街路景観における街路樹の構成と心理評価に関する研究 大分大学工学部建設工学科都市計画研究室 山下秋朝

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街路景観における街路樹の構成と心理評価に関する研究 大分大学工学部建設工学科都市計画研究室 0935047 山下秋朝

研究背景と目的 背景背景 街路デザインの際の具体的な指標になるものが少ない 街路樹による景観の解析が少ない 当研究室では 建物高さ や 道路幅員 と 街路樹高さ の関係から具体的な指標を探る研究がされてきた しかしこれらは 街路空間 の断面の変化指標断面の変化指標でしかない 本来街路景観はシークエンスな景観シークエンスな景観であるため 街路空間 を連続的な指標で分析する必要がある 目的目的

研究のフローチャート 街路モデルの構成要素の決定 街路樹操作指標の検討 街路モデル構築のための検討 街路モデルの作成 歩行アニメーションの作成 景観評価のための CG による街路モデル構築 街路歩行アニメーションの作成 景観評価実験の実施 結果の単純集計と考察 街路歩行アニメーションを用いた SD 法によるアンケート調査の実施 アンケート結果の単純集計と考察 分析と考察 因子分析 - 重回帰分析による分析と考察 樹種毎の最適な 樹冠寸法 植栽間隔

街路樹構成 シンボルロードに植栽されている街路樹の樹種上位 10 種順位全自治体 (%) 30 万人以上の自治体 (%) 1ケヤキ ( 盃状 ) (31.9) ケヤキ ( 盃状 ) (47.1) 2 イチョウ ( 円錐 ) (17.0) クスノキ ( 球 ) (32.9) 3 クスノキ ( 球 ) (14.8) イチョウ ( 円錐 ) (17.1) 4 サクラ類 ( 盃状 ) (10.9) サクラ類 ( 盃状 ) (12.9) 5 ハナミズキ第一位 ( 卵円 ) ケヤキ (7.1) トウカエデ ( 盃状形 ( 卵円 )) (10.0) 6 トウカエデ ( 卵円 ) (6.8) プラタナス ( 卵円 ) (8.6) 7 プラタナス第二位 ( 卵円 ) イチョウ (5.5) シダレヤナギ ( 円錐形 ( 枝垂 )) (7.1) 8 ユリノキ ( 卵円 ) (4.4) ナンキンハゼ ( 盃状 ) (7.1) 9 ヤマモモ ( 卵円 ) (4.4) ハナミズキ ( 卵円 ) (7.1) 10 ナンキンハゼ第三位 ( 盃状 )(4.2) クスノキエンジュ (( 球形球 ) ) (5.7) 盃状形 ( ケヤキ ) R R=7.0m 9.0m 11.0m D D=7.0m 14.0m 21.0m 9.0m 18.0m 27.0m 11.0m 22.0m 33.0m 円錐形 ( イチョウ ) R R=4.0m 6.0m 8.0m D D=4.0m 8.0m 12.0m 6.0m 12.0m 18.0m 8.0m 16.0m 24.0m 球形 ( クスノキ ) R R=5.0m 7.0m 9.0m D D=5.0m 10.0m 15.0m 7.0m 14.0m 21.0m 9.0m 18.0m 27.0m 樹形タイプ ( 使用樹種 ) 樹冠寸法植栽間隔 1 SS 盃状形 ( ケヤキ ) S7m S7m 2 SM 盃状形 ( ケヤキ ) S7m M14m 3 SL 盃状形 ( ケヤキ ) S7m L21m 4 MS 盃状形 ( ケヤキ ) M9m S9m 5 MM 盃状形 ( ケヤキ ) M9m M18m 6 ML 盃状形 ( ケヤキ ) M9m L27m 7 LS 盃状形 ( ケヤキ ) L11m S11m 8 LM 盃状形 ( ケヤキ ) L11m M22m 9 LL 盃状形 ( ケヤキ ) L11m L33m 10 SS 円錐形 ( イチョウ ) S4m S4m 11 SM 円錐形 ( イチョウ ) S4m M8m 12 SL 円錐形 ( イチョウ ) S4m L12m 13 MS 円錐形 ( イチョウ ) M6m S6m 14 MM 円錐形 ( イチョウ ) M6m M12m 15 ML 円錐形 ( イチョウ ) M6m L18m 16 LS 円錐形 ( イチョウ ) L8m S8m 17 LM 円錐形 ( イチョウ ) L8m M16m 18 LL 円錐形 ( イチョウ ) L8m L24m 19 SS 球形 ( クスノキ ) S5m S5m 20 SM 球形 ( クスノキ ) S5m M10m 21 SL 球形 ( クスノキ ) S5m L15m 22 MS 球形 ( クスノキ ) M7m S7m 23 MM 球形 ( クスノキ ) M7m M14m 24 ML 球形 ( クスノキ ) M7m L21m 25 LS 球形 ( クスノキ ) L9m S9m 26 LM 球形 ( クスノキ ) L9m M18m 27 LL 球形 ( クスノキ ) L9m L27m R= 樹冠寸法 D= 植栽間隔

CG 街路モデルの作成 ワイヤーフレームモデル 建物単体 道路植栽 ポリゴンモデル 建物群 道路植栽街路上配置 テクスチャー使用モデル 建物群街路上配置

景観評価実験 S 樹冠寸法 L S 植栽間隔 L

単純集計 : 樹冠寸法 (L) S 樹冠 (L)- 間隔 (S) 分布 植栽間隔樹冠 (L)- 間隔 (M) 分布 L 樹冠 (L)- 間隔 (L) 分布 -3.00-2.00-1.00 0.00 1.00 2.00 3.00-3.00-2.00-1.00 0.00 1.00 2.00 3.00-3.00-2.00-1.00 0.00 1.00 2.00 3.00 広々とした明るいまとまった力強い密な爽やかな潤いのある暖かい緑豊かな軽快な変化のある印象的な 広々とした明るいまとまった力強い密な爽やかな潤いのある暖かい緑豊かな軽快な変化のある印象的な 広々とした明るいまとまった力強い密な爽やかな潤いのある暖かい緑豊かな軽快な変化のある印象的な 圧迫感のある親しみのある動的な柔らかい開放的な整然とした魅力的な 圧迫感のある親しみのある動的な柔らかい開放的な整然とした魅力的な 圧迫感のある親しみのある動的な柔らかい開放的な整然とした魅力的な イチョウ LS クスノキ LS ケヤキ LS average ALLAverage イチョウ LM クスノキ LM ケヤキ LM average ALLAverage イチョウ LL クスノキ LL ケヤキ LL average ALLAverage

分析と考察 : 因子分析 因子分析結果 空間性誘引性躍動性 評価項目 ( 形容詞対 ) 因子軸 1 2 3 圧迫感のある - 圧迫感のない -0.804 0.072-0.073 さわやなか - うっとうしい 0.799 0.196 0.090 軽快な - 重苦しい 0.775 0.075-0.008 開放的な - 閉鎖的な 0.743 0.018 0.218 密な - 疎な -0.721 0.359-0.258 広々としたーきゅうくつな 0.707-0.124 0.083 やわらかい - かたい 0.563 0.371 0.138 明るい - 暗い 0.529 0.009-0.087 緑豊かな - 緑が乏しい -0.303 0.726-0.075 潤いのある - 潤いのない 0.092 0.722-0.045 暖かい - 冷たい 0.067 0.667 0.117 魅力的な - つまらない 0.343 0.638 0.345 親しみのある - 親しみのない 0.334 0.620 0.181 印象的な - 印象の薄い -0.065 0.612 0.237 力強い - 弱々しい -0.441 0.573 0.105 整然とした - 雑然とした -0.063-0.037-0.613 動的な - 静的な -0.102 0.356 0.459 変化のある - 単純な 0.141 0.263 0.426 まとまった - ばらばらな -0.285 0.405-0.415 固有値 4.702 3.681 1.341 寄与率 (%) ( 24.75 19.37 7.06 累積寄与率 (%) ( 24.75 44.12 51.18

分析と考察 : 重回帰分析 重回帰分析結果 Y 0.535X 1 0.723X 2 0. 0.207X 3 0.191 Y: 総合評価項目 好ましい - 好ましくない R 0.689 0.689 X: 因子分析により得られた第 1 因子 ~ 第 3 因子の因子得点 (X 1 : 空間性 X 2 : 誘因性 X 3 : 躍動性 ) 非標準化係数標準化係数 有意水準 定数 -0.191 空間性 0.535 0.40 0.00 誘因性 0.723 0.53 0.00 躍動性 0.207 0.13 0.00

総括総括総括総括 S