) 福島 高須 (20) 2

時間がかかる.DOSS は妥当性が検証されておらず, 更に評価に嚥下造影検査が必要である. FOSS や NOMS は信頼性と妥当性が評価されていない.FOIS は 7 段階からなる観察による評価尺度で, 患者に負担が無く信頼性や妥当性も検証されている. 日本では Food Intake LEVEL

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

Microsoft Word - 209J4009.doc

(Microsoft Word - \211\211\217K\207T\225\361\215\220\217\221[1].doc)

QOL) を向上させる支援に目を向けることが必要になると考えられる それには統合失調症患者の生活の質に対する思いや考えを理解し, その意向を汲みながら, 具体的な支援を考えなければならない また, そのような背景のもと, 精神医療や精神保健福祉の領域において統合失調症患者の QOL 向上を目的とした

資料 3 全国精神保健福祉センター長会による自殺予防総合対策センターの業務のあり方に関するアンケート調査の結果全国精神保健福祉センター長会会長田邊等 全国精神保健福祉センター長会は 自殺予防総合対策センターの業務の在り方に関する検討チームにて 参考資料として使用されることを目的として 研修 講演 講

untitled

岩手医科大学医学部及び附属病院における人を対象とする医学系研究に係るモニタリング及び監査の実施に関する標準業務手順書 岩手医科大学医学部及び附属病院における 人を対象とする医学系研究に係る モニタリング及び監査の実施に関する標準業務手順書 岩手医科大学 第 1.0 版平成 29 年 10 月 1 日

Microsoft PowerPoint ⑤静岡発表 [互換モード]

生の 0.39% となっており 255 人に1 人が不登校児童であることが示されている ( 文部科学省,2015) また 不登校やいじめなどの問題が深刻化する中で その予防的対応に関するニーズは非常に高くなっている これらの学校不適応の問題の背景には 家庭 個人 学校 友人関係など様々な要因が想定さ

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名田村綾菜 論文題目 児童の謝罪と罪悪感の認知に関する発達的研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 児童 ( 小学生 ) の対人葛藤場面における謝罪の認知について 罪悪感との関連を中心に 加害者と被害者という2つの立場から発達的変化を検討した 本論文は

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

自己愛人格目録は 以下 7 因子が抽出された 誇大感 (α=.877) 自己愛憤怒 (α=.867) 他者支配欲求 (α=.768) 賞賛欲求 (α=.702) 他者回避 (α=.789) 他者評価への恐れ (α=.843) 対人過敏 (α=.782) 情動的共感性は 以下 5 因子が抽出された 感

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

調査会社から提供された予想回答率から配信数を決定し調査を行った結果, 配信数 名に対し, 名の回答が回収された ( 調査協力率 :14.5%) さらに, スクリーニング調査の 1 週間後に本調査の 1 回目を実施した スクリーニング調査において 過去一ヵ月以内に インターネ

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol 12, No 1, pp 49 59, 2008 資料 看護師におけるメンタリングとキャリア結果の関連 Relationship between M

Title 感謝特性尺度邦訳版の信頼性および妥当性の検討 Author(s) 白木, 優馬 ; 五十嵐, 祐 Citation 対人社会心理学研究. 14 P.27-P.33 Issue Date 2014 Text Version publisher URL

のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛

<4D F736F F D208BDF93A190E690B65F967B90528DB895F18D908F A>

学位論文審査結果報告書

2012 年 7 月 15 日 第 59 巻日本公衛誌第 7 号 433 生きがい意識尺度 (Ikigai 9) の信頼性と妥当性の検討 イマイ今井 タダノリ忠則 * オサダ長田 ヒサ久 オ ニシムラ 雄 2 * 西村 ヨシツグ芳貢 3 * 目的 生きがい を測定する簡便な尺度の実用化のために,9

ブック 1.indb

博士学位論文 内容の要旨および審査結果の要旨 2018 年度中部学院大学 氏名 ( 本籍 ) 小川征利 ( 岐阜県 ) 学位の種類 博士 ( 社会福祉学 ) 学位授与の日付 2019 年 3 月 21 日 学位番号 甲第 8 号 学位授与の要件 中部学院大学学位規則第 4 条の規定による 学位論文題

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

Human Developmental Research 2011.Vol.25, 幼児の不安傾向とその関連要因の検討 - 改訂版幼児用不安傾向評定尺度の作成 - 筑波大学大学院人間総合科学研究科 * 西澤千枝美 Young Children s Anxiety Tendencies

<4D F736F F D A89898F4B4494C792F990B394C5>

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

<8E9197BF81698E518D6C33816A95DB88E78E6D8E8E8CB A8F4389C896DA88EA97972E786C7378>

太成学院大学紀要論文第 19 巻 ( 通号 36 号 )pp 看護学生の共感性の育成 社会的スキルとの関連からの検討 Nursing Student 's Empathy Development - Consideration from Relation with Social Skil

 

歯科医師と歯科衛生学生の回答を比較したが 各質問項目における群間の差の分析には クロス集計 カイ二乗検定 Mann-Whitney U 検定 Kruskal-Wallis 検定を用いた 項目間の関連性については Spearman の順位相関係数を用いた なお 本研究は 東京都歯科医師会の承認および東

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

(Microsoft Word - \222\206\220\354\221\361\227v\216|)



様式 3 論文内容の要旨 氏名 ( 内田遼介 ) 論文題名 スポーツ集団内における集合的効力感の評価形成過程に関する研究 論文内容の要旨 第 1 章研究の理論的背景集団として 自信 に満ちた状態で目前の競技場面に臨むことができれば, 成功への可能性が一段と高まる これは, 競技スポーツを経験してきた

<4D F736F F F696E74202D ED089EF959F8E838A7789EF C835B BB82CC A332090DD92758EE591CC8F4390B38CE3205

件法 (1: 中学卒業 ~5: 大学院卒業 ) で 収入については 父親 母親それぞれについて 12 件法 (0: わからない 収入なし~ 11:1200 万以上 ) でたずねた 本稿では 3 時点目の両親の収入を分析に用いた 表出語彙種類数幼児期の言語的発達の状態を測定するために 3 時点目でマッ

因子分析

コーチング心理学におけるメソッド開発の試み 東北大学大学院 徳吉陽河

2 2~3 才の発達障害児 12 人 ( 自閉症 8 その他の障害 4) が参加した ただし おひさま だけでは 7 人のデータしか得られなかったので 同様の集団保育を行なっており 同じ研究者が関わっている同県蟹江市の通園施設に在籍する 5 人のデータが含まれている 4NPO 法人つみきの会 ( 以


無料低額宿泊所等を利用する被保護者等に対する知的障害及び適応行動等に関する調査研究

<4D F736F F F696E74202D AAE90AC94C5817A835F C581698FE39E8A90E690B6816A2E >

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

”ƒ.pdf

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香

PowerPoint プレゼンテーション

過去の習慣が現在の習慣に与える影響 インターネットの利用習慣の持ち越し 松岡大暉 ( 東北大学教育学部 ) 1 問題関心本研究の目的は, インターネットの利用の習慣について, 過去のインターネットの利用習慣が現在のインターネットの利用の習慣に影響を与えるかを検証することである. まず, 本研究の中心

PowerPoint プレゼンテーション

家政_08紀要48号_人文&社会 横組

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

岡正 荒島 : 保育者に求められる子ども 子育て支援のための地域福祉アセスメントツール開発に向けた基礎研究 子育て支援のための地域福祉アセスメントツール開発に向けた基礎研究 保幼小の円滑な接続のための資料としては 保育所で子どもの育ちを支えるための資料を 保育所児童保育要録 として小学校へ送付するこ

気になる子 の身辺自立に関する母親の困り感と保育の場への援助要請藤後悦子 野澤純子 石田祥代 と正の相関 多動 問題行動 情緒不安定 友人関係問題と負の相関が示された ゆえに幼少期から身辺自立を促すことは小学校以降の適応に肯定的な影響を及ぼすのである このように身辺自立の確立は重要であるが 発達に課

近藤直司氏 講演資料

<4D F736F F D F82A482C C B835E B83588CA48B C668DDA95B68F912E646F6378>


ヘルメスの翼に

( 別刷 ) 中年期女性のジェネラティヴィティと達成動機 相良順子伊藤裕子 生涯学習研究 聖徳大学生涯学習研究所紀要 第 16 号別冊 2018 年 3 月

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

甲37号

千葉テストセンター発行 心理検査カタログ

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

修士論文 ( 要旨 ) 2017 年 1 月 攻撃行動に対する表出形態を考慮した心理的ストレッサーと攻撃性の関連 指導小関俊祐先生 心理学研究科臨床心理学専攻 215J4010 立花美紀

PowerPoint プレゼンテーション

「病院医師の入院患者に対する  在宅医療の視点」評価尺度の  開発と信頼性・妥当性の検討

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

農業体験学習が大学生の自己意識に与える影響 農業体験学習が大学生の自己意識に与える影響 効果測定のための尺度作成の試み The farmwork' contribution to university student's self consciousness Vol.1 - Trial to dev

S.E.N.S養成カリキュラム(2012年度版)シラバス

DV問題と向き合う被害女性の心理:彼女たちはなぜ暴力的環境に留まってしまうのか

4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

地域包括支援センターにおける運営形態による労働職場ストレス度等の調査 2015年6月

Microsoft Word - 210J4061.docx

(1) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要第 5 巻第 1 号 2011 Bulletin of Graduate School of Human Development and Environment Kobe University, Vol5 No 研究論文 新たな親密性

表紙.indd

研究成果報告書

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

歯学部附属病院での 器材の正しい滅菌工程と 滅菌物適性保管のための教育的介入 - 滅菌依頼等関連業務に関わる職員への意識調査を元に - 中央材料室嵯峨山順子

弘前校 診断・アセスメント結果を基にした 地域機関との連携による子ども支援の取り組み

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

<915391CC348D5A F F815B312E706466>

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

時期場面子ども自身の問題 乳 児 期 乳児訪問 1~2 か月訪問 乳児健診 (3~4 か月 7~8 か月 10 か月 ) 健診時に要チェック項目がある ( 体重増加が悪い 先天性の疾患がある等 ) 既往歴がある ( 硬膜下血腫 頭蓋骨骨折 ) 気持ちを苛立たせるような泣き声 あやしても泣き止まない

<90528DB88EBF96E2955B2E786C73>

人文科学編12-2( ).indb

Transcription:

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 河村秋 論文審査担当者 主査丸光惠副査廣瀬たい子 森田久美子 論文題目 乳幼児の社会 情緒的問題の評価尺度 ~ 日本語版 ITSEA の開発と信頼性妥当性の検討 ~ ( 論文内容の要旨 ) < 緒言 > 近年 わが国では子どもの発達障害への関心が高まりを見せている 後に発達障害と診断された親の 80% 前後が うちの子はどこか気がかりであるという心配を抱いているが そこから相談や診断へと向かうまでには長い時間を要し その間の養育者の不安やストレスは親子関係の阻害 養育者から子どもへの虐待の誘因ともなっている 発達障害を持つ子どもにとっても その障害特性に合った適切な対応 支援を受けられないことにより 二次障害 として学童期 思春期に問題が表出することが指摘されている また 発達障害という診断はついていないが 対人的トラブル 落ち着きのなさ 状況への順応性の低さ 衝動性 などの行動特徴を持つ 気になる子 への対応の難しさについても問題となっている 子どもの気になる行動は かかわり方に問題があるのかもしれないと養育者が不安やストレスを抱いている場合も多い 発達障害を持つ子 気になる子 の養育者にとって子どもの行動特徴を理解し対応を知るための支援を受けることで 育てづらさやストレスを軽減し 良好な親子関係につなげることができる ITSEA(Infant-To ddler Social and Emotional Assessment) は 米国の Alice S. Carter らにより開発された尺度である 1 3 歳未満児の社会 情緒的問題や能力についての 4 領域 ( 外在化問題 内在化問題 調整不全問題 能力領域 ) 17 下位尺度 3 項目群 170 項目から構成され 子どもの育てにくさや気がかりの原因が どのような問題の領域で 同時に強みとなる能力はどのような能力なのかを査定できる 必要な発達上の支援サービスにつなげる際にも その子どもの問題と能力の両方を的確に伝達することを可能にする 本研究では 日本における ITSEA の活用を目指し 第一段階として日本語版 ITSEA 作成と信頼性妥当性の検討を目的とした < 対象と方法 > 研究デザイン日本語版 ITSEA を作成し 信頼性妥当性の検証のために質問紙と構造化インタビューによる横断調査を用いた 日本語版 ITSEA の作成手順 (1) 原版 ITSEA の使用許可の取得 契約 (2) 原版 ITSEA の翻訳 (3) 専門家会議 - 1 -

(4) 在日米国人心理学者による逆翻訳 (5) 在米米国人心理学者による内容の検査と確認 (6) 予備調査 本調査の対象東京都 千葉県の小児科クリニック 市役所 子育て支援事業に来所した 12~35 か月 30 日齢の健康な乳幼児とその養育者 537 組を対象とした 本調査の内容本調査の質問紙には 日本語版 ITSEA との併存妥当性の検討のため 幼児期の情緒や行動の評価尺度である 子どもの行動チェックリスト親用 CBCL2/3(CBCL2/3) 広汎性発達障害による適応上の困難度を評定する尺度である 広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度 (PARS) を含めた 研究協力施設に来所し 研究参加への同意が得られた親子 537 組に対し PARS による構造化インタビューの上 日本語版 ITSEA を配布し郵送で回収した 2 歳以上の子どもの養育者にはさらに C BCL2/3 を配布し 郵送で回収した 1 回目調査に参加し 質問紙を返送した対象に対し 2 回目調査 ( 再検査 ) として日本語版 ITSEA のみを送付し郵送にて回収した 分析方法日本語版 ITSEA の信頼性は 内的整合性を Cronbachα 係数 安定性については再検査法を用いた 妥当性は 内容的妥当性を専門家会議にて検討した 併存妥当性については CBCL2/3 PAR S との相関関係を検討した 構成概念妥当性については 探索的因子分析 確認的因子分析を用いた 倫理的配慮養育者に口頭および文書にて研究目的と内容 研究協力の任意性と撤回の自由 個人情報の保護などを説明し紙面にて同意を得た 事前に東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会にて審査 承認を受けた < 結果 > 1 回目調査にて PARS の記入と評定 日本語版 ITSEA と CBCL2/3 の質問紙配布を行なったのは 537 名 質問紙が回収されたのは 448 名 (83.4%) であった 1 回目調査への協力者に対し 2 回目調査を実施し 416 名 (92.8%) から回答があった 調査間隔が 10~14 日以内であった 106 名のデータ (25.5%) を再検査の対象として使用した 日本語版 ITSEA の各領域得点 下位尺度得点 項目群得点について正規性を検討し内在化領域得点のみに正規性が認められた 信頼性の検討 (1) 日本語版 ITSEA の内的整合性 :4 領域の Cronbachα 係数は 0.70~0.93 17 下位尺度については 0.43~0.83 であった (2) 再検査による日本語版 ITSEA の安定性各領域 下位尺度 項目群間の順位相関係数 (Spearman) を算出し安定性を確認した 各領域得点間では 外在化領域 (ρ=0.82) 内在化領域(ρ=0.81) 調整不全領域(ρ=0.82) 能力領域(ρ =0.91) に p<0.01 水準で有意な相関を認めた 外在化領域の各下位尺度間 (ρ=0.69~0.76) 内在化領域の下位尺度間 (ρ=0.51~0.81) 調整不全領域の下位尺度間 (ρ=0.73~0.84) 能力領域の下位尺度間 (ρ=0.75~0.87) 各項目群間(ρ=0.51~0.75) で いずれも p<0.01 水準で有意な - 2 -

相関を認めた 妥当性の検討 (1) 併存妥当性 : 日本語版 ITSEA と CBCL2/3 PARS 外在化領域得点は CBCL2/3 の全下位尺度得点と有意な相関を認め 中程度から高い相関が認められたのは 総得点 外向尺度得点 攻撃得点 注意集中得点 反抗得点 睡眠 食事得点 (ρ =0.41~0.69, p<0.01) であった 内在化領域得点は CBCL2/3 の発達得点 攻撃得点以外の下位尺度得点と 有意な相関を認め 中程度から高い相関が認められたのは 内向尺度得点 依存分離得点 (ρ=0.53~0.61, p<0.01) であった 調整不全領域得点は CBCL2/3 の全下位尺度得点と有意な相関を認め 中程度から高い相関が認められたのは 総得点 外向尺度得点 内向尺度得点 睡眠 食事得点 攻撃得点 注意集中得点 反抗得点 その他の問題得点 (ρ=0.41~0.63, p<0.01) であった 能力領域得点は CBCL2/3 の総得点 外向尺度得点 内向尺度得点 引きこもり得点 発達得点 攻撃得点 注意集中得点 (ρ=-0.22~-0.36, p<0.01) と有意な相関を認めた 項目群得点は PARS 総得点と不適応項目群得点 社会関係性項目群得点 異常項目群得点 (ρ=-0.21~0.32, p<0.01) で有意な相関を認めた (2) 構成概念妥当性 : 日本語版 ITSEA の探索的因子分析 4 因子に因子を固定し 主因子法 プロマックス回転による分析を行なった 睡眠 以外の下位尺度は 高い因子負荷量を示し 全下位尺度を説明する割合は 60.0% であった 第 1 因子は能力領域の 6 下位尺度と調整不全領域の1 下位尺度 第 2 因子は外在化領域の 3 下位尺度 調整不全領域の 2 下位尺度 第 3 因子は内在化領域の 2 下位尺度 第 4 因子は内在化領域の 2 下位尺度 調整不全領域の 1 下位尺度で構成されていた (3) 構成概念妥当性 : 日本語版 ITSEA の確認的因子分析 4 領域と下位尺度間に共分散を仮定したモデルで確認的因子分析を行ない 適合度指標は GFI= 0.863 AGFI=0.814 RMSEA=0.098 AIC=608.126 であった 外在化領域 内在化領域と能力領域の相関が有意でなかったため 外在化領域 内在化領域と能力領域の因子間相関を 0 としたモデルでも分析し GFI=0.863 AGFI=0.817 RMSEA=0.097 AIC=604.591 と 最初のモデルよりもデータに適合した結果が得られた < 考察 > 日本語版 ITSEAの信頼性について日本語版 ITSEA の各領域と 17 下位尺度のうち 行動 / 衝動性 攻撃性 / 反抗 友達への攻撃 新奇性への抑制 消極的感情 食事 順応性 共感 友達との関係 の内的整合性は良好であるといえる うつ / ひきこもり 全般的不安 感覚的敏感性 についての内的整合性は確認できなかった これは原版 ITSEA や先行研究と同様の結果であり 許容できる結果である 再検査法では 各領域 下位尺度 項目群の平均得点間で中程度 強い相関がみられ 日本語版 ITSEA の安定性は確認された 日本語版 ITSEA の妥当性について (1) 併存妥当性日本語版 ITSEA 領域 項目群得点と CBCL2/3 の下位尺度得点の関係は 原版 ITSEA と CBCL1.5 5 の関係と共通した傾向が見られ 日本語版 ITSEA は原版 ITSEA と同様の併存妥当性を持つと示 - 3 -

唆された (2) 構成概念妥当性日本語版 ITSEA の探索的因子分析 確認的因子分析の結果から 原版 ITSEA と同様に 4 領域 1 7 下位尺度の構造を持つことが示唆された 結論 日本語版 ITSEA の内的整合性が確認され 再検査法により各領域 下位尺度 項目群得点の安定性が確認されたことから日本語版 ITSEA の尺度の信頼性は検証された 専門家会議による内容的妥当性の検討 CBCL2/3 PARS との相関関係から併存妥当性の確認 探索的因子分析 確認的因子分析の結果から構成概念妥当性の確認がされ 日本語版 ITSEA の妥当性は検証された 今後は 標準値 カットオフスコアの設定 弁別妥当性の検討が必要である - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4596 号河村秋 論文審査担当者 主査丸光惠副査廣瀬たい子 森田久美子 ( 論文審査の要旨 ) 近年 子どもの発達障害に対する関心が高まっている 子どもの行動に不安やストレスを抱く養育者にとっては 育児ストレス軽減に向けた支援が不可欠である 特に親子関係の形成過程である 1 歳から 3 歳前後の子どもをもつ保護者にとって 子どもの特徴の理解や対応の仕方を知ることは 育児ストレスを軽減するのみならず 良好な親子関係につなげることができる そこで 申請者は米国で開発された ITSEA(Infant-Toddler Social and Emotional Assessment) を 日本の臨床実践に活用するべく 日本語版作成と信頼性妥当性の検討を目的とし 調査を行った ITSEA は 1~3 歳児の育てにくさや気がかりの原因となる問題領域を特定し 強みとなる能力を査定するできる尺度であり 170 項目 4 領域 ( 外在化 内在化 調整不全 能力 )17 下位尺度 3 項目群で構成される 米国では 特に発達障害等のリスクのある子どもに対して広く臨床的に使用されているものである 日本語版は尺度の翻訳版作成手順に従って詳細に検討され プレテストも行って作成し 12~35 か月 30 日齢の健康な乳幼児と養育者 537 組に配布された また 併存妥当性を確認するため 子どもの行動チェックリスト親用 CBCL2/3(CBCL2/3 および 広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度 (PARS) を用いた質問紙調査とインタビューを合わせて行っている 調査は 2 回行われ それぞれ回収率は 83.4% 92.8% であった 主な結果は 1) 良好な内的整合性 2) 2 回の調査における安定性の確認 3)4 領域 17 下位尺度における併存妥当性の確認 4) 原版の構造を仮定した確認的因子分析により適合度指標 GFI=0.863 AGFI=0.817 RMSEA=0.097 AIC=604.591 のモデルが最適であると確認されたことであり 日本語版 ITSEA の信頼性 妥当性を確認している 審査においては1) 原版尺度に関する専門知識 2) データ解釈のうち 特に Cronbachα 係数 0.93 第四因子の弱から中低度の相関係数 確認的因子分析において RMSEA が増加している事について質問がなされた また 3) 本尺度の日本における臨床応用について 対象選定 使用目的等について質問がなされ いずれも的確に回答することができた 本研究は 発達障害等を虐待のハイリスク群と捉え 確定診断がつくまでの数か月から数年の期間における看護介入の必要性について優れた臨床知見を基に着想した研究であると言える 以上より 申請者は 発達障害 育児ストレス 愛着形成に関する看護 福祉 精神保健領域について十分な専門知識および 尺度選定から日本語版尺度の作成過程についても十分な学識を有しており 博士号に値すると判断した ( 1 )