ガンマ線 ( と可視光 ) で見る宇宙 水野恒史広島大学理学部物理科学科高エネルギー宇宙研究室 @ 岡山大学 量子の世界と宇宙 2009 年 10 月 30 日 ( 金 ) Fermi ガンマ線衛星 かなた 望遠鏡 Tsunefumi Mizuno 1
Contents ( 目次 ) 1. 高エネルギー光子による宇宙観測 2. Fermiガンマ線衛星と かなた 可視望遠鏡 3. 最新の成果の紹介 : 可視望遠鏡 4. 最新の成果の紹介 :Fermiガンマ線衛星 5. まとめ Tsunefumi Mizuno 2
(1) 高エネルギー光子によ る宇宙観測 Tsunefumi Mizuno 3
宇宙観測の意義 (1) V. 人類は宇宙を観測することで 生活に役に立つ あるいは科学の進 Hess, 1912 歩に寄与するさまざまな知見を得てきた 実用的な物 時刻を計る ( 日時計 ; 太陽の運行 バビロニアBC2000 頃 ) 暦の発明 ( 星の運行 エジプトBC4000 年頃 ) ( 比較的 ) 純粋科学に近いもの 万有引力の発見 検証 ( 惑星の運動 ) 一般相対論の検証 ( 水星の軌道 重力レンズ ) Isaac Newton 1643-1727 http://www.astraea-libra.net/star/tenmon/solar_1.html Tsunefumi Mizuno 4
宇宙観測の意義 (1) V. 人類は宇宙を観測することで 生活に役に立つ あるいは科学の進 Hess, 1912 歩に寄与するさまざまな知見を得てきた 実用的な物 時刻を計る ( 日時計 ; 太陽の運行 バビロニアBC2000 頃 ) 暦の発明 ( 星の運行 エジプトBC4000 年頃 ) ( 比較的 ) 純粋科学に近いもの 万有引力の発見 検証 ( 惑星の運動 ) 一般相対論の検証 ( 水星の軌道 重力レンズ ) Isaac Newton 1643-1727 Albert Einstein 1879-1955 A2218 銀河団の重力で背景銀河からの光が曲げられる ESA/Hubble Tsunefumi Mizuno 5
宇宙観測の意義 (2) V. これらの宇宙観測は 長い間可視光 Hess, 1912 ( 目に見える光 ) に限られてきたが 近年あらゆる波長域での観測が可能となった 特に X 線ガンマ線を用いて宇宙の活動的な姿や 基礎物理学を調べるのが高エネルギー宇宙物理学 Fermiガンマ線衛星が昨年打ち上げられた M31 ( 銀河 ; 星の集団 ) d = 780 kpc M = 7.1x10 11 Msun L = 2.6x10 10 Lsun Pulsar( 高速回転する中性子星 ) の想像図 1000 回転 /s B ~ 10 12 G M87 からのジェット ( 高エネルギー粒子の噴流 ) d = 17 Mpc M ~ 10 9 Msun Author: John Lanoue 5000 光年 ESA/Hubble Tsunefumi Mizuno 6
Fermi 衛星以前のガンマ線観測 1991-2000 の 10 年間かけて得られた昔のガンマ線マップ ( 銀河座標 ) 270 個のガンマ線天体 画像がピンボケのため 2/3 が可視光などで対応天体を絞り切れず 正体が不明だった Tsunefumi Mizuno 7
Fermi 衛星以前のガンマ線観測 from 1991-2000 Wikipedia の10 年間かけて得られた昔のガンマ線マップ ( 銀河座標 ) 270 個のガンマ天体 画像がピンボケのため 2/3が可視光などで対応天体を絞り切れず 正体が不明だった 四角が銀河面 真ん中が銀河中心丸印がガンマ線天体 ( 銀河系内 系外 ) Tsunefumi Mizuno 8
ガンマ線天文学の新展開 昨年打ち上げの Fermi ガンマ線衛星による 9 か月の観測でえられたガンマ線マップ ~1000 個のガンマ線天体 ( パルサーやブラックホールなど ) 宇宙線 ( 高エネルギー粒子 ) が星間物質と衝突してできるガンマ線などがはっきりとらえられている 最新の観測装置により高い解像度で撮影できるようになったため 天体の物理量の議論が可能に 四角が銀河面 真ん中が銀河中心丸印がガンマ線天体 ( 銀河系内 系外 ) Tsunefumi Mizuno 9
電磁波について 我々は天体からの光 = 電磁波を観測する 電場と磁場の横波 E = hc/l ( エネルギーが高い => 波長が短い ; 粒子性が卓越 ) 紫外赤外電波可視光の10 6 倍以上 可視 波長 ( 長 ) 青 赤 色の違い <=> 波長の違い <=> エネルギーの違い エネルギーの数え方 電子 1 個に1Vの電圧をかけて得られるエネルギーをeVと呼ぶ 10 6 ev = 1 MeV (100 万電子ボルト ), 10 9 ev = 1 GeV (10 億電子ボルト ) Tsunefumi Mizuno 10
光の強さ 宇宙物理学 ( 現代天文学 ) 物理学の立場から 宇宙を科学的に研究する学問 適用 確認 ( 地上で得られる ) 物理法則宇宙観測 極限状態での検証 観測対象 ( 天体 ) の質量 組成 温度などを電磁波の観測から導き出す 物理学が必要力学 電磁気学 量子力学相対性理論 熱統計力学 黒体放射 ; 温度に応じた放射 波長 (nm) Tsunefumi Mizuno 11
ガンマ線の生成プロセス X 線までは 主に天体の温度に対応した電磁波を出す ( 黒体放射 ) 電波 : 数 K( 宇宙背景マイクロ波放射 ) 赤外線 : 数 100 K( 星間ダスト ) 可視光 : 1000 K-10000 K( 星の光 ) X 線 :100 万度以上 ( ブラックホール周りの高温ガス ) ガンマ線は 高エネルギーに加速された粒子 ( 宇宙線 ) が放出する => 宇宙線や周りの環境を調べられる e + B シンクロトロン放射 p 中間子の崩壊 p + matter 電子が 磁場や物質の電場で曲げられて放射 ( 時間に依存する項を含む Maxwell 方程式 ) e + matter 核子 - 核子反応で生じた p 中間子生成がガンマ線に崩壊 e + h コンプトン散乱の逆過程電子が光を跳ね飛ばす 制動放射 逆コンプトン散乱 Tsunefumi Mizuno 12
(2) Fermi ガンマ線衛星と かなた 可視望遠鏡 Tsunefumi Mizuno 13
Fermi ガンマ線衛星 (1) 米国フロリダ州 Cape Canaveral Air Station から打ち上げ 現地時間 2008 年 6 月 11 日 科学観測を 8 月 4 日に開始 高度 565 km のほぼ円軌道 1 日 15 回地球を回る Tsunefumi Mizuno 14
Fermi ガンマ線衛星 (2) LAT 検出器 20 MeV to >= 300 GeV FOV: 2.4 sr 高エネルギーガンマ線の撮像 日本も大きく貢献 GBM 検出器 8 kev to 40 MeV FOV: 9 sr 突発現象をとらえる パルサー ブラックホール ガンマ線バースなどを観測 Tsunefumi Mizuno 15
広島大学のアプローチ = かなた 可視望遠鏡 ガンマ線だけでは天体の正体が分からないこともある 様々な波長の光で観測することが重要 国立天文台より望遠鏡を移管 指向性能を 5 倍に改善 大学キャンパスと天文台とは車で 20 分高いアクセシビリティ 1.5m クラスとしては最高レベルの駆動性能 5 度 / 秒 Tsunefumi Mizuno 16
かなた の主な観測対象 ブラックホール天体 ガンマ線バースト 超新星 矮新星 古典新星 宇宙における高エネルギー現象の多くは一過性の突発的現象 数十秒で暗く見えなくなってしまう天体もある これまでは観測が困難だった ガンマ線バーストの空想図 爆発前 爆発後 Illustration: NASA/D.Berry M51 の超新星 ( Cosmotography) Fermi 衛星と連携 あるいは独自の観測で成果を出す Tsunefumi Mizuno 17
(3) 最新の観測成果 : かなた 可視望遠鏡 Tsunefumi Mizuno 18
恒星の進化と超新星 ( 粟野 福江ほかスペクトル博物館 ) 超新星爆発 時間とともに進化 白色矮星 中性子星 : 星の進化の果てにできる高密度な星 超新星 : 重い恒星または白色矮星が吹き飛ぶ大爆発 Tsunefumi Mizuno 19
核爆発型 (Ia 型 ) 超新星 白色矮星の爆発によるものを Ia 型と呼ぶ どの核爆発型超新星も同じような明るさ 銀河までの距離を測ったり 宇宙膨張 ( ハッブルの法則 ) の測定に利用される 白色矮星の爆発 どの核爆発型超新星も同じような明るさ 核爆発型超新星は 白色矮星が連星系をなし 降着によって限界質量に達したときに起こす大爆発 Tsunefumi Mizuno 20
明るさ 限界 を超えた超新星爆発? SN 2009dc 2009 年 4 月 9 日にアメリカのグループが発見 広島大学かなた望遠鏡でフォローアップ観測 県立ぐんま天文台 岡山天体物理観測所 鹿児島大学天文台 すばる望遠鏡などでも観測 明るさが太陽の約 80 億倍に達したことを発見 ( 通常の Ia 型超新星の 2 倍以上の明るさ ) 史上最も明るい Ia 型超新星 これまで最も明るかった物 通常の場合 Tsunefumi Mizuno 21 時間
日本天文学会における記者発表の掲載紙面その他 朝日新聞 産経新聞 中国新聞 NHK ニュースほか 距離の指標 恒星の進化モデルの見直しの可能性 Tsunefumi Mizuno 22
かなた のその他の観測対象 ブラックホールに周辺物質が落ち込むことにより 光速に違いジェット ( 物質の噴流 ) を形成 超巨大ブラックホールからのジェット ( ブレーザー ) マイクロクェーサー ( 恒星質量ブラックホールからのジェット ) クエーサーやガンマ線バーストとの類似性 スケールの差異 観測 データ解析に大学院生が日々活躍 Tsunefumi Mizuno 23
(4) 最新の観測成果 : ガンマ線観測 Tsunefumi Mizuno 24
宇宙線とは ほぼ光速で運動する高エネルギー荷電粒子の総称 1912 年に発見 V. Hess, 1912 手のひらサイズで1 秒間 1 個程度 我々の体を突き抜けている 高いエネルギーを持つ 10 18 ev 以上は超高エネルギー宇宙線と呼ばれ 物理学 天文学的に重要な研究対象 ( 地上の加速器は10 13 ev 程度 ) 10 15 ev 程度までは 銀河磁場に閉じ込められている ( 銀河宇宙線 ) 大きなエネルギー密度をもち 星の光のエネルギーと同程度 宇宙線の銀河系内での分布や 宇宙線を生み出す天体を調べることが ガンマ線観測の主目的のひとつ Hess の気球実験空 ( 宇宙 ) から高エネルギー粒子 ( 宇宙線 ) が来ていることを実証 Tsunefumi Mizuno 25
Fermi ガンマ線衛星が見た宇宙 1 年弱で ~900 個のガンマ線天体 銀河面には多数のパルサー ( 高速回転中性子 ) 超新星残骸の候補 高銀緯では 無数の活動銀河核 ( 巨大ブラックホールからのジェット ) いずれも 宇宙線を生成しガンマ線で光る これらガンマ線天体の背後には 宇宙線と星間物質の反応で生じるガンマ線 => ガンマ線は 銀河を満たす宇宙線 およびそれらを作り出す エンジン を調べる強力な手段 銀河面天体 : パルサー 超新星残骸など高銀緯天体 : 超巨大ブラックホール Tsunefumi Mizuno 26
(4-1) 銀河系のガンマ線天体 : パルサーと超新星残骸 Tsunefumi Mizuno 27
パルサーと超新星残骸 ( 粟野 福江ほかスペクトル博物館 ) 超新星爆発 太陽の 10 倍程度以上の質量をもつ星は最終的に (II 型 ) 超新星爆発を起こし 重元素および莫大なエネルギーを放出 中性子星 ( パルサー ) もしくはブラックホールを残す 爆発の痕跡が超新星残骸 膨張過程で 銀河宇宙線を作り出す パルサーは回転運動によりさらに宇宙線を生成 パルサー 超新星残骸ともガンマ線の重要な観測対象 Tsunefumi Mizuno 28
パルサー ( 中性子星 ) とは 1967 年 :Bell & Hewish により発見 回転する中性子星からの規則正しいパルス信号を電波で検出 理論上の産物にとどまっていた中性子星の存在を証明 1974 年にノーベル賞受賞 中性子 ( フェルミ粒子 ) の縮退圧で重力を支える 太陽と同程度の質量が半径 10 km に凝縮 自転周期 : 1 ms ~ 10 s ( 角運動量保存 ; サイズが小さいと回転が速い ) 表面磁場 : < 10 4 ~ 10 11 T ( 磁束の保存 ; サイズが小さいと磁場が強い ) なぜパルス ( 周期的な電磁波放射 ) を出すのか? Tsunefumi Mizuno 29
パルサーからの電磁波 中性子星は完全な導体 磁場中を導体が回転すると ~10 15 V もの巨大な起電力が生じる 加速された電子が磁場に巻きつくようにして運動 加速度を受け電磁放射 回転軸と磁極の向きが異なると パルサーとなる ( 磁極が我々の方を向いたときに見える ) 電波の放射領域 ファラデーの発電機 ローレンツ力で回転軸に電子が 円盤の端に正の電荷がたまる => 起電力 電波では1800 天体が知られる一方 ガンマ線は6 例しか検出例がなく ガンマ線がどこからくるのか不明だった Tsunefumi Mizuno 30
Fermi 衛星で検出されたパルサー http://www.nasa.gov/images/content/300646main_pulsarmaplabeled2_hi.jpg 全数 : 46 パルサー これまで知られていたもの : 6 若い電波パルサー : 16 ガンマ線データからパルス探査 : 16 ミリ秒パルサー ( リサイクルパルサー ): 8 ガンマ線でのみ光るパルサーの存在 ; 電波パルスは我々の方を向いていない? Tsunefumi Mizuno 31
電波でも明るいパルサー (Vela: P=89 ms) パルス波形 ( エネルギー帯域ごと ) ガンマ線 ( 低エネルギー ) エネルギーによってガンマ線のパルス波形が変化 ガンマ線パルスは電波よりも遅れる 電波には 第一パルスが見えない ガンマ線 ( 高エネルギー ) ガンマ線の放射領域は 電波とは異なるらしい X 線 電波 パルスの周期 ( 回転に対応 ) Tsunefumi Mizuno 32
ガンマ線の強度 電波でも明るいパルサー (Vela: P=89 ms) ガンマ線放射のエネルギー分布 青印が Fermi によって得られたエネルギー分布 緑は昔の観測 ( 精度が悪かった ) スペクトルは 3 GeV 付近に指数関数的な折れ曲がりを持つ 仮にガンマ線が磁極付近で作られた場合 Fermi EGRET( 昔の衛星 ) 理論モデル 0.1 1 10 エネルギー (GeV) 折れ曲がりは加速された電子のエネルギーの上限を示す もしガンマ線放射が磁極付近であれば 強磁場中での電子陽電子対生成により ガンマ線が吸収され より強い折れ曲がりになる 他のガンマ線パルサーでも同様な結果 ガンマ線は 電波より外側の磁場の弱い領域で放射される Tsunefumi Mizuno 33
Fermi 衛星で分かったパルサーの姿 この1 年間で46 天体ものガンマ線パルサーが検出 うち16 個は他波長では知られておらず ガンマ線で発見された パルス波形 エネルギー分布から ガンマ線放射領域が電波のそれとは違うことが分かった 従来のモデル電波 ガンマ線とも磁極付近から 新しく確立した描像電波は磁極付近かガンマ線は外側から 電波観測ではつかまらない多数のパルサーが隠れている パルサーの進化 銀河宇宙線への寄与 銀河系での超新星爆発の歴史を調べる上で ガンマ線観測が力を発揮 その他 超新星残骸からのガンマ線を初めて検出などの成果 Tsunefumi Mizuno 34
(4-2) 銀河系外のガンマ線天体 : 超巨大ブラックホール Tsunefumi Mizuno 35
宇宙物理学における Black Hole (1) ブラックホールとは Einstein の一般相対論で得られた概念 質量 M の周りに r s 2 2GM / c 3.0 M / Msun km なる事象の地平線が存在し 光すら ( つまり あらゆる信号が ) 逃げ出せない よって黒い穴 (Black Hole; BH) r s は Schwarzschild radius と呼ばれる ( 見たことないけど ) 多分こんな感じ http://www.jaxa.jp/article/interview/no7/p2_j.html Tsunefumi Mizuno 36
宇宙物理学における Black Hole (2) BH には でき方 質量に応じて色々ある 始原 BH: 初期宇宙の密度揺らぎでできるとされる BH 小質量 Hawking 輻射により γ 線を出すと予想される 恒星質量 BH: 星の進化の終末 超新星爆発に伴いできる BH M~10M sun 超巨大 BH: 銀河の中心にある M=10 6-10 9 M sun 特に銀河の中心の超巨大 BH は 物が落ち込む際に莫大なエネルギー ( 重力エネルギー ) を解放し あらゆる波長で明るく輝く これが活動銀河核 ジェットを伴うことも多い M87( 宇宙ジェットの例 ) 5000 光年 Tsunefumi Mizuno 37
ガンマ線でみる超巨大 BH 超巨大 BH からはジェット ( 物質の噴流 ) が出ることも多い ジェットがなぜできるのかは大事なテーマ 超高エネルギー宇宙線の源とも言われる ジェットをどの方向から見るかで 天体の見え方 ( どの波長で明るいか 時間変化の仕方 など ) が異なる ガンマ線は 電子が光を跳ね飛ばす逆コンプトン散乱で生じる ジェットが我々の方を向いていると 放射がジェットの向きに集中する相対論効果のため ~1000 倍に増幅 ガンマ線で強く輝く これまでは ジェットが我々の方向を向いているものしかガンマ線で観測できず 限られた天体しか議論できなかった Tsunefumi Mizuno 38
Fermi ガンマ線衛星で見た電波銀河 1 年の間に 3 つの電波銀河 ( ジェットが横を向いている ) からガンマ線放射を発見 天体の種類 ( ジェットの向き ) によらず 超巨大 BH からの放射を研究できるようになった Tsunefumi Mizuno 39
ジェットが横を向いている BH からのガンマ線 NGC 1275 ( 電波銀河 ) の時間変動とガンマ線イメージ ガンマ線の変動 上限値 電波の変動 電波で明るい電波銀河 ジェットは 40 度ほどずれている 30 年以上前にガンマ線で検出の報告があるが 1990 年代の観測では検出されず ガンマ線を放出するか否かは確定していなかった ( 左図 ) Fermi ガンマ線衛星で ガンマ線放射を検出 ( 右図 ) 約 10 年の間に ジェットが 10 倍ほども強くなったと考えられる 電波の活動性と相関? Tsunefumi Mizuno 40
超巨大 BH: Fermi 衛星による進展 電波銀河など これまでガンマ線では見えなかった天体からもガンマ線検出 超巨大 BH のガンマ線放出機構 ジェットの構造などを広いサンプルで議論 10 年の時間スケールでジェットの強さが 10 倍も増減 ジェットがこちらを向いている = ガンマ線で明るいものは常時モニタ可能 X 線 可視光との相関は天体によって尐しずつ違っており 放射領域の違いなどが調べられる かなた 望遠鏡も活躍 PKS1502+106 ( 多波長で相関している例 ) ガンマ線 X 線 かなた 望遠鏡 Tsunefumi Mizuno 41
(4-3) Fermi 衛星で見る突発現象 : ガンマ線バースト Tsunefumi Mizuno 42
ガンマ線バーストとは counts 空のある点が突然ガンマ線で明るくなる現象 1967 年に発見 一日に 1 回程度 瞬間的な明るさは 全宇宙の星の光をも超える 宇宙最大の爆発現象 Light curve 20s 中性子星の合体 もしくは大きな星の超新星爆発でできた 宇宙で最高エネルギーのジェットがガンマ線で輝く 時間 (s) ジェットの研究 宇宙線の研究 物理学理論の検証などに重要 Tsunefumi Mizuno 43
Fermi 衛星によるガンマ線バースト観測 2009 年 9 月までに捉えたガンマ線バースト Fermi collaboration GRB 090510 *,*:Fermi 衛星で捉えたガンマ線バースト (291 個 ) *: 高エネルギーガンマ線 (100 MeV 以上 ) 放射を捉えたもの (10 個 ) 1 年間で 10 個のガンマ線バーストから高エネルギーガンマ線を検出過去の検出数をすでに上回る 73 億光年かなたのガンマ線バースト GRB 090510を使い 相対性理論の基礎 光速不変 の原理を過去最高の精度で検証 Tsunefumi Mizuno 44
光速度不変の原理 とは? 60km/h 80km/h 光 ( 電磁波 ) でも同じことが起こるか? ( マイケルソンとモーレーの実験など ) 地球の自転の向き 時速 60km/h で走る電車内で時速 80km/h のボールを投げると電車の外では 60+80=140km/h となって見える 地球の自転を利用した実験 真空中の光速は観測者の運動によらず常に一定 ( 光速度不変の原理 ) しかし量子重力理論の枠組みの中にはミクロなスケールで 光速が電磁波の波長 ( エネルギー ) によってわずかではあるが変化する ( 光速度不変の原理の破れ ) を主張するものが存在する ( 時空が連続でなく 量子構造をもつ効果 ) Tsunefumi Mizuno 45
どうやって光速のずれを測定するのか 量子重力理論が予言する光速の ずれ はごく僅か 測定可能な ずれ を生むには 天文学的な距離を旅した光を観測する必要がある 高いエネルギーの光 低いエネルギーの光光速度不変が成り立っている場合遅れ高いエネルギーの光 低いエネルギーの光 光速度不変が破れる量子重力理論に従う場合 高いエネルギーの光が遅れて届く できるだけ遠い天体からできるだけ高いエネルギーの光を観測する必要 => ガンマ線バーストを観測する Tsunefumi Mizuno 46
光速不変の原理の検証 GRB 090510 のエネルギー毎の時間変動 ガンマ線バーストが起きた時刻 低いエネルギー (X 線 ) GBM/NaIs 31GeV の光子 高いエネルギー ( ガンマ線 ) 31 GeV の最高エネルギーのガンマ線は 低エネルギーの X 線ガンマ線にたいして 最大でも 0.83 秒しか遅れていないことが分かった Tsunefumi Mizuno 47
Fermi で分かったガンマ線バースト 31 GeV のガンマ線の到達時間は 73 億光年という長い距離を経ても 最大でも 0.83 秒しか変わらない 光速度の差にしてわずか 4 x 10-18 (Dc/c) 以下の違い 一方 量子重力理論の一部は もっと大きな時間差を予言していた 光速不変の原理を過去最高の精度で検証 量子重力理論に 観測から史上最高の制限 アインシュタインの相対性理論は 非常に微小な領域まで厳密に成立 その他 これまでの観測で最も高いエネルギーのジェットを見つけるなどの成果をあげている Tsunefumi Mizuno 48
まとめ 宇宙観測は 実用と科学の両面で大きな役割 X 線ガンマ線で活動的な宇宙を見るのが高エネルギー宇宙物理学 広島大学は Fermi ガンマ線衛星と かなた 望遠鏡を軸に研究 かなた は突発現象や変動に注目して研究 最も明るい超新星爆発の発見などの成果 パルサーからのガンマ線は 電波より外側から放射 隠されたパルサーの存在 超新星残骸をガンマ線で初めて検出 ジェットの向きによらず 超巨大 BH からのガンマ線放射を捉えた 可視光と連携したモニタ観測も日々継続 ガンマ線バーストを用いて 光速不変の原理を最高精度で検証 その他のトピックス http://www-heaf.hepl.hiroshima-u.ac.jp/glast/glast-j.html http://fermi.gsfc.nasa.gov/ ご静聴ありがとうございました Tsunefumi Mizuno 49