〇第 53 回宝塚市展審査結果 市 優 鉄術 奨 佳 部門 展 秀 斎館 励 入賞合計 応募点数 入選 / 入賞 選外 賞 賞 美賞 賞 作 洋画 ( 一部 ) 1 2 1 2 7 13 123 99 24 洋画 ( 二部 ) 1 1 0 1 2 5 25 20 5 彫塑 1 1 1 1 0 4 8 8 0 デザイン 1 1 1 1 1 5 14 11 3 写真 1 3 1 3 10 18 125 75 50 書 1 2 1 2 5 11 59 55 4 工芸 1 2 1 2 4 10 44 31 13 日本画 1 2 1 2 4 10 44 42 2 総計 8 14 7 14 33 76 442 341 101
賞 部門 作品名 氏名 洋画 ( 一部 ) どこかの海で また逢いましょう 竹中豊秋 洋画 ( 二部 ) presents 中村昌子 彫塑 詩的立体 -T 矢原繁長 市展賞 写真祭り日の親子山本昌彦デザインカササギの舞い弘世勝二朗 書 元好問詩 明司溪香 工芸 リュック旅立 石原康次郎 日本画 小鳥たちの目ざめ 石田久江 洋画 ( 一部 ) 日曜日いかわあつき命の流れを川の流れに例える 澁谷侑希 洋画 ( 二部 ) きせき 板倉広美 彫塑 沈む庭 暗い森のかたち 水野千秋 ドア越しの花屋さん 時松和子 写真 あれ なに! 藤井克己 優秀賞 廃校の春吉川艶子デザイン The other side of the spring 内田勝美 書工芸日本画 万葉の歌月おぼろくさむらに咲く永田民子斎藤和代米田三枝高適詩古書 ( 陶本 ) 序曲土田幸潤夢遊豊栄目賀田包子 洋画 ( 一部 ) ママは乙乙乙 九坪榮美子 彫塑 白い犬 広瀬護 写真 新茶の香り 大林壽子 鉄斎美術館賞 デザイン 植物の精 2010-1 白川正子 書 雁来紅 坂本立江 工芸 月光 矢野尚子 日本画 しんしんと 長谷川一恵 洋画 ( 一部 ) 憩い川東繁鉄びん工房馬場貞代 洋画 ( 二部 ) 詩的平面 -T 矢原繁長 彫塑 関係の痕跡 奥村誠 ミャンマーの子供達 大森一宏 写真 家路 小口良喜 奨励賞 パープルビューティー佐治はるみデザイン Cherry blossom 岩﨑千恵子 書工芸日本画 武者小路実篤の歌 Motenasi 刻々前川碧清柏木茅津子兒玉佐枝子漢詩油滴天目中皿初めてのお散歩津村翔芳林秀樹小林孝子
賞 部門 作品名 氏名 訪問者 佐伯訓子 古代魚の祭り 宮﨑泰樹 道 宮本範熙 洋画 ( 一部 ) 静物 寺田明 好きなもの 小林礼子 記憶 山中義明 研究室 三井利子 洋画 ( 二部 ) ぼくの自転車でどこまでも月を追いかけてゆくんだ守ン児 2010 WORK 嚴愛珠 出合い頭 小坂秀隆 ブリリアント ベール 岡林公子 祈りの火 村角明 すれ違う街 後藤晴夫 写真 リング ボーイズ 中西春男 家路 田中利明 祭りの子供 浮田賀子 佳作 火の鳥 廣岡明美 商い 上阪和義 成人の日 天井美知代 デザイン フィエスタ 藤井由美子 万葉の歌 佐野美由紀 賞花釣魚 植田圭司 書 梅花 井上郁子 唐詩七言二句 松浦嘉慧子 杜甫詩 佐野智秋 室生の初夏 山崎幸 工芸 鉄釉組皿 山田丕瑳子 炎 松原絹子 かがり松細工 西村昇平 飛翔 圓井康彦 日本画 レンガの家 前田紀代子 光の中で 田村洋子 南国風情 加藤 子
藤井達矢 < 一部 > [ 市展賞 ] 竹中豊秋さん どこかの海で また逢いましょう ダンボール紙やコピーなどの素材を存分に活かし ユニークな空間構成を完結させている 上手い作品 [ 優秀賞 ] 澁谷侑希さん 命の流れを川の流れに例える 様々に彩られ生 ( せい ) の輝きに満ちた球体 流れ行く様はおぞましくもあるが それが生きとし生けるものの性であろう いかわあつきさん 日曜日 誰も彼もがレジャーに勤しむ日曜日 作者の暖かくも辛辣な視線が面白い [ 鉄斎美術館賞 ] 九坪榮美子さん ママは乙乙乙 猫の親子 その情景にふと笑みが漏れる あたりまえの光景 穏やかな日常を大切にしたい [ 奨励賞 ] 馬場貞代さん 鉄びん工房 自然光と電球という光源を巧みにコントロールし そつなく表現している 積み上げられた鋳型が 職人の仕事を想わせる 川東繁さん 憩い 一服する道化師たち 人懐っこそうな表情に なぜかペーソスが漂う < 二部 > [ 市展賞 ] 中村昌子さん presents 楽しんで作っていることが伝わってくる カワイイけれど 切り口はシャープ [ 優秀賞 ] 板倉広美さん きせき 流された墨の形跡が心地よい ミニマムな表現の中に強さがある [ 奨励賞 ] 矢原繁長さん 詩的平面 -T 様々に取り付けられた素材が 差し色の黄色と相俟って空間にとある文脈をもたらしている その他 9 名の方が佳作となりました いずれも秀作で 今後の展開に期待しています これまで受賞を重ねてきた藤井人史さん 岡芙三子さんは 今回作をもって宝塚美術協会会員推挙となりました これからも一層宝塚の芸術文化発展の牽引役としてご活躍ください 今回は応募点数こそ多くはなかったものの 一部 二部ともに独自の世界観を湛えた秀作が並びました 技術力 完成度 バランス サイズ等々ももちろん大切な要素ですが 入選作にはそういったことを超越した味わい深さがあります それは 出品者のみなさんが 表現したい! という発動に至った当初の新鮮な思いを 制作過程で試行錯誤を重ねながら最後まで追求した賜物かと思います 表現形態が多様化し数多の選択肢がある現代において あえて絵画という表現手法を突き詰めていく意味は大きいでしょう 3 万年以上前 ショーべ窟 ( 仏 ) の壁に絵を描いた人類 そしていまだに飽き足らず描き表現し続けている私たち 最も古い手法だからこそ そこに 今を生きるみなさんのリアリティーを注ぎ込むことによって 普遍の芸術が生まれると確信しています アートを楽しみましょう! 辻弘 [ 市展賞 ] 矢原繁長さんの 詩的立体 -T 身近に使いふるされた素材を再構成し 錆びた広い空間の鉄板の片隅に置かれた立体物との関係が 作者の意図する詩的立体と捉えるが如何でしょうか [ 優秀賞 ] 水野千秋さんの 沈む庭暗い森のかたち 金属線が植物に見せるコンセプトは現代的感覚である 若し黒い四角の板が 白い板であったとすれば 作者の意図がより効果的であったのではないか [ 鉄斎美術館賞 ] 広瀬護さんの 白い犬 堅実な写実性と素材が合致した優れた作品である 毎年力作を出品され 昨年度は最高賞を受賞した [ 奨励賞 ] 奥村誠さんの 関係の痕跡 視覚的に 実 と 虚 の世界を同時に写し出されている レンズに見える透視の奥行きと反転像の面白さの発見が面白い 彫塑部門は 例年出品点数は少ないが 佳い作品が揃っている 堅実な写実性の作品からコンセプチュアルな作品まで多様であるが 後者の出品作品が多い傾向にある 作品の大きさも募集要項で限定しているので 自ずと揃って来るが その中で空間の広がりを強調する作品もあれば 視覚的に問題提起するオプティカル アートまで多様である
北田研索 [ 市展賞 ] 祭り日の親子 山本昌彦さん 粉の中に入っている飴か何かを 親子一緒に手を使わずに探すイベントなんでしょうね 戦い終わって放心状態になりながらもしっかりお菓子の入った袋を握っている子供とお母さんのホットした表情が素敵です [ 優秀賞 ] あれ なに! 藤井克己さん 空に何があるんでしょうか? 気になりますね 応募唯一のモノクローム作品で 画面構成 シャッターチャンスなど大変上手くまとめられ 最後まで山本さんの作品と争ったのですが モノクロ変換で出力された色に少し難ありで優秀賞になりました ドア越しの花屋さん 時松和子さん 町中のさりげない光景がファンタジックな映像になりました 画像加工時かフィルターなのか センターイメージ効果が大きなポイントですが 右下の扉のシールが妙に生々しく もう一工夫あれば良かったと思います 廃校の春 吉川艶子さん かつては子供達の歓声が響いた校庭に 今年も満開の花をつけた桜 レンズに遊ばれがちになる超広角画面を 隙のないフレーミングでダイナミックにまとめ 華やかさの中に一抹の寂しさを感じさせる写真に仕上げました [ 鉄斎美術館賞 ] 新茶の香り 大林壽子さん 絵に描いたような写真というのは この作品のことをいうのでしょうか 粒状性や画面の鮮鋭度から見て大判カメラで撮影のようですが いつまで見ていても飽きの来ない美しい写真です [ 奨励賞 ] ミャンマーの子供達 大森一宏さん 手に持っているのは特産のサトウキビ 窓の外はキビ畑ですか? 子供達の屈託のない笑顔がいいですね 家路 小口良喜さん 西日で黄金色に染まった通路を長い影を連れながら 家路を急ぐ人たち 木の影もアクセントになりました パープルビューティー 佐治はるみさん 珊瑚礁で出迎えてくれるパープルビューティーの大群 沈黙の世界での出会いは 心ときめく物があります 今回は組写真 17 点を含む 125 点の作品の応募があり 審査の結果 入賞 20 点入選 55 点の計 75 点を選び会場に展示しましたが 撮影データを見て少し驚きました それは フィルムで撮られた写真の多さです 現在フォトグラファーの仕事の大半はデジタルで メーカーのスタンスもデジカメを売ることに専念している昨今 殆どのアマチュアの方々もデジタルでと思い込んでいたのですが フィルムで写真を撮られる方々が多く存在することを知り 嬉しく感じました 上位入賞作 8 点はフィルム 5 対デジタル 3 という結果ですが これは PC 環境なども含め もう少しデジタル処理技術の会得に時間がかかるということかと思います 相澤孝司 [ 市展賞 ] を受賞した弘世勝二朗さんの カササギの舞い は 空想の世界をイラストレーションに表現している素晴らしい作品である 高度なテクニックによる緻密な描画とエアブラシを用いるなどその完成度はプロフェッショナルの領域である 今後も是非様々なテーマに取り組んで作品を発表してほしい [ 優秀賞 ] を受賞した内田勝美さんの The other side of the spring は 切り絵の技法で ほのぼのとした春の動物園の感じがよく出ている作品である ゾウをダイナミックに配置して桜と観覧車の構図も遠近感をよく出している [ 鉄斎美術館賞 ] を受賞した白川正子さんの 植物の精 2010-1 は 植物の種の断面をスタンプにして彩色している作品であり きれいな色のトーンが評価された [ 奨励賞 ] は 岩﨑千恵子さんの Cherry blossom となった タイポグラフィーの作品でしだれ桜のイメージがよく出ている [ 佳作 ] は 藤井由美子さんの作品 フィエスタ となった 全体の傾向から今回も平面の作品が多数で立体の作品は 2 点であった 入賞も全てイラストレーションなどの作品となった その中でも市展賞に輝いた弘世勝二朗さんの カササギの舞い は 高度な描写技術による表現力が高く評価され他の作品を圧倒した感じである 全体の出展作品に対して作品の完成度及び表現技術のレベルアップを期待したい 今回もデザインの出品点数は少なく 昨年同様の 14 点となった 展示作品は 11 点となり 展示会場では少し閑散とした感じになってしまう デザイン部門は 作品の領域が広いので多数の作品が出展できる部門であるとも言える 確かにイラストレーションなどの平面の作品は取り組みやすいテーマではあるが 身近なライフスタイルの提案 家具 照明器具 インテリア空間など さらに今の時代ではエコを目的にした提案や取組みなどもパネルにまとめて作品にしてみるのも新たな展開になると思う とにかく出展作品の増加と作品のレベルアップを期待する
米幸峰 [ 市展賞 ] 明司溪香さんの 元好問詩 は 線の強弱と 余白の中にさわやかさを感じます [ 優秀賞 ] 永田民子さんの 万葉の歌 は 制作姿勢の正しさからか視る人に感銘を与えます 行間の余白の響き 表装の気配りもあり秀作です 土田幸潤さんの 高適詩 は 作品の成作基本を心得ていて文字の大小の変化もあってよい 墨の濃淡が少ないのがおしい [ 鉄斎美術館賞 ] 坂本立江さんの 雁来紅 は 線の練度が深まると重厚さも加わり見る人の心に訴えるものが増すのではないか [ 奨励賞 ] 前川碧清さんの 武者小路実篤の歌 は 安定した暖かい作品で墨量もよく調和体を書く人の参考になる もう一方の調和体 津村翔芳さんの 漢詩 は 書き始めから終わりまで集中力を切らず強い線で迫力を持続させている 佳作の五点の受賞作は各々魅力があり 将来入賞の上位を脅かすのではないだろうか 期待される 本年は 日本書院展と重なって 出品数が減少しましたが 作品の内容はレベルの高いものが多くありました 出品者の制作姿勢の迫力を感じました 年々作品の質が向上するなかで 工夫した勉強の必要性を強く感じます まず作品の素材の選び方 素材がきまったら 書き込みを充分にすることです まず作品制作に欠かせない 運筆の遅速 文字の大小 線の大小と線の強弱 墨色の変化 ( 濃淡 ) バランスの取り方や余白の作り方 等 日頃の精進の中で学びとって下さい 惜しくも入選を逃したお方は 短時間で仕上げるのではなく 時間をかけて仕上げて下さい 期待できる方々ばかりです 次回に向かって今から頑張って下さい 稲垣和子 [ 市展賞 ] 石原康次郎さんの リュック旅立 は高度な技術によるユニークな作品で 質感が非常によく表現されている力作です [ 優秀賞 ] 斎藤和代さんの 月おぼろ は裂織による作品で 色彩 デザインともによくまとめられている努力作品です 夢遊豊栄さんの 古書 ( 陶本 ) は発想 ( 本を作る ) が独特で秀作といえます 照明効果にやや欠けるのが残念でした [ 鉄斎美術館賞 ] 矢野尚子さんの 月光 は 夜空の織糸の色彩の細やかさの表現が優れています [ 奨励賞 ] 林秀樹さんの 油滴天目中皿 は焼きの具合が美しい秀作 柏木茅津子さんの Motenasi は 涼感あふれる色彩美しいガラス作品 佳作の 4 点は 何れも優秀ですが特に山崎幸さんの 室生の初夏 は絵更紗の技法による秀作で整った構図による力作でした 今回はとびぬけて優秀とみなされる作品がなく 比較的全体に低調でやや淋しい感じがしました 応募作品数が 44 点で昨年に比べて減少した影響もあるのではないかと思いますが 来年は頑張って少しでも多くの力作 ( 大作 ) を出品していただきたく希望します 尚 展示にあたり陳列には苦労しました 一つ一つの作品を美しく正当に輝かして見せるには 陳列の上手下手が多分に影響いたしましょう 特に 工芸 には会場の雰囲気が重要で大切であります
松尾紀久子 募集点数が増え 水準も高くなり厳選となりました 特に上位の作品は実力が伯仲していて審査には時間を要しました [ 市展賞 ] 石田久江さんの 小鳥たちの目ざめ は箔を使ったマチエールが魅力的で枝と鳥の配置が巧みで鳥の囀りが聴こえそうで画中に引き込まれます [ 優秀賞 ] 米田三枝さんの くさむらに咲く は 全体のバランスもよく 画想豊かに季節感を表した穏やかで品位のある努力作となりました 目賀田包子さんの 序曲 は 空間処理 色調にモダンなデザイン性を感じます 人物画の規定の枠にとらわれない新たな表現の可能性を秘めていて 次回作が楽しみです [ 鉄斎美術館賞 ] 長谷川一恵さんの しんしんと は 嵐のような吹雪のような表現が 黒と白による効果で静寂さと力強さが響きあって静謐な美しさを醸し出しています [ 奨励賞 ] 小林孝子さんの 初めてのお散歩 は 穏やかな空気 明るい光の中の仔猫の表情が見る人を和ませます 兒玉佐枝子さんの 刻々 は 絵具を盛り上げることにより情熱的なボリューム感 向こうに何があるかとイマジネーションをふくらませることのできる奥深さがあります 賞には入りませんでしたが 翔 卓上 秋通路 桃色ふよう が力作で次回楽しみにしています 全体的な印象としては 伸び伸びと描きたいものを描いて楽しんでいる様子が伺えます それにつれて色彩も豊富になり 日本画絵具の美しさがよくアピールされていて見る人の心を豊かにさせるような作品がたくさん出てきたことは喜ばしく力強い限りです 充実した展観となりました ただ 技法の習得があってこそ表現の幅も広がりますので 先達の作品を研究し 基本的な技術を身につける練習をしたり 人の真似もしてみて そこから自分の好きな絵 自分の本当に描きたいものを見つけていくという過程も必要かなと思います 新しい考え方やこれからの取り組み方も自ずと見えてくるはずです 焦らず 広い視野をもって色んな角度から制作に励んでください 額縁にも神経を使えばグンとよくなるのに残念と感じた作品が多々ありました