上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

定している (2) 通達等の定めア 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 昭和 29 年社発第 382 号厚生省社会局長通知 以下 昭和 29 年通知 という 乙 1) は, 一項本文において, 生活保護法第 1 条により, 外国人は法の適用対象とならないのであるが, 当分の間,

国籍確認請求控訴事件平成 12 年 11 月 15 日事件番号 : 平成 12( 行コ )61 大阪高等裁判所第 4 民事部 裁判長裁判官 : 武田多喜子 裁判官 : 正木きよみ 松本久 原審 : 大阪地方裁判所平成 11 年 ( 行ウ )54 < 主文 > 一. 原判決を 取り消す ニ. 訴訟費用

という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

平成  年(オ)第  号

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

最高裁○○第000100号

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

の上記アの期間に係る標準報酬月額を44 万円に訂正する必要がある旨のあっせんをした ( 甲 1の18ないし21 頁, 丙 4) (2) Aの標準報酬月額の決定等ア厚生年金保険法 ( 平成 24 年法律第 62 号による改正前のもの 以下 厚年法 という )100 条の4 第 1 項 3 号及び4 号

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

平成  年(行ツ)第  号

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

最高裁○○第000100号

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

当法 22 条 2 項,3 項により本件滞納社会保険料等の徴収に関する権限を承継した被告に対し, 本件滞納社会保険料等のうち平成 17 年 5 月分以前のもの ( 以下 本件請求対象社会保険料等 という ) についての納付義務は時効等により消滅しているとして, 本件交付要求のうち本件請求対象社会保険

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

Microsoft Word - 行政法⑨

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

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ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

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13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

 

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

【外国人】2条

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

(イ係)

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

裁判所は, 同年 9 月, 被上告人に対し, 米国に被拘束者を返還することを命ずる旨の終局決定 ( 以下 本件返還決定 という ) をし, 本件返還決定は, その後確定した (4) 上告人は, 本件返還決定に基づき, 東京家庭裁判所に子の返還の代替執行の申立て ( 実施法 137 条 ) をし, 子

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

札幌市総合設計制度許可取扱要綱

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は, 亡 AとBとの間の子である 原告は, 所得税法 16 条 2 項の規定により, その営む事業に係る事業場の所在地である渋谷区を納税地としている イ亡 Aは, 平成 年 月 日に死亡し, 原告は, 渋谷区 α 番地 1ほか所在の区分所有建物及

旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

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平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

自治基本条例素案のたたき台大和市自治基本条例をつくる会

市町村合併の推進状況について

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

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間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

<解説資料> 処分取消訴訟における原告適格

審決取消判決の拘束力

処分済み

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

最高裁○○第000100号

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

4. 韓国併合後の我が国においては 内地 朝鮮 台湾等の異法地域に属する者の間で 身分行為 があった場合 その準拠法は 共通法 ( 大正 7 年法律第 39 号 )2 条 2 項によって準用される法例 ( 平成元年法律第 27 号による 改正前のもの 以下同じ ) の規定によって決定されることとなり

平成11年6月8日

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

附則 この規則は 平成 29 年 3 月 1 日から施行する

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平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

しなければならない 2. 乙は プライバシーマーク付与の更新を受けようとするときは プライバシーマーク付与契約 ( 以下 付与契約 という ) 満了の8ヶ月前の日から付与契約満了の4 ヶ月前の日までに 申請書等を甲に提出しなければならない ただし 付与契約満了の4ヶ月前の日までにプライバシーマーク付

7265BB4891EFF48E A000659A

社会福祉法人○○会 個人情報保護規程

年金受給額相当額の損害賠償請求をした事案である 2 関係法令の定め等関係法令は, 別紙 1 関係法令の定め のとおりであり( 以下, 法令の名称並びに用語の表記及び略称については, 同別紙の定めに従う ), その概要は, 次のとおりである (1) 離婚時の年金分割制度厚年法は, 離婚等をした場合にお

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0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

鹿屋市公の施設に係る指定管理者の指定の申請等に関する規則 平成 19 年 3 月 31 日規則第 15 号 改正 平成 21 年 2 月 16 日規則第 2 号平成 21 年 8 月 25 日規則第 28 号平成 28 年 3 月 25 日規則第 17 号鹿屋市公の施設に係る指定管理者の指定の申請等

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

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上陸不許可処分取消し請求事件平成 21 年 7 月 24 日事件番号 : 平成 21( 行ウ )123 東京地方裁判所民事第 38 部 裁判長裁判官 : 杉原則彦 裁判官 : 品田幸男 角谷昌毅 < 主文 > 1. 本件訴えを いずれも却下する 2. 訴訟費用は 原告の負担とする < 事実および理由 > 第 1: 請求 1. 大阪入国管理局 関西空港支局 特別審理官が原告に対して平成 20 年 9 月 17 日付けでした 出入国管理および難民認定法 7 条 1 項 2 号に掲げる 上陸のための条件 に適合していない旨の処分を取り消す 2. 大阪入国管理局 関西空港支局 特別審理官が原告に対して平成 20 年 9 月 17 日付けでした 出入国管理および難民認定法 7 条 1 項 2 号に掲げる 上陸のための条件 に適合していない旨の処分が 不適法であることを確認する 第 2: 事案の概要本件は ウガンダ共和国 ( 以下 ウガンダ という ) 国籍を有する外国人である原告が 関西国際空港 ( 以下 関西空港 という ) に到着して 本邦への上陸の申請をしたところ 大阪入国管理局 ( 以下 大阪入管 という ) 関西空港支局 特別審理官から 出入国管理および難民認定法 ( 以下 入管法 という )7 条 1 項 2 号所定の 上陸のための条件 に適合していないとの認定を受けたことから 同認定処分の取消しと 違法確認を求めている事案である 1. 前提事実 本件において前提となる事実は 以下のとおりであり 当事者間に争いのある事実は 各末尾記載の証拠および弁論の全趣旨により 認定した

(1) 原告の身分事項について 原告は 昭和 年 月 日に出生した ウガンダ国籍を有する外国人である ( 乙 1 2) (2) 原告の上陸拒否にいたる経緯等ア. 原告は平成 20 年 9 月 17 日 A 航空 762 便で関西空港に到着し 入管法 6 条 2 項にもとづき 大阪入管 関西空港支局 入国審査官に対し 渡航目的を 商用 日本滞在予定期間を 68 日 と記載した 外国人入国記録 を提出し 上陸の申請をした 同入国審査官は同日 上陸審査を行い 原告が 入管法 7 条 1 項に掲げる上陸のための条件 に適合しているとは認定することができなかったことから 入管法 9 条 5 項にもとづき 原告を大阪入管 関西空港支局 特別審理官に引き渡した 同特別審理官は同日 入管法 10 条 1 項にもとづき口頭審理を行い 原告が本邦において行おうとする活動 にかかる申請の内容が 虚偽のものではないと認められないとして 入管法 7 条 1 項 2 号に掲げる 上陸のための条件 に適合していない旨の認定処分 ( 以下 本件認定処分 という ) をし 入管法 10 条 10 項にもとづき 原告に対し上記理由を示して 本件認定処分がされたことを通知するとともに 認定に不服があるときは 同通知を受けた日から 3 日以内に 法務大臣に対して異議を申し出ることができる旨通知した ( 甲 1 乙 4) イ. 原告は平成 20 年 9 月 19 日 法務大臣に対し 入管法 11 条 1 項にもとづく異議の申し出をしたが 法務大臣から権限の委任を受けた大阪入国管理局長は同月 20 日 上記異議の申し出には理由がない旨の裁決をし 同裁決の通知を受けた大阪入管 関西空港支局 主任審査官は同日 これを原告に通知し 入管法 11 条 6 項にもとづき 原告に対し本邦からの退去を命ずるとともに A 航空に対してその旨を通知した ( 甲 2 3 乙 5 6) ウ. 原告は平成 20 年 9 月 20 日 関西空港から A 航空 317 便により出国した

(3) 訴えの提起について原告は平成 21 年 3 月 17 日 本件認定処分の取消しを求める訴えを提起し ( 請求 1) 同年 6 月 24 日 行政事件訴訟法 7 条および民訴法 143 条による訴えの追加的変更として 本件認定処分が不適法であることを確認することを求める訴え ( 請求 2) を提起した ( 当裁判所に顕著な事実 ) 2. 争点 (1) 訴えの利益の有無 (2) 本件認定処分の適法性 3. 争点に関する当事者の主張の概要 (1) 争点 (1)( 訴えの利益の有無 ) について ( 原告の主張 ) ア. 本件認定処分の理由によっては 原告が今後の上陸申請においても 同様の理由により 上陸のための条件 に適合していない旨の認定を受けることになるから 原告には 本邦を出国した後も 本件認定処分の正当性を争う利益がある イ. 上陸申請をした外国人が 上陸のための条件 に適合していない旨の認定を受けた後に 本邦から出国したときは 上記認定処分の取消し または違法確認求める訴えの利益が失われるとすると 上記認定処分を訴訟で争うことがほとんど不可能となり 当該外国人の 裁判を受ける権利 を侵害する結果となる

( 被告の主張 ) 入管法の上陸の手続きに関する諸規定に照らすと 入管法は 上陸の申請に対して 上陸のための条件 に適合しているか否かの認定を受けるためには 当該外国人の身柄が 入国審査官や特別審理官の下にあり 旅券に上陸許可の証印を受け または特別審理官から通知を受けることができる状態にあることを 要するものとしているというべきである そうすると 当該外国人が本邦から出国した場合には もはや当該外国人の身柄は 入国審査官や特別審理官の下にないばかりか その旅券に上陸許可の証印を受け または特別審理官から通知を受ける余地がなくなる そうすると 上陸の申請をした外国人が 上陸のための条件 に適合していない旨の認定を受けた後に本邦から出国したときは もはや 当該上陸の申請に対して 新たな判断を受けて上陸許可の証印を受ける可能性はないから 上記認定処分の取消し または違法確認を求める訴えの利益は失われるというべきである そして原告は本件認定処分を受けた後 大阪入管 関西空港支局 主任審査官から退去命令を受けて 平成 20 年 9 月 20 日に本邦から出国しているから 原告には 本件認定処分の取消し または違法確認を求める訴えの利益はない (2) 争点 (2)( 本件認定処分の適法性 ) について ( 原告の主張 ) 原告は 本邦において行おうとする活動につき 虚偽の事実を述べたことはないから 本件認定処分には理由がない ( 被告の主張 ) 争う

第 3: 争点に対する判断 1. 争点 (1)( 訴えの利益の有無 ) について (1) 入管法は 本邦に上陸しようとする外国人は 上陸しようとする出入国港において 入国審査官に対し上陸の申請をして 上陸のための審査 を受けなければならず ( 入管法 6 条 2 項 ) 入国審査官は 当該外国人が 入管法 7 条 1 項に規定する上陸のための条件 に適合しているかどうかを審査して ( 同項 ) これに適合していると認定したときは 当該外国人の旅券に上陸許可の証印をしなければならないとする一方 上記条件に適合している と認定しないときは 口頭審理を行うため 当該外国人を特別審理官に引き渡さなければならないとし ( 入管法 9 条 1 項 5 項 ) 特別審理官において速やかに口頭審理を行い 当該外国人が 入管法 7 条 1 項に規定する上陸のための条件 に適合しているかどうかを認定するものとし 適合していると認定したときは 直ちにその者の旅券に上陸許可の証印をしなければならないとする一方 適合していないと認定したときは その者に対し速やかに理由を示して その旨を知らせなければならないとする ( 入管法 10 条 1 項 8 項および 10 項 ) など 上陸審査手続きにおいては 上陸の申請をした外国人が上陸しようとする出入国港または仮上陸許可 ( 入管法 13 条 1 項 ) において 定められた場所にとどまっていることを前提とする規定を置いている 他方 入管法には 上陸審査手続き中に本邦から出国した外国人について 当該手続きをさらに進めるべきことを定めた規定は見当たらない このような入管法上の上陸審査に関する規定に照らすと 入管法は 上陸の申請をした外国人は 上陸審査手続き中 本邦にいることを要するものとしていると解するのが相当である また 本邦に在留する外国人が 再入国の許可を得ないまま いったん本邦から出国したときは その有する在留資格および在留期間が消滅する結果 ふたたび本邦に入国する場合には 入国に先立って所要の査証を取得し 上陸審査を受ける必要があるとされるのであるから これとの均衡上も 上陸審査手続き中に本邦から出国した外国人が ふたたび本邦に上陸する場合には 改めて上陸審査を受ける必要があると解するのが合理的である

以上の諸点に照らすと 上陸の申請をした外国人が 特別審理官から 上陸のための条件 に適合しない旨の認定を受けた後 本邦から出国した場合において 当該外国人がふたたび本邦に上陸しようとするときは 改めて上陸審査を受けなければならず 仮に 上記認定処分が取り消され またはその不適法であることが確認されたとしても もはや当初の上陸申請にもとづく上陸許可がされる余地はない というべきである (2) これを本件についてみるに 前記前提事実によれば 原告は本件認定処分を受けた後 本邦から出国していることが認められているのであるから 仮に本件認定処分を取り消し またはその不適法であることを確認する判決がされたとしても 当初の上陸申請にもとづく上陸許可がされる余地はない したがって本件訴えは いずれも原告が本邦から出国したことにより 訴えの利益を欠くに至ったものというほかない (3) 原告は 本件認定処分の理由の内容によっては 今後の上陸申請においても 同様の理由で 上陸のための条件 に適合しない旨の認定を受けることになるから 原告には 本邦から出国した後も 本件認定処分の正当性を争う利益 が存すると主張する しかし 原告が今後 本邦への上陸申請をした際に 本件認定処分を理由に 原告を不利益に取扱い得ること を認めた法令の規定は見当たらないから 原告が主張する本件認定処分による不利益は 原告が今後 本邦への上陸申請をした際に 本件認定処分の存在またはその理由とするところが考慮されるおそれがあるという 事実上のものにすぎず 本件認定処分により当然かつ直接的に招来されるものということはできないのであって このような不利益をもって 本件訴えにつき 訴えの利益 が存在することの根拠とすることはできないというべきである したがって 原告の上記主張は採用することができない

(4) また原告は 本邦を出国したことにより 本件訴えの 訴えの利益 が失われるとすると 上陸のための条件 に適合しない旨の認定を訴訟で争うことがほとんど不可能となり 裁判を受ける権利を侵害する結果になると主張する しかし憲法 32 条は 訴訟の当事者が 訴訟の目的たる権利関係につき 裁判所の判断を求める法律上の利益を有することを前提として かかる訴訟につき 本案の裁判を受ける権利を保障したものであって そのような利益の有無にかかわらず 常に本案につき 裁判を受ける権利 を保障したものではないから ( 最高裁昭和 32 年 ( オ ) 第 195 号同 35 年 12 月 7 日大法廷判決 民集 14 巻 13 号 2964 頁参照 ) 原告が本邦から出国したことにより 訴えの利益が失われた として翻案の裁判がされないことをもって 直ちに 裁判を受ける権利 が侵害されたということはできない また実質的にみても 原告は 本件認定処分または退去強制令書 ( 入管法 24 条 5 号の2) の執行について 執行停止の申立て をすることにより 本邦にとどまった状態で本件認定処分を争うこともできたのに このような手段をとることなく 自ら本邦から出国したのであるから 本邦からの出国により 訴えの利益が失われた として本件訴えにつき 本案の裁判がされないことが不当である ということはできない したがって 原告の上記主張も採用することができない 2. 以上によれば 本件訴えはいずれも不適法な訴えであるから これらを却下することとし 訴訟費用の負担につき 行政事件訴訟法 7 条 民訴法 61 条を適用して 主文のとおり判決する 漢字 ひらがな カタカナ 英字 句読点 記号等は 当方で必要に応じて変更をしています 文中に出てくる 判例の頁番号 や 法令の条 項 号 は原文どおりです 誤字 脱字等ありましたらご一報ください かわすく工房