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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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実務家の条文の読み方=六法の使い方の基礎

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

最高裁○○第000100号

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

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(2) 原則として 1 人の弁護士があっせん 仲裁人となりますが 事案によっては 更に弁護士や弁護士以外のあっせん 仲裁人を選任し あっせんでは 2 人又は 3 人 仲裁では 3 人で行うことがあります (3) また あっせん 仲裁人を補佐するために弁護士や専門的知識を有する者を専門委員に選任するこ

共通到達目標 ( 民事訴訟法 ) 案 目次 第 1 章 総論 第 1 節 民事訴訟の意義 目的 第 2 節 民事紛争解決のための手続 第 3 節 訴訟と非訟 第 4 節 民事訴訟に関する法規 第 2 章訴訟の主体第 1 節裁判所第 1 款裁判所の意義と構成第 2 款裁判権第 3 款管轄 ( 1) 管

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上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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平成  年(オ)第  号

裁の民事訴訟が約 1.3 倍, 執行事件が約 1.6 倍, 破産事件にいたっては約 5 倍と急増しています 地裁の刑事訴訟事件については横ばいに近い状態が続 いていましたが, この 3,4 年は著しい増加傾向を示しており,10 年前の 約 1.7 倍になっています また, 簡裁の調停事件も約 5 倍

争点 A 虚偽表示 不当表示に対して 巫は 答弁書 準備書面でも否認 反論した しかし吉田は 三点の原告主張争点に対して 総て 争う のみの答弁書を提出した 吉田は原告の主張の事実を 争う と一言で済ましている 争うならば何を争うかの理由を述べなければならない ( 単純否認の禁止 規 793) また

最高裁○○第000100号

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

5 提出された書類等の閲覧 謄写 ( コピー ) 申立人の提出した申立書については, 法律の定めにより相手方に送付されます それ以外に調停手続中に一方の当事者が提出した書類等については, 他方の当事者は, 閲覧 謄写の申請をすることができます この申請に対しては, 裁判官が, 円滑な話合いを妨げない

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

208 Law&Practice No.08(2014) Ⅰ 民事訴訟改革の歴史 1 挫折の繰り返しと民事訴訟の 明治維新 明治 23 年制定の旧民事訴訟法は, 適正 迅速な民事訴訟を目指して, 大正 15 年の改正等の幾多の改正を経たものである しかし, 改正直後には, それなりに改正の成果を出し

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政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

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事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

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7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

受講につきましてのお願い 携帯電話は電源を切るかマナーモードに設定をお願い致します 本セミナーでの録画 録音はご遠慮下さい 本セミナー内でのご質問は 一切受付けておりません ご了承下さい 2

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た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

情報公開に係る事務処理規則 ( 平 18 規則第 16 号平成 18 年 8 月 1 日 ) 改正平 19 規則第 52 号平成 19 年 9 月 21 日平 26 規則第 2 号平成 26 年 5 月 13 日平 26 規則第 22 号平成 27 年 3 月 31 日 第 1 章総則 ( 目的 )

日商協規程集

れる場合に限り 出廷権の制限が許されますが 本件では 出廷権を制限すべきかかる事情は認められません よって 貴所による本件出廷権制限は 日本国憲法及び国際人権自由権規約に定められた基本的人権 ( 出廷権 ) を侵害しています 貴所におかれましては 今後 かかる出廷権侵害を二度と起こさないよう 上記例

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(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

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法的措置の概要(33頁から44頁)170816高崎地方裁判所確認後

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限され 当事者が商標を使用する能力に直接の影響はありません 異議申し立て手続きと取消手続きで最もよく見られる問題とは 混同のおそれ と 単なる記述 です TTAB は登録の内容のみを評価するため その分析の局面には 想定に基づくものもあります 通常 TTAB では どのように標章が実際の製品において

特集《ソフトウエア》 1. 方法クレームとプログラムの間接侵害

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

裁判年月日 平成 25 年 9 月 19 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 24( ワ )26067 号 事件名 区分所有建物使用差止請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA 事案の概要 原告が 被告に対し 管理組合集会決議がないのに住宅以外の用途

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

ロ 原告主張立証に対して 被告側は沈黙してしまい全く弁論が為されず また裁判官は事件の核心である小川掲示板の管理者は誰かと小川に質問するも 吉田がこれを遮り発言を阻止する訴訟妨害をした ハ 陳述された書面は 小川答弁書及び小川準備書面 吉田の答弁書 この三点であるが 両被告共に認否がされていない ま

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

答申

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

別紙 1 審査会の結論 静岡県知事が非開示とした文書のうち 別表 1 の開示すべき部分欄に掲げる部分は 開示すべきである 2 異議申立てに係る経過 (1) 平成 17 年 5 月 6 日 異議申立人は 静岡県情報公開条例 ( 以下 条例 という ) 第 6 条の規定により 静岡県知事 ( 以下 実施

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

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2 法人の権利義務の得喪及びその経緯 4 文書の管理等に関する事 (1) 許認可等に関する重要な経緯 (2) 不利益処分に関する重要な経緯 (3) 不服申立てに関する審議会等における検討その他の重要な経緯 (4) 国又は行政機関を当事者とする訴訟の提起その他の訴訟に関する重要な経緯 その他の事 3

陳述書

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

山梨大学教職大学院専攻長 堀哲夫教授提出資料

O-27567

ける慣習である 不動産の所有権または賃借権を取得した場合 1908 年登記法 (Registration Act, 1908) に基づき 譲渡証書または賃借証書を 原則として締結日から 4ヶ月以内に登記する必要がある 所有権の登記の際には 当該不動産の市場価格または実際の売買価格のいずれか高い方に対

3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

情報技術論 教養科目 4 群 / 選択 / 前期 / 講義 / 2 単位 / 1 年次司書資格科目 / 必修 ここ数年で急速に身近な生活の中に浸透してきた情報通信技術 (ICT) の基礎知識や概念を学ぶことにより 現代の社会基盤であるインターネットやコンピュータ システムの利点 欠点 それらをふまえ

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

特集 東京地裁書記官に訊く─労働部編─ (LIBRA2012年11月号)

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

11総法不審第120号

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

事実及び理由控訴人補助参加人を 参加人 といい, 控訴人と併せて 控訴人ら と呼称し, 被控訴人キイワ産業株式会社を 被控訴人キイワ, 被控訴人株式会社サンワードを 被控訴人サンワード といい, 併せて 被控訴人ら と呼称する 用語の略称及び略称の意味は, 本判決で付するもののほか, 原判決に従う

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆

2 業務の当該業務に係る事項具体例区分行政文書の類型 法人の権利義務の得喪及びその経緯 (1) 許認可等に関する重要な経緯 (2) 不服申立てに関する審議会等における検討その他の重要な経緯 行政文書開示請求又は保有個人情報開示請求に対する開示決定等処分をするための決裁文書その他当該処分に至る過程が記

とを条件とし かつ本事業譲渡の対価全額の支払と引き換えに 譲渡人の費用負担の下に 譲渡資産を譲受人に引き渡すものとする 2. 前項に基づく譲渡資産の引渡により 当該引渡の時点で 譲渡資産に係る譲渡人の全ての権利 権限 及び地位が譲受人に譲渡され 移転するものとする 第 5 条 ( 譲渡人の善管注意義

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

裁判手続等の IT 化ニーズ 小口の訴訟が 日々大量に発生 終結を繰り返すビジネス形態では 裁判所に対して提出する書面 書証の提出が 日常的に多数発生し 交通費 郵送料 印刷代のコスト負担が大きい 遠隔地での裁判では 弁護士の旅費 日当も事案により相当額になる 重要事件の場合は 傍聴のため社員の旅費

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平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

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民事模擬裁判 ( 茂垣博 蒲俊郎 大澤恒夫 千葉理 菅谷貴子 ) 2 3 年前期 2 年後期 選択必修 2 単位集中 1 科目内容 目標 この授業は 民事裁判実務についての裁判官と弁護士の役割を模擬的に体験させ 裁判運営のあり方を考えさせるとともに 民事実体法および手続法を実務的視点から立体的に理解させ 民事裁判実務の基礎を修得させようとするものである 具体的には それぞれの学生が 当事者 証人 訴訟代理人 裁判官などの役割を分担し 模擬事案に基づいて民事訴訟手続を模擬的に追行し 体験することによって 手続の流れ 訴状や答弁書など必要書類の作成 裁判官と弁護士の役割ないし職務などを実践的に理解するとともに 訴訟において立証すべき事実およびその立証の仕方や事実認定過程の構造を認識することが目標である 民事実体法と民事訴訟法とが絡み合うダイナミズムを実感し 模擬法廷での口頭弁論において事実と法の両面にわたって対論を尽くすことの意味 そのための基本的スキルの必要性を体感できるようになることが期待される 2 授業の基本方針 この授業では 観客に見せるための模擬裁判 (= 演劇型 ) としてではなく 自らの判断で実際に追行してみる模擬裁判 (= 追行型 ) の方法により かつ 法律論を展開する 上告審型 ではなく むしろ事実認定に比重をかけた 第一審型 で行うこととし 授業を 3 期に分ける 第 1 期は 模擬事案に基づいて 説明を受けながら 書面を準備作成し 訴訟手続の流れや構造を理解することを主眼におくものであり 事前学習として 教科書の指定された該当部分を十分に理解してくることが求められる その上で 準備された模擬事案に基づいて 授業での説明を受けた後 実際に 訴状 答弁書を全員で起案し 課題として提出させる 第 2 期は 受講生を裁判官チーム 原告代理人チーム 被告代理人チームに分け 各々のチームで第 3 期に行う法廷教室における訴訟追行に対する準備を行う 原告チーム 被告チームは 準備書面 証拠申出書 尋問事項書を作成し 課題として提出する一方 裁判官チームは争点整理を行い 法廷教室で行う口頭弁論期日における訴訟指揮に対する準備を行う 第 3 期は 分担したそれぞれの役割にしたがい 実際に 法廷教室において訴訟追行をしてみる すなわち 原告とその代理人は訴状 準備書面を陳述し 被告とその代理人は答弁書 準備書面を陳述し 証人などと打合せのうえ 証人尋問を行う 裁判官は 口頭弁論期日を主宰し 証拠調べを行い 口頭弁論に現れた事実のみに基づいて 争点について判断し 判決書を起案し 判決の言渡しをすることになる 当然のことながら それぞれの役割に応じた積極的な準備と関与が求められるだけでなく 裁判官チーム 原告チーム 被告チームにおいて十分な相互の連携と協力が不可欠なものとなる 教員は 原告 被告チームの準備書面の主張方法 尋問の手法 裁判官チームの訴訟指揮 判決の理由付けについて コメントを行う 最終回に教員が全体講評を行うが それぞれの役割からの視点に重点をおいた 模擬裁判全体についての期末レポートの提出を求めることもある -1-

3 成績評価 この授業科目の性格上 担当する役割への熱意 授業における質問ないし発問に対する応答 提出された書面の出来を総合的に勘案して 厳格な合否判定を行うこととなるが その判定は 担当する役割への取り組み及び応答 50% 提出された訴状や準備書面等の書面の内容 50% の比率とする 4 教材 教科書として 司法研修所監修 4 訂民事訴訟第一審手続の解説 事件記録に基づいて ( 法曹会 ) を使用する ほかに 模擬事案にかかる資料 訴状や答弁書など書式のひな型 基本的な訴訟進行シナリオなどを配付することがある 授業の各段階で 司法研修所教材ビデオ 民事訴訟第一審手続の流れ を視聴させる場合もある 参考書としては 司法研修所編 10 訂民事判決起案の手引き ( 法曹会 ) を推奨する また 小島武司 = 加藤新太郎 = 那須弘平編 民事模擬裁判のすすめ ( 有斐閣 ) 山本和彦 よくわかる民事裁判第 2 版補訂 ( 有斐閣 ) は入門書として有益であろう なお 以上のほかに 民事訴訟法に関する教科書や参考書 および模擬事案によって民法や商法など民事実体法に関する教科書や参考書も 必要に応じて参照されなければならない 5 授業計画 全 15 回の授業予定は 以下のとおりである 第 1 回ガイダンス : 資料 ( 事案 ) の配付 授業内容の説明 スケジュールの確認など授業進行のスケジュール 授業で使用する教材などの概要について補充的な説明と訴訟提起までの手続の解説 ( 教科書 本論 1 15 頁 ) を行う 模擬裁判を第一審型として行うことから 民事訴訟法の復習の意味合いも含めて 第一審手続の流れを確認させ それぞれの手続段階で必要となる書類にはどのようなものがあるか また 訴訟に要する費用として 訴状に貼付する印紙代の計算はどうするか 弁護士費用の計算はどうなるか等について理解させる 第 2 回原告側からの事情聴取と訴訟の構想の検討弁護士の職務として 模擬事案に基づいて まず 紛争主体であり 原告となる当事者の側からの事情をどのように聴取するか そこからどのように法的な構成を行い どのような請求を立てて主張立証していくか等を検討し 訴状のひな型 を参照させつつ その作成方法について理解させる 作業としては 資料配布 その 1 ( 原告側証拠資料 )( 全員 ) を検討したうえ 原告本人からの事情聴取を行い 提起すべき訴訟の構想の検討 請求の趣旨 原因の検討を行うことになる 第 3 回訴状の作成課題訴状の作成 ( 各自 ) 提出教科書 ( 巻末 事件記録編 9 頁 ) 参照 -2-

第 4 回被告側からの事情聴取と応訴の構想の検討訴状起案の講評 訴状の確定 弁護士の職務として 模擬事案に基づいて もう一方の紛争主体であり 被告となる当事者の側からの事情をどのように聴取するか そしてその結果に基づいて訴状に対してどのように反論し 争っていくか 被告の答弁をどのように法的に構成し 主張立証を組み立てていくか等を検討し 答弁書のひな型 を参考にして 答弁書の作成内容を議論する 作業として 配布資料 その 2 ( 被告側証拠資料 )( 全員 ) を検討したうえ 被告会社従業員からの事情聴取を行い 応訴の構想を練り 答弁書の起案内容を検討する 第 5 回答弁書の作成課題答弁書の作成 ( 各自 ) 提出教科書 ( 本論 23 54 頁 巻末 事件記録 12-23 頁 ) 第 6 回双方の主張の突合せと主張の補充答弁書起案の講評 答弁書の確定 双方の主張の突き合わせ 提出すべき書証の選定訴状と答弁書を突き合わせて そこからどのように争点を引き出し これに対応する証拠としてどのようなものが必要となるかなど 双方当事者および裁判所がそれぞれ第 1 回口頭弁論期日までにしておくべき事柄を理解させ 併せて 原告準備書面 ( 答弁書に対する認否 反論 ) の構想を検討する 第 7 回準備書面の作成課題準備書面の作成 提出準備書面の確定この段階で 双方の主張が整理されたことを前提に 受講生を原告 原告代理人 被告 被告代理人 裁判官の 3 グループに分割して それぞれの役割分担を決定する そのうえで 原告側 被告側の各人グループには それぞれ証人 本人の陳述書の作成と 人証の尋問を想定して 証拠申出書 尋問事項書の作成を検討させる 裁判官グループには 訴状 答弁書など当事者から提出された主張書面と証拠書類に基づいて 主張の整理を行い 争点確定の検討をさせる 同時に 今後の証人尋問により得られる証拠資料を想定して これからどのように事実認定をしていくか その過程と構造を理解させつつ 主要事実について心証が形成されず 真偽不明になった場合にはどうするのかも含めて 判決の成立に至る経過につき研究させる 第 8 回双方の陳述書 証拠申出書 ( 尋問事項書添付 ) の作成課題双方の陳述書 証拠申出書 ( 尋問事項書添付 ) の作成 ( 原告側 被告側各別に ) 提出教科書 ( 巻末 事件記録 29 69 頁 ) 原告側 被告側の各グループは 必要に応じてそれぞれ本人 証人予定者から再度の事情聴取を行い 陳述書および人証の申出書 ( 尋問事項書添付 ) を作成し 弁論の準備をする -3-

第 9 回第 1 回口頭弁論期日の実施原告準備書面 双方の陳述書 証拠申出書 ( 尋問事項書添付 ) の起案の講評原告準備書面 双方の陳述書 証拠申出書 ( 尋問事項書添付 ) の確定第 1 回口頭弁論期日の実施 ( 裁判官役 ) = 法廷教室訴状 答弁書 原告準備書面の陳述主張の要件事実的整理 争点の確定 証拠申出 採用決定 尋問順序 尋問時間の決定等教科書 ( 本論 54 65 頁 ) 模擬事案に基づき これまでに作成し 提出した訴状や答弁書などの書類を用いながら 実際に法廷教室で それぞれのセリフや動きも交えて 訴訟手続の進行を体験させる 裁判所は 争点と証拠の整理手続を行うとともに その結果にしたがって 証人尋問の採否を決定し 双方代理人との間で尋問の順序 予定時間などの打合せを行う 第 10 回第 2 回口頭弁論期日の準備人証尋問のリハーサル実施 ( 原告側 被告側各別に ) 交互尋問の方法について学習する 主尋問および反対尋問 必要に応じて 再主尋問および再反対尋問について 立証事項のために効果的に証言を引き出すためにはどのようにすべきか そこで求められるスキルとして 具体的な問い方 戦略的な問い方 異議の使い方など どのようなものがあるか等を検討し 協議させる 第 11 回第 2 回口頭弁論期日 ( 証拠調 ) の実施第 2 回口頭弁論期日 ( 証拠調 ) の実施 ( 裁判官役 ) = 法廷教室第 1 回口頭弁論期日での決定にしたがい 証拠調べ手続として 証人尋問を行い 次回期日を最終弁論期日として指定する 双方の代理人による人証尋問 異議申立て 裁判官の決定 裁判官の補充尋問尋問調書 ( 要旨 ) は 裁判官役が担当して作成 ( 録音 ) 次回までに提出 第 12 回第 3 回口頭弁論期日の実施資料配布 その 3 ( 尋問調書 = 要旨 )( 全員 ) 第 3 回口頭弁論期日 ( 和解 弁論終結 ) の実施前回期日までに証拠調べ 証人尋問が終了したことを受けて 原告 被告双方からは証拠に基づく最終弁論を行い また 裁判所からは 相当程度の心証が形成されていることを前提として 最終的な和解勧試を行い これが不調であれば口頭弁論を終結し 判決言渡し期日を指定する 判決起案の検討判決の形式 主文 争いのない事実 争点に対する判断等の検討課題判決主文 理由の要旨の作成 ( 各グループ別 ) 第 13 回第 4 回口頭弁論期日 ( 判決言渡し ) の実施第 3 回口頭弁論期日 ( 判決言渡し ) の実施判決の言渡し ( 裁判官役 ) 主文の朗読 理由の骨子の説示 ) = 法廷教室判決についての議論 ( 結論の妥当性 事実認定 法律判断 理由の構成等 ) 第 14 回判決の講評判決起案 ( 結論の妥当性 事実認定 法律判断 理由の構成等 ) の講評 -4-

第 15 回全体の講評模擬裁判を通じて 訴状や答弁書における法的構成の仕方 その作成のされ方 証人尋問における具体的な問い方やスキル 裁判所の事実認定のあり方 判決における法的構成の仕方などを含めて 教員から全体的な講評を行うとともに 受講生全員で反省点などを議論し それぞれの役割からの視点に重点をおいた 模擬裁判全体についての期末レポートを課題として提出させる -5-