給水設備の腐食と防食 鹿島建設 中島博志 水道水は主に高置水槽方式と圧力給水方式で 建物内の使用箇所に供給されている ( 図 1-3-1 参照 ) また 受水槽の管理の問題から 増圧式の水道直結方式も採用されるようになってきた 高置水槽 HF ポンプ仕切弁逆止弁 定水位弁 自動エア抜弁 RF RF 給水管 給水管 3F 3F 揚水管 2F 給水管 給水管 2F 受水槽 揚水ポンプ 1F 受水槽 圧力タンク 1F 給水ポンプ 図 1-3-1 給水方式 ( 左 : 高置水槽方式 右 : 圧力給水方式 ) 1) はじめに給水は飲料用途に用いられるので 水質としては最も高い品質が要求される 従って水道法に定められた上限 すなわち鉄で 0.3mg/l 銅で 1.0 mg/l 亜鉛で 1.0 mg/l 鉛で 0.01 mg/l(h15.4/1 改正 ) の基準を満たせなくなると使用に不具合を生じる 給水は清水で常温であり 機器の劣化に関しては他の設備より有利とも考えられるが 不利な点もある 給水は建築設備のなかで最も水を消費する系である すなわち飽和した溶存酸素を持った水が多量に金属材質の表面を通過する 全面腐食を前提とする金属 ( 炭素鋼等 ) の使用には適していないといえる 次に残留塩素の存在である 近年水道局からの残留塩素の量は 原水の悪化に伴い増加する傾向がある また 各建物に個別に設置された残留塩素注入装置が塩素を過剰注入する故障が起こる また 給水設備の使いはじめに殺菌のために次亜塩素酸が使用される場合があり 非常に高い残留塩素濃度が系内を巡ることもある 残留塩素は非常に強力な酸化剤であり 耐食性の高い金属を使用した場合 電位を上昇させて局部腐食が起こり易くなる ゴムのような有機物の劣化にも注意が必要である 2) 水道水質の変化都市化による水道原水の悪化により凝集沈殿処理に使用される凝集剤の量も増加する このことが溶存塩類の増加 電気伝導率の上昇 phの低下をもたらす 溶存塩類の増加は硫酸イオンの増加になり 鉄の腐食や給湯銅管の孔食に影響を与えたと考えられる 現在では硫酸バンド ( 硫酸アルミニウム ) に替えてAC( ポリ塩化アルミニウム ) が使われることが多くなった phの低下はph 調整剤の使用量の増加をもたらし さらに溶存塩類の増加になり電気伝導率を上げる 浄水場におけるpH 調整剤では 消石灰等のカルシウムを含んだアルカリ剤が粉体で扱いにくいことを理由に苛性ソーダを使用するようになった このためランゲリア指数の改善 ( 上昇 ) が行われず 配管 ( 特に鋼管 ) の腐食に悪影響を及ぼしたと考えられる 6
3) 給水システム従来の給水方式は高置水槽方式であったが シャワーの設置率の向上と利用圧力に対する要求が厳しくなり 建物外観に対する意匠上の問題から 現在では圧力給水システムが一般的になった このため水と平衡する気相の圧力が高くなり結果として水中の溶存酸素が増加する場合がある 4) 給水配管現在ビル用給水配管の材料としては硬質塩化ビニルライニング鋼管を主としてステンレス鋼管 銅管等が用いられている 表 1-3-1 給水管材料の変遷 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 (S35) (S40) (S45) (S50) (S55) (S60) (H2) (H7) 1. 配管 1) 配管用炭素鋼鋼管 鍛接鋼管 100φ 以下は鍛接 125φ 以上は電縫管となる 電縫鋼管 2) 塩ビライニング鋼管 3) ポリ粉体ライニング鋼管 4) ポリエチレン被服鋼管 [S26]( 低周波溶接 ) ( 高周波溶接 ) [S32] フランジ付管 住都公団 ( 一部 ) 採用 [S32] プレーンエンド管 住都公団給水に本格採用 WS 制定 JWWA 制定 建設省採用 WS 制定 * 耐溝状腐食管がでる 管端コアー 管端防食継手 JWWA 制定 JIS 制定 2. 継手 1) 鋼管用 ねじ込み式配水管継手 排水鋼管用可とう継手 2) ライニング鋼管用 JIS 制定 亜鉛メッキ 公団分はアエンメタリコン SD 継手 ( 住友 ) MDJ 制定 (MD 継手 ) ワンマン継手 ( 長谷川 ) 住都公団 ( 仕様規格 ) 樹脂コーティング継手 塩ビライニング鋼管用防食継手 ( 塩ビ ) ( エポキシ ) JIS 強化 JWWA 制定 JF 制定 ( 塩ビ ポリ粉体統合 ) 排水鋼管用可とう継手 [ 出展 ]( 社 ) 建築 設備維持保全推進協会編 : 設備システム 機器および法規の変遷,pp4-7,1995: 一部改変 1 亜鉛めっき鋼管 (JIS G3442( 水道用 )SGW G3452( 一般配管用 ) SG ー B EG EH) 亜鉛めっきは水質によって寿命が大きく異なる 亜鉛はシリカと不溶性の化合物を形成する この物質はヘミモルファイト ( 塩基性珪酸亜鉛 ) と呼ばれる物質である 水中のシリカの濃度が高く 硫酸イオンや塩化物イオンの濃度が低い場合 亜鉛めっき配管は長期間にわたり亜鉛層を保持することができる 10,12,15,16,17) 給水用亜鉛めっき鋼管の大きなトラブルとしては 昭和 40 年代に発生した白水である これは亜鉛の溶出により水道法の濃度 (1mg/l) を超える亜鉛が溶出し 水が白濁する現象である 低 phで過飽和の遊離炭酸を含み 当然ながらランゲリア指数の負となる水で使用された場合に白水が発生し易い 現在日本で新築のビルで 亜鉛めっき鋼管を給水用の管材として用いることは殆ど無い しかし既存のビルや共同住宅に亜鉛めっき鋼管は大量に使用されており その大部分の建物に赤水や漏水が発生している 写真 1-3-1 に給水に用いた亜鉛めっき鋼管の腐食を示す 7
写真 1-3-1 給水に用いた亜鉛めっき鋼管の腐食 2 水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管 (JWWAK116:SG-VA VB VC VD) 水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管 (JWWAK132:SG-A B C D) 18) ( イ ) 亜鉛めっき継手初期には亜鉛めっき鋼管用の継手がそのまま使用された 当然継手の内面の耐食性はライニング管の内面より劣ることになる ただし管端部は亜鉛が消耗するまで 亜鉛に保護される ( ロ ) 内面樹脂コーティング継手とシール材継手の内面にエポキシ樹脂のコーティング (50μm 以下 ) が施されたものが商品化された 従って配管内面の肉厚 1.5mm 以上の塩ビ管とは耐久性が全く異なる材料が同じシステムに使用されることになった 直管の切断面である配管の管端部には鉄が露出するのでこの部分を保護するために シール材を施工時に塗布することが行われた 現場コーティングであるから当然施工品質は作業者に依存することになる 写真 1-3-2 にコーティング継手の膨れによる腐食を示す 写真 1-3-2 コーティング継手の膨れによる腐食 8
写真 1-3-3 管端部の腐食した硬質塩化ビニルライニング鋼管 ( ハ ) 管端防食継手管継手各社が様々の管端防食継手を開発した この継手により継手内面の耐食性と配管の内面の耐食性が一致したと言える 管端部の防食性能についてはいろんな工夫がある 選択する上でのいくつかの注意を述べる 亜鉛めっき 亜鉛めっき 塩ビライニング 亜鉛めっき 塩ビライニング 合成樹脂コーティング 管材 : 亜鉛めっき鋼管継手 : 亜鉛めっき管継手 ( 鋳鉄 ) 管材 : 硬質塩化ビニルライニング鋼管継手 : 亜鉛めっき管継手 管材 : 硬質塩化ビニルライニング鋼管継手 : 合成樹脂コーティング管継手 塩ビライニング 塩ビライニング 合成樹脂コーティング 内蔵コア 挿入型コア 管材 : 硬質塩化ビニルライニング鋼管継手 : コア内蔵型管端防食管継手 管材 : 硬質塩化ビニルライニング鋼管継手 : 合成樹脂コーティング管継手管端処理 : 防食コア ( 挿入型 ) 図 1-3-2 各種管端防食継手 出来るだけ一体になっている製品が挿入忘れがなくて良い 配管施工後外側から管端防食継手を使用していることが外観で検査できること 配管側の雄ねじの加工精度のばらつきを吸収出来ること ゴムリングを入れたり 水を吸収すると膨張する充填材を使用した製品もある このような製品は輸送時に水が入ったりすると使用不能になる等の事例が発生した ( ニ ) 絶縁機能付き管端防食継手給水配管系には水栓 持ち出し バルブ メーター等銅合金が使われている これらの部品と鋼管を接続すると長期の間には異種金属接触腐食の影響を受ける そこで管端防食継手に絶縁性能を持たせたものが製品化されている このような部品を使用することによって長寿命化を達成することが可能になる 9
3ポリエチレン粉体ライニング鋼管内面は 0.3mm 以上のポリエチレンがライニングされている 現在一般には塩ビライニング鋼管と同等に扱われているが 塩ビライニング鋼管の内面は塩ビの配管 (1.5mm 以上の厚さ ) であり ポリエチレン粉体ライニング鋼管の内面はライニング (0.3mm 以上の厚さ ) である この厚さの違いを意識して使用しなくてはならない 配管の切断時に高速砥石切断機を使うことは 熱や切り粉の影響は薄いライニングに対しては重大になる 施工中の内面の傷つき易さにもかなり差があると考えられる 給湯の銅管と隣に配管される場合には 銅管のロー付け用のバーナーの炎を当てられると内面のライニングに泡立ち膨れを生じるので注意する 4 銅管 (JIS H3300 C1220T リン脱酸銅管 ) 19) 給水銅管に希に生じる腐食として 給湯銅管に生じるⅡ 型の孔食がある これは北海道等の一部にみられるシリカの濃度が高い地方で生ずる 内面がガラス状の皮膜に覆われた部分で孔食が生じる 孔食の上部にあるマウンド ( 蓋状の腐食生成物 ) は塩基性硫酸銅を主体とするもので硫酸イオンが重炭酸イオンよりも多い条件で発生する この硫酸イオンは上流の温泉水に由来するものである また軟質銅管を使用した住宅等の 井戸水を使用する給水管にⅠ 型孔食がみられる シリカ濃度が高くpHの低い水に発生する 20) 被覆付き銅管で保温下の配管外面から蟻の巣状腐食が発生することがある 対策は分解しにくい樹脂と発泡剤を使用した被覆付き銅管を選定することや温度の高くならない位置で使用する等である 上記以外の腐食については (2)3)1 給湯配管の銅管の項を参照されたい 5ステンレス鋼管 (JIS G3448 一般配管用ステンレス鋼鋼管 ) (2).3).1 給湯配管のステンレス配管の項参照 21,22) 5) 水槽類給水設備で使用される槽類には受水槽 高架水槽等がある 現在はビル用としてFR 製かステンレス鋼製が主に使用される FR 水槽も内部の補強には金属が使用されている 受水槽の内部の気相では金属は水中よりも腐食が著しい 最近では耐震のグレードがあがったためと内部の清掃のし易さ等を考えて外部からの補強方法が強化される傾向にある ステンレスタンクも大型のものはパネルタンクが一般的である 材質は SUS304 か SUS444 のものが使用されている 水中の部分は SUS304 で問題は無いが 給水の残留塩素濃度が高い場合 気相部では発錆や孔食を起こす場合がある このような場合には2 相ステンレス鋼を使用したり 気相部の換気を行うことでこの腐食を避けることが出来る 写真 1-3-4 ステンレス製タンク気相部の腐食事例 写真 1-3-5 ステンレス製タンク気相部の腐食事例 10
写真 1-3-6 SUS444 受水槽気相部発銹 6) 給水設備機器 部品 1コーティングポンプポンプの接液部の鉄を避けるためにコーティングした仕様の製品を選ぶ場合があるが コーティングは特に動きのある製品では基本的に長期の耐久性は期待できない ポンプが1 年を待たずにコーティングが膨れや剥離を起こし腐食した例が複数ある 2 衛生器具に使用される黄銅衛生器具部品に配管等には黄銅の使われる場合が多い 黄銅は水質によって脱亜鉛腐食を起こし強度が低下するので応力がかかっている場合には破損を生じる 注意すべき事は脱亜鉛腐食は外観が変化せず 強度だけが徐々に低下し ある日突然破壊して顕在化する現象である 低 phの水中では特に注意する必要がある 給水の低 phが事前に判っていれば 中水道用の耐脱亜鉛腐食の部品が用意されているのでそれを使用する 写真 1-3-7 衛生器具用配管部品の外面ニッケルクロムめっき黄銅 ( 右は断面 30A 経年 8 年 ) 11
写真 1-3-8 実際の脱亜鉛の断面 ( 左 :α β 相優先 右 : 栓状 ) 7) 赤水とその防止対策 1 赤水とは水道水の基準は全鉄で 0.3mg/l 以下である 0.3-0.5mg/l のレベルではかなり注意しても色には気がつかない 0.5-1.0mg/l のレベルであれば注意すれば気付く 水の厚みを厚くして観察すれば少しオレンジ色であることが判る 1-1.5mg/l では約半分位の人が気付く 1.5mg/l を超えると誰でも赤いと判る 鉄の量と色の関係は溶存酸素の量とpH 等により変わる 赤水の赤い色は3 価の鉄の色である 水道の赤水は水酸化第 2 鉄のコロイドの凝集したものによる 極希にマンガンが原因で赤水がでる場合がある 原水が井水の場合に多く起こる これは水中の極微量のマンガンが長期間の間配管の内壁に蓄積してあるときから給水中にでてくる現象である 水をよく観察すると赤水ではなくて黒水である このような場合には配管内をクエン酸等で洗浄する 色が赤く見えるためには 水中の鉄の濃度が一定以上存在しなくてはならない そのため給水管中を常時水が流れている状態で 色が判る程の腐食速度を維持することは困難である つまり水が停滞している状態で腐食が進行することが 水中にある濃度以上の鉄を存在させることが可能となる 太い給水主管は休止時にも少しずつ流れているため余り高い濃度に達し難い 従って原因となる位置を見つけるためには朝一番または休日あけに水栓から水を出しその水量と濃度を計測すれば良い 2 赤水の出方と配管システム赤水の出方と原因は給水システム全体の構成材料によって変化する 亜鉛めっき鋼管を使用したシステムでは枝管の中で通水の無い状態が長く継続される時 ( 一般には夜間である ) に赤水の原因が形成される これが朝一番の赤水として発見される 事業所では土日や休日の休み明けに顕著になる 塩ビライニング鋼管で管端防食継手を使用している場合は 黄銅製の部品 ( バルブ メーター 持ち出し 水栓取り付け金具 ) に接続された部分や 管端の防食がねじ切りの不良等でうまくいっていない場合がある このような場合も赤水がでるまでの水量とパイプの保有水量から位置を特定する必要がある この場合は赤水は竣工直後に発見されることが多い ステンレス鋼や銅管を使用しているシステムでは 鉄製の部品が使用されている位置の水が停滞している時にこの状態が形成される したがってこの場合には 赤水が発生するまでの水量とパイプの保有水量との比較から どのあたりに赤水の発生原因となる鉄製部品が使用されているかを推定することができる 過去の例では持ち出し 鋳鉄製バルブ ポンプ 脱気器等がある バルブやポンプや脱気器等はナイロン等でコーティングされている仕様が多いが 調べてみると剥離などを生じていることがよくあるので疑う必要がある この場合も赤水は竣工直後に発見されることが多い 3 赤水対策赤水といっても配管材料 ( 亜鉛めっき 塩ビライニング 銅 ステンレス鋼 樹脂 ) と使用している 12
継手 ( 亜鉛めっき エポキシコーティング 管端防食継手 ) と経過年数によって状況が異なる 耐食性管材と新しい継手を使用して発生した赤水は その発生箇所を特定することが第一である 基本的には赤水の発生する筈のないシステムだから原因は設計どうりの施工になっていない可能性があるからである もし数年を経て発生したのであればライニング材の剥離のような使用材料の内 寿命の短いと考えられるものを疑う必要がある 亜鉛めっき鋼管や塩ビライニング鋼管で管端部の対策をしていないシステムでは 竣工後時間が経過すれば その場所の水質の違いにより長い短いはあるものの 赤水の発生は避けられない 10 年から15 年たったマンションでこのような設備がばく大な数で存在していると考えられる 表 1-3-2 各種赤水対策の評価 原 理 配管更新法配管更生法 ( ライニンク 工法 ) 膜脱気法消石灰注入法防錆薬品注入法 配管を交換する サンド研磨等により 錆を除去した後 エボキシ樹脂でコーティングする 逆方向から 2 回塗り 錆の原因である溶存酸素を取り除き 赤錆を黒錆化する 腐食の進行は鈍化し 表面は安定して 赤水解消 ランゲリア指数を改善して鉄錆を防止 防錆剤を注入して 赤色を消す 電気 磁気 セラミック等 磁気等の作用等については不明 赤水解消効果 大 大 大 大 大 メカニズム不明 完全 ( 施工が完全か材料が耐食的な場合 ) 完全を期することは難しい 配管の継ぎ目部分などに行き渡らない場合もある 施工次第 検査重要 設計が大事 水が動く場所であれば管内のすみずみまで効果あり 設計が大事 水が動く場所 効果ありであれば管内のすみずみま 水を使用しない所困難で効果あり 実績多し ( 但し防食メカニズム不明 ) 短短短短中長赤水解消までの時間 即日( 使用開始後 ) 即日( 使用開始後 ) 1 週間 ~1ヶ月 1 週間 ~1ヶ月 数日 数ヶ月 工 期 長 中 短 短 短 短 3ヶ月 1 週間 ( 断水 仮設配管 ) 1 週間 ( 断水半日 ) 1 週間 ( 断水半日 ) 数日 数日 安全性 ( 樹脂による ) ( 数年間 ) イニシャルコスト ランニンク コスト 高 中 中 中 ( 戸数による ) 小 中 40 万円 / 戸 20 ー 30 万円 / 戸 20~30 万円 / 戸 10~20 万円 / 戸 2~5 万円 / 戸 10~20 万円 / 戸 小 小 中 中 中 小 なし( いぜんと同じ ) なし( 以前と同じ ) フィルター及び電気代 消石灰とCO2ボンベ 主に薬品代 電気式の場合 公的評価 ----- 建設省技術評価書 厚生省技術評価 建設省大臣認定 建設省大臣認定 厚生省 ( 但し応急処置との位置付け ) ----- [ 備考 ] 露出配管により 意匠的な問題が発生する 業者による施工のバラツキ 工事中の騒音や仮設配管の不便 施工後の検収条件 既存配管を現状のままで保存延命 意匠的問題がない 既存配管を現状のままで保 心理的抵抗感 応急的存延命 意匠的問題がない 対応策 薬品の人体への健康にプラス 長期影響不明 設置は容易 効果メカニズムが不明 効果が出たら支払う契約で安心 ( イ ) 配管の取り替え最も確実な方法は配管を取り替えることである しかし赤水の発生しているマンションに容易に配管の交換が可能なものは数が少ない 従って取り替えはメインのシャフトのような取り替え可能な場所に限定して行う 住戸内の配管は天井下に露出する工法などが意匠的に許容される場合は取り替えが可能となる 取り替えを行う場合部分的な取り替えでは赤水は止まらない 正確に言うと取り替えにくい末端の配管を取り替えないと効果が小さいと言うことである もしメインシャフトのみ取り替える場合は住戸内配管には何か別の対策が必要である 1) ( ロ ) 給水用防錆剤給水用防錆剤は昭和 50 年代に厚生省がお墨付きを与えた赤水防止法である 重合リン酸塩系と珪酸塩系と両者を混合したものの3 種類がある 長期飲用の安全性を考え使用開始時の薬品投入濃度と その後の投入濃度は区別して規定されている 規定の濃度では腐食の抑制効果は水質に依存する リン酸が鉄イオンをキレートして可溶性の錯イオンを生成するため 水酸化第 2 鉄にならないので赤水は止まる しかし腐食が止まったわけでは無いことに注意する ただし 厚生省の通達には給水用防錆剤の使用は 取り替えまでの応急処置として位置づけられている 大規模な修繕までの限定された期間には最 13
適の方法である 1) ( ハ ) パイプライニング工法配管内部の錆瘤をサンドブラストで除去しエポキシ樹脂をコーティングすることにより配管経路を変更することなく給水管を再生できる この工法のポイントは錆瘤の完全な除去と最小コーティング膜厚の確保である 配管の経路が複雑であれば配管系を何分割かにして工事を行う また 樹脂も1 回塗りあたりの膜厚の厚いものを使用する必要がある ( ニ ) 膜脱気法この方法は給水配管の腐食の原因である酸素を取り除くやり方で 原理的には効果の確実な方法である また 住戸内配管等を工事する必要がないので意匠的な問題が生じない 溶存酸素を現在 0.5ppm にすれば良いとされている 問題は給水の使用量全部を脱酸するために必要な装置のコストである 高架水槽や受水槽を循環させて脱酸する等の方式が考えられているが 詳細なデータは公表されていない この方法のメリットは断水等の期間が短く 生活に影響が小さいことである また 残存肉厚にあまり影響を受けないのでかなり腐食程度がひどくても採用できる 既存のビルでこの方法を使うときには設置位置によっては上流の鉄錆が常時装置に流入するので装置の前処理が必要である ( ホ ) 管端電気防食この方法は塩ビライニング鋼管の管端部の腐食による赤水を防止する方法である 陽極には白金めっきのチタン線を用い それを樹脂のネットで覆うことで陽極と配管の接触を避ける工夫がなされている 具体的には住戸内の数個の水栓の取り付け部の後ろに特別の部品をとりつけ そこから陽極を差し込み管端部の電気防食を行う ( へ ) その他 ( 磁気処理 電子処理 セラミック処理 ) 23) 磁気処理については歴史も古く かなりの研究が過去にあり スケールの防止については効果が認められる論文が報告されているが 腐食に関しては明確な報告は未だ無い 逆に腐食を促進させるという実験結果も報告されている ( 第 4 章参照 ) また 事前に水質を分析して効果の有無を予測する技術も無く 実際に設置して効果をみるしか方法が無い 他にも電子式 セラミック式 その他様々の方式があるが これらについては文献も少なく 机上の評価は現時点では出来ない これらの方式は数多くの実績があるので評価は今後の研究に待たざるを得ない 8) 謝辞本解説文の作成に当たり 腐食防食協会建築設備技術小委員会の各位 特に三建設備 : 細谷氏 新菱冷熱 : 松川氏 須賀工業 : 竹田氏にご協力を得たことを記して謝辞に変えさせていただきます 14