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五回 ゴムの特性とその秘密その 3 1.4 各種ゴムの種類と特性各種ゴムの種類と特性について JIS K6397の分類に基づいて説明をすすめます 1.4.1 M グル - プのゴム a. エチレンプロピレンゴム (EPM EPDM) エチレンとプロピレンの共重合体 ( 以下 EPM) は 1955 年にイタリアのナツタらによって初めて合成されました その後 非共役ジエンモノマーである第三成分を共重合することで不飽和結合を導入し 硫黄架橋を可能としたエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体 (EPDM) が開発されたことで 工業的にも広く使用されるようになりました EPDMは主鎖に二重結合がないので耐熱性 耐候性が良いうえ 比重が小さいこと 補強剤の高充填が可能であること等の特徴があり 現在ではSBR BRに次ぐ生産量を誇る合成ゴムとなっています ⅰ.EPM EPDM の製造方法 EPM EPDMは V 化合物と有機 Al 化合物からなるチーグラー ナツタ触媒を用いて また 少量ですが一部のEPMは Ti 化合物を用いて製造されています 最近では メタロセン触媒も用いられています 一方 製造プロセスとしては 主に脂肪族炭化水素を溶媒とした溶液重合法が採用されており 一部ではモノマーを主溶剤としたスラリー重合法も採用されています また 最近では モノマーガスの中で重合反応を進める気相重合法の工業化が準備されています さらに エチレン プロピレンと共重合させる第三成分のジエンとしては 共重合反応性 得られたEPDMの架橋速度を考慮して 主に5-エチリデン-2-ノルボルネン (ENB) が用いられているほか ジシクロペンタジエン (DCPD) 1,4-ヘキサジエン (HD) も使用されています ⅱ.EPM EPDM の構造と特徴 用途 (CH 2 -CH 2 ) l (CH 2 -CH) m (CH-CH) n CH 3 HC CH CH 2 H 2 C-C=CH-CH 3 図 4.1 ENB 系 EPDMの構造式ポリエチレンは Tgが低いにも関わらず 結晶化しやすく融点が高いため 常温ではプラスチックの性質を示します EPM EPDMは このポリエチレンの性質を改良することを目的とし エチレンにプロピレンを共重合させることでポリエチレンの分子配列を乱し 結晶化を阻害することにより生まれた合成ゴムです したがって プロピレン含量がその性質に大きく影響します 市販製品のプロピレン含量は15~50モル % 程度で 20モル % を超えるとエチレンの結晶化が急激に妨げられ 30モル % 以上ではその影響はほとんど無視できる程度となります すなわち プロ

ピレン含量が少なくなると結晶化しやすく グリ-ン強度 ロ-ル巻き付き性 押出加工性が向上し 圧縮永久ひずみや低温特性が悪化します また 市販製品のム-ニー粘度 (ML 1+4 100 ) は10~300の範囲にあり ポリマー製造 加工の問題から ム-ニー粘度が100~150 以上のものはパラフィン系オイル等で油展されています このムーニー粘度の増大とともに未加硫ゴムの強度 架橋ゴムの引張強度が大きくなり 圧縮永久ひずみが小さくなります EPM EPDMの分子量分布は 触媒 重合条件の選択により比較的容易に変化させることができます M W /M n で分子量分布 2~5の範囲が一般的ではありますが 加工性 機械的特性を考慮して5~10と広く設計されたものもあります 分子量分布を広くすることで生ゴム 未加硫ゴムの強度が大きくなり 混練り加工性 押出加工性 カレンダー加工性が改良される結果が知られています EPDMの架橋性能を決める第三成分として非共役ジエンが共重合されていますが 工業的に用いられているジエンの中ではENB>HD>DCPDの順で硫黄加硫速度が速く またENBは加硫物性のバランスもとれているので汎用的に用いられています EPDMは IIRとともに非ジエン系非極性ゴムの代表でありますが 主鎖飽和型ポリマ-の特徴である耐候性 耐熱性はIIRより若干優れています 一方 機械的特性 弾性は IIRより一般用ゴムに近く また電気的特性に関しても 耐コロナ性 耐トラッキング性がIIRより優れています さらに 比重が0.86~0.87と市販ゴムの中では一番小さく また充填剤を多量に配合することも可能です なお 非極性であるために耐油性はありません 難点は 他材料との接着性に劣ること ジエン系ゴムに比較し架橋速度が遅い点が挙げられます 用途としては 自動車用水系ホ-ス エアー系ホ-ス ウェザーストリップといった自動車用ゴム部品を中心に ルーフィングシート等の建築用ゴム製品 電線の被覆材 その他工業用ゴム製品に幅広く用いられています EPMも 過酸化物架橋等により一般ゴム製品に用いられますが 現在ではポリプロピレンなどのオレフィン系汎用樹脂に添加することにより 耐衝撃性改質剤として多量に用いられています これらは主として自動車用バンパー 自動車内装材 フィルム等に応用されています また EP Mを無水マレイン酸等で変性し ポリアミド樹脂 ポリエステル樹脂等の改質材としても使用されています b. アクリルゴム (ACM) ACMは アクリル酸アルキルエステルを主成分とし 通常架橋点となる官能基を含有する架橋モノマーとの共重合体で 1948 年に商業生産が開始されました ACMはフツ素ゴム シリコーンゴムに次ぐ耐熱性 およびフツ素ゴム ニトリルゴム ヒドリンゴムに次ぐ耐油性を示しながらも比較的廉価でコストパ-フォ-マンスに優れることから 高性能化 コストダウンの進む自動車産業を中心に使用されています

ⅰ.ACM の製造方法通常 アクリル酸エステルの重合は乳化重合であり 重合開始剤とレドックス系触媒の存在下で 窒素雰囲気のもと75 近辺において反応させ 凝固 乾燥を経て 製品となります ⅱ.ACM の構造と特徴 用途 ( CH 2 CH ) m ( CH 2 CH ) n O= C-OR O アクリル酸エステル CH 2 CH 2 Cl 2-クロルエチルビニルエ-テル図 4.2 ACMの構造式 ACMの耐熱性は主として主鎖飽和構造に 耐油性は側鎖エステル結合の極性に 耐寒性は側鎖のアルキルまたはアルコキシルアルキル基に起因しており 主成分モノマーの選択がACMの基本性能を決めることとなります これらモノマーとしては アクリル酸エチル ( 以下 EA) アクリル酸ブチル (BA) アクリル酸メトキシエチル(MEA) の3 種が単独あるいは2 種以上が組み合わされて使用されます 通常 標準グレ-ドと呼ばれる脆化温度が-15 レベルのものは 主成分モノマーとしてEAが100% 使用されていますが さらに耐寒性を高めるためには 分子間凝集力を弱めるため より嵩高い側鎖 ( より炭素数の多い ) をもつモノマーを導入することになります しかし BAのような長いアルキル基をもつモノマーの導入は 相対的にACMの極性を弱め その結果 耐油性を損なうため MEAのように側鎖に極性基をもつものを併用します 市販の耐寒グレ-ド ( 脆化温度 :-25~ 30 ) ではEA-BA EA-BA-MEA 超耐寒グレ-ド( 脆化温度 :-35 ~-40 ) ではMEA-BAといった主成分モノマー構成となっています 架橋点モノマーとしては 2-クロロエチルビニルエーテル ビニルクロロアセテートといった塩素系モノマー アリルグリシジルエーテル等のエポキシ系モノマー エチリデンノルボルネン等のジエン系モノマーが使用されています 塩素系 ACMでは金属石鹸等により エポキシ系 ACMはアミン化合物により 二重結合系 ACMでは硫黄等により架橋されます ACMの特徴は その構造に由来する耐熱性 耐油性 耐候性 耐オゾン性に優れている点にあります 特に耐熱性はすばらしく クロロプレンゴムやニトリルゴムの長時間連続使用温度が80 ~100 であるのに対し 150~180 での長時間使用にも耐えます 欠点としては スコーチ安定性が不充分 常態での引張強度が低い ロ-ルへの粘着が大きい 耐寒性が不充分 といった点が挙げられますが これらの問題点も 最近ではかなり改善されたグレ-ドが入手可能となっています ACMは当初 オイルシール O-リング等の分野でNBRに代わるゴム材料として登場しましたが 最近では自動車の高級化 高性能化により 耐熱性 長寿命性等 ゴム材料に対する要求は増えつつあります さらに 高温雰囲気中でのトランスミッション油を含む自動車用潤滑油 エンジンオイル等に高い抵抗性を示すACMは 自動車用を中心とした各種シール材 ガスケット パッキン ホ-ス等の機能部品に広く使用されています

ⅲ. 他のアクリル系ゴムエチレンアクリレ-トゴム (AEM) は アクリルゴムの耐寒性改良をねらって見出され1974 年に市販されました エチレンとメチルアクリレ-トと架橋基としてカルボキシル基をもつ第三成分を高圧ラジカル重合法で製造されているといわれています AEMはポリマーそのものの分子量が低いことから 充填剤を少量添加したコンパウンドとして供給されています 主鎖のエチレン鎖は飽和構造であるため耐熱 耐候性に優れ またTgも低く低温特性も優れています アクリレ-ト基は耐油性を付与するために導入されていますが 共重合量が多くなると低温柔軟性を悪化させます また 架橋のために導入される第三成分量は数 % です この構造から AEMの耐熱性は良好で シリコ-ンゴムとCSMの中間的性質を示し 耐油性においてはアクリルゴムやNBRに及ばないものの CSM CRと同等の位置付けを示します 低温特性はアクリルゴムより優れますが 低温柔軟性は必ずしも良くありません その反面 AEMは高温においては優れた振動減衰特性をもっています この特性は 20~100 の広い範囲で安定しており 40 以上の高温ではIIRより大きくなります AEMは 側鎖を構成するアクリレート等のモノマーの選び方で性能が大きく変化するもので エチレン 酢酸ビニル アクリレ-トの共重合体も上市されています 主として自動車用シ-ル材 ガスケット O-リング ホ-ス チュ-ブ 電機部品等に使用されています c. フッ素ゴム (FKM) フッ素ゴムはフッ素を分子内に含むゴムの総称であり モノマーの構成により種々のタイプがあります 1950 年代半ばにフッ化ビニリデン (VDF) をモノマーの一成分としたフッ素ゴムが商業化されたのが最初で その商品名 バイトン はフッ素ゴムの代名詞としても使われています フッ素ゴムは高価ですが 他のゴム材料より秀でた耐熱性 耐油性 耐薬品性を持っているため 現在では 自動車産業 航空機産業 化学産業 機械関連産業等で欠くことのできない材料になっています ⅰ. フッ素ゴムの製造方法一般的には レドックス系触媒を用いた乳化重合で生産されます ⅱ. フッ素ゴムの構造と特性 (CF 2 -CH 2 ) m (CF-CF 2 ) n CF 3 図 4.3 FKMの構造式現在市販されている代表的なフッ素ゴムとしては フッ化ビニリデン (VDF) 系 テトラフルオロエチレン (TFE)-プロピレン(P) 系 テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル系等が挙げられます フッ化ビニリデン系には VDFとヘキサフルオロプロピレン (HFP) のニ元共重合体系と さらに (TFE) を加えた三元共重合体系があります 後者はフッ素含有量が多いため より

耐熱性 耐油性 耐薬品性に優れています フッ化ビニリデン系ゴムは 連続使用可能温度が23 0 と耐熱性に優れているうえ 優れた耐油性を示します 耐薬品性に関しても 高濃度のアルカリやアミン 極性溶剤を除く ほとんどの薬品に耐えます ただし 耐寒性は充分ではなく -2 0 程度が限界です 低温特性を改善するためにパーフルオロビニルエーテルを共重合したグレ -ドもあります フッ化ビニリデン系ゴムは 諸特性 価格 加工性等のバランスが良く フッ素ゴムの中心的なものとして 市場全体の85% を占めています テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴムは TFEとPを主成分とするフッ素ゴムです 特異な重合により TFEとPが交互に共重合しており PのC-HユニットがTFEのC-Fユニットに保護される形となっています このため 特に高温 高濃度の強酸 強アルカリにも耐える良好な耐薬品性を示します また 酸化剤 還元剤に対してもかなり安定で かつ高温高圧のスチ-ムにも優れた耐性を示す等 フッ化ビニリデン系では得られない特性をもっています しかし 低温特性はフッ化ビニリデン系より劣るので さらに VDFを共重合し 耐寒性を改良したものもあります テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系ゴムは TFEとパーフルオロアルキルビニルエーテルを主成分に 架橋点モノマーを加え共重合させたものです このゴムではC-H 結合がすべてC-F 結合で置換された完全なフッ素化ゴムであるため 極めて優れた耐熱性 耐薬品性 耐溶剤性を示します 耐熱性に関しては 316 で2 週間加熱しても約 70% の引張強度を維持するという報告があります 13) また 耐油 耐薬品性についても フルオロカ-ボンに溶解する以外は ほとんどの無機 有機の液体に対して10% 以下の膨潤しか示さず 耐熱性とともに他の合成ゴムの追随を許さないものです ただし 化学的に安定であるが故に 配合 架橋に高度な技術が必要であり シ-ト チュ-ブ O-リング等の成形品として販売されています d. クロロスルホン化ポリエチレン (CSM) ポリエチレンは Tgが約 -120 と低く 本来ならば室温でゴム状弾性を示すはずですが 結晶のため分子の運動性が阻害されています CSMは このポリエチレンの結晶性を乱してゴム状弾性体としたものです 耐油性はクロロプレンゴムと同等ですが 主鎖に二重結合を含まないため 耐候性 耐オゾン性 耐熱性等に優れています ⅰ.CSM の製造方法 CSMは溶剤に溶解したポリエチレンに塩素と亜硫酸ガスを少量の助触媒を用いて反応させ 塩素化ならびにクロロスルホン化して製造されます ⅱ.CSM の構造と特徴 用途 (CH 2 -CH 2 ) l (CH 2 -CH) m (CH 2 -CH) n SO 2 Cl Cl 図 4.4 CSMの構造式

結晶性の高いポリエチレンにプロピレンを共重合させて結晶性を乱すことで ゴム状弾性体であるエチレンプロピレンゴムが得られるのに対し CSMでは 塩素を導入することで結晶性を阻害しゴム弾性を発現させ さらに極性により耐油性をも付与させています 線状高密度ポリエチレン (LHDPE) を原料とすると 塩素付加量が35% で結晶が消失します このため 塩素量 35% のグレ-ドは伸びが大きく 硬さが低いゴムらしい性質を示し また耐油性 低温性のバランスも優れています 市販品の塩素量は25~43% 程度で クロロスルホン基 (-SO 2 Cl) は反応性に富み 架橋反応の際の架橋点として働き 通常は硫黄量として約 1% 程度含まれます 原料のポリエチレンの選択によっても 得られるCSMの特性は大きく異なります 高密度ポリエチレン (HDPE) の場合 機械強度が高く 加工性にも優れたCSMが得られます 一方 長鎖分岐を含む低密度ポリエチレン (LDPE) の場合は 溶剤に溶解すると溶液粘度の低いCSMが得られ 塗料や接着剤等の溶液状態で使用されます CSMの特徴は 主鎖にニ重結合がなく 塩素基を含むため 耐候性 耐オゾン性 耐酸化剤性に代表される耐薬品性が 他の一般的な合成ゴムに比較して優れていることです 耐候性 耐オゾン性はCR IIRより優れ 色安定性が非常に良く 他の合成ゴムでは得られない白色 色物の高強度ゴム製品に好適であるため 屋外塗料 タイル等に使用されています 耐薬品性についても 特に無機酸 アルカリに対してCRより優れており フツ素ゴムに次ぐ位置付けにあります 難燃性 耐油 耐溶剤性はCRとほぼ同程度で 耐熱性はIIR 並みではあるものの IIRの軟化劣化型に対して硬化劣化型です もともとポリエチレンが骨格になっているため 力学特性が非常に良く 耐摩耗性にも優れており また絶縁性はCRよりやや良い程度ですが 耐コロナ放電性 耐オゾンき裂性に優れています これらの特徴を活かして工業用品としては 自動車用燃料系ホ-スカバー ケ-ブル 電線被覆ケ-ブル 工業用高圧ホ-ス 薬品用ホ-スに使われています また建築 土木関係ではル-フィング 防水シ-ト タンクライニング 床タイル また 一般産業資材としてはウェットスーツ ゴム引き布等 幅広く使用されています 引用文献 13) 井原清彦 コウジ谷信三ら : フッ素系ポリマー, P.64, ( 高分子素材 one Point-23) 高分子学会