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Transcription:

序 文 フィリピン共和国 ( 以下 フィリピン と記す ) は東南アジアに位置し 面積約 30km 2 を誇り 大小合わせて7,109の島々から成る人口約 9,401 万人 (2010 年 ) の多島海国家です フィリピンは他のASEAN 諸国と比べ 妊産婦死亡率 (230/10 万出生 )(2005 年 ) 乳児死亡率(26/1,000 出生 )(2008 年 ) 5 歳未満児死亡率 (34/1,000 出生 )(2008 年 ) が依然として高く 改善に向けた取り組みが必要不可欠です 特に肺炎を中心とする重症呼吸器感染症は途上国において小児の死亡原因の25~30% を占める深刻な問題であり 国連ミレニアム開発目標 (MDGs) のゴール4(MDG4) に掲げられている 2015 年までに5 歳未満児の死亡率を1990 年の水準の3 分の1に削減する を達成するための重要課題のひとつとされています しかし ウイルス感染を含めたその実態はいまだに明らかになっておらず 早急な対応が求められています こうした状況にあって 2008 年 11 月にフィリピンより 地球規模課題対応国際科学技術協力事業として本要請があり 文部科学省 JST 外務省 JICAの4 機関が審査を行った結果 小児呼吸器感染症の病因解析 疫学に基づく予防 制御に関する研究プロジェクト が採択されるに至りました 本報告書は 上述の要請を受けて そのプロジェクトデザインを策定するために行った調査結果をまとめたものです 最後に 本調査の実施に際し ご協力 ご支援頂いた関係各位に深く感謝の意を表しますとともに 引き続き一層のご支援をお願いします 平成 22 年 12 月 独立行政法人国際協力機構人間開発部長萱島信子

目 次 序文目次地図写真略語表 事業事前評価要約表 第 1 章詳細計画策定調査の概要 1 1-1 調査団派遣の経緯と目的 1 1-2 調査団の構成 1 1-3 調査日程 2 1-4 主要面談者 2 第 2 章調査結果 4 2-1 調査結果詳細 4 2-2 団長所感 9 2-3 専門分野調査結果 10 2-3-1 研究総括担当 10 2-3-2 細胞学 ウイルス学 疫学担当 13 第 3 章プロジェクト実施の妥当性 16 3-1 妥当性 16 3-2 有効性 16 3-3 効率性 17 3-4 インパクト 17 3-5 持続性 18 付属資料 1. 討議議事録 (R/D) 21 2. 詳細計画策定調査団ミニッツ (M/M) 43

地 図 Manila Biliran Palawan Tacloban

写 真

略語表 略語 欧文 和文 AFTM Asian Foundation for Tropical Medicine アジア熱帯医学財団 ARI Acute Respiratory Infection 急性呼吸器感染症 ARMM Autonomous Region in Muslim Mindanao ムスリムミンダナオ自治区 BIHC Bureau of International Health Cooperation 国際医療協力局 BPH Biliran Provincial Hospital ビリラン州立病院 CARI Control of ARI(Acute Respiratory Infection) 急性呼吸器感染症対策 CHD Center for Health Department 保健省地方事務局 CHDEV Center for Health Development Eastern Visayas 保健省東ビサヤ地域局 C/P Counterpart カウンターパート CRA Collaborative Research Agreement 共同研究合意書 DHS Demographic and Health Survey 人口保健調査 DOH Department of Health 保健省 EVRMC Eastern Visayas Regional Medicine Center 東ビサヤ地域医療センター IMCI Integrated Management of Childhood Illness 小児疾患統合管理 IRB Institutional Review Board 審査委員会 JCC Joint Coordination Committee 合同調整委員会 JST Japan Science Technology Agency 独立行政法人科学技術振興機構 LPH Leyte Provincial Hospital レイテ州立病院 M/M Minutes of Meeting 協議議事録 ( ミニッツ ) MDG4 Millennium Development Goal 4 乳幼児死亡率の削減 ( 具体的な目標は 2015 年までに 5 歳未満児の死亡率を 3 分の 2 減少させる ) MDGs Millennium Development Goals ミレニアム開発目標 MTPDP Medium Term Philippine Development Plan フィリピン中期開発計画 NCDPC National Center for Disease Control 国家疾病予防対策センター NEC National Epidemiology Center 国立疫学センター NEDA National Economic and Development Authority 国際経済開発庁 NOH National Objectives for Health 国家保健目標 NRL National Reference Laboratory 国家レファレンス ラボラトリー NTP National Tuberculosis Control Program 結核対策向上プログラム ODA Official Development Assistance 政府開発援助 ONP Ospital ng Palawan パラワン州立病院

OPD Outpatient Department 外来診療部門 PCHRD Philippine Council for Health Research and Development フィリピン保健研究開発評議会 PCR Polymerase Chain Reaction ポリメラーゼチェーン反応 PDM Project Design Matrix プロジェクト デザイン マトリックス PIDSR Philippine Integrated Disease Surveillance and Response PO Plan of Operations 活動計画 R/D Record of Discussions 討議議事録 RHU Rural Health Unit 町保健所 症候群サーベイランス RITM Research Institute for Tropical Medicine フィリピン熱帯医学研究所 SWAp Sector-Wide Approach セクター ワイド アプローチ UNICEF United Nations Children's Fund 国連児童基金 WG Working Group ワーキンググループ WHO World Health Organization 世界保健機関

事業事前評価要約表 1. 案件名 ( 国名 ) 国名 : フィリピン共和国案件名 : ( 和 ) 小児呼吸器感染症の病因解析 疫学に基づく予防 制御に関する研究プロジェクト ( 英 )The project for Comprehensive Etiological and Epidemiological Study on Acute Respiratory Infections in Children: Providing Evidence for the Prevention and Control of Childhood Pneumonia in the Philippines 2. 協力概要 (1) 事業の目的乳幼児死亡率が出生 1,000 当たり 34 と依然として高く 肺炎が乳幼児死亡原因の第 1 位を占めるフィリピン共和国 ( 以下 フィリピン と記す ) において フィリピン熱帯医学研究所 (Research Institute for Tropical Medicine:RITM) と東北大学が共同の下に 小児肺炎の病因 疫学の全体像の解明 小児肺炎の疾病負担 重症化リスクの詳細な解明及びそれらに基づいた介入研究を行い 効果的な治療 予防策の検討につなげていくことをめざしている これらの共同研究を通じて RITM 及び地方病院における研究能力の強化を図ることを目的とする 具体的には 2008 年より東北大学が文部科学省の 新興 再興感染症研究拠点形成プログラム で先行研究を行ってきた東ビサヤ地域 ( 第 8 地域 ) のタクロバン市を含むレイテ州に加え 同地域のビリラン州 ミマロパ地域 ( 第 4B 地域 ) のパラワン州をモデルケースとし フィリピン国内の地域格差を考慮したうえで研究サイトを設置し 病因及び疾病負担 重症化因子の詳細な検討を行う予定である 小児肺炎分野の研究で先駆的な役割を果たしてきた RITM と共同で研究することにより フィリピン全土 ひいては途上国全体の小児肺炎対策に資する知見を生み出すことが期待されている (2) 協力期間 2011 年 4 月 ~2016 年 3 月 (5 年間 ) (3) 協力総額 (JICA 側 ) 約 4.1 億円 内訳については 後述の 4.(3)-1) 参照 (4) 協力相手先機関フィリピン熱帯医学研究所 (RITM) (5) 国内協力機関東北大学大学院医学系研究科 (6) 裨益対象者及び対象地域 RITM 研究者 各地方サイトの関連病院の保健医療従事者 各地方サイトの町保健所 (Rural Health Unit:RHU) 保健医療従事者 i

3. 協力の必要性 位置づけ (1) 現状及び問題点フィリピンでは 近年の経済成長により 乳幼児死亡率 妊産婦死亡率の低下 低体重児の減少 出生時平均余命の伸長等 保健状況の改善がみられる 乳幼児死亡率は 長年にわたり低下傾向にあったが 1980 年代に改善速度が低下し その後停滞状況にある 2008 年の乳幼児死亡率は出生 1,000 当たり 34 と マレーシア タイ等東南アジアの近隣諸国と比較していまだ高い水準にとどまっている 一方 世界の乳幼児死亡の最大の原因は肺炎であり 乳幼児死亡全体の 19% を占め 毎年約 200 万人の子どもが肺炎により死亡している 1 フィリピン国内では 約 82,000 人の乳幼児死亡 (2008 年 ) のうち 約 20,000 人が肺炎によるものであり 肺炎が死亡原因の第 1 位となっている 2 UNICEF WHO 等の国際機関が中心となり 肺炎による乳幼児死亡を減少させるための対策も行われてきたが 従来のアプローチでは 病因診断は行わず 症状から重症度を判定し 重症患者にはなるべく早期に投薬を行う対応が中心であった 小児の呼吸器感染症への対策は 20 年近く前のデータに基づいて行われており 近年重症化を引き起こす原因であることが明らかになってきたウイルス感染症に対する対策がほとんど行われていないこと また 途上国でも急速に増加している薬剤耐性菌への対応ができていないとの指摘があることから エビデンスに基づく小児呼吸器感染症に対する戦略の見直しが必要となっており 最新のデータを得るための研究の実施が求められている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけフィリピン国政府は さまざまな開発課題に取り組むため フィリピン中期開発計画 (Medium Term Philippine Development Plan:MTPDP)2004~2010) を策定し 保健サービスへのアクセス向上と 質の良い社会サービスの提供が社会正義の実現と国民の基本的なニーズに応えるために不可欠だとしている フィリピン保健省 (Department of Health:DOH) では 地方分権の下に保健システム強化をめざしており 2005 年に保健セクター改革の枠組みとして FOURmula One for Health(F1) 現在は Universal Health Care (2010 年 12 月 16 日付 ) が発効 政策を策定した これは フィリピンの保健システムを効率 効果 公平 公正の観点から 財政基盤の強化 アクセスの改善 サービスの質向上 保健行政強化の 4 つの分野で改革を推進するものである さらに F1 の基本的な考え方や指標 戦略等を示すためのロードマップとして 国家保健目標 (National Objectives for Health:NOH) 2005~2010 を策定した NOH では 生活習慣病等の非感染症疾患が台頭し フィリピン国民の主要な死因となっているとしつつも 感染症は依然として重要な疾患であるとしており 結核 HIV/ エイズ マラリア デング熱等とともに 肺炎とその他呼吸器感染症の予防とコントロールに関する具体的な目標が示されている DOH では 2011 年以降に向けて NOH の新しいバージョンを作成中であり 感染症対策一般及び肺炎 その他呼吸器感染症対策が引き続き盛り込まれる予定である (3) 他の援助機関の対応フィリピンの保健セクターでは セクター ワイド アプローチ (Sector-Wide Approach: SWAp) が採用されており 乳幼児死亡に関する MDG4 国連ミレニアム開発目標 (MDGs) 1 UNICEF/WHO Pneumonia:The Forgotten Killer of Children, 2006 2 Essential Newborn Care:The DOH /WHO Protocol, 2010 ii

のゴール 4 に関しては 過去 10 年以上にわたって達成に向けたドナー間の調整 情報交換が行われている また WHO フィリピン事務所では 本プロジェクトの活動地でもあるレイテ州タクロバン市で新生児の死亡低減プロジェクトを実施中であり 情報交換等連携の可能性がある 感染症対策では 世界エイズ 結核 マラリア対策基金 による 結核 マラリア HIV / エイズの主要三大感染症 米国による結核及び HIV/ エイズ対策支援 WHO による新型インフルエンザ対策支援などが主要な取り組みとなっている (4) わが国援助政策との関連 JICA 国別事業実施計画上の位置づけ ( プログラムにおける位置づけ ) ODA 大綱では 重点課題のひとつである 貧困削減 に取り組むために 保健医療 分野の協力を重視するとしている 日本政府の国別援助計画では 対フィリピン経済協力の重点課題を 1 雇用機関の創出に向けた持続的経済成長 2 貧困対策 3 ミンダナオにおける平和と安定 としており 2 の貧困対策を実現するために 基礎的社会サービスの拡充 ( 貧困層をとりまく生活環境の改善 ) を重点分野ととらえている その方策のひとつとして感染症対策を重視するとしており この点で本プロジェクトは日本の援助政策とも整合性を保っている これまで JICA は 1979 年 1987 年に無償資金協力で本プロジェクトのフィリピン側実施機関である RITM の建設 拡充に関する協力を行った 続いて RITM が創立された 1980 年から 1988 年まで 技術協力プロジェクト 熱帯医学研究所プロジェクト により研究従事者の人材育成 熱帯病研究及び研究成果の応用への協力を通じて RITM の機能強化に貢献してきた また 2000 年には RITM 内に国立結核研究所設立のための無償資金協力を実施した 加えて 1992 年から 1997 年にかけてセブ州で 結核対策プロジェクト を実施し WHO との連携の下 DOH が策定した結核対策向上プログラム (National Tuberculosis Control Program:NTP) の質の高い実施をめざし 結核対策の実施モデルを確立し セブ州を含む第 7 地域 ルソン島の 4 州 東サマール州に拡大した さらに 2002 年から 2007 年には 結核対策向上プロジェクト を実施し上記の活動の全国展開を支援するなど フィリピンでの感染症分野での支援を行ってきた 2010 年より本案件と同じ 地球規模課題に対応する科学技術協力 事業として フィリピン大学マニラ校公衆衛生学部と九州大学大学院医学研究院との共同でレプトスピラ症の感染実態の把握 DNA ワクチンの開発 啓発活動等を行う レプトスピラ症の予防対策と診断技術の開発プロジェクト を実施している 4. 協力の枠組み 主な項目 (1) 協力の目標 < プロジェクト目標 > 小児肺炎の病因 疾病負担 リスク要因が明らかになり 小児肺炎による死亡を低減させるための有効な介入が確認される (2) 成果 ( アウトプット ) と活動 1) 成果 1: 選定されたサイトで小児肺炎 呼吸器感染症の病因が測定される < 指標 > 4 カ所のセンチネル サイトで細菌性 ウイルス性病原体が確認され その構成比が明らかになる iii

4 カ所のセンチネル サイトで 確認された病原体と検出された小児重症肺炎の関連が明らかになる < 活動 > 1-1. 選定された公立病院で病因研究のための適切な検査体制を整備する 1-2. 小児肺炎の病因を検出 同定 解析するための RITM の能力を強化する 1-3. 選定された第 1 次医療施設に病因研究のためのセンチネル サイトを設置する 1-4. 肺炎 他の呼吸感染症の小児の細菌性 ウイルス性病原体の検体を収集し 検査する 1-5. センチネル サイトでの検体の収集 検査をモニタリングする 2) 成果 2: 選定されたサイトで小児肺炎による疾病負担が測定される < 指標 > 小児重症肺炎と小児肺炎による死亡の発生率を少なくとも 2 カ所のコミュニティで測定する < 活動 > 2-1. 肺炎と 肺炎に関連する死亡の発生率を測定するための方法論を確立する 2-2. 肺炎と 肺炎に関連する死亡の発生率を測定するためのデータを解析する 3) 成果 3: 小児の重症肺炎のリスク要因が同定される < 指標 > 重症肺炎と死亡のリスク要因 患者側の要因 ( 病因 人口統計等 ) が調査され 同定される < 活動 > 3-1. 統合されたデータベースを整備し 管理する 3-2. 病因研究 疾病負担研究のデータを利用し リスク要因を明らかにする 4) 成果 4: 小児肺炎による死亡を減少させるための介入が評価される < 指標 > 小児肺炎による死亡を減らす結果をもたらすエビデンスが発見される < 活動 > 4-1. 病因 疾病負担 リスク要因に関する研究結果に基づき 小児肺炎による死亡を低減させるための介入研究の方法が開発される 4-2. 小児肺炎の現行の戦略を見直すため 国 地方の関係者と協働する 4-3. 選定されたコミュニティで介入研究を実施する 4-4. 小児肺炎の負担を低減させるための新しい戦略を評価するため 国 地方の関係者と協働する 5) 成果 5: 小児肺炎対策戦略の改善 刷新のため 研究成果が発表される < 指標 > 国 地方の関係者に推薦するための 改善版介入パッケージが開発される < 活動 > 5-1. 研究成果を普及させるための会議やワークショップを開催する 5-2. 国際的な学会や学術誌を通じ 研究成果を普及させる 5-3.DOH の国家急性呼吸器感染症対策 (Control of ARI:CARI) プログラムに対し 研究による発見を政策策定のための情報として提供し 助言をする iv

(3) 投入 ( インプット ) 1) 日本側 ( 総額約 4.1 憶円 ) a) 専門家派遣 長期専門家 ( 業務調整 :1 名 )(0.43 億円 ) 短期専門家 ( チーフアドバイザー 公衆衛生 ウイルス学 細菌学 疫学 : 計 5 名 ) (1.58 億円 ) b) 供与機材 (0.54 億円 ) c) 研修員受入れ ( 本邦研修 )(0.44 億円 ) d) 在外事業強化経費 (1.12 億円 ) 2) フィリピン側 a) カウンターパート (Counterpart:C/P) の配置 b) 事務所スペースの提供 c) 光熱水費 d) モニタリングに係る出張費の一部負担 (4) 外部要因 ( 満たされるべき外部条件 ) 1) 成果達成までの外部条件 病院 地方政府からの支援が得られること 2) 前提条件 個々の研究活動開始までに RITM 東北大学 東ビサヤ地域医療センター (Eastern Visayas Regional Medicine Center:EVRMC) パラワン州立病院 (Ospital ng Palawan:ONP) ビリラン州立病院 (Biliran Provincial Hospital:BPH) 保健省東ビサヤ地域局 (Department of Health - Center for Health Development Eastern Visayas:DOH-CHDEV) の内部審査委員会から研究承認を得る 各地方自治体の長にプロジェクトについて告知する プロジェクトが各関連病院長からの理解と協力を得る 5. 評価 5 項目による評価結果 (1) 妥当性本プロジェクトは以下の点において妥当性が高いと考えられる 1) フィリピン保健医療政策との整合性フィリピン政府は MDGs 達成に積極的に取り組んでおり MDGs が国の開発政策であるフィリピン中期開発計画 (MTPDP 2004~2010) に取り込まれている MTPDP の下 MDGs 達成に向けた政策 戦略が実施されているほか 達成状況のモニタリングも密に行われている 乳幼児死亡に関する MDG4 については 乳幼児死亡率 乳児死亡率とも低下しており このまま順調に低下が進めば 2015 年に向けた目標 ( それぞれ 26.7 17.0) が達成される見込みであるが 地域間格差が依然大きい DOH は 地方分権の下での保健セクター改革の枠組みとして FOURmula One for Health(F1) 政策を策定するとともに 同政策のロードマップを示す 国家保健目標 (NOH) 2005~2010 を策定し その中で感染症はいまだ重要な疾患であることを示している また 結核 HIV/ エイズ マラリア デング熱等の感染症とともに 肺炎とその他呼吸器感染症の予防とコントロールに関する具体的な目標を掲げている 本プロジェクトは 研究活動を通じて小児呼吸器感染症の重症化要因を明らかにするとともに フィリピンにおいて有効な小児肺炎の治療 予防策の検討を行うものであり フィリピン政府の保健政策に合致する内容となっている v

2) 相手国ニーズとの整合性フィリピンでは年間約 20,000 人の乳幼児が肺炎により死亡し (2008 年 3 乳幼児の死亡原因の第 1 位となっている しかしながら 従来のアプローチでは病因診断は行わず 患者の症状から重症度を判定し なるべく早期に投薬を行う対応が中心であったため 最新のデータによるエビデンスに基づく小児呼吸器感染症の見直しが課題となっている よって本プロジェクトではフィリピン側の研究 調査能力の強化 疾病負担調査 介入調査等を通じてエビデンスに基づく小児呼吸感染症対策を提案することとしており フィリピン側のニーズに合致しているといえる (2) 有効性本プロジェクトは 以下の点で有効性が高いといえる 1) プロジェクト構成の論理性プロジェクト目標は 小児肺炎の病因 疾病負担 リスク要因が明らかになり 小児肺炎による死亡を低減させるための有効な介入が確認される となっており 目標達成のために 5 つのアプローチが設定されている これらは 各アプローチの成果に基づいて次の活動が展開できるよう 時系列の活動となっている また これら一連の活動を通じて RITM 地方サイトの研究者 / 保健医療従事者の小児肺炎 呼吸器感染症のデータ収集能力 研究能力も向上されるように設計されており プロジェクト目標達成のために有効なアプローチであると考えられる (3) 効率性本プロジェクトは 主に以下の点で効率性が高いと判断される 1) 投入 スケジュール面の効率性専門家の構成は 複数の短期専門家と 比較的長期 (1 年未満 ) にフィリピンに滞在する専門家の組み合わせであり 短期専門家が各自の専門領域に関する助言 アドバイス等を中心に行う一方 長期滞在する専門家が地方サイトを含む研究現場で日常的な技術指導にあたる相互補完的な活動計画となっている C/P の能力向上のため 本邦研修の組み合わせも予定されており 投入 スケジュール面での効率性が高く保たれる可能性が高いといえる 2) 先行研究プロジェクトの成果 リソース等の有効活用 2.(1) で既述のとおり 東北大学 -RITM 新興 再興感染症共同研究センターにおいて 2008 年 4 月より先行の共同研究が行われている 先行研究では 本プロジェクトの国内協力機関である東北大学が RITM における拠点の整備のため 研究の C/P となる RITM の各部門の研究体制強化 人材育成を行ってきている 本プロジェクトの地方サイトでもある EVRMC においても先行研究が行われており 研究体制が強化された これらの研究成果 人材 システム等をベースに本プロジェクトを実施する予定であり 既存のリソースの活用という点で効率性が確保できる見通しである (4) インパクト本プロジェクトのインパクトは以下のとおり予測できる 1) 政策上のインパクト本プロジェクトでは 小児肺炎及び呼吸器感染症の病因 疾病負担 リスク要因が明 3 Essential Newborn Care:The DOH /WHO Protocol, 2010 vi

らかにされるほか 小児肺炎による死亡を減少させるための介入研究が実施され 各介入の有効性について検討されることになっており それらの研究結果を含めた本プロジェクトの成果が DOH や WHO が将来小児肺炎対策として具体的なアクションを起こすための材料として活用されることが期待できる そのために 政策決定者へ活動の成果を提示していくことが重要である フィリピンでは肺炎が乳幼児死亡原因の第 1 位となっており 本プロジェクトの研究成果を基に有効な対策がとられることにより フィリピンの乳幼児の死亡率低下に寄与し MDG4 の達成に貢献することが期待される 2) フィリピン側関係機関のその他感染症対策の能力向上 RITM 各地方サイトの関連病院等における検体収集のノウハウ確立 病原体検出システム強化等が行われる予定であり これらの能力向上により 将来的には小児の肺炎 呼吸器感染症のみならず 他の感染症対策にも生かされる可能性があると考えられる (5) 持続性本プロジェクトの持続性は 以下のとおり予測できる 1) 政策面本プロジェクトにより 肺炎とその他呼吸器感染症の病因 疾病負担 リスク要因等が明らかになることで DOHが小児呼吸器感染症に関する具体的な政策の立案に動き出すことが期待される 2) 組織面 人材面 技術面 RITMは創立翌年の1981 年から急性呼吸器感染症 (Acute Respiratory Infection:ARI) 研究プログラムを開始し 研究テーマや手法は変遷してきたが 現在に至るまで同プログラムの下で研究活動が継続されており 現在 9 名の研究員がかかわっている これらの実績により ARI 研究プログラムの研究体制は既に構築されているため 組織 人材面での持続性には問題がみられない さらに 本プロジェクトの活動により 地方サイトの医療機関と提携し 地方におけるデータ収集 分析や介入研究の能力が向上することで フィリピン各地での研究活動の継続が可能となる 3) 財政面 RITMでは WHO 等の国際機関 二国間援助機関等と共同研究を行っており 研究費用が供与されている 本プロジェクト終了後もARI 研究プログラムに対する予算を確保することが望ましい 一方でプロジェクト実施期間の後半には 実験機材の維持費等 必要な経費の試算を行い これらのコストを継続してカバーしていく計画を検討する必要がある 6. 貧困 ジェンダー 環境等への配慮小児肺炎の社会 経済的な重症化リスク要因として 栄養不良による抵抗力の低下 貧困のため肺炎 呼吸器感染症に感染した場合に適切なタイミングで受診し 治療 投薬を受けられないケースが想定されている これらのリスク要因は貧困層に当てはまるものであり これら要因を低減させるための介入研究が行われ 対策に結びつけば 貧困層の負担軽減につながる可能性が想定される 7. 過去の類似案件からの教訓の活用 地球規模課題に対応する科学技術協力 事業は 2008 年度に新設された事業であり わが国の科学技術力向上とともに 途上国側の研究能力向上を目的としている ただし 活動の主体は研究ベースであるという特殊性があり 過去の案件から得られた教訓で本案件に対し vii

て直接応用できるものは限られている しかし 2009 年に採択されたフィリピン国 レプトスピラ症の予防対策と診断技術の開発プロジェクト に関しては 本案件と同じフィリピンを対象としたものであり プロジェクトの実施体制 研究の倫理面 承認体制 バイオセーフティー対策等の経験は活用できる その他 フィリピンにおける研究プロジェクトとしては 1980 年から 7 年半にわたり協力が実施され 本案件と同じ RITM を実施機関とする フィリピン国熱帯医学研究所プロジェクト で フィリピン及び周辺地域に蔓延する熱帯病 ( ジフテリア 百日咳 下痢性疾患等 ) ARI の疫学 細菌学 免疫学及び予防法に関する研究とこれら研究活動に従事する人材の育成を通じて 研究所の機能強化に貢献した 本プロジェクトでは基礎研究のみならず 研究結果をフィリピンの国内外で発表 共有するための活動が設定されており 政策決定者との十分な情報共有を行うことにより 将来的には研究成果を基に DOH の小児肺炎への対策戦略が刷新されることをめざしている また 研究結果を広く共有 普及することで 本プロジェクト終了後も ARI 研究プログラムに対する予算が確保されることが期待される 8. 今後の評価計画 中間レビュー 終了時評価 2013 年 7 月頃 2015 年 6 月頃 viii

第 1 章詳細計画策定調査の概要 肺炎を中心とする重症呼吸器感染症は途上国において小児の死亡原因の25~30% を占める深刻な問題であり 国連ミレニアム開発目標 (Millennium Development Goals:MDGs) のゴール4(MDG4) に掲げられている 2015 年までに5 歳未満児の死亡率を1990 年の水準の3 分の1に削減する を達成するための重要課題のひとつである しかし ウイルス感染を含めたその実態はいまだに明らかになっておらず さまざまな努力にもかかわらず今も世界中で約 200 万人の小児が肺炎により毎年死亡していると推計されており 小児の肺炎の95% が途上国において発生している かかる状況の下 フィリピン共和国 ( 以下 フィリピン と記す ) より地球規模課題対応国際科学技術協力事業として 小児急性肺炎を対象とした包括的疫病学調査プロジェクト が要請され これと並行して国内研究協力機関である東北大学より独立行政法人科学技術振興機構 (Japan Science Technology Agency:JST) に対し研究申請が行われた これを受け 同事業に携わる文部科学省 JST 外務省 JICAの4 機関が審査を行った結果 小児呼吸器感染症の病因解析 疫学に基づく予防 制御に関する研究プロジェクト が2010 年度案件として採択されるに至った 本プロジェクトは 乳幼児死亡率が出生 1,000 当たり34と依然として高く 肺炎が乳幼児の死亡原因の第 1 位を占めるフィリピンにおいて 同国の実施機関であるフィリピン熱帯医学研究所 (Research Institute for Tropical Medicine:RITM) とわが国の東北大学が共同して 1フィリピンにおける小児肺炎の病院 疫学の全体像の解明 2 小児肺炎の重症化因子の詳細な解析 及びそれに基づいた効果的な治療 予防策の検討 を行うものである また これらの共同研究を通じて 3RITM 及び地方病院における研究能力 特にオペレーショナルリサーチに関する基盤の強化 を図ることを目的とする 本詳細計画策定調査においては 上記研究の内容に関し フィリピンの実施機関からの協力要請の背景 内容を確認し 先方政府関係機関との協議を経て 協力計画 ( プロジェクトデザイン ) を策定する また 本プロジェクトは 文部科学省による新興 再興感染症研究拠点形成プログラムにおいて東北大学がRITMと進めてきた研究活動の延長線上に位置づけられる一方で JICA JSTがかかわって進める新たな共同事業であるため 先方関係者から本新事業に対する理解を得るものとする さらに 先方実施体制の確認等を行い 当該プロジェクトの事前評価を行うために必要な情報を収集 分析することを目的とする 担当業務氏名所属期間 (2010 年 ) 団長 / 総括 北林春美 JICA 人間開発部課題アドバイザー 8 月 9~18 日 研究総括 押谷仁 東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授 8 月 9~18 日 細菌学 ウイルス学 疫学 鈴木陽 東北大学大学院医学系研究科微生物学分野助教 8 月 9~17 日 協力企画堀井由香里 JICA 人間開発部保健第三課職員 8 月 9~18 日 評価分析小林美紀特定非営利活動法人 HANDS 8 月 9~18 日 -1-

研究企画 ( オブザーバー ) 研究調整 ( オブザーバー ) 庵原俊昭国立病院機構三重病院長 8 月 9~15 日 斉藤恵子 JST 地球規模課題国際室調査員 8 月 9~18 日 * 東北大学の玉記雷太助教は タクロバンにて調査団に参加予定 (8 月 13~14 日 ) 現地調査期間 :2010 年 8 月 9~18 日 (10 日間 ) 日活動マニラ着 8 月 9 日 ( 月 ) JICAフィリピン事務所 8 月 10 日 ( 火 ) RITM 視察 協議 8 月 11 日 ( 水 ) 国際経済開発庁 (NEDA) 表敬 WHOフィリピン事務所保健省 (DOH) 国家疾病予防対策センター(NCDPC) 国際医療協力局(BIHC) 8 月 12 日 ( 木 ) RITM 協議 8 月 13 日 ( 金 ) マニラ タクロバン DOH 東ビサヤ地域局 (CHDEV) 表敬東ビサヤ地域医療センター (EVRMC) タクロバン ビリランビリラン州知事表敬ビリラン州立病院 (BPH) カブガヤン町保健所 (RHU)/ アルメリア町保健所 (RHU) EVRMC 小児科病棟視察 8 月 14 日 ( 土 ) タクロバン マニラ 8 月 15 日 ( 日 ) ミニッツ (Minutes of Meeting:M/M) 案作成 8 月 16 日 ( 月 ) RITM PDM PO M/M 案協議 8 月 17 日 ( 火 ) M/M 署名日本大使館報告 JICAフィリピン事務所報告 8 月 18 日 ( 水 ) 帰国 <フィリピン側 > (1) フィリピン熱帯医学研究所 (RITM) Remigio M. Olveda 所長 Socorro P. Lupisan 副所長 Hazel O. Galang ウィルス部長 Lydia T. Sombrero 微生物部スーパーバイザー Edelwisa S. Mercado 分子解析研究室長 Maria Rosa A. De los Reyes 医療部長 -2-

(2) 国際経済開発庁 (National Economic and Development Authority:NEDA) Dune Aranjuez 社会開発スタッフ経済専門家 Kathleen Virtusio 公共投資スタッフ経済専門家 (3) 世界保健機関フィリピン事務所 (World Health Organization - Philippine Country Office) Howard Sobel メディカル オフィサー (4) 保健省 (Department of Health:DOH) Mar Wynn Bello Beth Joven 国際医療協力局 (Bureau of International Health Cooperation: BIHC) メディカル オフィサー VII 国家疾病予防対策センター (National Center for Disease Control:NCDPC) 保健プログラム 家族保健スーパーバイザー (5) 保健省東ビサヤ地域局 (DOH - Center for Health Development Eastern Visayas:CHDEV) Edgardo Gonzaga 第 8( 東ビサヤ ) 地域局長 Minerva P. Molon 第 8 地域次長 Nicolas Bautista 第 8 地域感染症専門家 (6) 東ビサヤ地域医療センター (Eastern Visayas Regional Medical Center:EVRMC) Alberto C. De Leon Flora A. De La Pena Rhodora V. Angulo 病院長検査部長小児科部長 (7) ビリラン州 Rogelio J. Espina Alfonso I. Veneracion 州知事州保健局長 (8) ビリラン州立病院 (Biliran Provincial Hospital:BPH) Edgar T. Veloso 病院長 < 日本側 > (1) 在フィリピン日本大使館小川祥子 二等書記官 (2)JICAフィリピン事務所松田教男岩上憲三岩瀬誠山岸信子 Sealdi Calo 所長次長所員プログラム調整員ナショナル スタッフ -3-

RITM RITM EVRMC JCC PCHRD WG JICA NEDAJST WG JCCWG The Project for Comprehensive Etiological and Epidemiological Study on Acute Respiratory Infections in Children Providing Evidence for the Prevention and Control of Childhood Pneumonia in the Philippines M/M M/M EVRMC EVRMC PCHRD PCHRD JCCNEDA DOHNCDPCBIHC Center for Health DepartmentCHD RITM CHD 4

JST 5 To reduce mortality and morbidity of childhood pneumonia through the comprehensive etiological and epidemiological assessment Research and development capacity of RITM on childhood pneumonia are improved through the collaborative research.. Functional laboratory based surveillance for respiratory pathogens in the Philippines. Selected laboratory sites with capability to diagnose important bacterial pathogens causing childhood pneumonia. RITM NRL with capability to perform new laboratory procedures in bacteriology and virology for the diagnosis of childhood pneumonia. For the Control Program, 4-1 Functional referral system for pneumonia from the health center to the referral hospital 4-2 Determination of the burden of pneumonia in children under 5 years old. For the prevention of the disease in children, Record of DiscussionsR/D R/D 5 M/M Project Purpose Etiology, disease burden and risk factors of childhood pneumonia are defined and effective interventions to reduce mortality due to pneumonia in children are validated.. Etiological studies Etiology of childhood pneumonia and respiratory infections in the selected sites is determined.. Disease Burden studies Disease burden due to childhood pneumonia is measured in the selected sites.. Risk Factor Analysis Risk factors for severe pneumonia in children are identified.. Intervention Studies Interventions to reduce mortality due to childhood pneumonia are evaluated.. Dissemination of the study results Study results are presented for modifying/ updating strategies for the control of childhood pneumonia. RHU 5

5-1 Burden of S pneumonia, H influenza type B, influenza, RSV and other important viruses in children under 5for vaccine recommendations 5-2 Identification of risk factors for morbidity and deathfor health education messages and other interventions 2 1-1.EVRMC 1-2. 1-3. 2Provincial hospital 3 PCHRDRITM CHD RITM DOH Asian Foundation for Tropical MedicineAFTM DOHWHO EVRMCOspital ng PalawanONPBPHRITM 4 Rural Health UnitRHU 1 RITM 1 RITM Institutional Review Board IRB AFTMJICA JICA DOHRITMCHDEVRMC 6

CounterpartC/P C/P Project Design MatrixPDM Plan of OperationsPO 1 JICA RITM DOH DOH M/M Collaborative Research Agreement CRA M/M M/M CRA M/M M/M JICA AFTM JICA IRBJICA JICA M/MAnnex M/M 5 7

12 22 22 1 M/MAnnex R/D WHOIntegrated Management of Childhood IllnessIMCI DOH DOH DOH 2010 11 JICA 2011 1 RITMCRA JICARITMDOHR/D PDMPO A1A4 2 JST JICA 8

520 1 200MDG4 20155199031 5 20199019931,000542004200834 2 200882,00020,000 3 Acute Respiratory InfectionARIMDG4 2008MDGs 4 RITM1981DOH 19801988 1980RITMARI1989DOH ARIControl of ARICARI 5 90 20082010 RITM ARI CARI5JICA-JST RITM RITM DOH RITMEVRMCBPHONP4 RITM34 1 WHO/UNICEF Global Action Plan for Prevention and Control of Pneumonia (GAPP) 2009 2 National Statistics Office National Demographic and Health Survey 1993, 2008 3 Department of Health and WHO (2010) Essential Newborn CareProtocol for New Life 4 206 5 Elvira SN. Dayrit A National Program for Control of Acuter Respiratory Tract InfectionsThe Philippine Experience 1997 9

8MIMAROPA 4BAutonomous Region in Muslim MindanaoARMM 5 6 OlvedaARILupisan RHURITM RITM RITM DOHNational Reference LaboratoryNRLRITMDOH IMCINCDPC DOH Joint Coordination CommitteeJCC 捗 RITM DOH MDGs2015199031 MDG420085880 19200 51,00034 24 20001141 DOH5 20052010 ARI1980WHO 6 Demographic and Health SurveyDHS2008 10

WHO/UNICEFIMCI RITM RITM 2006 RITM EVRMC20085 2009581970 703245RS C/PRITM Etiological Studies Disease Burden StudiesRisk Factors Analysis Intervention StudiesDissemination of Study Results 5 5 Etiological Studies RITM EVRMC EVRMCBPHONPRITM 4 Outpatient DepartmentOPD Catchment AreaRHU RHU X RHU 11

Disease Burden Studies RHU RHU 1,0001015 Verbal AutopsyRetrospective Study Prospective Study / Cohort Study Risk Factors Analysis Intervention Studies Interventions Referral System Dissemination of Study Results 12

DOHWHO Region8EVRMC 1Region8 EVRMCDOH 3Regional Hospital600800 1020085 6 24 RITMEVRMC DOHCHDEVRMC Leyte Provincial HospitalLPHTanauan Rural Health Unit EVRMC RITMEVRMC National Epidemiology Center NECPhilippine Integrated Disease Surveillance and ResponsePIDSRRITM CHD IMCICHD IMCI IMCIIMCI Region8BPH 2 BPHRegion83EVRMC 400700 13

6%EVRMC EVRMC 20103JICA RHU1 11424 7 RHUJICA BPHBarangay RHU2 BPH IMCIIMCI IMCI Region4BONP 1 5CHD ONPDOHRegional Hospital 7003% Bio-safety EVRMC RITM24 Satellite Clinic RHU IMCI IMCI 14

RITM NRL Real-time PCR EVRMCRHU BPHRHU RHU ONPRHU RHU 15

第 3 章プロジェクト実施の妥当性 本プロジェクトは以下の点において妥当性が高いと考えられる (1) フィリピン保健医療政策との整合性フィリピン政府はMDGs 達成に積極的に取り組んでおり MDGsが国の開発政策である フィリピン中期開発計画 (MTPDP 2004~2010) に取り込まれている MTPDPの下 MDGs 達成に向けた政策 戦略が実施されているほか 達成状況のモニタリングも密に行われている 乳幼児死亡に関するMDG4については 乳幼児死亡率 乳児死亡率とも低下しており このまま順調に低下が進めば2015 年に向けた目標 ( それぞれ26.7 17.0) が達成される見込みであるが 地域間格差が依然大きい DOHは 地方分権の下での保健セクター改革の枠組みとして FOURmula One for Health (F1) 政策を策定するとともに 同政策のロードマップを示す 国家保健目標(NOH)2005 ~2010 を策定し そのなかで感染症はいまだ重要な疾患であることを示している また 結核 HIV/ エイズ マラリア デング熱等の感染症とともに 肺炎とその他呼吸器感染症の予防とコントロールに関する具体的な目標を掲げている 本プロジェクトは 研究活動を通じて小児呼吸器感染症の重症化要因を明らかにするとともに フィリピンにおいて有効な小児肺炎の治療 予防策の検討を行うものであり フィリピン政府の保健政策に合致する内容となっている (2) 相手国ニーズとの整合性フィリピンでは年間約 20,000 人の乳幼児が肺炎により死亡し (2008 年 7 乳幼児の死亡原因の第 1 位となっている しかしながら 従来のアプローチでは病因診断は行わず 患者の症状から重症度を判定し なるべく早期に投薬を行う対応が中心であったため 最新のデータによるエビデンスに基づく小児呼吸器感染症の見直しが課題となっている よって本プロジェクトではフィリピン側の研究 調査能力の強化 疾病負担調査 介入調査等を通じてエビデンスに基づく小児呼吸器感染症対策を提案することとしており フィリピン側のニーズに合致しているといえる 本プロジェクトは 以下の点で有効性が高いといえる (1) プロジェクト構成の論理性プロジェクト目標は 小児肺炎の病因 疾病負担 リスク要因が明らかになり 小児肺炎による死亡を低減させるための有効な介入が確認される となっており 目標達成のために5 つのアプローチが設定されている これらは 各アプローチの成果に基づいて次の活動が展開できるよう 時系列の活動となっている また これら一連の活動を通じてRITM 地方サ 7 Essential Newborn Care:The DOH / WHO Protocol, 2010-16-

イトの研究者 / 保健医療従事者の小児肺炎 呼吸器感染症のデータ収集能力 研究能力も向上するように設計されており プロジェクト目標達成のために有効なアプローチであると考えられる 本プロジェクトは 主に以下の点で効率性が高いと判断される (1) 投入 スケジュール面の効率性専門家の構成は 複数の短期専門家と 比較的長期 (1 年未満 ) にフィリピンに滞在する専門家の組み合わせであり 短期専門家が各自の専門領域に関する助言 アドバイス等を中心に行う一方 長期滞在する専門家が地方サイトを含む研究現場で日常的な技術指導にあたる POとなっている C/Pの能力向上のため 本邦研修の組み合わせも予定されており 投入 スケジュール面での効率性が高く保たれる可能性が高いといえる (2) 先行研究プロジェクトの成果 リソース等の有効活用東北大学 -RITM 新興 再興感染症共同研究センターにおいて2008 年 4 月より先行の共同研究が行われている 先行研究では 本プロジェクトの国内協力機関である東北大学がRITMにおける拠点の整備のため 研究のC/PとなるRITMの各部門の研究体制強化 人材育成を行ってきている 本プロジェクトの地方サイトでもあるEVRMCにおいても先行研究が行われており 研究体制が強化された これらの研究成果 人材 システム等をベースに本プロジェクトを実施する予定であり 既存のリソースの活用という点で効率性が確保できる見通しである 本プロジェクトのインパクトは以下のとおり予測できる (1) 政策上のインパクト本プロジェクトでは 小児肺炎及び呼吸器感染症の病因 疾病負担 リスク要因が明らかにされるほか 小児肺炎による死亡を減少させるための介入研究が実施され 各介入の有効性について検討されることになっており それらの研究結果を含めた本プロジェクトの成果が フィリピンDOHやWHOが将来小児肺炎対策として具体的なアクションを起こすための材料として活用されることが期待できる そのために 政策決定者へ活動の成果を提示していくことが重要である フィリピンでは肺炎が乳幼児死亡原因の第 1 位となっており 本プロジェクトの研究成果を基に有効な対策がとられることにより フィリピンの乳幼児の死亡率低下に寄与し MDG4 の達成に貢献することが期待される (2) フィリピン側関係機関のその他感染症対策の能力向上 RITM 各地方サイトの関連病院等における検体収集のノウハウ確立 病原体検出システム強化等が行われる予定であり これらの能力向上により 将来的には小児の肺炎 呼吸器感染症のみならず 他の感染症対策にも生かされる可能性があると考えられる -17-

(3) 貧困削減促進小児肺炎の社会 経済的な重症化リスク要因として 栄養不良による抵抗力の低下 貧困のため肺炎 呼吸器感染症に感染した場合に適切なタイミングで受診し 治療 投薬を受けられないケースが想定されている これらのリスク要因は貧困層に当てはまるものであり これら要因を低減させるための介入研究が行われ 対策に結びつけば 貧困層の負担軽減につながる可能性が想定される 本プロジェクトの持続性は 以下のとおり予測できる (1) 政策面本プロジェクトにより 肺炎とその他呼吸器感染症の病因 疾病負担 リスク要因等が明らかになることで DOHが小児呼吸器感染症に関する具体的な政策の立案に動き出すことが期待される (2) 組織面 人材面 技術面 RITMは創立翌年の1981 年からARI 研究プログラムを開始し 研究テーマや手法は変遷してきたが 現在に至るまで同プログラムの下で研究活動が継続されており 現在 9 名の研究員がかかわっている これらの実績により ARI 研究プログラムの研究体制は既に構築されているため 組織 人材面での持続性には問題はみられない さらに 本プロジェクトの活動により 地方サイトの医療機関と提携し 地方におけるデータ収集 分析や介入研究の能力が向上することで フィリピン各地での研究活動の継続が可能となる (3) 財政面 RITMでは WHO 等の国際機関 二国間援助機関等と共同研究を行っており 研究費用が供与されている 本プロジェクト終了後もARI 研究プログラムに対する予算を確保することが望ましい 一方でプロジェクト実施期間の後半には 実験機材の維持費等 必要な経費の試算を行い これらのコストを継続してカバーしていく計画を検討する必要がある -18-

付属資料 1. 討議議事録 (R/D) 2. 詳細計画策定調査団ミニッツ (M/M)