< 備考 > 本研究は 文科省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 バイオメタルと生体反応の連関解明に基づいた疾患治療ファルマコメタロミクスの確立 (S20008) 文科省科学研究費補助金 基盤研究(C) (8K06940) 公益財団法人武田科学振興財団の薬学系研究助成などの支援を受けて行なわれました

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

報道発表資料 2007 年 11 月 16 日 独立行政法人理化学研究所 過剰にリン酸化したタウタンパク質が脳老化の記憶障害に関与 - モデルマウスと機能的マンガン増強 MRI 法を使って世界に先駆けて実証 - ポイント モデルマウスを使い ヒト老化に伴う学習記憶機能の低下を解明 過剰リン酸化タウタ

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」【岡澤均 教授】

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

生物時計の安定性の秘密を解明

この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

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4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

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平成14年度研究報告

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Powered by TCPDF ( Title ダウン症における心奇形発症の原因遺伝子の同定 Sub Title Identification of the responsible gene(s) for congenital heart defect in Down

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報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

長期/島本1

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

論文の内容の要旨

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報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

疫学研究の病院HPによる情報公開 様式の作成について

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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別添資料 平成 27 年 9 月 10 日福島県立医科大学 医療被ばく (CT 検査 ) による生体影響に関する発見 研究成果のポイント 1. 1 回の CT 検査 (5.78 msv~60.27 msv) によって染色体異常が誘発されている可能性が示唆された msv 未満の放射線被ば

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 8 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 GABA 抑制の促進がアルツハイマー病の記憶障害に関与 - GABA 受容体阻害剤が モデルマウスの記憶を改善 - 物忘れに始まり認知障害へと徐々に進行していくアルツハイマー病は 発症すると究極的には介護が欠か

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

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創薬に繋がる V-ATPase の構造 機能の解明 Towards structure-based design of novel inhibitors for V-ATPase 京都大学医学研究科 / 理化学研究所 SSBC 村田武士 < 要旨 > V-ATPase は 真核生物の空胞系膜に存在す

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 5 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 椎間板ヘルニアの新たな原因遺伝子 THBS2 と MMP9 を発見 - 腰痛 坐骨神経痛の病因解明に向けての新たな一歩 - 骨 関節の疾患の中で最も発症頻度が高く 生涯罹患率が 80% にも達する 椎間板ヘルニア

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

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研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

記 者 発 表(予 定)

理化学研究所環境資源科学研究センターバイオ生産情報研究チームチームリーダー 研究代表者 : 持田恵一 筑波大学生命環境系准教授 研究代表者 : 大津厳生 株式会社ユーグレナと理化学研究所による共同研究は 理化学研究所が推進する産業界のニーズを重要視した連携活動 バトンゾーン研究推進プログラム の一環

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のとなっています 特に てんかん患者の大部分を占める 特発性てんかん では 現在までに 9 個が報告されているにすぎません わが国でも 早くから全国レベルでの研究グループを組織し 日本人の熱性痙攣 てんかんの原因遺伝子の探求を進めてきましたが 大家系を必要とするこの分野では今まで海外に遅れをとること

統合失調症といった精神疾患では シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられています これまでの研究で シナプスの形を作り出す細胞骨格系のタンパク質 細胞同士をつないでシナプス形成に関与する細胞接着分子群 あるいはグルタミン酸やドーパミン 2 系分子といったシナプス伝達を

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説明文書 母体血中 cell-free DNA を用いた非侵襲的出生前遺伝学的検査の臨床研究 1. はじめにこの説明文書は 母体血中 cell-free DNA を用いた非侵襲的出生前遺伝学的検査の臨床研究 について内容を説明したものです この研究に参加するかどうかをお決めいただく際に 遺伝カウンセ

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

統合失調症の病名変更が新聞報道に与えた影響過去約 30 年の網羅的な調査 1. 発表者 : 小池進介 ( 東京大学学生相談ネットワーク本部 / 保健 健康推進本部講師 ) 2. 発表のポイント : 過去約 30 年間の新聞記事 2,200 万件の調査から 病名を 精神分裂病 から 統合失調症 に変更

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

平成 29 年 8 月 4 日 マウス関節軟骨における Hyaluronidase-2 の発現抑制は変形性関節症を進行させる 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 : 門松健治 ) 整形外科学 ( 担当教授石黒直樹 ) の樋口善俊 ( ひぐちよしとし ) 医員 西田佳弘 ( にしだよしひろ )

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神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

2014年

Transcription:

209//22 報道関係各位 ダウン症の病態メカニズムに新たな知見 世界初 ダウン症の酸化ストレス亢進に銅蓄積が関与することを見いだす 京都薬科大学病態生化学分野の石原慶一講師 秋葉聡教授らの共同研究グループは これまでメカニズムが不明であったダウン症における脳での酸化ストレス亢進に銅蓄積が関与していることを見いだしましたので報告します これは 銅の量的変動がダウン症の病態に関与している可能性を示唆する新規知見であり 今後のダウン症の病態メカニズムの理解 治療法の開発に大きく貢献すると期待できます 本研究の成果は 209 年 月 8 日 ( 米国東部時間 ) に米国の国際学術誌 Free Radical Biological & Medicine のオンライン速報版で発表されました < 研究概要 > ダウン症は 約 700 人に 人の確率で発生する最も頻度の高い染色体異常として知られており 通常 2 本の 2 番染色体が 3 本 ( トリソミー ) となることで精神発達遅滞や記憶学習障害といった様々な症状を呈します これらダウン症の症状には酸化ストレスの亢進の関与が示唆されており 実際に ) 石原らはダウン症モデルマウスの脳における酸化ストレスの亢進を明らかにしていました注 しかし ダウン症において なぜ酸化ストレスが亢進するのか については不明でした 今回 共同研究グループは 金属イオンを含む多くの元素量を網羅的に解析できるメタロミクス解析技術を用いて ダウン症モデルマウスの脳において銅が過剰に蓄積していることを発見 さらに 銅低減食を与えることで 脳での酸化ストレス亢進や一部の異常行動を抑制することを見いだしました 本成果は ダウン症の酸化ストレスの亢進やダウン症の症状において銅の蓄積の関与を示唆するものであり 今後 病態メカニズムの理解 治療法の開発に大きく貢献すると期待できます 図. 本研究の概要図 : ダウン症モデルマウスの脳での銅蓄積を見出し 低銅食投与により酸化ストレスの亢進および不安様行動の低下が軽減されたことから 銅蓄積によってこれらの異常表現型が起こることが示唆された

< 備考 > 本研究は 文科省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 バイオメタルと生体反応の連関解明に基づいた疾患治療ファルマコメタロミクスの確立 (S20008) 文科省科学研究費補助金 基盤研究(C) (8K06940) 公益財団法人武田科学振興財団の薬学系研究助成などの支援を受けて行なわれました 注 )Ishihara et al., Increased lipid peroxidation in Down's syndrome mouse models. J. Neurochem. 0:965-76 (2009). < 発表雑誌 > 雑誌名 : Free Radical Biological & Medicine 発表タイトル : Copper accumulation in the brain causes the elevation of oxidative stress and less anxious behavior in TsCje mice, a model of Down syndrome 著者 : Keiichi Ishihara*, Eri Kawashita, Ryohei Shimizu, Kazuki Nagasawa, Hiroyuki Yasui, Haruhiko Sago, Kazuhiro Yamakawa, Satoshi Akiba *: コレスポンディングオーサー 著者所属 : 京都薬科大学病態生化学分野講師石原慶一助教河下映里大学院生清水涼平教授秋葉聡 京都薬科大学代謝分析学分野教授安井裕之 京都薬科大学衛生化学分野教授長澤一樹 国立成育医療研究センター周産期 母性診療センターセンター長左合治彦 理化学研究所脳神経科学研究センター神経遺伝研究チームチームリーダー山川和弘 [ 研究に関するお問い合わせ先 ] 京都薬科大学病態生化学分野講師石原慶一 607-844 京都市山科区御陵中内町 5 TEL: 075-595-4656 FAX:075-595-4759 E-mail: ishihara@mb.kyoto-phu.ac.jp [ 報道に関するお問い合わせ先 ] 京都薬科大学事務局企画 広報課担当 : 川勝 谷垣 607-844 京都市山科区御陵中内町 5 TEL:075-595-469 FAX:075-595-4750 E-mail:kikaku@mb.kyoto-phu.ac.jp 2

209//22 ニュースリリース添付資料 607-844 京都市山科区御陵中内町 5 URL:https://www.kyoto-phu.ac.jp < 論文概要 > Copper accumulation in the brain causes the elevation of oxidative stress and less anxious behavior in TsCje mice, a model of Down syndrome < 研究結果のポイント> ダウン症モデル TsCje マウスの脳において過剰な銅の蓄積を見いだした 銅を低濃度しか含まない特殊飼料 ( 低銅含有食 ) の投与により TsCje マウスの脳内銅蓄積が解消され 酸化ストレスの亢進が抑制された TsCje マウスの不安が欠如した行動異常が 低銅含有食投与によって改善された < 発表内容 > 研究の背景 ダウン症は 通常 2 本の 2 番染色体が 3 本 ( トリソミー ) となる染色体異常症であり ダウン症の人々では 精神発達遅滞や記憶学習障害あるいは不安様行動の低下など様々な症状が見られます 発生頻度は 700 人に 人と染色体異常症の中で最も高いにもかかわらず その病態メカニズムについてはほとんどが分かっていないのが現状です ダウン症モデルマウスやダウン症の人々の血液検体を用いた研究から ダウン症での酸化ストレス亢進が示唆されており この酸化ストレスの亢進がダウン症の様々な症状 特に記憶学習障害などへの関与が推測されていました また 2 番染色体上の遺伝子のうち アルツハイマー病関連遺伝子であるアミロイド前駆タンパク質 (App) や活性酸素消去酵素 (Sod) 遺伝子が過剰発現することがダウン症の酸化ストレス亢進に重要であるとの研究結果も報告されていましたが 石原らは App や Sod 遺伝子をトリソミー領域に含まないダウン症モデルマウスである TsCje マウスにおいても酸化ストレスが亢進 していることを見いだしていました注 つまり App や Sod 遺伝子以外の 2 番染色体遺伝子の過剰発現が酸化ストレスの亢進に関与していることが考えられますが 酸化ストレスの亢進メカニズムについては不明のままでした 注 ) Ishihara et al., Increased lipid peroxidation in Down's syndrome mouse models. J. Neurochem. 0:965-76 (2009). 研究成果 生体微量元素の過不足は生体の機能異常を引き起こすことから様々な疾患の原因となりえます ダウン症での生体微量元素の量的異常に関する知見はほとんどないことから 共同研究グループは 誘導結合プラズマ質量分析計 (ICP-MS) を用いて TsCje マウスの脳に含まれる元素量を網羅的に定量分析し 野生型マウスと比較しました この比較メタロミクス解析によって TsCje マウスの脳での銅蓄積を見

いだしました また 銅トランスポーターである CTR タンパク質の発現異常も確認されたことから CTR の発現異常が TsCje マウス脳での銅蓄積を引き起こしている可能性が考えられます 次に 銅含有量を可能な限り低くした低銅含有食を TsCje マウスに 3 カ月投与すると TsCje マウス脳での銅蓄積が野生型マウスレベルにまで改善されることを確認しました さらに TsCje マウスの脳でみられる酸化ストレスの亢進や記憶学習障害との関連性が示唆されているリン酸化タウタンパク質の蓄積が低銅含有食投与によって改善されることを明らかにしました 共同研究グループはこれまでに TsCje マウスが記憶学習障害 過活動あるいは低不安様行動といった行動異常を示すことを見いだ 2, 注 3 していますが注 これらのうち低不安様行動が低銅含有食の投与により改善されました このように TsCje マウス脳での銅蓄積は 酸化ストレスの亢進 リン酸化タウの蓄積さらに低不安様行動を引き起こすことが明らかになりました 注 2) Sago et al., TsCje, a partial trisomy 6 mouse model for Down syndrome, exhibits learning and behavioral abnormalities. PNAS, 95:6256-6 (998). 注 3) Shimohata et al., TsCje Down syndrome model mice exhibit environmental stimuli-triggered locomotor hyperactivity and sociability concurrent with increased flux through central dopamine and serotonin metabolism. Exp. Neurol. 293:-2 (207). 今後の展開 今回はじめて ダウン症病態への銅蓄積の関与についてモデルマウスを用いた研究により明らかにしました 今後さらに ダウン症の人々における銅蓄積の解析やモデル動物を用いたさらなる詳細解析を経て 銅蓄積に着目した治療薬の開発に繋がることが期待されます < 発表雑誌 > 雑誌名 : Free Radical Biological & Medicine 発表タイトル : Copper accumulation in the brain causes the elevation of oxidative stress and less anxious behavior in TsCje mice, a model of Down syndrome 著者 : Keiichi Ishihara *, Eri Kawashita, Ryohei Shimizu, Kazuki Nagasawa, Hiroyuki Yasui, Haruhiko Sago, Kazuhiro Yamakawa, Satoshi Akiba *: コレスポンディングオーサー 著者所属 : 京都薬科大学病態生化学分野講師石原慶一助教河下映里 2

大学院生清水涼平 教授秋葉聡 京都薬科大学代謝分析学分野教授安井裕之 京都薬科大学衛生化学分野教授長澤一樹 国立成育医療研究センター周産期 母性診療センターセンター長左合治彦 理化学研究所脳神経科学研究センター神経遺伝研究チームチームリーダー山川和弘 3