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考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

Taro-自立活動とは

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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

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「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて


資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

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エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

H26研究レポート一覧(6年研)変更2017.3.22

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

第4章 道徳

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

2、協同的探究学習について

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周南市版地域ケア会議 運用マニュアル 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議は 地域包括支援センターまたは市町村が主催し 設置 運営する 行政職員をはじめ 地域の関係者から構成される会議体 と定義されています 地域ケア会議の構成員は 会議の目的に応じ 行政職員 センター職員 介護支援専門員 介護サービ

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

を生かした環境を構成することも求められます 3 安全で保健的な環境次に 施設などの環境整備を通して 保育所の保健的環境や安全の確保などに努めること としています 子どもの健康と安全を守ることは保育所の基本的かつ重大な責任です 全職員が常に心を配り 確認を怠らず 子どもが安心 安全に過ごせる保育の環境


平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

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商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

< 先生方へ > 長崎県学力向上推進協議会では 子どもに確かな学力をつけていくためには 何 が大切か また 学力の向上を阻害している要因は何かなどについて 検討を重ね ています その中から次のようなことが指摘されました 1 家庭で毎日決まった時間に学習をする習慣をつけることが大切である 2 食事や睡

愛媛県学力向上5か年計画

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

ICTを軸にした小中連携

20(掲載)【石川県小松市立松陽中学校】


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北見市特別支援教育の指針 平成 25 年 11 月

鎌倉市関谷小学校いじめ防止基本方針 平成 26 年 4 月 鎌倉市立関谷小学校

求められる整理編

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中学校第 3 学年社会科 ( 公民的分野 ) 単元名 よりよい社会をめざして 1 本単元で人権教育を進めるにあたって 本単元は 持続可能な社会を形成するという観点から 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を設けて探究し 自分の考えをまとめさせ これらの課題を考え続けていく態度を育てる

造を重ねながら取り組んでいる 人は, このような自分の役割を果たして活動すること, つまり 働くこと を通して, 人や社会にかかわることになり, そのかかわり方の違いが 自分らしい生き方 となっていくものである このように, 人が, 生涯の中で様々な役割を果たす過程で, 自らの役割の価値や自分と役割

人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

未来教育 1 プロジェクト学習とポートフォリオ 文部科学省採択事業 確かな学力の育成に係る実践的調査研究 課題解決能力の獲得を可能とするプロジェクト学習とポートフォリオ教員研修プログラムの開発 コーチング指導による コンピテンシー育成 を目指して 報告書 (H22) より シンクタンク未来教育ビジョ

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3 特別支援学級における学習指導案 特別支援学級においても 学習指導案は授業の設計図としての働きに変わりはありません しかし 特別支援学級では 児童生徒の実態から指導の内容や計画を考えることに大きな意味があります 通常の学級の学習指導案では 例えば 単元について は学習指導要領に沿った指導計画に基づ

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兵庫県丹波市立氷上中学校

自己決定の場を設定する 自己存在感を持たせる 共感的な人間関係を育成する準備活動のどの場面で どの子どもを生かすのか 見通しを持って授業に臨む 導入の場面する 深める場面り返りの場面2 確かな学力の育成 複雑で変化の激しい現代社会に子どもたちが主体的に関わり よりよい社会を創造していくためには 一人

資料 目 次 事業方針 実施計画 みんなで福祉の風土を広げよう 住民 関係機関 団体のネットワークで身近な福祉活動を進めよう 一人ひとりの安全で安心な暮らしを守ろう Ⅳ 推進基盤の強化 主な年間行事等

国語 B では 話すこと 聞くこと 領域において 全国及び県平均を上回っているが 他の三つの領域においては 全国及び県平均を下回っている 活用する力を育成する取組のさらなる充実が必要である 設問 1 の目的に応じて 話し合いの観点を整理する力は身についてきている 設問 3 の二つの詩を比べて読み 自

17 石川県 事業計画書

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Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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ANNUAL REPORT

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

看護部 : 教育理念 目標 目的 理念 看護部理念に基づき組織の中での自分の位置づけを明らかにし 主体的によりよい看護実践ができる看護職員を育成する 目標 看護職員の個々の学習ニーズを尊重し 専門職業人として成長 発達を支援するための教育環境を提供する 目的 1 看護専門職として 質の高いケアを提供

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

平30年度学校経営案ホームページ洋

H27完成版.doc

福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

基本施策情報活用能力の育成を図ります 幼児教育の推進 にあたっては 幼児期が生涯の人格形成の基礎を培う大切な時期であるとの認識のもと 子どもたちの心身の発達に資する質の高い幼児教育を推進します 2 人との絆や自然との関わりの中で伸びゆく豊かな心の育成 子どもたちが生命を大切にする心や思いやりの心 感

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幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

31阿賀野全:方針実践のための行動計画

43(掲載)【徳島県鳴門市立鳴門市鳴門中学校】

第3部 次世代育成支援対策(前期行動計画) 第3章 子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

PowerPoint プレゼンテーション

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

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参考資料 校区別小中連携 一貫教育スケジュール表

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Transcription:

人権教育における部落問題学習の推進上の課題 人権教育における部落問題学習を進めるに当たって大切にしたいことこれまでの具体的な取組の中で常に大切にされてきたのは 目の前にいる子どもたちの姿をその生活背景まで含めて捉えるということでした そのことを通して 多くの教職員は よりよく生きたい 幸せに生きたい 勉強がわかるようになりたい といった子どもたちの思いや願いにふれ その願いが差別により妨げられていることを目の当たりにしてきました そして その願いの実現を妨げている差別の現実を具体的に取り除く教育活動を展開しました その営みは 子どもたちに自らの可能性を目覚めさせ 将来を切り拓かせるものであり 多くの教職員にとっては 教育そのものの在り方 自らの生き方をも問い直すものでした 今日 同和地区の変化の様子や周辺地域とのかかわりの様子等は 地域によって様々であると言えます それぞれの地域の実態の中に存在する教育課題をしっかりと捉えることから 具体的実践を行うことが大切です 人権教育における部落問題学習の展開人権教育における部落問題学習の展開に当たっては 部落問題を直接取り上げる学習だけでなく 様々な人権問題についての学習や人権に関する知的理解を深める学習等と関連させながら取り組むことが必要です また 自尊感情の醸成や基盤となる集団づくり 学力保障の取組 さらには人権感覚を高めるための取組など 教育活動全体を通して 綿密な計画に基づいた段階的な指導が望まれます ( 人権教育の構造 P.3 ~ 4 参照 ) 人権教育における部落問題学習を展開する際のポイント (1) 個別的な視点 と 普遍的な視点 の双方向からの展開を先にも述べたとおり 部落問題学習は 単に部落問題を直接取り上げる学習だけを指すものではありません その学習を通して 人権意識の高揚を図り 自他の人権を実現するための実践的な行動力を身に付けるものでなくてはなりません 部落問題学習を進めるに当たっては 人権を身近に感じ 生活に直結したものであると感じられる学習の展開の工夫が求められます 人権が尊重される社会や地域を築き 様々な人権問題を解決しようとする人間を育成するためには 個別の人権問題についての学習をすることとともに 児童生徒に基盤となる人権意識を育むための日常的な学習をはじめ その発達段階に応じて 人権の概念 人権に関する国内外の宣言や規約 人権確立の歴史 権利と責任等についての学習といった普遍的な視点からの学習が必要です 誰もが暮らしやすい社会や地域づくりを念頭に置き 普段の生活の有り様や身の周りの様々な出来事を見つめ直しつつ 個別的な視点からのアプローチ と人権一般について学ぶ 普遍的な視点からのアプローチ の双方向から 多様な手法や機会を整えて学習を展開していくことが大切です - 1 -

(2) 様々な人権問題に相通じる人権感覚 人権意識を育てるための教育内容の創造を地域社会には 部落問題 女性 子ども 高齢者 障害者 外国人 性的マイノリティ等に関わる人権問題が存在しています これらの解決を目指して取り組まれる学習においては 児童生徒にそれぞれの人権問題がどれも自分たち一人一人の人権に関わる問題であるという認識を育てることが求められます 様々な人権問題についての学習に際しては その根底において 多数派が少数派を 力のある者が弱い者を差別するといった差別問題 人権侵害としての共通根をもっていることを踏まえ それぞれの人権問題相互の関連を考えながら学習を進めることが重要です また いかなる場合においても ちがいを理由として人権が侵害されることがあってはならないのだという視点に立ち 様々な人権問題の解決に相通じる普遍的な人権感覚や人権意識を育てていくための教材づくりや学習展開を考えていくことが大切です (3) 児童生徒の生活や地域に根ざした教材の開発をこれまでの様々な研究により 部落問題の解決に向けては 部落内外の人と人や集落と集落の社会的関係の問題として捉えた学習展開が必要とされています 部落問題学習においては これまでも児童生徒の生活に深く関係した教材や地域の課題に迫る教材等を創り出し それらを使った学習が進められてきました 生活や地域に根ざした教材は 身近な人権課題を提起するものであるだけに 自分の問題として捉えて考えることができ その解決に向けて創造的に取り組む意識や態度を育てるためにも効果的であると考えられます 児童生徒が人権に関する正しい理解や認識をもち それらを現実の生活や自己の行動に生かしていこうとする意識や態度を育てるためにも これまでの取組をより深めるとともに 児童生徒の生活や地域に根ざした教材を開発することが求められています 具体的には まず 児童生徒の生活や地域の中に存在する様々な課題を的確に捉えなければなりません その上で どのような社会の仕組みや民衆の意識が部落差別などの人権侵害を温存してきたのか 人権問題の解決に向け 人々はどのような努力を積み重ねてきたかといったことを学び 現在における差別の現実と向き合い 自分自身はどのように生きていくのかを問うことをねらいとする学習へと進めることが大切です - 2 -

人権教育の構造 ( イメージ図 ) 自分の人権を守り他の人の人権を守るための実践的な行動 自分の人権を守り他の人の人権を守ろうとする意識 意欲 態度 人権に関する知的理解を深める学習 人権が尊重される教育の場としての学校 学級づくり自尊感情の醸成集団づくり学力保障など人権感覚を高めるための取組 個別的な視点からのアプローチ部落問題 女性 子ども 高齢者 障害者 外国人 性的マイノリティなど 普遍的な視点からのアプローチ人権の概念 人権に関する国内外の宣言や規約 人権獲得の歴史 権利と責任など 高等学校 中学校 小学校 就学前 - 3 -

人権に関する知的理解を深める学習 個別的な視点からのアプローチ様々な人権問題 ( 部落問題 女性 子ども齢者 障害者 外国人 性的マイノリティなど ) を直接取り上げた学習です 普遍的な視点からのアプローチ人権の概念 人権に関する国内外の規約 人権獲得の歴史 権利と責任など 人権についての基礎的な学習です 人権が尊重される教育の場としての学校 学級づくり 自尊感情の醸成セルフ エスティーム ( self-esteem ) の訳語で 自己肯定感 とも言われています 自分自身を大切な存在として受け止めることができる感情のことです 集団づくり一人一人違った個性をもち 様々な生活を背負い 別々の場所で暮らしてきた子どもたちをていねいにつなぎ 互いに支え合う人間関係をつくり出すことを集団づくりといいます 学力保障人権教育の成立基盤として 基礎学力や 自ら学び 考え 行動する力 などをすべての児童生徒に保障することは重要な課題です 人権感覚を高めるための取組 一人一人の人権の大切さが認められていることを実感できるような環境や雰囲気づくり自他の人権の大切さを認めることができるために必要な人権感覚は 言葉で説明するだけでは身に付くものではありません 学級をはじめ学校教育全体の中で一人一人の人権の大切さが認められていることを実感できるような環境や雰囲気づくりに取り組むことが必要です - 4 -

参考 人権教育を通じて育てたい資質 能力 自分の人権を守り 他者の人権を守るための実践行動 自分の人権を守り 他者の人権を守ろうとする意識 意欲 態度 ( 以下の 人権に関する知的理解 と 人権感覚 とが結合するときに生じる ) 人権に関する知的理解関連人権感覚 ( 以下の知識的側面の能動的学習 ( 以下の価値的 態度的側面と技能 で深化される ) 的側面の学習で高められる ) 知識的側面 価値的 態度的側面 技能的側面 自由 責任 正義 平 人間の尊厳 自己価値及び 人間の尊厳の平等性を踏 等 尊厳 権利 義務 他者の価値を感知する感覚 まえ 互いの相違を認め 相互依存性 連帯性等の 自己についての肯定的態度 受容できるための諸技能 概念への理解 自他の価値を尊重しようと 他者の痛みや感情を共感 人権の発展 人権侵害 する意欲や態度 的に受容できるための想 等に関する歴史や現状に 多様性に対する開かれた心 像力や感受性 関する知識 関連 と肯定的評価 関連 能動的な傾聴 適切な自 憲法や関係する国内法 正義 自由 平等などの実 己表現等を可能とするコ 及び 世界人権宣言 その 現という理想に向かって活 ミュニケーション技能 他の人権関連の主要な条 動しようとする意欲や態度 他の人と対等で豊かな関 約や法令等に関する知識 人権侵害を受けている人々 係を築くことのできる社 自尊感情 自己開示 を支援しようとする意欲や 会的技能 偏見など 人権課題の解 態度 人間関係のゆがみ ステ 決に必要な概念に関する 人権の観点から自己自身の レオタイプ 偏見 差別 知識 行為に責任を負う意志や態 を見きわめる技能 人権を支援し 擁護す 度 対立的問題を非暴力的で るために活動している国 社会の発達に主体的に関与 双方にとってプラスとな 内外の機関等についての しようとする意欲や態度 るように解決する技能 知識 等 等 複数の情報源から情報を収集 吟味 分析し 公 関連 平で均衡のとれた結論に 到達する技能 等 全ての関係者の人権が尊重されている教育の場としての学校 学級 ( 人権教育の成立基盤としての教育 学習環境 ) ( 文部科学省 人権教育の指導方法等の在り方について [ 第三次とりまとめ ] より ) - 5 -