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Transcription:

1 国内に古くからあるギムノの学名について 2010.05.10 谷山宰 国内で古くから栽培され 多くは和名で親しまれてきたギムノの各種の中で 特に注意すべき種に関して 最近の分類による学名を考察し解説してみました ギムノハンドブックなど従来の国内文献にある学名では合わない場合が多くなっており 海外のネット情報や文献を見たり 欧米から種子や苗を購入する場合 また国内でも最近海外より導入された苗のラベルを見る場合に参考にしていただければと思います 先般 ( 写真集ギムノカリキウム総覧 ) を出版しましたが ここではオーストリアのギムノ研究会であ る AGG の分類に基づいてギムノの各種を整理し また David Hunt 他の The Cactus New Lexicon の分 類を付記しました 本稿では比較的細かい分類である AGG 分類を記し さらに比較的広い分類である David Hunt 他の The New Cactus Lexicon Graham Charles の Gymnocalycium in habitat and caulture の分類を ( または ) として併記しています なお AGG 分類については 2008 年末に改定があったため 先般の写真集とは少し変わったところがあります 学名の後の ( aff. ) は この種の近縁の種と見られる場合 あるいはこの種の一タイプと見られるが断定できない場合に付記しています 栽培の場で出会う学名は 入手時のラベルが書き換えられることは少なく 古い時代に使われていた名 前が残り 上記のような近年のさまざまな分類法の名前も入って来て統一されていません この状態は今 後も続くと思われ 一つの種に対して複数の学名を対応させておく必要のあるケースが出てきます 本稿をまとめるにあたり 多くの情報を提供いただいた島田寿男氏 島田孝氏に深く感謝いたします 参考文献 AGG(Arbeitgrrupe Gymnocalycium) : Gymnocalycium, 1988~2010 John Pilbeam: Gymnocalycium A Collector s Guide, 1995 David Hunt, Nigel Taylor, Graham Charles: The New Cactus Lexicon, 2006 Wolfgang Papsch: Gymnocalycium (AIAS), 2008 Graham Charles: Gymnocalycium in habitat and culture, 2009 Ivan Milt : ROD GYMNOCALYCIUM ; http://www.carciton.cz/kaktusy/clanky16.htm 2009 Takashi Shimada : Cactus Home Page ; http://www.hi-ho.ne.jp/staka/gymnocalycium.htm 2010 ギムノ愛好会 : ギムノカリキュウムハンドブック 1990 谷山宰 : 写真集ギムノカリキウム総覧 2008

2 目次 銀星丸 3 白蜘蛛 ( 白くも ) 3 碧巌玉 4 プギオナカンサム 4 五大州 4 魔天竜 5 闘鷲玉 5 猛鷲玉 6 若武者 6 華武者 6 多花玉 7 金碧 7 光雲玉 7 春裳玉 ( 王春玉 ) 8 天王丸 9 アルティガス 9 蛇竜丸 9 海王丸 9 モンビー玉 9 竜頭 11 瑞昌玉 11 黒蝶玉 11 鳳頭 11 鉄冠 12 騎士玉 11 新鳳頭 11 勲冠玉 ( ウィンター パルブラム ) 11 ウィンター守殿玉 11 守殿玉 13 怪竜丸 13 天紫玉 ( 尾形丸 ) 14

銀星丸 : G. parvulum aff. ( または G. calochlorum aff. ) アルゼンチン ( コルドバ州産 ) 3 本種は G. albispinum の学名が当てられ 羅星丸系とされて来ましたが ギムノハンドブックにも書かれているように羅星丸の系統ではなく火星丸に近く AGG 分類の G. parvulum の近縁種です 本種の花は底紅の白花で 太く長い子房部をもっていますが 羅星丸の系統の花は花底が明るい色で子房部が極端に短いのが特徴です なお G. albispinum= G. bruchii v. albispinum は AGG 分類では羅星丸系の一種 G. bruchii ssp. lafaldense の品種とされ 広い分類の New Lexicon, Graham Charles などでは G. bruchii の一タイプになります 白蜘蛛 ( 白くも ): G. bruchii aff. アルゼンチン ( コルドバ州産 ) 白蜘蛛として栽培されてきたものは G. bruchii v. spinossimum の学名が当てられてきましたが 白刺の G. bruchii( 羅星丸 ) か その近縁種と考えています 現在この変種名で得られる植物は同じ羅星丸の系統ですが やや強い褐色の刺が密生したものです spinosissimum は刺が非常に多いことを意味します AGG 分類では G. bruchii v. spinosissimum を G. bruchii ssp. lafaldense の異名同種としていますが これがどういうものかよくわかりません 銀星丸 白蜘蛛 ( シャボテン社白蜘蛛 ) G. parvulum JPR 108-258 G. bruchii v. albispinum Piltz seed 3675 G. bruchii v. spinosissimum (ex) Uhlig

4 碧巌玉 : ( または G. pugionacanthum) アルゼンチン ( カタマルカ州産 ) 碧巌玉は G. hybopleurum の学名が当てられてきましたが AGG の分類では です G. hybopleurum は原記載でパラグアイ産とされていましたが G. hybopleurum として栽培されてきた種はパラグアイには自生せず アルゼンチンのカタマルカ州に産するためこの種は として新たに記載されました New Lexicon Graham Charles の分類では より古い有効な学名としてこの種を G. pugionacanthum としています 栽培の場では 古くからの G. hybopleurum の学名も残っており 近年の G. pugioncanthum と共に用いられています プギオナカンサム : ( または G. pugionacanthum) プギオナカンサムとされてきた種は AGG の分類では の一タイプとされ また New Lexicon Graham Charles の分類では G. pugioncanthum に含まれます 五大州 : aff.( または G. pugionacanthum aff. )) 五大州の学名は hossei とされてきましたが の一タイプ あるいはその近縁種と見られます 近年の分類の場では G. hossei は魔天竜系に対して用いられる学名です G. hossei の名称はヨーロッパでも長い間にわたって混乱して使われており 碧巌玉形 紅蛇丸系 九紋竜系 守殿玉系を含むさまざまな種にこの名前が当てられて来たそうです これについては魔天竜の項を参照してください 碧巌玉 碧巌玉 プギオナカンサム 五大州 ( 古曾部五大州 ) 五大州 ( 正伝五大州 ) 五大州 ( 旧来五大州 )

5 L 503 f. montanum P 73B f. ensispinum STO 135-5 f. belenense P 73A ssp. acinacispinum STO 45 ssp. schmidianum LB 1308 魔天竜 : G. hossei アルゼンチン ( ラ リオハ州産 ) 魔天竜の学名は G. mazanense とされてきましたが 魔天竜として国内に流通しているものは AGG 分類 New Lexicon Graham Charles などの分類の G. hossei あるいはその近縁種 交配種と思われます なお 栽培の場では G. mazanense と G. hossei の両方の名称が使われています G. hossei は現在の分類の場では魔天竜の系統に対する学名ですが 欧州でも古い時代から混乱して使われてきた名称です 国内では G. mostii の系統が G. hossei として輸入されて 現在も五大州の和名で栽培されています また 欧州ではこの他に G. riojense, G. gibosum のの系統にも G. hossei の名称がが用いられたことがあり 今もその影響が残っています 闘鷲玉 : G. hossei 闘鷲玉は G. mazanense v. ferox の学名が用いられてきました この G. mazanense v. ferox は AGG 分類 New Lexicon Graham Charles の分類で G. hossei の一タイプとされています 国内で闘鷲玉とされるものは様々なタイプが見られますが G. hossei あるいはその近縁種 交配種と考えられます なお 栽培の場では G. mazanense v. ferox の名前も使われています