報道発表資料平成 23 年 7 月 25 日長崎海洋気象台 九州 山口県および沖縄の夏から秋にかけての潮位 高潮と異常潮位による浸水被害に注意 夏から秋にかけては 台風に伴う高潮による浸水被害に注意が必要です また 九州 山口県および沖縄では この季節に潮位が一年のうちで最も高くなるため 大潮の期間や異常潮位が発生した場合などにも浸水被害に注意が必要です 夏から秋にかけては 台風に伴う高潮 *2 によって浸水被害が発生するおそれが高まるので注意が必要です また 九州 山口県および沖縄の 7~10 月は海水温が高くなるなどの影響で一年のうちで最も潮位 *1 が高くなります ( 図 1,1~3 月に比べて 7~10 月の月平均潮位はおよそ 20~ 40cm 高い ) したがって 年間の最高潮位は 7~10 月の大潮期間 ( 新月や満月の前後数日 *5 間 ) の満潮時にあらわれます ( 図 2) また 7~10 月の大潮期間に暖水渦等による異常潮位 *3 や副振動 *4 などが発生すると 沿岸の低地では浸水被害が発生するおそれがあります ( 図 3) 特に沖縄では 暖水渦の接近による潮位の上昇で過去にしばしば浸水被害が発生しています なお 今年の 7 月 25 日 ~10 月 31 日における大潮期間は次のとおりです 大潮期間 ( 新月または満月 ) 7 月 29 日 ~ 8 月 4 日 ( 新月 :31 日 ) 8 月 12 日 ~ 8 月 18 日 ( 満月 :14 日 ) 8 月 27 日 ~ 9 月 2 日 ( 新月 :29 日 ) 9 月 10 日 ~ 9 月 16 日 ( 満月 :12 日 ) 9 月 25 日 ~ 10 月 1 日 ( 新月 :27 日 ) 10 月 10 日 ~ 10 月 16 日 ( 満月 :12 日 ) 10 月 25 日 ~ 10 月 31 日 ( 新月 :27 日 ) 気象庁では潮位の変動や暖水渦の動きを常時監視しており 高潮や異常潮位などによって浸水被害が発生するおそれがある場合には 最寄りの気象台が高潮警報 高潮注意報や潮位に関する情報などを発表しています 長崎海洋気象台ホームページ (http://www.jma-net.go.jp/nagasaki/) および気象庁ホームページ (http://www.jma.go.jp/jma/) には高潮警報 高潮注意報や潮位に関する情報などのほか 各地の最新の実測潮位や天文潮位を掲載していますのでご利用下さい 添付資料 : 用語の解説( 潮位 *1 高潮 *2 異常潮位 *3 副振動 *4 暖水渦 *5 ) 各地の潮位( 下関 博多 大浦 長崎 大分 三角 油津 鹿児島 奄美 那覇 石垣 ) 問い合わせ先長崎海洋気象台海洋課電話 095-811-4865( 直通 )
下関 油津 長崎 鹿児島 那覇 図 1. 下関 長崎 油津 鹿児島 那覇における 2011 年の日平均天文潮位の変化 7~10 月の潮位は 1~3 月に比べておよそ 20~40cm 高くなる 図 2. 長崎における 2011 年 9 月の天文潮位の変化 大潮期間には満潮と干潮の差が大きくなり 満潮時の潮位が特に高くなる 冬 ~ 春 夏 ~ 秋 大潮の満潮位 大潮の満潮位 潮位が平常より多少高くなっても浸水する可能性は小さい 潮位が平常より少し高くなるだけで浸水する可能性がある 図 3. 冬 ~ 春の潮位と夏 ~ 秋の潮位の比較 夏から秋にかけて 大潮期間の満潮時には潮位が特に高くなる
用語の解説 潮位 ( 天文潮位 実測潮位 ) ある基準面から測った海面の高さを潮位といい 通常 1 日 2 回ずつ満ち引きを繰り返しています また 新月や満月の頃の前後数日間 ( 大潮期間 ) は満潮と干潮の潮位差が大きくなります 月や太陽の運行の周期性を詳しく解析することにより 事前に潮位を予測することができます このようにして予測された潮位を天文潮位と呼び 天文潮位と実測潮位 ( 実際に観測された潮位 ) の差を潮位偏差と呼びます 潮位はよく知られている半日 1 日 半月の周期のほか 1 年周期でも変化しています 夏から秋にかけて潮位が高くなる理由は 海水温が高くなって海水が膨張することや 他の季節と比べて日本付近の気圧が低くなり その分海水が吸い上げられるためであると考えられています 高潮高潮は 台風や低気圧に伴う気圧降下による 吸い上げ効果 と風による 吹き寄せ効果 のため 海面が異常に上昇する現象です 吸い上げ効果 : 台風や低気圧の中心付近では気圧が低いため 大気が海面を押し付ける力が周囲より弱くなり海面が上昇します これを 吸い上げ効果 といい 気圧が1hPa 下がると海面は約 1cm 上昇します 吹き寄せ効果 : 台風などに伴う強い風が沖から海岸に向かって吹くと 海水が海岸に吹き寄せられることにより海面が上昇します これを 吹き寄せ効果 といいます 風が吹いてくる方向に開いた湾では吹き寄せ効果が大きく 顕著な高潮が発生しやすくなります 夏から秋にかけては 台風が日本に接近または上陸する時期にあたり 高潮被害が発生しやすくなります 台風や低気圧 強い風 強い風 高波 吸い上げ 吹き寄せ 高潮 平均的な海面 図 4. 高潮の起こる仕組み
異常潮位異常潮位は 潮位が比較的長期間 (1 週間から 3 か月程度 ) 継続して平常より高く ( または低く ) なる現象です 原因は様々で 暖水渦の接近 黒潮の蛇行等があります 副振動副振動は 湾 海峡や港湾など陸や堤防に囲まれた海域等で観測される 周期が数分から数十分程度の海面の昇降現象です 台風 低気圧などの気象じょう乱に起因する海洋のじょう乱や津波などが長波となって沿岸域に伝わり 湾内などに入ることにより引き起こされる強制振動と考えられています 2009 年 2 月には九州地方から奄美地方にかけて大きな副振動が発生し 一部地域では漁船の転覆や家屋への浸水などの被害が発生しました 暖水渦太平洋の中緯度には 直径が数百 km 程度の渦がたくさん存在していることが知られています この渦を中規模渦といい このうち右回りの高気圧性の回転を伴う渦は 周囲より水温が高くて海面が盛り上がっており 暖水渦と呼ばれます 逆に左回りの低気圧性の回転を伴う渦は 周囲より水温が低くて海面が低くなっており 冷水渦と呼ばれます 図 5は海面の凸凹が普段とどれくらい違っているかを表した海面高度偏差図で 人工衛星のデータを解析して求めたものです 石垣島の南に見られる赤い部分が暖水渦を示しています 図 5. 沖縄県付近における 2008 年 6 月 17 日の海面高度偏差図 ( 単位 cm)
各地の潮位 九州 山口県および沖縄の 11 の観測地点 ( 図 6) について以下の要素を次ページ以降に示します 日最高天文潮位と日最高実測潮位の変化 1 日のうちで最も高い天文潮位 (2010 年 1 月 ~2011 年 12 月 ) と最も高い実測潮位 (2010 年 1 月 ~2011 年 6 月 ) をグラフで示しています 日最大潮位偏差の変化毎時潮位偏差の最大値を日最大潮位偏差として これを 2010 年 1 月 ~2011 年 6 月についてグラフで示しています 顕著な高潮や異常潮位が発生した日にはコメントを付けています と最近 5 年間のとおよびその原因を示しています 主な原因の欄には台風または低気圧が原因の場合のみ記入し それ以外は - を記入しています なお 潮位と偏差は 津波 副振動 波浪などの短周期変動を除去した平滑値を用いて算出しており 一般に瞬間値より小さな値になります 図 6. 潮位の掲載地点
下関 ( 山口県 ) 2006 年 136cm 9 月 9 日 38cm 9 月 17 日 台風第 13 号 2007 年 135cm 8 月 3 日 台風第 5 号 39cm 3 月 31 日 2008 年 126cm 8 月 3 日 28cm 4 月 9 日 2009 年 135cm 8 月 21 日 40cm 2 月 13 日 低気圧 2010 年 146cm 8 月 11 日 台風第 4 号 31cm 2 月 26 日 低気圧
博多 ( 福岡県 ) 海上保安庁の潮位データを使用 台風第 4 号による高潮 2006 年 152cm 9 月 9 日 27cm 9 月 18 日 台風第 13 号 2007 年 145cm 8 月 30 日 41cm 3 月 30 日 2008 年 144cm 8 月 3 日 34cm 4 月 10 日 2009 年 145cm 8 月 21 日 38cm 2 月 13 日 低気圧 2010 年 164cm 8 月 11 日 台風第 4 号 35cm 8 月 11 日 台風第 4 号
大浦 ( 佐賀県 ) 台風第 9 号による高潮 2006 年 311cm 9 月 9 日 58cm 9 月 17 日 台風第 13 号 2007 年 293cm 9 月 28 日 46cm 3 月 24 日 低気圧 2008 年 278cm 9 月 1 日 35cm 4 月 10 日 2009 年 301cm 8 月 21 日 42cm 2 月 13 日 低気圧 2010 年 313cm 8 月 11 日 台風第 4 号 44cm 9 月 7 日 台風第 9 号
長崎 ( 長崎県 ) 2006 年 195cm 9 月 9 日 56cm 9 月 17 日 台風第 13 号 2007 年 182cm 9 月 28 日 37cm 3 月 24 日 低気圧 2008 年 174cm 9 月 1 日 29cm 4 月 10 日 2009 年 188cm 8 月 21 日 33cm 4 月 20 日 2010 年 197cm 8 月 11 日 台風第 4 号 30cm 10 月 25 日
大分 ( 大分県 ) 海上保安庁の潮位データを使用 2006 年 139cm 10 月 8 日 84cm 9 月 17 日 台風第 13 号 2007 年 171cm 8 月 2 日 台風第 5 号 50cm 8 月 2 日 台風第 5 号 2008 年 137cm 6 月 4 日 25cm 4 月 24 日 2009 年 141cm 8 月 21 日 26cm 2 月 14 日 低気圧 2010 年 144cm 10 月 9 日 34cm 12 月 2 日 低気圧
三角 ( 熊本県 ) 2006 年 252cm 9 月 9 日 102cm 9 月 17 日 台風第 13 号 2007 年 240cm 9 月 28 日 42cm 3 月 24 日 低気圧 2008 年 230cm 9 月 1 日 31cm 4 月 10 日 2009 年 246cm 8 月 21 日 34cm 2 月 13 日 低気圧 2010 年 256cm 8 月 11 日 台風第 4 号 37cm 4 月 22 日 低気圧
油津 ( 宮崎県 ) 台風第 2 号による高潮 2006 年 138cm 10 月 7 日 52cm 8 月 17 日 台風第 10 号 2007 年 128cm 8 月 2 日 台風第 5 号 55cm 7 月 14 日 台風第 4 号 2008 年 123cm 9 月 1 日 27cm 6 月 3 日 2009 年 149cm 10 月 7 日 台風第 18 号 43cm 10 月 7 日 台風第 18 号 2010 年 130cm 10 月 9 日 25cm 11 月 1 日
鹿児島 ( 鹿児島県 ) 台風第 2 号による高潮 2006 年 185cm 9 月 9 日 54cm 9 月 17 日 台風第 13 号 2007 年 176cm 3 月 20 日 35cm 3 月 15 日 2008 年 168cm 9 月 1 日 30cm 4 月 10 日 2009 年 180cm 8 月 22 日 34cm 10 月 7 日 台風第 18 号 2010 年 186cm 9 月 10 日 26cm 12 月 2 日
奄美 ( 鹿児島県 ) 台風第 2 号による高潮 2006 年 125cm 8 月 11 日 30cm 11 月 11 日 2007 年 129cm 8 月 30 日 44cm 7 月 13 日 台風第 4 号 2008 年 127cm 9 月 17 日 28cm 10 月 2 日 2009 年 130cm 7 月 23 日 35cm 10 月 7 日 台風第 18 号 2010 年 127cm 8 月 12 日 22cm 10 月 20 日
那覇 ( 沖縄県 ) 台風第 2 号による高潮 2006 年 132cm 7 月 13 日 台風第 4 号 30cm 7 月 8 日 台風第 3 号 2007 年 134cm 8 月 30 日 62cm 7 月 13 日 台風第 4 号 2008 年 121cm 9 月 17 日 21cm 3 月 23 日 2009 年 132cm 8 月 21 日 29cm 8 月 6 日 台風第 8 号 2010 年 132cm 8 月 11 日 19cm 5 月 24 日
石垣 ( 沖縄県 ) 台風第 11 号による高潮 台風第 2 号による高潮 台風第 4 号による高潮 2006 年 143cm 7 月 13 日 台風第 4 号 53cm 9 月 16 日 台風第 13 号 2007 年 128cm 7 月 13 日 台風第 4 号 84cm 10 月 6 日 台風第 15 号 2008 年 134cm 6 月 5 日 40cm 9 月 12 日 台風第 13 号 2009 年 143cm 7 月 24 日 44cm 8 月 7 日 台風第 8 号 2010 年 129cm 8 月 10 日 42cm 9 月 18 日 台風第 11 号