AREA Report 395 BTMU Global Business Insight 臨時増刊号 2015 年 4 月 28 日 インドネシア : 国内決済におけるルピア使用義務 三菱東京 UFJ 銀行国際業務部 インドネシア中銀は 3 月 31 日付の通達 17/3/PBI/2015 で 2015 年 7 月 1 日からの イ ンドネシア国内決済におけるルピアの使用を義務化 を発表した 2011 年 6 月 28 日に発布 即日施行された 通貨法 (UU No.7/2011) においても インドネシア国内決済におけるルピアの使用が義務化されているが 使用義務は 現金取引 に限定されていた 今回の中銀通達では 現金取引以外の取引 にもルピアの使用が義務付けられている 今回の中銀通達の主なポイントは 以下の通り 1. 主なルールは過去に出状された通貨法 (UU No.7/2011) と概ね同一 2. 但し 過去の通貨法では物理的な現金の受払のみがルピア使用義務の対象だったが 本通達では現金以外の取引 ( 銀行での送金取引など ) も対象となる 3. 全ての価格はルピアで表示されなければならない 4. 本通達における現金以外の取引に関する規定は 2015 年 7 月 1 日発効 その他の規定は 2015 年 3 月 31 日 ( 即日 ) 発効 5. 現金以外の取引については 2015 年 7 月 1 日より前にサインされた契約に基づく受払であれば 2015 年 7 月 1 日以降も外貨で取引可能 6. 通達に違反した場合 中銀からの警告状 (Warning Letter) 並びに取引金額の 1%( 最大 10 億ルピア ) の罰金が課される 7. 詳細は追って出状される中銀回状 (Circular Letter) に規定する
現金取引以外の取引 におけるルピア使用義務付けにより 以下のように決済通貨の変更が生じると考えられる 為替リスクは 事例 1 では 国内購入者から輸入企業に移転 事例 2 では 国内販売者から輸出企業に移転 事例 3 では 賃借人からビル賃貸会社に移転している 事例 1 インドネシア国内の輸入企業が 海外から米ドル建で輸入し 米ドル建で国内販売を行っているケース 事例 2 インドネシア国内の輸出企業が 国内から米ドル建で購入し 米ドル建で支払いを行っているケース 事例 3 インドネシア国内のビル賃貸会社が 米ドル建で銀行から借入を行い 米ドル建で家賃を請求しているケース 2
ご参考 : 中銀通達 17/3/PBI/2015 の抄訳 中銀通達 17/3/PBI/2015 インドネシア共和国域内におけるルピア使用義務について 第 1 部総論第 1 条言葉の定義について ( 省略 ) 第 2 部ルピア使用義務第 2 条何人たりとも インドネシア共和国域内で行われる取引については ルピアを使用しなければならない a 支払を伴う取引 b 金銭による決済が必要となる債務 c その他の金融取引 ( 銀行に対する預金取引等を含む ) 第 3 条ルピア使用義務は現金取引 及び非現金取引を対象とする 第 3 部ルピア使用義務の例外第 4 条以下の取引はルピア使用義務の対象外とする a 国家予算に関連した取引 b 外国からの / 外国への資金供与 c 外国貿易取引 d 銀行への外貨預金の預入 e 外国との金融取引 第 5 条以下の法令に基づく外貨建取引は ルピア使用義務の対象外とする a 銀行法 及びシャリア銀行法に基き 銀行が行う外貨業務 b 政府が発行する外貨建証券 c その他の法に基づく外貨建取引 第 6 条第 4 条 a 国家予算に関連した取引に関する詳説 ( 省略 ) 第 7 条第 4 条 b 外国からの / 外国への資金供与に関する詳説 ( 省略 ) 3
第 8 条第 4 条 c に定める外国貿易取引とは 以下の通り a インドネシア共和国の関税領域外との輸出入取引 b クロスボーダー供給 (cross border supply) や海外での消費 (consumption abroad) のように 国境を越えるサービスの取引上記 a に関し 輸出入に関連した追加取引 ( 港における停船料 コンテナの積み降ろし料 コンテナの一時保管料 空港における航空機の停留料など ) は貿易取引に含まれない 第 9 条第 4 条 e に定める外国との金融取引は一方の当事者が非居住者の場合に限定され 金融取引の提供者が銀行の場合 非居住者とのルピア取引に関する中銀規制を遵守しなければならない 第 4 部ルピア拒絶の禁止第 10 条以下の場合を除き 何人たりともルピアの受取りを拒絶してはならない a 偽造などの疑いがある場合 b 2015 年 7 月 1 日より前に締結された書面による外貨建契約に基く場合上記 b 書面による外貨建契約は以下の場合に限定される a 第 4 条 第 5 条に定めるルピア使用義務の例外取引 b 中銀により承認された戦略的インフラプロジェクト 第 5 部商品 サービスの価格第 11 条経済活動を行う者は商品 サービスの価格をルピア建で表示しなければならない 第 6 部報告と遵守状況の監査第 12 条中銀は第 2 条に定めるルピア使用義務 及び第 11 条に定める商品 サービス価格のルピア建表示義務の遵守状況について 全ての当事者に対して報告書 情報 データの提供を要求する権限を有する当事者は中銀からの求めに応じ 報告書 情報 データを提出しなければならない 第 13 条中銀は以下の方法によりルピア使用義務 及びルピア建価格表示義務の遵守状況の監査を行う a 報告書 情報 データ並びに確認書類の提出の要求 b 中銀による直接監査 c 中銀により委託された第三者による監査 4
第 7 部雑則第 14 条以下の取引はルピア使用義務の対象とならない a 法令 規制に基く公認両替商による両替取引 b 法令に基づき実施されるインドネシア共和国の関税領域外への外貨紙幣の持出し 第 15 条本通達の実施に際し 中銀は他の機関と協力してこれに取組む 第 16 条非現金取引におけるルピア使用義務の継続に対する問題が生じた場合 中銀は然るべき対応を取る可能性がある 第 8 部罰則第 17 条以下の取引は通貨法 (UU No.7/2011) 第 33 条に定める罰則 (1 年以内の懲役と 2 億ルピア以下の罰金 ) が適用される a 現金取引におけるルピア使用義務 b ルピア受取りの拒絶 第 18 条非現金取引におけるルピア使用義務に違反した場合 以下の罰則が適用される a 中銀による警告状の出状 b 取引金額の 1%( 最大 10 億ルピア ) の罰金 c 支払取引の禁止 第 19 条商品 サービス価格のルピア建表示義務 並びに中銀に対する報告書 情報 データの提出義務に違反した場合 中銀から警告状が出状される 第 20 条上記罰則に加え 中銀は然るべき監督官庁に対しても対処を求める 第 9 部移行措置第 21 条 2015 年 7 月 1 日より前に締結された外貨建契約は非現金取引についてのみ 契約に記載された期限まで有効契約の延長 変更には本中銀規制が適用される 5
第 10 部結び第 22 条詳細は追って出状される中銀回状 (circular letter) に規定する 第 23 条非現金取引に関するルピア使用義務は 2015 年 7 月 1 日より発効する 第 24 条本通達は出状日 (2015 年 3 月 31 日 ) より発効する ご参考 : 中銀通達 17/3/PBI/2015 の URL http://www.bi.go.id/id/peraturan/sistem-pembayaran/pages/pbi_170315.aspx レポート作成国際業務部北村広明 E-mail: hiroaki_2_kitamura@mufg.jp 本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり 金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません 本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合 弊行がそれらの取引を応諾したこと またそれらの取引の実行を推奨することを意味するものではなく それらの取引の妥当性や 適法性等について保証するものでもありません 本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません 本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが その正確性 信頼性 完全性を保証するものではありません 最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします 本資料に基づく投資決定 経営上の判断 その他全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも 弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません 実際の適用につきましては 別途 公認会計士 税理士 弁護士にご確認いただきますようお願いいたします 本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱東京 UFJ 銀行に帰属します 本資料の本文の一部または全部について 第三者への開示および 複製 販売 その他如何なる方法においても 第三者への提供を禁じます 本資料の内容は予告なく変更される場合があります 6