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22. 都道府県別の結果及び評価結果一覧 ( 大腸がん検診 集団検診 ) 13 都道府県用チェックリストの遵守状況大腸がん部会の活動状況 (: 実施済 : 今後実施予定はある : 実施しない : 評価対象外 ) (61 項目中 ) 大腸がん部会の開催 がん部会による 北海道 22 C D 青森県 2

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通話品質 KDDI(au) N 満足やや満足 ソフトバンクモバイル N 満足やや満足 全体 21, 全体 18, 全体 15, NTTドコモ

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年齢 年齢 1. 柏 2. 名古屋 3. G 大阪 4. 仙台 5. 横浜 FM 6. 鹿島 -19 歳 0 0.0% 0 0.0% 2 2.7% 1 1.4% 3 4.0% 3 4.6% 歳 4 5.0% 5 6.7% 7 9.6% 2 2.7% 2 2.7% % 25-2

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81 平均寿命 女 単位 : 年 全 国 長野県 島根県 沖縄県 熊本県 新潟県 三重県 岩手県 茨城県 和歌山県 栃木県

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B 新潟県神戸市千葉市徳島県 新潟県神戸シニア選抜千葉市シニア徳島カバロスシニア (1 日目 ) 第 2 9:55-10:40 新潟県 0 ( ) 4 神戸市 (1 日目 ) 第 2 9:55-10:40 千葉市 1 ( (1 日目 ) 第 6 13:35-14:20 ) 1 徳島県 新潟県 0 (

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日本産婦人科医会第 41 回記者懇談会 平成 23 年 2 月 9 日 ( 水 ) 社会的リスクと周産期医療ー胎児虐待という観点からー 日本産婦人科医会母子保健委員大阪産婦人科医会理事大阪府立母子保健総合医療センター産科主任部長光田信明 社会的リスクとは? 貧困 家庭内暴力 望まない妊娠 健康保険がない 住民票がない 外国人 違法行為などで社会的孤立に陥っている状態 周産期においては未受診妊婦という形になる 受診して相談してくれれば 医学的問題は少なくなる 1

未受診妊婦 これまで 本邦において都道府県単位の 全員調査はなかった 定義がなかった 意味するところが判明していなかった 対策 ( 取り扱い機関 施策 ) もなかった 医療現場では混乱していた 未受診妊婦は周産期医療にとって医学的問題なのか? 社会学的問題なのか? 2

大阪府における未受診妊婦調査 (2009.1~2009.12) 大阪産婦人科医会光田信明 ( 大阪府立母子保健総合医療センター ) 荻田和秀, 藤本昭, 米田嘉次, 久松正典, 早田憲司, 北田文則, 中後聡, 山枡誠一, 高木哲 1000 分娩当たりの未受診発生率 3 2.5 大阪府下の平均 2 件 /1000 分娩 2 1.5 1 0.5 0 豊能三島北河内中河内南河内泉北泉南大阪市 3

小括 1 28の施設から計 152 件の未受診妊婦と未受診類似症例 33 件の報告が寄せられた 132 件は OGCS ( Obstetric & Gynecologic Cooperative System: 産婦人科診療相互援助システム ) 加盟病院であったが 12 件は一般診療所が受け入れていた 一次救急として夜間休日に搬送されたケースは18 件あった 未受診妊婦を25 件受け入れた施設もあった 居住地別未受診妊婦の発生率は大阪市が最も高く 1000 分娩当たり3 件に達した 大阪府の平均未受診妊婦発生率は500 分娩に1 件であった 未受診妊婦発生は既存の母体搬送システム機能に影響しかねない 未受診妊婦の年齢構成 12 10 8 6 4 2 0 15 18 21 24 27 30 33 36 39 分娩時年齢 4

未受診妊婦の国籍 国籍 計 日本 137 フィリピン 6 ペルー 1 モンゴル 1 韓国 1 中国 1 日本以外 1 日本国籍のフィリピン人 1 不明 3 総計 152 未受診妊婦の出産回数 >4 回 2 回 3 回 9% 15% 13% 22% 41% 初回 1 回 5

分娩様式 帝王切開 22% 急速遂娩 5% 自宅 車中分娩 8% 経腟 65% 分娩時産褥合併症 61 例 (38%) 2 1 1 1 1 4 2 3 3 4 5 5 7 22 妊娠高血圧症候群子宮内胎児発育不全妊娠糖尿病貧血産褥子癇 高血圧感染症弛緩出血既往帝王切開子宮内感染血液型不適合常位胎盤早期剥離切迫早産糖尿病その他 6

母体感染症 感染症 計 HIV 0 絨毛膜羊膜炎 1 成人 T 型白血病キャリア 1 クラミジア 1 B 型溶血連鎖球菌キャリア 2 トキソプラズマ 2 梅毒 2 C 型肝炎キャリア 3 その他 4 総計 16 小括 2 帝王切開率は 22% であったが自宅 車中分娩が 8% あった 約 40% が初産婦であり 22% が妊娠高血圧症候群などの母体合併症を伴っていた 死産は3 例あった 分娩時出血は平均 497mlと多く 弛緩出血や子癇 産褥熱などの分娩時産褥合併症は38% であった 以上の症例の検討で 周産期学的ハイリスク群と認められたものは69% に達した 7

妊婦健診を行わなかった理由 複雑な家庭事情 不明 精神疾患犯罪がらみ孤立 経済的理由 忙しかった 身体や社会システムへの知識の欠如 未受診妊婦の職業 13; 8% 11; 7% 6; 4% 6; 4% 112; 74% 4; 3% パート アルバイト風俗関係学生正社員 自営その他無職 8

新生児体重と推定週数 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 VLBWI; 4 1000 ELBWI; 1 500 早産 ; 21(14%) 5 percentile FGR susp; 7 (5.6%) 平均出生体重 2757g 新生児体重 20 25 30 35 40 45 新生児体重と推定週数 Ap 5 Ap 1 死産 ; 3 Ap1<3 ; 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 3 1 1 1 2 2 2 1 1 1 3 1 4 1 5 1 1 1 6 3 未受診妊婦の周産期死亡率 19.7% 大阪府の周産期死亡率 4.0% 7 4 1 8 7 57 2 9 24 13 10 8 9

新生児合併症 子宮内胎児発育遅延 7 子宮内感染 16 新生児一過性多呼吸 6 胎便吸引症候群 2 小児外科疾患 7 新生児仮死 6 早産 21 新生児黄疸 3 鎖骨骨折 1 新生児薬物離脱症候群 1 停留精巣 2 心室中隔欠損 1 計 73 小児外科疾患の内訳 脳瘤 1 腹壁破裂 1 食道閉鎖 1 口唇口蓋裂 2 多発奇形 2 計 7 10

小括 3 未受診妊婦の新生児の平均出生体重は2757g で 早産率 子宮内胎児発育不全の率は期待値通りであった しかるに 死産が3 例あり 1 分後 Apgar score <3 点の新生児仮死が10 例あった 32% の新生児が NICU 入院となっていた 新生児にとって 未受診妊婦の分娩は極めて危険であることが示唆された 退院後の育児支援者 育児環境が懸念される ; 21% 13% 8% 32% 35% パートナー実母なし友人実父義母兄弟その他 11

未受診妊婦分娩後の福祉連携 要支援ケースとして地域へ連絡 生活保護申請 助産券の使用 医療ソーシャルワーカーの介入 0% 20% 40% 60% 80% 100% 有 無 小括 4 未受診妊婦のほとんど (90%) が無職または風俗関係など不安定な雇用状態であった 今回の調査では外国籍のケースは少なく 93% が日本人で 未受診妊婦の70% は未婚であった 母児分離のケースは全体の13% であるが 乳児を自宅へ連れ帰ったケースでも育児援助に難渋すると考えられるものが21%( 全体の16%) ある 生活保護 助産券の申請は30% にとどまったが 入院中 70% が医療ソーシャルワーカーの介入を受け 60% 以上が要支援ケースとして地域へ申し送られていた 12

総括 大阪府における未受診妊婦の周産期死亡率は 19.7% で これは 40 年前と同等であった 胎児虐待死亡 特にNICU 入院が多く 未受診が新生児に極めてリスクの高がい事象であることが裏付けられた 胎児虐待から新生児仮死 出産後も保育環境は厳しいと言わざるを得ない その背景には経済的事情のみならず 母子の孤立など社会的弱者の世代を超えた 未受診の連鎖 が懸念される 未受診で出生した乳児は 地域や行政の協力を仰ぎ 長期的にフォローする必要が示唆された 未受診妊婦の減少には非妊時からの啓発や福祉の介入などが必要であることは明らかで 根拠の希薄な 妊娠出産の安全神話 に基づく自己判断の危険性を広報 教育すべきである 50000 虐待件数 45000 40000 35000 30000 25000 20000 虐待件数 15000 10000 5000 0 厚生労働省平成 20 年度福祉行政報告例 13

児童相談所相談件数 (2009 年 ) 上位 5 カ所 神奈川県 大阪府 東京都 千葉県 埼玉県 5,676 件 5,436 件 3,339 件 2,655 件 2,585 件 19,691 件 (44.5%) 厚生労働省児童相談所における児童虐待相談対応件数及び子ども虐待による死亡事例等の検証結果等の第 5 次報告について 子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について ( 第 6 次報告 ) の概要 (2008.4~2009.3) 死亡 67 人 0 歳児 39 人 (39/67:58.2%) 0 ヶ月児 26 人 (26/39:66.7%) 66 日齢 0 日 16 人 (16/26:61.5%) 厚生労働省 14

日齢 0 日死亡の疑問点 死亡に関する診断書は誰が作成? 出生後死亡が確認されれば 出生届 死亡診断書作成はされるのか? 死産証書の場合には統計上含まれるのか? 死産となった場合の法律的決着は? 母子健康手帳交付者数 (2007 年度 ) 妊娠 28 週未満 1,100,745 (97.4%) 妊娠 28 週 ~ 出産 6,876 ( 0.6%) 出産後 2,841 ( 0.3%) 不明 19,268 ( 1.7%) 厚生労働省 15

虐待による死亡が生じ得るリスク要因 ( 第 6 次報告から ) 保護者等に精神疾患がある あるいは強い抑うつ状態であるあるいは強い抑うつ状態である 妊娠の届出がされていない 母子健康手帳が未発行である 特別の事情がないにも関わらず中絶を希望している 医師 助産師が立ち会わないで自宅等で出産した 妊婦健診が未受診である 妊産婦等との連絡が取れない 乳幼児にかかる健診が未受診である 子どもを保護してほしい等 保護者等が自ら相談してくる 虐待が疑われるにもかかわらず保護者等が虐待を否定 過去に心中の未遂がある 訪問等をしても子どもに会わせてもらえない 双子を含む複数人の子どもがいる 虐待による死亡例の産科要因 日齢 1 日以上 日齢 0 日児 望まない妊娠 20.4% 68.8% 妊婦健診未受診 16.3% 75.0% 母子健康手帳未発行 12.2% 81.3% 16

( 入院 ) 助産制度 入院助産とは 保健上必要があるにもかかわらず 経済的に困窮しており 病院等施設における出産費用を負担できない場合 ( 健康保険で支給される出産育児一時金を超えて費用がかかりそうな場合 ) 本人から申請があった場合( 児童福祉法第 22 条 ) に 同法第 36 条による助産施設に入所 ( 指定された病院または助産院 ) させ出産費用を公費負担 自治体によって所得制限及び自己負担金有り 生活保護受給者と低所得者が対象 全国で 415 施設 ( 公営 186 私営 229) 定員 3628 名 設置は47 都道府県 17 指定都市 38 中核市 第一位東京 44カ所 第二位大阪 28カ所 まったくないのが 8 県 12 市 大阪府は29 施設 定員 163 名 大阪市 10 施設定員 84 名 都道府県別助産制度入所措置数 (2008 年度 ) 北海道 249 東京都 615 滋賀県 19 香川県 2 札幌市 208 青森県 12 神奈川県 26 京都府 98 愛媛県 1 仙台市 80 岩手県 - 新潟県 - 大阪府 646 高知県 45 さいたま市 - 宮城県 126 富山県 - 兵庫県 9 福岡県 31 千葉市 10 秋田県 3 石川県 - 奈良県 37 佐賀県 1 横浜市 154 山形県 13 福井県 - 和歌山県 4 長崎県 29 川崎市 71 福島県 5 山梨県 4 鳥取県 10 熊本県 11 新潟市 36 茨城県 5 長野県 16 島根県 6 大分県 1 静岡市 16 栃木県 - 岐阜県 1 岡山県 4 宮崎県 29 浜松市 5 群馬県 - 静岡県 2 広島県 - 鹿児島県 8 名古屋市 52 埼玉県 64 愛知県 18 山口県 4 沖縄県 75 京都市 - 千葉県 26 三重県 37 徳島県 61 大阪市 698 堺市 355 神戸市 288 広島市 - 北九州市 2 福岡市 85 表外に中核都市分もあるので合計は 5,166 件大阪府全体では 1,860 件 (36.0%) にのぼる 17

児童虐待防止対策協議会メンバー ( 平成 22 年 9 月現在 ) 府省庁及び裁判所 1 内閣府政策統括官 ( 共生社会政策担当 ) 2 警察庁生活安全局 3 法務省人権擁護局 4 文部科学省生涯学習政策局 5 厚生労働省雇用均等 児童家庭局 6 最高裁判所事務総局家庭局 関係団体 1 ( 社 ) 全国保健センター連合会 22 日本弁護士連合会 2 ( 社 ) 日本医師会 23 ( 福 ) 子どもの虐待防止センター 3 ( 社 ) 日本看護協会 24 ( 福 ) 日本保育協会 4 ( 社 ) 日本歯科医師会 25 日本私立小学校連合会 5 ( 社 ) 日本 PTA 全国協議会 26 日本私立中学高等学校連合会 6 全国家庭相談員連絡協議会 27 全国高等学校長協会 7 全国国公立幼稚園長会 28 全日本中学校長会 8 全国児童自立支援施設協議会 29 ( 特 ) チャイルドライン支援センター 9 全国児童相談所長会 30 ( 財 ) 全国里親会 10 全国児童養護施設協議会 31 全国母子生活支援施設協議会 11 全国情短施設協議会 32 ( 社 ) 全国私立保育園連盟 12 全国人権擁護委員連合会 33 日本子どもの虐待防止民間ネットワーク 13 全国乳児福祉協議会 34 子どもの虹情報研修センター 14 全国保健師長会 35 ( 特 ) 児童虐待防止全国ネットワーク 15 全国保健所長会 36 全国児童家庭支援センター協議会 16 全国民生委員児童委員連合会 37 全国自立援助ホーム連絡協議会 17 全国養護教諭連絡協議会 38 全国保育協議会 18 全国連合小学校長会 39 ( 福 ) 全国社会福祉協議会 19 全日本私立幼稚園連合会 40 ( 社 ) 日本助産師会 20 日本子ども家庭総合研究所 41 ( 財 )SBI 子ども希望財団 21 日本子ども虐待防止学会 42 ( 社 ) 日本社会福祉士会 考察 周産期における社会的リスク は各種要因が複合的に絡む 横の連鎖 と世代間で繰り返される 縦の連鎖 が共存している これらの背景は 児童虐待 と似通っている 母体は被害者の立場がある一方で 胎児 新生児に対しては加害者となりえる面を持つ場合もある 問題解決に向けては 胎児虐待 ともいうべき問題意識 ( 人権保護 ) を社会 ( 行政 ) と周産期医療関係者が共有することから始まる 18

総括 未受診問題は医学 社会問題である 児童虐待問題は周産期 ( 胎児虐待 ) から始まっている 産婦人科医は何を為すべきか? 何が出来るのか? 19