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平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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第 5 無効及び取消し 1 法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果について 次のような規律を設けるものとする (1) 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は 相手方を原状に復させる義務を負う (2) (1) の規定にかかわらず

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ウ譲渡人について倒産手続の開始決定があった場合エ債務者の債務不履行の場合 (3) 譲渡禁止特約付債権の差押え 転付命令による債権の移転 2 債権譲渡の対抗要件 ( 民法第 467 条 ) (1) 総論及び第三者対抗要件の見直し (2) 債務者対抗要件 ( 権利行使要件 ) の見直し (3) 対抗要件

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9-1 退職のルール 職することは契約違反となります したがって 労働者は勝手に退職することはできません 就業規則に 契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には それに従って退職できることになりますが 特段の定めがない場合には なるべく合意解約ができるように 十分話し合うことが大切です ただ

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合しないとき ( 当該消費者契約が請負契約である場合には 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき ( その引渡しを要しない場合には 仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき ) 以下この項において同じ ) に これ

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42 第 1 章 建物及び設備所有者 占有者 管理者の責任 いて強度や規模によって限定的な解釈をした場合には 震度 5 強程度の地震では 地震免責条項にいう 地震 には該当しないという可能性もあります そこで 本ケースでは 本ケースの保険契約の地震免責条項にいう 地震 の定義が問題となります 2 東

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併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

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被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

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第 2 条ガイアは 関係法令等及びこれに基づく告示 命令によるほか業務要領に従い 公正 中立の立場で厳正かつ適正に 適合審査業務を行わなければならない 2 ガイアは 引受承諾書に定められた期日までに住宅性能証明書又は増改築等工事証明書 ( 以下 証明書等 という ) を交付し 又は証明書等を交付でき

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に 公 開 された 映 画 暁 の 脱 走 ( 以 下 本 件 映 画 1 という ), 今 井 正 が 監 督 を 担 当 し, 上 告 人 を 映 画 製 作 者 として 同 年 に 公 開 された 映 画 また 逢 う 日 まで ( 以 下 本 件 映 画 2 という ) 及 び 成 瀬 巳

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

いても使用者責任が認められることがあります 他方 交通事故の原因が相手方の一方的な過失によるものであるなど 被用者に不法行為責任が発生しない場合には 使用者責任も発生しません イ 2 使用関係被用者との使用関係については 実質的な指揮監督関係があれば足りるとして広く解されており 正社員 アルバイト

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羽生市標準委託契約約款 ( 総則 ) 第 1 条発注者及び受注者は この約款 ( 契約書を含む 以下同じ ) に基づき 別冊の仕様書 ( 現場説明書等を含む ) 及び図面 ( 以下 仕様書等 という ) に従い 日本国の法令を遵守し この契約を履行しなければならない 2 受注者は 契約書記載の業務

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平成 30 年 ( 受 ) 第 269 号損害賠償請求事件 平成 31 年 3 月 12 日第三小法廷判決 主 文 原判決中, 上告人敗訴部分を破棄する 前項の部分につき, 被上告人らの控訴を棄却する 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする 理 由 上告代理人成田茂ほかの上告受理申立て理由第

ー ただお 課 長 を 表 示 するものとする ( 第 三 者 に 対 する 許 諾 ) 第 4 条 甲 は 第 三 者 に 対 して 本 契 約 において 乙 に 与 えた 許 諾 と 同 一 又 は 類 似 の 許 諾 を することができる この 場 合 において 乙 は 甲 に 対 して 当

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4-3-4共立蒲原総合病院組合職員の育児休業等に関する条例

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( 検査 ) 第 8 条甲は 乙の業務にかかる契約履行状況について 作業完了後 10 日以内に検査を 行うものとする ( 発生した著作権等の帰属 ) 第 9 条業務によって甲が乙に委託して制作した成果物及び成果物制作のために作成された著作物の著作権及び所有権等は 著作権法第 21 条ないし第 28

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

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4 乙 は 天 災 地 変 戦 争 暴 動 内 乱 法 令 の 制 定 改 廃 輸 送 機 関 の 事 故 その 他 の 不 可 抗 力 により 第 1 項 及 び 第 2 項 に 定 める 業 務 期 日 までに 第 1 条 第 3 項 の 適 合 書 を 交 付 することができない 場 合 は

るよう 工 事 打 合 せ 簿 ( 様 式 2)により 受 注 者 に 求 めます 5-1 理 由 書 ( 様 式 3)が 提 出 され 特 別 の 事 情 を 有 すると 認 めた 場 合 は 社 会 保 険 等 の 加 入 が 確 認 できる 書 類 を 提 出 するよう 工 事 打 合 せ 簿

きる ( 改正前民法 436 条 ) 1 改正法と同じ 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる 本条は 負担部分の限度で 他の連帯債務者が債権者に対して債務の履行を拒むことができると規定したものであり 判

五有価証券 ( 証券取引法第二条第一項に規定する有価証券又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう ) を取得させる行為 ( 代理又は媒介に該当するもの並びに同条第十七項に規定する有価証券先物取引 ( 第十号において 有価証券先物取引 という ) 及び同条第二十一項に規定する有価証券先

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定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

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達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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ある 2 請求の趣旨 被告は, 原告に対し, 金 1800 万円及びこれに対する平成 18 年 9 月 1 日から 支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 請求原因 訴訟費用は被告の負担とする 仮執行の宣言 原被告間の売買契約の成立 原告の被告に対する所有権移転登記 引渡し債務について弁

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保証契約とは しゅさいむしゃ が 保証契約 とは, 借金の返済や代金の支払などの債務を負う 主債務者 その債務の支払をしない場合に, 主債務者に代わって支払をする義務を負うことを約束する契約をいいます なお, 連帯保証契約 とは, 保証契約の一種ですが, 主債務者に財産があるかどうかにかかわらず,

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用語定義保険期間中に施設に入場する利用者の総数を入場者いいます 第 1 条 ( 保険金を支払う場合 ) の損害を補償他の保険契約等する他の保険契約または共済契約をいいます 第 4 条 ( 責任の限度 ) (1) 当会社は 法律上の損害賠償金については 1 回の事故について その額が保険証券に記載され

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労働判例 が疾病のために従前担当していた業務をすることがで きなくなった場合でも 直ちに債務の本旨に従った履行をで きなくなったと断定することはできないと判断された事例 片山組事件 最一小判平10.4.9 事案の概要 建設会社Y社に雇用され て21年以上にわたって工事 現場における現場監督業務 自宅治療期間中の 未払賃金 賞与減額分 の支払請求 この間賃金不支給 賞与減額 に従事してきた 労働契約 上その職種や業務内容が現 自宅治療期間 場監督に限定されてはいな の間の臨時的一時的業務と して本社内の工務監理部で 平 4.2/6 現場監督業務に 復帰 終了して次の現場業務まで 10/1 会社の自宅治療命 令により不就労 2月にいったん現場業務を 平 3.8 現場作業はできな いと申出 い Xが 平成3年 平 3.10.1 平 4.2/5 図面の作成などの作業に従 事し 同年8月に再び建設工事現場の監督業務に従事するとの業務命令 を受けたが 平成2年夏にバセドウ病を罹患していて現場作業に従事す ることができない 事務作業なら行うことができる との申出をした Y社は平成3年10月1日から自宅で治療をすべき旨の命令を行った X が現場作業に復帰できる体調となったので 平成4年2月6日からは現 場監督業務に復帰した Xはこの自宅治療命令に従って平成3年10月1 日から平成4年2月5日まで自宅治療をして 就労しなかった この間 Y社はXに賃金を支払わず賞与も減額したので Xが賃金及び賞与の減 額分の支払請求を行った 1審 東京地判平5.9.21 は 賞与のうち成績査定による減額分を除 き 請求を認容したが 第1次控訴審 東京高判平7.3.16 は 私病の 227

第2章 各 論 ため労務の一部の履行が不能となった場合 一部のみの提供は債務の本 旨に従った履行の提供とはいえないなどとして 請求を棄却した これ に対してXが上告したのが本判決であるが 本判決は 次のように判断 し 原判決 高裁判決 を破棄して審理を高裁に差し戻した 差戻し後 の高裁 東京高判平11.4.27 は Xの請求を認容した東京地裁判決を 支持し Y社からこれに対する上告 上告受理申立てがなされたが 上 告棄却 不受理決定がなされた 最三小決平12.6.27 が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合に おいては 現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が 十全にはできないとしても その能力 経験 地位 当該企業の規模 業種 当該企業におけるの配置 異動の実情及び難易等に照 らして当該が配置される現実的可能性があると認められる他 の業務について労務の提供をすることができ かつ その提供を申 し出ているならば なお債務の本旨に従った履行の提供があると解 するのが相当である 上記の現場作業に従事することはできないが事務作業なら可能で その提供の申出をしていたのであるから 右事実から直ちに上告人 X が債務の本旨に従った労務に提供をしなかったものと断定する ことはできず 上告人が配置される現実的可能性があると認め られる業務が他にあったかどうかを検討すべきである 1 債務の本旨に従った履行 ⑴ 債務の本旨に従った履行がない場合とある場合 冒頭の判決に 債務の本旨に従った履行 という言葉が出てきます これは 民法415条の 債務者がその債務の本旨に従った履行をしない ときは 債権者は これによって生じた損害の賠償を請求することがで きる というの規定と同じ言葉です 債務の本旨に従った 履行というのは 契約によって発生する債務では 債務の本旨 は契 228

約の内容によって決定されます 債務の本旨に従った履行をしない 場合にはとなり 損害賠償請求権を発生させます 他方で 債 務の本旨に従っ た弁済の提供がある場合 民法493条 には 債務者 は 弁済の提供の時から 債務の不履行によって生ずべき一切の責任を 免れる ことになります 民法492条 つまり 債務の本旨 に従っ た弁済の提供があれば 債権者が受領を拒否しても とはな りません 具体的にいえば 例えば商品の売買契約で売主がちゃんとした商品を 届けたのに買主が受領を拒絶したとか約束の日に不在で受領できなかっ た場合 売主は商品引渡しの債務について 債務の本旨に従った履行 の提供 をしたことになります 逆に 買主がちゃんと全額の代金を持っ て行ったのに 売主が代金の受領を拒否したとか受領できなかったこと によって債務の履行を完了できなかった場合 買主としては 債務の本 旨に従った履行の提供 をしていることになります このような場合 の責任は発生しません 債務の本旨に従った履行の提供 と 例 売買契約で売主が買主の元へ商品を届けることになっている場合 債務者 売主 引渡債務 引渡債務 商品を届ける契約 内容になっている のに届けない 商品を届けに 行った 債務の本旨に従った 履行の提供がない 債権者 買主 買主が受領を 拒絶あるいは 不在 債務者 売主 債権者 買主 債務の本旨に従った 履行の提供があった 弁済の提供があったもの としてによる 責任を免れる 民法492条 229

第2章 各 論 ⑵ 労務提供義務の履行と履行の提供 労働契約におけるの中心的債務は もちろん労務の提供をする ことです 労務の提供 の内容 つまりどのような労務を提供するか は労働契約によって決定されています 労働契約上約定された労務を提 供しない場合 となって損害賠償責任が発生したり 契約の 解除や解約 つまり解雇 をされたりすることがあります 32 契約の 470頁 39 期間 解除 400頁 38 期間の定めのある労働契約 の定めのない労働契約の解約 491頁 参照 他方 労務提供義務の履行をしようとしてもがその受領を拒否 した場合 は責任を負いません ですから の その不就労を理由として からに対して損害賠償請求や解 雇はできません また 危険負担の規定 536条2項 によって賃金請 そこで 冒頭の事 求権が発生します 30 危険負担 374頁 参照 案でXが 債務の本旨に従った履行の提供 があったかどうかが 問題となったのです 労務提供債務と 債務の本旨に従った履行の提供 からの労務提供 就労 の受領を正当な理由なく拒んだ 労務提供債務 債務者 債務の本旨に従った 履行の提供があった の不就労を理由に 損害賠償請求 解雇できない 賃金支払債務 不就労の間の賃金支払債務は どうなるか 230 債権者

の損害賠償責任 が第三者に損害を与えた場合 が会社に損害を与えた場合 会社の機器を 不注意で壊した 怪我 責任 ①賠償金支払い ②賠償金の 求償 損害賠償請求 第三者 社用で運転中 の交通事故 損害賠償責任 裁判実務 のに対する損害賠 償請求額 求償額は 満額でな く一定範囲に制限される傾向 被用者 しかし これらの場合 が全額を負担すべきかどうかが問題と なります 会社はの労働によって顧客にサービスを提供したり商 品を製造したりして利益を得ています また そもそも上記のような リスクは会社が負担すべきともいえます そこで 交通事故の事例につ いて 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限 度において 被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることでき るものと解すべき として の損害賠償額を4分の1に限定した 判例 茨石事件 最一小判昭51.7.8 大隈鉄工所事件 名古屋地判昭 62.7.27 があります 6 争議行為の民事免責 がストライキを行うことは 民法だけの視点からみれば 個々 のが労務提供義務を履行しないとなりますし これを 指示した労働組合は不法行為 民法709条 となるでしょう しかし 労組法8条は争議行為の民事免責を定めています したがって ストラ イキ等の争議行為が正当なものであれば 個々のも労働組合も損 237

第2章 各 論 害賠償責任を負いませんし 解雇等の不利益処分は無効となります 労 組法7条1号 の損害賠償責任 ストライキ 労務提供債務の不履行 正当な争議行為は 責任を負わない 民法改正との関係 Column という言葉は 債務が履行されないこと という意味 で使われる場合 事実上の と それが債務者の責めに 帰すべき事由 帰責事由 がある場合という意味で使われる場合 があります 損害賠償請求権が発生するのは 後者の場合です し かし 立証責任は債務者にあり 不可抗力とか第三者の介入 ある いは正当化事由といったことがなければ 責めに帰すべき事由がな いとはいえないというのが現実です そこで 要綱 では 債務不 履行があった場合には 損害賠償責任を負うのを原則とし 責めに 帰することのできない事由による 場合 正当化事由を含むことに なる には賠償責任を免責することを明らかにすることが提案され ています 他方で があった場合の契約の解除については 債務 不履行の事実 履行遅滞の場合には期間を定めての催告の後 履行 不能の場合には直ちに だけで解除を可能 帰責事由がなくとも契 約の解除ができる とすることや 軽微な 付随義務違 反など だけでは原則的に契約解除ができないという現在の一般的 な考え方を条文化する提案がされています 238

労働問題を読み解く民法キーワード 1 債務の発生原因 となるためには 債務が存在することが必要です では 債務とは何 に基づいて発生するかというと 契約などの法律行為に基づく場合 売買契約によ り売主に引渡し及び登記移転の債務が発生し 買主に代金支払債務が発生する 法 律の規定に基づく場合 不法行為のあった場合に損害賠償債務が発生する 信義則 に基づいて発生する 安全配慮義務がそうです 場合がありますが 民法では 債 務不履行による損害賠償責任について規定する債権総則では こういった発生原因 を抽象化して 債務 一般として取り扱われています 2 損害賠償請求と契約の解除 契約によって発生した債務 売買契約における引渡債務 代金支払債務など の 不履行があった場合 民法540条以下の規定に従って契約の解除をすることが可能 です なお 側からの労働契約の解除には制限のあることにつき 32 契約の 解除 401頁 参照 が これとは別に損害賠償請求をすることも可能です 民法 545条3項 また 契約を解除しないで損害賠償のみを求めることも可能ですが 前者の場合と後者の場合では損害賠償の金額に相違が出ることが多いでしょう 3 不就労と賃金請求権 通常 賃金請求権が発生するには就労することが必要ですが 不就労であっても の 責めに帰すべき事由によって 就労できなかった場合には賃金は発生し ます 民法536条2項 が債務の本旨に従って労務提供の申出をしたのに使 用者が就労させなかった場合にはの 責めに帰すべき事由によって 就労で きなかったことになりますが の 責めに帰すべき 不就労はこの場合だけ とは限りません あらかじめ強固な就労拒否が表示されている場合などです 30 危 険負担 374頁 参照 4 付随義務 付随義務 とは 契約から発生する中心的債務 例えば 売買契約から発生する 目的物を引き渡す債務 代金を支払う義務 の履行に付随して生ずる義務のことを いいます 例えば 期日に間に合うよう準備をする義務 買主宅に届けるにあたっ て目的物を破損しないようにする義務 買主宅の設備を破損しない義務があります 安全配慮義務は ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者 間において 当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対し て信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの とされています 安全配 慮義務を最高裁が認めた判決である 陸上自衛隊八戸車両整備工場事件 最三小判 昭50.2.25 森井利和 239