商業登記法 宿題 第11問 解答例

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( 注 ) 新たに就任する理事又は監事 ( 印鑑証明書を添付しない役員 ) について, 住民票記 載事項証明書, 運転免許証のコピー ( 裏面もコピーし, 本人が原本と相違ない旨を記 載して, 署名又は記名押印したもの 2 枚以上の場合には, 合わせてとじて当該書面 に押印した印鑑で契印します )

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剰余金の配当に関するお知らせ

Ver.3.0 受付番号票貼付欄 合同会社設立登記申請書 フリガナ 1. 商号 1. 本店 1. 登記の事由設立の手続終了 1. 登記すべき事項 1. 課税標準金額金円 1. 登録免許税金円 1. 添付書類 定款代表社員, 本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面代表社員の就任承諾書払込みがあ

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別紙 現行定款第 1 章総則 ( 下線は変更部分を示す ) 変更案第 1 章総則 第 1 条 ( 条文省略 ) 第 1 条 ( 現行どおり ) ( 目的 ) ( 目的 ) 第 条 当会社は 次の事業を営むことを目的とする 第 条 当会社は 次の事業を営むことを目的とする 1. トランプ類の製造販売

(2) 変更の内容 定款変更の内容は別紙のとおりであります (3) 日程 定款変更のための株主総会開催日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 定款変更の効力発生日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 以上 - 2 -

( 第 8 条から移動 ) 第 10 条 ( 単元未満株式の売渡請求 ) 当会社の単元未満株式を有する株主 ( 実質株主を含む 以下同じ ) は株式取扱規則の定めるところに従い その有する当会社の単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の当会社の株式を売渡すよう当会社に請求することができる 第 1

( 死亡の場合 ) 死亡届又は法定相続情報一覧図の写し 通 法定相続情報一覧図の写しについては, 法務局ホームページ 法定相続情報証明制度 が始まります! ( html) を御覧ください 就任承諾書印鑑証明書

( 除名 ) 第 9 条社員が次のいずれかに該当するに至ったときは 社員総会の決議によって当該社員を除名することができる (1) この定款その他の規則に違反したとき (2) この法人の名誉を傷つけ または目的に反する行為をしたとき (3) その他除名すべき正当な事由があるとき ( 社員資格の喪失 )

定款変更案新旧対照表

印鑑証明書委任状 通 1 通 代理人に登記申請を委任した場合のみ必要です 上記のとおり, 登記の申請をします 代表権を有する者 ( 資格は理事 ) を記載します 理事が各自法人を代表する法人は, 理事のうち 1 名の記載で構いません 県 市 町 丁目 番 号 1 申請人特定非営利活動法人 2 県 市

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ver.2.2 特例有限会社 ( 解散, 清算人選任 ) 受付番号票貼付欄 特例有限会社解散及び清算人選任登記申請書 1. 会社法人等番号 分かる場合に記載してください フリガナ ショウジ 1. 商号 商事有限会社 商号のフリガナは, 会社の種類を表す部分 ( 有限

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オムロン株式会社定款 第 1 章総則 ( 商号 ) 第 1 条当会社は オムロン株式会社と称し 英文では OMRON Corporation と表示する ( 目的 ) 第 2 条当会社は 次の事業を営むことを目的とする (1) 電気機械器具の製造および販売 (2) 制御機器 コンピュータ等の電子応用

定 款 ( 平成 30 年 10 月 1 日変更 )

一般財団法人 日本万歩クラブ 定款

第 章各論第 節社会福祉法人 213 福 421) 評議員会を置く場合には 社会福祉法人の業務に関する重要な事項は 定款をもって 評議員会の議決を要するものと定めることができるとされていることから ( 社福 423) 議決方法 議決すべき事項 評議員資格 任期等について定める なお 監事は職務として

( 辞任の場合 ) 辞任届 通 ( 死亡の場合 ) 死亡届又は法定相続情報一覧図の写し 通 Ver.1.5 法定相続情報一覧図の写しについては, 法務局ホームページ 法定相続情報証明制度 について ( html

定款新旧対照表 ( 株式会社オーハシテクニカ ) 第 1 章総則 現行定款 第 1 章総則 下線は ( 下線部分は変更箇所を示す ) ( 商号 ) 第 1 条当会社は株式会社オーハシテクニカと称し 英文では OHASHI TECHNICAINC. と表示する ( 目的 ) 第 2 条当会社は 次の事

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社法の成立に伴い行われた法改正 ) により 10 万円を特定目的会社の最低資本金の額としていた最低資本金制度の規定は削除されたため 法律上は 特定資本金の額はいくらでもよい (1 円でもよい ) しかし 現在でも特定資本金の額を 10 万円としているケースが多い もっとも 資産の流動化に係る業務の終

記を見落とされている答案が多数にのぼりました 新株予約権の行使の条件 ( 登記事項です ) をよく読み, 新株予約権者について生じた事実 ( 本問の場合, 新株予約権者 Aの死亡 ) により, その一部が消滅していないかどうかに注意を払うようにしてください 次に,2の新株予約権行使については, 新株

株式取扱規則

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株式取扱規則

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株式会社の定款記載例 ( 大会社 ) Ⅳ 大会社 ( 株式公開 取締役会設置会社 委員会設置会社 会 計監査人設置会社 ) 大 株式会社定款 第 1 章総則 ( 商号 ) 第 1 条当会社は 大 株式会社と称し 英文ではDAI CO.,Lt d. と表示する ( 目的 ) 第 2 条当会社は 次の事

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定 款 株式会社 NTT ドコモ

( 事業年度 ) 第 6 条この法人の事業年度は 毎年 4 月 1 日に始まり翌年 3 月 31 日 に終わる ( 事業計画及び収支予算 ) 第 7 条この法人の事業計画書 収支予算書については 毎事業年度開始の日の前日までに 理事長が作成し 理事会の承認を受けなければならない これを変更する場合も

は, 理事会議事録については, 出席した理事及び監事全員の実印を押し, 全ての印鑑 について市町村長が作成した印鑑証明書を添付することが必要になります また, 都 道府県知事の認可を受けて 1 人の理事を置く医療法人, 又は, 社員総会若しくは評 議員会の決議により理事長を選出した場合にあっては,

申請人 代表取締役 連絡先の電話番号 法務局支局御中出張所

ver.2.0 株式会社 ( 公告方法の変更 ) 受付番号票貼付欄 株式会社変更登記申請書 1. 会社法人等番号 分かる場合に記載してください フリガナ 1. 商号 ショウジ 商事株式会社 商号のフリガナは, 会社の種類を表す部分 ( 株式会社 ) を除いて, 片仮

定款

代表権を有する者 ( 理事 ) の就任を承諾したことを証する書面 ( 就任承諾書 ) を添付します なお, 設立当初の役員は, 定款で定めなければならないことから, 選任機関によって理事が 選任されたことを証する書面は, 当該定款の添付で足ります 委任状 1 通 代理人に申請を委任した場合のみ必要で

役員及び会計監査人の選任に関する株主総会に関連し その議案は 通常の株主総会決議事項と同様に取締役会で決定するが 監査役や会計監査人の選任に関する議案については 監査役会の同意が必要であり ( 監査役に関し343Ⅰ Ⅲ 会計監査人に関し344Ⅰ) 場合によっては監査役会は取締役に対し監査役や会計監査

公益財団法人 日本航空協会 定款

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H18款】株式会社定款・取締役会+監査役

( 注 )1 債権者の異議申立書及び弁済金受領証書, 担保提供書又は信託証書等が該当しま す 2 異議を述べた債権者がいない場合には, 申請書に, 異議を述べた債権者はない と記載します 委任状 ( 注 ) 代理人に申請を委任した場合のみ必要です 1 通 上記のとおり登記の申請をします 連絡先の電話

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住友電気工業株式会社株式取扱規則

社員と役員と職員の違い イコール 議事録の記載例について解説する前に 社員 = 役員だと勘違いする人や 社員を 病医院の職員 ( 従業員 スタッフ ) と勘違いする人が非常に多いので 社員と役員と職員の違いについて解説いたします 下表は社員と役員と職員の違いをまとめたものです 社員医療法人の社員総会

株式取扱規則 昭和シェル石油株式会社

なお, 会議の席上で理事長が就任を承諾し, その旨の記載が選出書にある場合には, 申 請書に, 別途, 就任承諾書を添付する必要はありません この場合, 就任承諾書は, 設立時理事長選出書の記載を援用する と記載してください 資産の総額を証する書面 ( 注 ) 財産目録がこれに該当します 認可書 (

一般財団法人日本放送協会共済会定款 一部変更評議員会決議平成 ( 平成 施行 ) ( 名称 ) 第 1 章総則 第 1 条この法人は 一般財団法人日本放送協会共済会と称する ( 事務所 ) 第 2 条この法人は 主たる事務所 ( 本部 ) を東京都渋谷区に置く 2 この法

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発起人 定款作成認証 出資金の払込み 機関の具備 設立時役員による調査 株式会社の設立の手続 定款 商号目的発行可能株式総数 設立時役員等 資本金計上証明書 払込証明書 本人確認証明書 会社の設立と登記手続 設立の登記の申請 就任承諾書 選任決議書 代表取締役 登記所 登記申請書 商号 本店 目的

派遣添付書類一覧(30年1月訂正)

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会社定款記載例 定款記載例 ( 中小会社 1) Ⅰ 小規模会社 ( 非公開, 取締役 1 名, 監査役 会計参与非設置 ) 小 1 株式会社定款第 1 章総則 ( 商号 ) 第 1 条当会社は, 小 1 株式会社と称する ( 目的 ) 第 2 条当会社は, 次の事業を行うことを目的とする (1) の

公益財団法人秋田県林業公社定款 第 1 章総則 ( 名称 ) 第 1 条 この法人は 公益財団法人秋田県林業公社と称する ( 事務所 ) 第 2 条この法人は 主たる事務所を秋田県秋田市に置く 2 この法人は 理事会の決議により 従たる事務所を必要な地に置くことができる 第 2 章 目的及び事業 (

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定     款

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ver.1.5 株式会社 ( 本店移転 ( 管轄登記所外に移転する場合 )) ( 変更前の本店所在地を管轄する登記所宛ての申請書 ) 変更前の本店所在地宛ての申請書並びに変更後の本店所在地宛ての申請書 ( 代理人に申請を委任した場合は委任状も ) 及び印鑑届書は, 同時に, 変更前の本店所在地の登記

一般社団法人にじのひかり教室定款

( 事業年度 ) 第 6 条本会の事業年度は 毎年 4 月 1 日に始まり翌年 3 月 31 日に終わる ( 事業計画及び収支予算 ) 第 7 条本会の事業計画書及び収支予算書については 毎事業年度開始の日の前日までに 会長が作成し 理事会の承認を受けなければならない これを変更する場合も 同様とす

1. 登録免許税金 30,000 円 ver.1.3 ( 注 )1 件につき,3 万円です 収入印紙又は領収証書で納付します ( 収入印紙貼付台紙へ貼付 ) ( 支店があり, 本支店一括申請をする場合 ) 1. 登録免許税金 39,000 円 登録免許税の本店及び支店分の合計を記載します ( 内訳に

提出者名 : 電話番号 : 携帯番号 : このチェックリストは業務補助等報告書及び業務補助等証明書と併せてご提出ください 監査報告書写し も添付して下さい 業務補助チェックリスト 1. 提出用の2 部 ( 正本 写し ) は揃っていますか? 2. 返信用封筒 ( 切手貼付 宛名記載 ) は添付しまし

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西部瓦斯株式会社定款 第 1 章総則 ( 商号 ) 第 1 条当会社は 西部瓦斯株式会社と称し 英文ではSAIBU GAS CO.,LTD. と表わす ( 目的 ) 第 2 条当会社は 次の事業を営むことを目的とする 1. ガス事業 2. 熱供給事業 3. 電気供給事業 4. 液化天然ガス 液化石油

財団法人  徳島県社会保険協会寄附行為

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第 5 編総務の規程 ( 株式取扱規程 )0504- 総規 株式取扱規程 ( 昭和 35 年 01 月 01 日制定 ) ( 平成 24 年 04 月 1 日現在 ) 第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条当会社における株主権行使の手続きその他株式に関する取扱いについては, 株式会社証券保管振替機

行役員の任期は 現行規約第 17 条第 2 項の定めにより 平成 28 年 11 月 1 日より 2 年間となります ( 執行役員 1 名選任の詳細については 添付資料 第 2 回投資主総会招集ご通知 をご参照ください ) 3. 補欠執行役員 1 名選任について執行役員が欠けた場合又は法令に定める員

又は記名押印したもの 2 枚以上の場合には, 合わせてとじて当該書面に押印した印鑑で 契印します ) 等の本人確認証明書を添付します 詳しくは, 法務局ホームページ 商業 法人登記の申請書様式 ( moj.go.jp/homu/commerce 11-1.html

東京リーガルマインド 無断複製 頒布を禁じます 不動産登記法 一所有権保存 1 74 条 1 項 1 号保存 申請書 1 不登 74 条 1 項 1 号前段 登記の目的 所有者 所有権保存 市 町 丁目 番 号 A 添付書類住所証明情報 (A の住民票の写し ) 代理権限証明情報 (A の委任状 )

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規程No

株式取扱規程

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就業規則

定 款 東亞合成株式会社

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一般財団法人大阪府高等学校野球連盟定款 第 1 章総 則 ( 名称 ) 第 1 条この法人は 一般財団法人大阪府高等学校野球連盟と称する ( 事務所 ) 第 2 条この法人は 主たる事務所を大阪市に置く 第 2 章目的及び事業 ( 目的 ) 第 3 条この法人は 日本学生野球憲章に基づき 高等学校野

公益社団法人 大館法人会 定 款(案)


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取締役会規定

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2012

Transcription:

商業登記法宿題第 11 問解答例 問 1 登記の事由 取締役 代表取締役及び監査役の変更 平成 23 年 10 月 31 日取締役 A 同 B は任期満了により退任同日監査役 D は任期満了により退任 登記すべき事項 平成 23 年 11 月 27 日下記の者就任取締役 A 同 B 同 D 監査役 E 同日代表取締役 Bは資格喪失により退任 平成 23 年 11 月 28 日下記の者就任福岡市北区本町三丁目 2 番 1 号代表取締役 D 登録免許税額 金 1 万円 添付書面 定款 株主総会議事録 取締役及び監査役の就任承諾書は 株主総会議事録の記載を援用する 取締役会議事録 代表取締役の就任承諾書は 取締役会議事録の記載を援用する 印鑑証明書 4 通 委任状 問 2 登記すべき事項 代表取締役 A は平成 23 年 10 月 31 日資格喪失により退任 添付書面 定款

商業登記法宿題第 11 問解説 第 1 実体上の問題 1 取締役の変更 (1) 取締役 A,B,C の退任取締役の任期は, 選任後 2 年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであり, 定款で短縮することもできる ( 会社 332-1) この期間は, 公開会社でない株式会社においては, 定款をもって, 選任後 10 年内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸張することも可能であり, その場合は定款所定の任期に従うことになる 本問における展開本問では, 申請会社は公開会社であり, 定款に取締役の任期に関する別段の規定は設けられていないので ( 別紙 4 聴取記録 1), 登記されている取締役 A,B,C の任期は, 選任後 2 年以内に終了する事業年度のうち最終のもの ( すなわち, 平成 23 年 8 月 31 日に終了する事業年度 ) に関する定時株主総会の終結の時まで, ということになる 本問においては, 平成 23 年 8 月 31 日に終了する事業年度に関する定時株主総会が平成 23 年 11 月 27 日に開催され, 同日終結しているが, 申請会社の定款には, 当会社の定時株主総会は, 毎事業年度の翌日から 2 ヶ月内に招集する とあるため, 平成 23 年 10 月 31 日までに定時株主総会が開催されなければならないところ, 当該期間内に定時株主総会が開催されていないので, 取締役 A,B,C は平成 23 年 10 月 31 日に任期が満了して退任することになる なお, 本問では問題中に示された登記簿から,C のみ退任登記がなされているが, これは C が任期満了後 ( 権利義務取締役である間 ) の平成 23 年 11 月 10 日に死亡し ( 別紙 1 株主総会議事録参照 ), 権利義務取締役でなくなったために退任登記が可能となったものである 取締役会設置会社では, 取締役は 3 名以上必要であり ( 会社 331-Ⅳ),C の退任登記をすることによって, 登記簿上取締役の法定員数を欠くことになるが,C は死亡して権利義務を承継することはないため, 退任登記を申請しなければならない この場合,C の退任事由は, 問題中の登記簿から明らかなとおり ( 任期満了による ) 退任 であり, その日付は C の取締役としての任期が満了した日であり, 死亡の日ではないことに注意しなければならない C は本来の任期である平成 23 年 10 月 31 日の満了で実体上退任しており, 死亡により退任したのではなく, 平成 23 年 11 月 1 日から死亡までの間, 権利義務を承継していたために退任登記ができなかったに過ぎないからである 一方, 他の取締役 A,B については, 法定員数を満たす後任取締役が就任するまで, なお取締役としての権利義務を承継するので, 本問では, 後任として平成 23 年 11 月 27 日開催の定時株主総会で A,B,D が就任し, その旨の登記をするまで, 退任登記をすることができない 本問では, 後任取締役の就任登記と同時に従前の取締役のうち, 権利義務を承継していた A 及び B の退任登記を申請することになるが, 従前の取締役 A,B の退任の日付はあくまで任期満了した平成 23 年 1 0 月 31 日であり, 後任取締役が就任した平成 23 年 11 月 27 日にならないことは,C の退任日についての考え方と同様である (2) 取締役 A,B,D の就任取締役は, 株主総会の決議によって選任する ( 会社 329-Ⅰ) この決議は普通決議による ( 会社 309-Ⅰ) また, 株式会社と取締役との関係は, 委任の関係に従うので ( 会社 33 0), 取締役が就任を承諾した時に就任の効力が生じる ( 民 643) 本問における展開本問では, 議決権のある株主全員が出席した平成 23 年 11 月 27 日開催の株主総会で,A,B, D が満場一致をもって選任されており, 総会の席上で就任を承諾している ( 別紙 1 株主総会議事録第 2 号議案参照 ) よって, 取締役 A,B,D の就任の効力は, 平成 23 年 11 月 27 日に生じている なお, 新たに選任された取締役のうち,A,B はいずれも従来の取締役が再任されたものだが, 任期満了と再任との間に時間的間隔があるため, 重任 とならず, 平成 23 年 10 月 31 日退任 及び 平成 23 年 11 月 27 日就任 の登記を申請することになることは,(1) で示したとおりである 兼任禁止規定との関係

監査役は, 自ら監査役として就任している株式会社の取締役と兼任することができない ( 会社 335-Ⅱ) 取締役が自らの職務執行を監査することになれば, 適正な監査が行われることが期待できないからである もっとも, 兼任禁止規定が適用されるのは, 現に監査役の職務を行う者についてであって, かつて監査役であった者が当該会社の取締役に就任することを将来的に, かつ全面的に禁止するものではない 本問における展開別紙 1 第 2 号議案で取締役に選任された者のうち,D は問題中に示された登記簿に監査役として登記されている そこで, 監査役である D が取締役に就任することはできないとも考えられるが, 本問では,D は平成 23 年 10 月 31 日に退任しており ( もっとも, 平成 23 年 11 月 27 日に後任監査役 E が就任するまでは権利義務を承継している点に注意しなければならない ), かつ, 平成 23 年 11 月 27 日開催の定時株主総会で E が後任監査役として選任され, 就任しているので, 監査役の権利義務を承継することもなく,D が取締役に就任することは会社法 335 条 2 項の兼任禁止規定に抵触するものではない 2 代表取締役の変更 (1) 代表取締役 A の退任取締役会設置会社における代表取締役の退任事由は, 下記のとおりである 1 取締役としての地位の喪失 2 代表取締役のみの辞任 3 取締役会決議による解職本問における展開本問では, 登記された代表取締役 A は, その地位の基礎となる取締役の任期が平成 23 年 10 月 31 日に満了しており, 取締役を退任している ( ただし, 平成 23 年 11 月 27 日まで後任取締役が選任されなかったため, この間は権利義務取締役となる ) ので, 代表取締役となる資格を喪失している したがって, 代表取締役 A につき, 平成 23 年 10 月 31 日資格喪失により退任 の旨の登記を申請しなければならない なお, 代表取締役についても, 退任後, 後任の代表取締役が就任するまでは代表取締役の権利義務を承継することは, 取締役, 監査役と同様であり ( 会社 346-Ⅰ), 本問では, 後任代表取締役 B が就任した平成 23 年 11 月 15 日まで代表取締役としての権利義務を承継していた 問題中で示された登記簿では, 代表取締役 A の退任登記がなされていないが,B が後任代表取締役として就任したことにより,A は代表取締役の権利義務を承継しなくなるので, 代表取締役 B の就任登記と同時に代表取締役 A の退任登記もすべきであったところ, 申請会社では, 代表取締役 A の退任登記がなされずにいたものである 退任日については, 上記のとおり, 平成 23 年 10 月 31 日となる 後任代表取締役が就任した平成 23 年 11 月 15 日にならない点に注意しなければならない (2) 代表取締役 B の退任代表取締役の退任事由については,(1) 参照 本問における展開代表取締役 B は, 平成 23 年 11 月 15 日に就任している ここで注意しなければならないのは, B が権利義務取締役の地位を基礎として代表取締役に就任している点である すなわち,B が代表取締役に就任した時点では,B は取締役としての任期が満了しており, 取締役の権利義務を承継していたのである よって,B は, 権利義務取締役でなくなった時に, 代表取締役の地位の基礎を失い退任する 具体的には, 平成 23 年 11 月 27 日に後任取締役として A,B,D が就任することにより, 従前の取締役 A,B は権利義務取締役でなくなるため, 同日付で権利義務取締役の地位を基礎として就任していた代表取締役 B は資格喪失により退任する (3) 代表取締役 D の就任取締役会設置会社においては, 代表取締役の選定は取締役会の決議によって行う ( 会社 362 -Ⅱ3) この決議は, 議決に加わることができる取締役の過半数 ( これを上回る割合を定款で定めた場合は, その割合以上 ) が出席し, その過半数 ( これを上回る割合を定款で定めた場合は, その割合以上 ) をもって行う ( 会社 369-Ⅰ) また, 株式会社と役員との関係は, 委任に関する規定に従うことから ( 会社 330), 選定の効力は被選定者が就任を承諾することによって生

じる 本問における展開平成 23 年 11 月 28 日付取締役会において, 代表取締役として D が選定されている ( 別紙 2 取締役会議事録参照 ) また, 被選定者である D は席上就任承諾しているので, 同日付で D が代表取締役に就任することになる したがって, 代表取締役 D につき, 平成 23 年 11 月 28 日就任 の旨の登記を申請しなければならない 3 監査役の変更 (1) 参考 : 会社法の施行に伴う監査役の退任 1 監査役の権限監査役は, 取締役の職務の執行を監査する ( 会社 381-Ⅰ 以下この権限を 業務監査権 という ) ただし, 公開会社でない株式会社 ( 監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く ) は, 定款をもって監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる ( 会社 389- Ⅰ 以下この権限を 会計監査権 という ) 2 旧商法及び旧監査特例法における監査役の権限旧商法及び旧監査特例法 ( 正しくは 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律 平成 18 年 5 月 1 日の会社法施行に伴い廃止された ) では, 株式会社を小会社 ( 資本金の額が 1 億円以下で, かつ, 最終の貸借対照表に記載された負債の合計額が 200 億円以下の株式会社 ), 中会社 ( 資本金の額が 1 億円を超え 5 億円未満で, かつ, 最終の貸借対照表に記載された負債の合計額が 200 億円以下の株式会社 ), 大会社 ( 資本金の額が 5 億円以上, 又は, 最終の貸借対照表に記載された負債の合計額が 200 億円以上の株式会社 ) の 3 つに区分し, 小会社においては, 公開会社であるか否かに関わらず, 監査役の権限は会計監査権に限定されていた ( 旧商 274-Ⅰ, 旧監査特例 22 以下 ) 3 資本金の額が 1 億円以下の公開会社 ( 大会社を除く ) の監査役の退任上述のとおり, 旧商法の下においては, 小会社の監査役は, 公開会社であっても, その権限が会計監査権に限定されていたが, 会社法では, 公開会社でない株式会社に限り, 定款をもって監査役の権限を会計監査権に限定することができるのであって, 公開会社においては, たとえ資本金の額が 1 億円以下であっても, 監査役は当然に業務監査権を有するので, 定款をもってしても, その権限を会計に関するものに限定することはできない そこで, 旧商法の下での公開小会社の監査役の取扱いが問題となる そもそも, 会計監査権しか有していない監査役に自動的に業務監査権を付与するということになると, 会社の役員である監査役に, 株主総会の決議によることなく, 新たな権限を付与することになり, 妥当でない そこで, 公開小会社の監査役は, 会社法施行に伴い退任し, 改めて株主総会で業務監査権を有する監査役を選任しなおす必要が生じることになる (2) 監査役 E の就任監査役は, 株主総会の決議によって選任する ( 会社 329-Ⅰ) この決議は普通決議による ( 会社 309-Ⅰ) また, 株式会社と監査役との関係は, 委任の関係に従うので ( 会社 33 0), 監査役が就任を承諾した時に就任の効力が生じる ( 民 643) 本問における展開本問では, 議決権のある株主全員が出席した平成 23 年 11 月 27 日開催の株主総会で, 監査役 E が満場一致をもって選任されており, 総会の席上で就任を承諾している ( 別紙 1 株主総会議事録第 2 号議案参照 ) よって, 監査役 E の就任の効力は, 平成 23 年 11 月 27 日に生じている よって, 監査役 E につき 平成 23 年 11 月 27 日就任 の登記を申請することになる 第 2 登記手続問 1 (1) 取締役の変更本問においては, 平成 23 年 10 月 31 日に取締役 A,B の任期が満了したことによる退任の登記, 及び同年 11 月 27 日に取締役 A,B,D が就任したことによる変更登記をしなければならない なお, 既述のとおり, 任期満了と再任との間に時間的間隔が存在するため, 重任 とならな

い点に注意を要する (2) 代表取締役の変更本問においては, 平成 23 年 10 月 31 日に取締役 A が退任したことに伴い代表取締役の基礎となる地位を喪失したため, 同日付で代表取締役 A が資格喪失により退任した旨, 平成 23 年 11 月 27 日に取締役 B が取締役の権利義務を喪失したことに伴い代表取締役の基礎となる地位を喪失したため, 同日付で代表取締役 B が資格喪失により退任した旨ならびに平成 23 年 11 月 28 日に代表取締役 D が就任したことによる変更登記をしなければならない (3) 監査役の変更本問においては, 平成 23 年 10 月 31 日に監査役 D の任期が満了したことによる退任の登記, 及び平成 23 年 11 月 27 日に監査役 E が就任したことによる変更登記をしなければならない 問 2 第 1 の 2 で触れたとおり, 代表取締役 A は平成 23 年 10 月 31 日に資格喪失により退任しており, かつ, 同年 11 月 15 日に後任の代表取締役 B が就任しているので, 代表取締役 B の就任登記と同時に代表取締役 A の退任登記をすべきであったので, その登記申請に係る登記すべき事項及び添付書面を答えることになる なお, 本件では取締役としての A の任期が満了したことを明らかにする必要があるが, そのための書類としては, 取締役の任期及び定時株主総会の開催時期についての規定を明らかにする定款を添付すべきことになる 申請書作成上の注意点 (1) 登記の事由 取締役, 代表取締役及び監査役の変更 と記載する なお, 取締役の変更 代表取締役の変更 監査役の変更 と 3 行に区分して記載しても誤りとは言えないが, 役員変更登記として 1 つのグループなので,1 行でまとめて記載する方が望ましいだろう (2) 登記すべき事項取締役 A,B, 代表取締役 A,B, 監査役 D の退任, 及び取締役 A,B,D, 代表取締役 D, 監査役 E の就任した旨ならびにその年月日を, 解答例のように記載する なお, 取締役及び監査役については, 氏名のみが登記事項であり, 住所は登記事項とはならない ( 会社 911-Ⅰ17) (3) 登録免許税金 1 万円である ( 登免別表第一 24(1) カ ) (4) 添付書面 1 定款 ( 商登 54-Ⅳ) 平成 23 年 11 月 27 日開催の定時株主総会が, 定款所定の定時株主総会開催期間中に行われたものではないため, 取締役 A,B 及び監査役 D の退任時期 ( 事業年度と定時株主総会の開催期間の末日である平成 23 年 10 月 31 日 ) を証するために添付しなければならない なお, 定款所定の期間内に定時株主総会が開催されていないことを証する書面は, 添付を要しない 2 株主総会議事録 ( 商登 46-Ⅱ) 取締役及び監査役の選任を証する書面として, 別紙 1 の株主総会議事録を添付する 3 取締役の就任承諾書 ( 商登 54-Ⅰ) 取締役の就任は, 被選任者がその就任を承諾することにより効力が生じるので ( 民 643 参照 ), 就任承諾したことを証する書面を添付する なお, 本問では別紙 1 の株主総会議事録に A,B,D がそれぞれ席上就任した旨の記載があり, 申請会社は取締役会設置会社であるため, 商業登記規則 61 条 2 項の適用はなく ( したがって, 就任承諾を証する書面に実印の押印不要 ), 別紙 1 の株主総会議事録の記載をもって, 就任承諾書として援用することができる 4 取締役会議事録 ( 商登 46-Ⅱ) 代表取締役 D を選定したことを証する書面として添付する なお, 代表取締役 D が就任を承諾した旨が議事録の記載から明らかであるが, この議事録の記載をもって代表取締役の就任承諾を証する書面として援用することの可否については, 下記 5 及び 6 参照のこと 5 代表取締役 D の就任承諾書 ( 商登 54-Ⅰ) 代表取締役の就任は, 被選定者がその就任を承諾することにより効力が生じるので ( 民 643 参照 ), 就任承諾したことを証する書面を添付する なお, 本問では別紙 2 の取締役会議事録に D が席上就任承諾した旨の記載があり, かつ別紙 2 の取締役会議事録に D が個人の実印を押印してい

るため, 別紙 2 の議事録をもって, 代表取締役 D の就任承諾を証する書面として援用することができる 6A,B,D,E の印鑑証明書 ( 商登規 61-Ⅲ,Ⅳ) 取締役会設置会社において, 商業登記規則 61 条 3 項で同 2 項を読み替えて適用される代表取締役 D の印鑑証明書を添付する また, 代表取締役選定に係る取締役会議事録に押印された印鑑についての証明書 ( 商登規 61-Ⅳ) については, 出席者全員が市区町村届出印で別紙 2 の取締役会議事録に押印しており, 同項ただし書きの適用がないため, 出席者全員のものを添付しなければならない なお,D については, 商業登記規則 61 条 3 項,4 項の両規定により印鑑証明書の添付が求められることになるが, 登記申請書には両規定を根拠として印鑑証明書 を添付すれば足りるので, 添付すべき印鑑証明書の通数は A,B,D,E の各自のもの各 となり, 合計で 4 通添付することになる ここで注意しなければならないのは, 監査役の取締役会への出席義務についてである 本問では問われていなかったが, 公開会社でない株式会社 ( 監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く ) では, 定款をもって監査役の監査の範囲を会計に関する事項に限定することができ ( 会社 3 89-Ⅰ), その場合, 監査役は取締役会への出席権限及び義務を有しない ( 会社 389-Ⅶ, 同 383-Ⅰ) そのため, 登記簿上監査役設置会社とあっても, 公開会社でない株式会社で, かつ, 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社の監査役については, 代表取締役選定に係る取締役会議事録に添付すべき印鑑証明書の通数の算定にあたっては, 出席義務のある者として計算してはならないことになる 7 委任状 ( 商登 18) 本問のポイント 1 定時株主総会が定款所定の開催期間内に開催されなかったときは, 役員の任期が満了するのは, 定款の規定上定時株主総会を開催すべき最終日となる なお, この場合, 当該期間内に定時株主総会が開催され, 終結しなかったことを証する書面を添付する必要はない 2 権利義務取締役を代表取締役に選定することができる この場合, 選定された代表取締役は正規の代表取締役として扱われるのであり, 権利義務代表取締役となるのではない なお, この代表取締役が資格を喪失するのは, 法令又は定款所定の員数を満たす後任取締役が就任したことにより, 権利義務取締役がその権利義務を喪失した時であって, 後任代表取締役が就任した時になるのではない 3 取締役会設置会社において, 監査役に取締役会への出席義務があるのは, 会社法 2 条 9 号の監査役設置会社であり, 監査役の監査の範囲を会計に関する事項に限定している監査役設置会社では, 監査役に取締役会への出席義務 ( 権限 ) がない 4 取締役会設置会社において, 商業登記規則第 61 条第 4 項の印鑑証明書の通数の算定にあたっては, 監査役に取締役会への出席義務があるときは, 出席監査役のものも必要である