報道発表資料 2008 年 7 月 17 日 独立行政法人理化学研究所 単語やメロディーの切れ目に対応する脳活動の記録に成功 - 分節化進行過程の神経活動を 世界で初めて生理学的手法で観察 - ポイント 連続音声に含まれる単語やメロディーの切れ目だけに出現する脳波を発見 脳波の強さは音声分節化と統計

Similar documents
( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

1. 背景コンピュータが目覚ましく進歩し 演算速度や記憶容量の大きさでは人の脳を凌駕するスーパーコンピュータも出現してきました しかし 言語を用い 直観を働かせ 抽象や概念を形成し 問題への解答を見いだし 自分自身を改善する 人間のような思考能力を持つ人工知能の実現にはまだ遠い道のりがあるように見え

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

<4D F736F F D A8DC58F4994C C A838A815B C91E5817B90E E5817B414D A2E646F63>

報道発表資料 2007 年 11 月 16 日 独立行政法人理化学研究所 過剰にリン酸化したタウタンパク質が脳老化の記憶障害に関与 - モデルマウスと機能的マンガン増強 MRI 法を使って世界に先駆けて実証 - ポイント モデルマウスを使い ヒト老化に伴う学習記憶機能の低下を解明 過剰リン酸化タウタ

報道発表資料 2004 年 9 月 6 日 独立行政法人理化学研究所 記憶形成における神経回路の形態変化の観察に成功 - クラゲの蛍光蛋白で神経細胞のつなぎ目を色づけ - 独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) マサチューセッツ工科大学 (Charles M. Vest 総長 ) は記憶形

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典


1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

平成 26 年 8 月 21 日 チンパンジーもヒトも瞳の変化に敏感 -ヒトとチンパンジーに共通の情動認知過程を非侵襲の視線追従装置で解明- 概要マリスカ クレット (Mariska Kret) アムステルダム大学心理学部研究員( 元日本学術振興会外国人特別研究員 ) 友永雅己( ともながまさき )

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 8 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 GABA 抑制の促進がアルツハイマー病の記憶障害に関与 - GABA 受容体阻害剤が モデルマウスの記憶を改善 - 物忘れに始まり認知障害へと徐々に進行していくアルツハイマー病は 発症すると究極的には介護が欠か

<4D F736F F D208DC58F4994C581798D4C95F189DB8A6D A C91E A838A838A815B83588CB48D EA F48D4189C88

報道発表資料 2006 年 4 月 18 日 独立行政法人理化学研究所 躁 ( そう ) うつ病 ( 双極性障害 ) にミトコンドリア機能障害が関連 - 躁うつ病の発症メカニズム解明につながる初めてのモデル動物の可能性 - ポイント 躁うつ病によく似た行動異常を引き起こすモデル動物の開発に成功 ミト

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 5 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 椎間板ヘルニアの新たな原因遺伝子 THBS2 と MMP9 を発見 - 腰痛 坐骨神経痛の病因解明に向けての新たな一歩 - 骨 関節の疾患の中で最も発症頻度が高く 生涯罹患率が 80% にも達する 椎間板ヘルニア

2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

報道発表資料 2006 年 6 月 5 日 独立行政法人理化学研究所 独立行政法人科学技術振興機構 カルシウム振動が生み出されるメカニズムを説明する新たな知見 - 細胞内の IP3 の緩やかな蓄積がカルシウム振動に大きく関与 - ポイント 細胞内のイノシトール三リン酸(IP3) を高効率で可視化可能

のとなっています 特に てんかん患者の大部分を占める 特発性てんかん では 現在までに 9 個が報告されているにすぎません わが国でも 早くから全国レベルでの研究グループを組織し 日本人の熱性痙攣 てんかんの原因遺伝子の探求を進めてきましたが 大家系を必要とするこの分野では今まで海外に遅れをとること

れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

研究成果報告書(基金分)

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

報道発表資料 2008 年 1 月 31 日 独立行政法人理化学研究所 酸化物半導体の謎 伝導電子が伝導しない? 機構を解明 - 金属の原子軌道と酸素の原子軌道の結合が そのメカニズムだった - ポイント チタン酸ストロンチウムに存在する 伝導しない伝導電子 の謎が明らかに 高精度の軟 X 線共鳴光

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

報道発表資料 2008 年 11 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 メタン酸化反応で生成する分子の散乱状態を可視化 複数の反応経路を観測 - メタンと酸素原子の反応は 挿入 引き抜き のどっち? に結論 - ポイント 成層圏における酸素原子とメタンの化学反応を実験室で再現 メタン酸化反応で生成

報道発表資料 2002 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 局所刺激による細胞内シグナルの伝播メカニズムを解明 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 細胞の局所刺激で生じたシグナルが 刺激部位に留まるのか 細胞全体に伝播するのか という生物学における基本問題に対して 明確な解答を与えま

マスコミへの訃報送信における注意事項

胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

( 図 ) 自閉症患者に見られた異常な CADPS2 の局所的 BDNF 分泌への影響

表紙.indd

( 図 ) 顕微受精の様子

Microsoft Word doc

RN201302_0117b.indd

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

NIRS は安価かつ低侵襲に脳活動を測定することが可能な検査で 統合失調症の精神病症状との関連が示唆されてきました そこで NIRS で測定される脳活動が tdcs による統合失調症の症状変化を予測し得るという仮説を立てました そして治療介入の予測における NIRS の活用にもつながると考えられまし

P01-16

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳


60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

図 NMR 装置内にあるサンプルにレーザー光を照射する装置

生物 第39講~第47講 テキスト

研究紀要.indd

概論 : 人工の爆発と自然地震の違い ~ 波形の違いを調べる前に ~ 人為起源の爆発が起こり得ない場所がある 震源決定の結果から 人為起源の爆発ではない事象が ある程度ふるい分けられる 1 深い場所 ( 深さ約 2km 以上での爆発は困難 ) 2 海底下 ( 海底下での爆発は技術的に困難 ) 海中や

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02.docx

早稲田大学大学院日本語教育研究科 修士論文概要書 論文題目 ネパール人日本語学習者による日本語のリズム生成 大熊伊宗 2018 年 3 月

研究計画書

M波H波解説

<4D F736F F D208DC58F498A6D92E88CB48D652D8B4C8ED289EF8CA992CA926D2E646F63>

U50068.indd

Microsoft PowerPoint - 身心14May29saiki

課題 1-1 画像からの 3 次元形状推定 画像を刺激とした入力刺激の次元圧縮を行うため ヒトの視覚処理と似た画像処理を行うことで どのような情報が抽出可能であるかを調査した ヒトの一次視覚野で行われているような方位情報抽出をフィルタ処理により行った その方位情報をアルゴリズムにより加工することで

kisso-VOL74

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 20 日 独立行政法人理化学研究所 アルツハイマー病の原因となる アミロイドベータ の産生調節機構を解明 - 新しいアルツハイマー病治療薬の開発に有望戦略 - 高年齢化社会を迎え 認知症に対する対策が社会的な課題となっています 国内では 認知症

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

その人工知能は本当に信頼できるのか? 人工知能の性能を正確に評価する方法を開発 概要人工知能 (AI) によるビッグデータ解析は 医療現場や市場分析など社会のさまざまな分野での活用が進み 今後さらなる普及が予想されています また 創薬研究などで分子モデルの有効性を予測する場合にも AI は主要な検証

Microsoft Word - kisokihon2−2−7.docx

Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿

報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

3T MRI導入に伴う 安全規程の変更について

Microsoft Word - ㅎ㇤ㇺå®ı璃ㆨAIã†®æŁ°ç’ƒ.docx

60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 12 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 DNA の量によって植物の大きさが決まる新たな仕組みを解明 - 植物の核内倍加は染色体のセット数を変えずに DNA 量を増やすメカニズムが働く - 生命の設計図である DNA が 細胞の中で増えたらどうなるので

第 33 回 ( 平成 27 年度 ) 大阪科学賞記念講演レジュメ ~ 研究者を目指す高校生の皆さんへ 脳情報デコーディング 脳から心を読む技術 京都大学 / 国際電気通信基礎技術研究所 (ATR) 神谷之康 デコーディングとは? サザエさん で有名な長谷川町子にこんな 4 コマ漫画があります 若い

表紙.tp3

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

いて認知 社会機能障害は日々の生活に大きな支障をきたしますが その病態は未だに明らかになっていません 近年の統合失調症の脳構造に関する研究では 健常者との比較で 前頭前野 ( 注 4) などの前頭葉や側頭葉を中心とした大脳皮質の体積減少 海馬 扁桃体 視床 側坐核などの大脳皮質下領域の体積減少が報告

胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

Microsoft PowerPoint - 技能習得に関する指導のあり方


Microsoft PowerPoint _kawashima_DL

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 1 月 18 日 独立行政法人理化学研究所 植物の形を自由に小さくする新しい酵素を発見 - 植物生長ホルモンの作用を止め ミニ植物を作る - 種無しブドウ と聞いて植物成長ホルモンの ジベレリン を思い浮かべるあなたは知識人といって良いでしょう このジベ

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 5 月 15 日 独立行政法人理化学研究所 モット先生 (1977 年ノーベル物理学賞受賞 ) の謎を解明 - 酸化ニッケルはなぜ金属ではないのか? - 銀白色の金属として知られるニッケルは 耐食性が高くステンレス鋼や硬貨などの原料として広く利用されてい

中国語関係節の処理過程 についての再検討

さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

自立語と付属語 文法的な面からもう少し詳しく解説します ひとつの文は複数の文節からなります 文 つなみ津波が文節 き来ます文節 そして 文節は自立語だけ あるいは自立語プラス付属語で構成されています つなみ津波 が 自 + 付 き来ます 自 自 自立語 付 付属語 自立語とはその語だけで意味を持ち

研究の背景と目的 人の脳が外界の情報を認識するプロセスを認知と呼びます 認知においては それより先行して持っている概念的な記憶との照合が行われます 例えば水に接した人が視覚 聴覚 触覚などを通じて知覚した情報は すでにその人が脳内に持っている水というものの概念的な記憶と照合され どうやらこれも (

60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 真夜中の強い光は体内時計をバラバラにする - 体内時計の停止は時計細胞同士の脱同調によることを実証 - 昼夜が逆転して生活のリズムが狂うと はては不眠症を引き起こすほどの深刻な事態となります ヒトをはじめバク

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

図人体の応力 ひずみ関係図 人体の 3 次元形状モデル

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

aeeg 入門 この項は以下のウェブサイトより翻訳 作成しています by Denis Azzopardi aeeg モニターについて Olympic CFM

INTRODUCTION 各人が被験者となり 脳波の測定を実際に経験することで 測定方法や 得られたデータの評価方 法などを学ぶ METHODS 頭部の皮膚の所定の部位をアルコールでよく拭き ペーストをつけて電極を接着する 電極の位置は国際 法に従う 増幅器の時定数は 0.3 秒にする

(Microsoft Word - 201\214\366\212J\216\366\213\3061\224N\211\271.docx)

的な記憶を使って素早く学習しますが 練習時間が長くなると長期的な記憶を使い 長く記憶を残せるようになります 例えば いちど練習してできるようになった運動のやり方を忘れてしまっても 2 回目に練習するときは 1 回目より早くできるようになります これは 短期の記憶が失われても 長期の記憶が残っているか

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

untitled


Microsoft Word - tohokuuniv-press _03(修正版)

の遺伝子の変異が JME 患者家系で報告されていますが ( 表 1) これらは現在のところ 変異の報告が一家系に留まり多くの JME 家系では変異が見られない もしくは遺伝学的な示唆のみで実際の変異は見つかっていないなど JME の原因遺伝子とはまだ確定しがたいものばかりです 一方 JME の主要な

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析


Transcription:

報道発表資料 2008 年 7 月 17 日 独立行政法人理化学研究所 単語やメロディーの切れ目に対応する脳活動の記録に成功 - 分節化進行過程の神経活動を 世界で初めて生理学的手法で観察 - ポイント 連続音声に含まれる単語やメロディーの切れ目だけに出現する脳波を発見 脳波の強さは音声分節化と統計的学習の達成度を示す 言語獲得のメカニズムの解明に貢献 独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) と独立行政法人科学技術振興機構 (JST: 北澤宏一理事長 ) は 連続音声の分節化 1 を反映して現れる脳電位を記録することに成功しました 分節化進行過程の神経活動を 神経生理学的方法により観察したのは 今回が初めてです 理研脳科学総合研究センター ( 田中啓治センター長代行 ) 生物言語研究チームの岡ノ谷一夫チームリーダー アブラ デリシャット (D. Abla) 研究員らの研究チームによる成果で 成果の一部は JST さきがけ 音声分節化のしくみと発達 プロジェクト ( 研究代表者 : 岡ノ谷一夫チームリーダー ) の中で得ました 音声分節化とは 連続音声の中に埋め込まれている単語の境界を見つけ 音声を意味のあるまとまりに区切る過程のことをいいます これは ヒトの言語獲得において重要な能力とされています 私たちは 自分が知らない外国語の音声を初めて聞いたときには 文章に含まれる各単語がどこで切れているかを区別することができません しかし 繰り返し聞いているうちに単語の境界がわかり メリハリがついて聞こえるようになります このような連続音声の分節化は どのようにして行われ またどのような神経機構が分節化を可能にするのでしょうか? 研究チームは 人工的な単語を数個作成し それらが切れ目なくランダムに繰り返されるような連続音刺激を作りました 大人の被験者 28 人にこの連続音刺激を聞かせながら 32 チャンネルの脳波計で事象関連電位 (ERP) 2 を記録しました その結果 単語の切れ目 ( 単語の第 1 音目 ) で 単語の第 2 第 3 音目に比べ 高い振幅の陰性電位 (N400) 3 を観察しました どの程度分節化ができたかをテストして その成績で 3 つのグループにわけると 陰性電位の振幅は 成績の高いグループでは学習初期に最も大きく 中程度のグループでは学習が進むにつれ徐々に大きくなり 成績の低いグループでは振幅が小さいままで変化しませんでした この結果は N400 電位が分節化を定量的に反映していることを示唆し 学習の進行過程 学習の達成度を示す重要な指標となりうることを裏付けるものです この成果は 乳幼児の言語獲得 発達の観察 失語症など脳障害患者のリハビリ効果の観察および教育開発において 大変重要な知見となります 本研究成果は 米国の科学雑誌 Journal of Cognitive Neuroscience ( 6 月 1 日号 ) に掲載されました

1. 背景言語の習得にかかわる脳機能を明らかにすることは 現代の脳科学においてもっとも重要で 興味深いテーマの 1 つです 言語の習得には 聴覚的に連続な音声に含まれる 単語の切れ目を見つける必要があります これを分節化といいます 赤ちゃんは 親の会話 テレビなど周りの環境から発せられる音声を無意識的に聞き 出現頻度の高い単語を ひとかたまり として区切って分節化していると考えられています この連続音声の分節化は これまでに行われたさまざまな行動研究から 連続音声の系列に含まれる統計的情報 ( 遷移確率 ) が 連続音声の分節化において重要な手がかりとなることがわかってきています ぼくは しました ぼくも したい ぼくが するよ という音声を聞いている場合を例とします それらの音声の中で ぼ の後に く が来る確率が高いのに対し く の後には は も や が などが来るため く からそれらの音への遷移確率は低くなります その遷移確率の違い すなわち統計的情報を利用して 私たちは ぼく が 1 つの単語で その後の音は別の単語になっている というように分節化をしています この分節化に必要な統計的情報を学習する過程は 統計的学習 4 と呼ばれています 統計的学習 およびそれを用いた分節化はどのようにして行われ またどのような神経機構がそれを可能にするのでしょうか 研究チームは 連続音声の分節化にかかわる神経処理過程を知るために ヒトの頭皮上から微弱な電位変化 ( 脳波 ) を記録することで得られる事象関連電位 (ERP) を指標とした研究を行い 分節化および統計的学習の程度を反映する脳電位を発見しました 2. 研究手法と成果研究では 12 半音階の中で 3 つの音列 ( 無意味単語 ) を 6 個作り それをランダムに隙間を空けずにつないで 7 分間の連続音刺激を作りました この連続音刺激は 単語内の 1 音目から 2 音目 2 音目から 3 音目の遷移確率が高く予測しやすいのですが 単語の最後の音 (3 音目 ) から次の単語の 1 音目は遷移確率が低く予測しにくいという統計的性質を持っています まず 学習セッションとして 被験者 28 人にこの約 7 分間の連続音刺激を 3 回 (3 セッション ) 聞かせ その時に 32 チャンネルの脳波計を用いて事象関連電位を記録しました 次に行動テストを行い 学習成績を求めました 行動テストでは 連続音刺激に含まれる音列と新規の音列を対で提示し どちらが学習セッションで聞いた連続音刺激に含まれる音列かを判断させる という課題を行いました そして 学習成績をもとに 被験者を 3 グループにわけ グループごとに セッションごとの事象関連電位を比較しました その結果 学習成績の高い ( 高成績 ) グループ 10 人 中程度 ( 中成績 ) のグループ 9 人では 遷移確率がもっとも低い単語の切れ目 ( 単語の第 1 音目 ) で 単語の第 2 第 3 音目に比べ 振幅の大きい N400 電位を観察しました ( 図 1 赤線 矢印 ) 分節化を示すこの事象関連電位は 高成績グループでは学習初期に最も強く その後セッション 2 3 と進むにつれて徐々に減衰していきました 中成績グループでは 学習セッションが進むにつれ徐々に大きくなりました 学習成績の低い ( 低成績 )

グループ 9 人では振幅が小さいままで変化しませんでした ( 図 1 2) さらに 遷移確率が低いほど振幅の大きい N400 電位が出現していることがわかりました ( 図 3) これらの結果は 被験者が連続音刺激の中で次に聞こえる音を予測し 統計的情報を手がかりにして分節化し N400 電位がその統計的学習および分節化を定量的に反映していることを示唆します このように N400 電位は学習の進行過程 学習の達成度を示す重要な指標となりうることを示しました 3. 今後の期待今回の成果は 言語獲得において重要な基盤能力である音声分節化の進行過程で 単語の切れ目を見つける過程と学習の達成度を 事象関連電位で定量的に示した世界で初めての報告です 研究グループは既に 事象関連電位を指標にした同様な研究を 新生児から 1 歳児までの乳幼児で行い 分節化を示す事象関連電位の記録に成功し 分節化能力はヒトが生まれながらに持っている能力である可能性を提唱しています また 研究チームは 光トポグラフィ (NIRS) と機能的核磁気共鳴画像法 (fmri) を用い 分節化 意味獲得および系列学習の進行過程にかかわる脳部位について 詳しく調べています これらの研究により 言語獲得にかかわる脳の機能が明らかになり 失語症など脳障害患者の治療 ブレイン コンピューター インターフェース (BCI) の構築などへの重要な貢献が期待されます ( 問い合わせ先 ) 独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター生物言語研究チームチームリーダー岡ノ谷一夫 ( おかのやかずお ) Tel : 048-467-7502 / Fax : 048-467-7503 脳科学研究推進部企画課大伴康志 ( おおばんやすし ) Tel : 048-467-9596 / Fax : 048-462-4914 ( 報道担当 ) 独立行政法人理化学研究所広報室報道担当 Tel : 048-467-9272 / Fax : 048-462-4715 Mail : koho@riken.jp < 補足説明 > 1 分節化連続音声の中に埋め込まれる 意味のあるまとまりの境界を見つける過程を 音声分節化という 分節化について最初に行動研究を行ったのは アメリカのウイスコンシン大学の J. サフラン (Saffran) ら (Science, 1996) サフランらは 3 つの子

音 母音の音素から成る 4 つの無意味な単語 (tupiro golabu bidaku padoti) を作り それらをランダムに隙間を空けずにつなげて作った連続音声を 8 カ月の乳児に 2 分間聞かせた その後に すでに聞かせた単語と新規な単語を対で提示し どちらを長く聞くかという判断テスト ( 振り向き選好法 ) を行った その結果 新奇な単語を聞く時間 ( 振り向く時間 ) がより長いという結果が得られた このことは乳幼児が連続音声を分節化できたことを意味する 2 事象関連電位 (ERP) 光や音 あるいは自発的な運動といった特定の事象に関連して一過性に生じる脳電位で 頭皮上から誘発される電位成分の総称 ERP は高度の認知機能を反映しているとされている 遂行する課題や刺激の違いによって誘発される電位成分が異なっており 課題遂行の開始時間から一定の潜時 ( 刺激を加えてから活動電位が発生するまでの時間 ) で現れる N100 成分 P300 成分 N400 成分などが知られる 3 陰性電位 N400 聴覚刺激の提示後約 400ms あたりで 頭皮上で記録される陰性の脳電位 ( 事象関連電位 ) のことを N400 と呼ぶ 4 統計的学習連続音声の分節化には連続音声の統計的性質 ( 遷移確率 ) が手掛かりとなることが知られており それをもとに学習する過程は統計的学習 (Statistical learning) と呼ばれる サフランらが研究に用いた刺激の特徴は 連続音声の中である音素から次に現れる音素への遷移確率が 単語内であれば高く 単語間だと低い というものである 例えば tupiro golabu bidaku padoti という音列の中に 音素 pi はいつも音素 tu の後に続いてくるので この遷移確率は 1.0 であるが ro の後に go が来る確率は golabu bidaku padoti の 3 つの単語が続く可能性があるため 0.33 となる 岡ノ谷チームリーダーらの遷移確率が異なる純音列刺激を用いた研究で初めて 統計的学習における神経生理学的知見を得ることができた

図 1 連続音声の分節化を示す事象関連電位 (ERP) 単語の境界を示す第 1 音目に振幅の大きい N400 電位 ( 刺激後 400ms) が検出された ( 赤線 矢印 ) この電位は 学習成績の高い高成績グループでは 学習の早い段階 ( セッション 1) で出現し その後は減衰していた 中成績のグループでは遅い時間 ( セッション 3) に出現した 低成績グループでは 検出されなかった ERP 波形は前頭中心部に位置する FCz 電極からの平均電位である

図 2 N400 電位ピークにおける頭皮上の電位分布 N400 電位は 高成績のグループのセッション 1 で 前頭 中心部に大きな振幅を示した セッション 2 3 では徐々に減衰した 中成績のグループでは 徐々に上昇し セッション 3 で大きくなった 低成績のグループでは 優位な N400 電位の分布はなかった 分布図は頭上から見たものである 図の上が前頭部 下が後頭部を示す

図 3 N400 電位振幅と音の遷移確率の相関 N400 電位の振幅は遷移確率 (TP) と相関があった ( 高成績グループ セッション 1 中成績グループ セッション 3 のいずれも p<0.01 p 値が小さいほど相関があることを示す ) 遷移確率が低い音ほど振幅の大きい N400 電位を引き起こしている 縦軸は ERP 振幅 横軸は音の遷移確率を示す