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法務資料 第 465 号 ドイツ商法典 ( 第 1 編 ~ 第 4 編 ) 法務省大臣官房司法法制部

ドイツ商法典 ( 第 1 編 ~ 第 4 編 )

はしがき この資料は, ドイツ商法典 (Handelsgesetzbuch,2016 年 3 月 31 日現在 ) の第 1 編から第 4 編までを翻訳したものである 概説, 監修及び各編の翻訳は, 次の方々に委嘱した ここにその労に対し, 深く謝意を表する次第である 概 説 東京大学教授 神作裕之 監 修 立教大学教授 松井秀征 第 1 編翻訳 立教大学教授 髙橋美加 第 2 編翻訳 立教大学教授 松井秀征 第 3 編翻訳 大阪大学准教授 久保大作 第 4 編翻訳 上智大学教授 伊藤雄司 なお, この資料は, 執務の参考資料として印刷し, 配布するものである 平成 28 年 8 月 法務省大臣官房司法法制部

目 次 はしがき [ 概説 ] ドイツ商法典の経緯と概要 1 ドイツ商法典 第 1 編 商事 9 第 1 章 商人 ( 第 1 条 ~ 第 7 条 ) 9 第 2 章 商業登記簿 企業登記簿 ( 第 8 条 ~ 第 16 条 ) 10 第 3 章 商号 ( 第 17 条 ~ 第 37a 条 ) 22 第 4 章 商業帳簿 ( 第 38 条 ~ 第 47b 条 )( 削除 ) 28 第 5 章 支配権及び商事代理権 ( 第 48 条 ~ 第 58 条 ) 28 第 6 章 商業使用人及び商業徒弟 ( 第 59 条 ~ 第 83 条 ) 30 第 7 章 代理商 ( 第 84 条 ~ 第 92c 条 ) 35 第 8 章 商事仲立人 ( 第 93 条 ~ 第 104 条 ) 44 第 9 章 過料規定 ( 第 104a 条 ) 46 第 2 編 商事会社及び匿名組合 48 第 1 章 合名会社 48 第 1 節 会社の設立 ( 第 105 条 ~ 第 108 条 ) 48 第 2 節 社員相互間の法律関係 ( 第 109 条 ~ 第 122 条 ) 49 第 3 節 社員の第三者に対する法律関係 ( 第 123 条 ~ 第 130b 条 ) 52 第 4 節 会社の解散及び社員の退社 ( 第 131 条 ~ 第 144 条 ) 55 第 5 節 会社の清算 ( 第 145 条 ~ 第 158 条 ) 58 第 6 節 時効 責任の時的限定 ( 第 159 条 ~ 第 160 条 ) 61 第 2 章 合資会社 ( 第 161 条 ~ 第 229 条 ) 62 第 3 章 匿名組合 ( 第 230 条 ~ 第 237 条 ) 66 第 3 編 商業帳簿 69 第 1 章 全ての商人のための規定 69 第 1 節 簿記, 財産目録 ( 第 238 条 ~ 第 241a 条 ) 69 第 2 節 開業貸借対照表, 年度決算書 71 Ⅰ

第 1 款 総則 ( 第 242 条 ~ 第 245 条 ) 71 第 2 款計上規定 ( 第 246 条 ~ 第 251 条 ) 72 第 3 款 評価規定 ( 第 252 条 ~ 第 256a 条 ) 74 第 3 節 保存及び提出 ( 第 257 条 ~ 第 261 条 ) 78 第 4 節 州法 ( 第 262 条 ~ 第 263 条 ) 80 第 2 章 資本会社 ( 株式会社, 株式合資会社及び有限会社 ) 及び特定 人的会社についての補充規定 81 第 1 節 資本会社の年度決算書と状況報告書 81 第 1 款 総則規定 ( 第 264 条 ~ 第 265 条 ) 81 第 2 款 貸借対照表 ( 第 266 条 ~ 第 274a 条 ) 87 第 3 款 損益計算書 ( 第 275 条 ~ 第 278 条 ) 96 第 4 款 ( 削除 )( 第 279 条 ~ 第 283 条 ) 99 第 5 款 附属説明書 ( 第 284 条 ~ 第 288 条 ) 100 第 6 款 状況報告書 ( 第 289 条 ~ 第 289a 条 ) 109 第 2 節 コンツェルン決算書及びコンツェルン状況報告書 113 第 1 款 適用範囲 ( 第 290 条 ~ 第 293 条 ) 113 第 2 款 連結範囲 ( 第 294 条 ~ 第 296 条 ) 119 第 3 款 コンツェルン決算書の内容及び形式 ( 第 297 条 ~ 第 299 条 ) 120 第 4 款 完全連結 ( 第 300 条 ~ 第 307 条 ) 122 第 5 款 評価規定 ( 第 308 条 ~ 第 309 条 ) 125 第 6 款 比例連結 ( 第 310 条 ) 127 第 7 款 関連企業 ( 第 311 条 ~ 第 312 条 ) 127 第 8 款 コンツェルン附属説明書 ( 第 313 条 ~ 第 314 条 ) 129 第 9 款 コンツェルン状況報告書 ( 第 315 条 ) 137 第 10 款 国際的会計基準によるコンツェルン決算書 ( 第 315a 条 ) 139 第 3 節 監査 ( 第 316 条 ~ 第 324a 条 ) 140 第 4 節 開示, 連邦官報の運営者による監査 ( 第 325 条 ~ 第 329 条 ) 154 第 5 節 様式及びその他の規定の制定権限 ( 第 330 条 ) 161 Ⅱ

第 6 節 刑罰及び過料の規定, 秩序違反金 ( 第 331 条 ~ 第 335b 条 ) 163 第 3 章 登記済共同組合についての補充規定 ( 第 336 条 ~ 第 339 条 ) 173 第 4 章 特定の業務を営む企業のための補充規定 176 第 1 節 信用機関及び金融サービス機関のための補充規定 176 第 1 款 適用範囲 ( 第 340 条 ) 176 第 2 款 年度決算書, 状況報告書, 中間決算書 ( 第 340a 条 ~ 第 340d 条 ) 177 第 3 款 評価規定 ( 第 340e 条 ~ 第 340g 条 ) 180 第 4 款 通貨の換算 ( 第 340h 条 ) 183 第 5 款 コンツェルン決算書, コンツェルン状況報告書, コンツェ ルン中間決算書 ( 第 340i 条 ~ 第 340j 条 ) 183 第 6 款 監査 ( 第 340k 条 ) 184 第 7 款 開示 ( 第 340l 条 ) 186 第 8 款 刑罰及び過料の規定, 秩序違反金 ( 第 340m 条 ~ 第 340o 条 ) 188 第 2 節 保険企業及び年金基金に対する補充規定 191 第 1 款 適用範囲 ( 第 341 条 ) 191 第 2 款 年度決算書, 状況報告書 ( 第 341a 条 ) 192 第 3 款 評価規定 ( 第 341b 条 ~ 第 341d 条 ) 193 第 4 款 保険技術上の準備金 ( 第 341e 条 ~ 第 341h 条 ) 195 第 5 款 コンツェルン決算書, コンツェルン状況報告書 ( 第 341i 条 ~ 第 341j 条 ) 197 第 6 款 監査 ( 第 341k 条 ) 199 第 7 款 開示 ( 第 341l 条 ) 199 第 8 款 刑罰及び過料の規定, 秩序違反金 ( 第 341m 条 ~ 第 341p 条 ) 200 第 3 節 原料分野における特定の企業のための補充規定 203 第 1 款 適用範囲, 定義規定 ( 第 341q 条 ~ 第 341r 条 ) 203 Ⅲ

第 2 款 支払報告書, コンツェルン支払報告書及び開示 ( 第 341s 条 ~ 第 341w 条 ) 204 第 3 款 過料規定, 秩序違反金 ( 第 341x 条 ~ 第 341y 条 ) 208 第 5 章 民間会計基準委員会, 会計審議会 ( 第 342 条 ~ 第 342a 条 ) 209 第 6 章 会計検査機関 ( 第 342b 条 ~ 第 342e 条 ) 211 第 4 編 商行為 215 第 1 章 総則 ( 第 343 条 ~ 第 372 条 ) 215 第 2 章 商事売買 ( 第 373 条 ~ 第 382 条 ) 222 第 3 章 問屋営業 ( 第 383 条 ~ 第 406 条 ) 225 第 4 章 運送営業 230 第 1 節 総則 ( 第 407 条 ~ 第 450 条 ) 230 第 2 節 引越物品の運送 ( 第 451 条 ~ 第 451h 条 ) 251 第 3 節 異なる種類の運送手段による運送 ( 第 452 条 ~ 第 452d 条 ) 253 第 5 章 運送取扱営業 ( 第 453 条 ~ 第 466 条 ) 255 第 6 章 倉庫営業 ( 第 467 条 ~ 第 475h 条 ) 259 Ⅳ

[ 概説 ] ドイツ商法典の経緯と概要

ドイツ商法典の経緯と概要 東京大学 神作裕之 1 ドイツ商法典の誕生と特色ドイツ商法典 (HGB;Handelsgesetzbuch) は,1897 年 5 月 10 日, 商取引を行う特定の当事者及び特定の経済的行為 経済活動に関する民法の特別法として制定された 商法典の特色は, 法律関係の形成 解消の簡易迅速性, 自己責任の原則, 法的明確性の重視, 開示 公示主義, 信頼の保護及び国際性などにあるとされる ドイツ商法典は, 同日に制定された商法施行法に基づき,1896 年 8 月 18 日に制定されたドイツ民法典とともに,1900 年 1 月 1 日に施行された 2 ドイツ商法典の構成現行のドイツ商法典は, 第 1 編 商事 (Handelsstand), 第 2 編 商事会社及び匿名組合, 第 3 編 商業帳簿, 第 4 編 商行為 及び第 5 編 海商 の5 編から構成されている 本法務資料にその日本語訳が収録されているドイツ商法第 1 編から第 4 編は, 次の章から構成されている 第 1 編 商事 は, 第 1 章 商人, 第 2 章 商業登記簿 企業登記簿, 第 3 章 商号, 第 5 章 支配権及び商事代理権, 第 6 章 商業使用人及び商業徒弟, 第 7 章 代理商, 第 8 章 商事仲立人 及び第 9 章 過料規定 の8 章から構成されている なお, 第 4 章 商業帳簿 は, 後述するように 1985 年改正に際し, 第 3 編として独立したため, 削除されるに至っている 第 2 編 商事会社及び匿名組合 は, 第 1 章 合名会社, 第 2 章 合資会社 及び第 3 章 匿名組合 から構成される 第 3 編 商業帳簿 は, 第 1 章 全ての商人のための規定, 第 2 章 資本会社 ( 株式会社, 株式合資会社及び有限会社 ) 及び特定人的会社について -1-

の補充規定, 第 3 章 登記済協同組合についての補充規定, 第 4 章 特定の業務を営む企業のための補充規定, 第 5 章 民間会計基準委員会, 会計審議会 及び第 6 章 会計検査機関 の6 章から成る 第 4 編 商行為 は, 第 1 章 総則, 第 2 章 商事売買, 第 3 章 問屋営業, 第 4 章 運送営業, 第 5 章 運送取扱営業 及び第 6 章 倉庫営業 の6 章から成る 3 ドイツ商法典の改正の経緯ドイツ商法典は, 制定後現在に至るまで, 数多の改正を経ているが, 主要な改正として, 次のものが重要である 1937 年に株式法が制定され, ドイツ商法典から株式会社に関する規律が切り出された また, 第二次世界大戦後の1950 年には, 商法分野における規定の廃止に関する法律 に基づき, 協同組合法及び手形法 小切手法がそれぞれ商法典から独立し, 単行法化された 第 1 編 商事 においては, 商法の適用を受ける名宛人である 商人 が定義され, 商業登記簿 企業登記簿, 商号など商事的企業に係る一般的制度に関する規定が置かれている しかし, 第 6 章 商業使用人及び商業徒弟 は労働法に属する事項について, また, 第 7 章 代理商 及び第 8 章 商事仲立人 は商行為に属する事項について定めている 第 1 編の重要な改正として, 次の改正が挙げられる 第 1に,1989 年改正により代理商に関する規律が大幅に見直された さらに,1998 年 6 月 22 日の改正商法により, 商法の最も基本的な概念である 商人 概念について抜本的な改正がなされた すなわち, 同改正前法における 必然的商人 (Mußkaufmann) と 義務的商人 (Sollkaufmann) の概念を統合し, 商業 (Handelsgewerbe) を営む者 という要件の下に統一し ( ドイツ商法第 1 条第 1 項 ), 固有の商人 (Istkaufmann) という概念を立てることとした これにより, 基本的商行為を業とするかどうかにより 必然的商人 と 義務的商人 に分類するという1998 年改正前法の考え方は廃止された なお,1998 年改正商法は 商業 -2-

(Handelsgewerbe) の定義規定を置き, 商業とは, 全ての営業活動をいう ただし, 企業が, その種類や量ゆえに商人的に組織化された営業活動を必要としない場合を除く と定める ( 同条第 2 項 ) 人的会社及び資本会社等の形式商人 (Formkaufmann) は, 商業を営むかどうかにかかわらず, その法形式に基づき商人とされ, 商法の適用を受ける ( 第 6 条 ) 営業を行う企業のなす営業活動が 商業 に該当しないときであっても, 当該企業がその商号を商業登記簿に登記している場合には, その活動は商業とみなされるが, 商業登記簿にその商号を登記するかどうかは自らが決定することができる ( 第 2 条 ) さらに, 農業又は林業を営む者は, その種類及び量に鑑み商人的に組織化された方法で事業活動することを要するときは, 商業登記簿に登記することができることとし ( 第 3 条第 2 項 ), 登記した場合には商業性を認められ, 商人として扱われることになった 商業登記簿に登記するかどうかを選択することができるこれらの者が登記した場合は, 彼らは任意的商人 (Kannkaufmann) となる 第 2 編 商事会社及び匿名組合 においては, 商事会社 のうち, いわゆる資本会社については株式法及び有限会社法において規律されており, 人的会社すなわち合名会社と合資会社についてのみ規律されている また, ドイツにおいては, 匿名組合は商事会社とともに規律されており, 商行為法各論において匿名組合を規律している日本商法とは異なる 第 3 編 商業帳簿 においては, 全ての商人に適用される一般ルールをまとめて規定した後, 資本会社, 登記済協同組合及び特定の業務を営む企業のための補充規定が定められている 前述したように, ドイツ商法典は, 空洞化が進行してきたが, この傾向に多少の変化が生じたのは1985 年改正においてである すなわち,1985 年に, 計算書類に関するEU 指令を国内法化するために, 会社法の調和のためのEU 理事会第 4 指令, 第 7 指令及び第 8 指令を国内法化するための法律 に基づき商法典が改正された 1985 年改正法により,EU 指令を国内法化するとともに, 計算書類の作成に関する規律など既に商法典に存在していた計算に関する規定と株式法に規定されていた株式会 -3-

社の計算に係る諸規定とを統合し,102 か条から成る第 3 編 商業帳簿 が新設された 第 3 編は, 商人の単体の決算書のみならず企業グループすなわちコンツェルン決算書に関する詳細な規定も置かれている 1998 年 4 月 20 日の法律により, 国際的な企業グループについてはコンツェルン会計基準として国際会計基準の適用を認めることとした また,2000 年 2 月 24 日の法律により, 人的会社形態を用いながら無限責任を負う自然人が存在しない, いわゆる公開人的会社 (Publikums-Personengesellschaft) について資本会社に適用される計算規定が適用されることになった その後も, 第 3 編は, 数次にわたる改正を経て現在に至っている その中で最も大きな改正が,2009 年の 計算規定現代化法 による改正である 2009 年改正法は,1 小規模の個人企業の計算書類の公示に係る規制を緩和し,2 商法典に基づき作成される計算書類の有用性を高め,3 商法典に基づき作成されるコンツェルン決算書の透明性を高め,42つのEU 指令を国内法化するとともに計算規定の実効性を高めることを目標とするものであった 第 4 編 商行為 においては, ドイツ商法典が編さんされた19 世紀の時代状況を色濃く反映した断片的な規定が置かれている すなわち, 第 4 編は, 商事売買, 問屋営業, 運送営業, 運送取扱営業及び倉庫営業について規律する 商行為 における重要な改正は,1998 年 6 月 25 日の運送法改正法である 同改正前は, 商法典における運送営業に関する規定は, 多くの特別法が存在していたため, 実務的には重要性を持たなかったとされる 運送法改正法により, 個別に分断化されていた上に, 部分的に過剰に規制され時代遅れとなっていた改正前の運送法に関する商法典の規定が, 整理されるとともに現代化された さらに, 国際条約との整合性を配慮し, 任意法規化を進めるなどの改正が進められた 第 4 章 運送営業 においては, 第 1 節 総則 において運送契約に係る法律関係を規律する 第 1 節の総則規定の適用範囲は,1 物品を陸路 内水路又は航空機によって運送するものとされており, かつ, 2 当該運送が営業的企業の経営に属するときである ( 第 407 条第 3 項 ) このように, 運送の手段を問わず, 運送契約一般について規律されることとなっ -4-

た 特に航空運送に関する規定は, 従来商法典には存在しなかったのであるが, 航空運送に係る規律を現代化した上で, 商法典に統合された 第 2 節では 引越物品の運送, 第 3 節では 異なる種類の運送手段による運送 について分けて規律する 第 3 節により, 物品の運送が統一的な運送契約に基づき異なる種類の運送手段によって実行される場合について, ドイツ商法典に初めて規律が導入されることになった 第 5 章 運送取扱営業 では, 運送市場が国際化している中でどのような路線と運送人を利用するのが最も効率的であるかを運送取扱人の取次ぎを通じて実現するという実務に対応するための規定が設けられた 取次ぎに係る規律によるのではなく, 運送法の規律に大幅に準拠することになった また, 第 6 章 倉庫営業 では, 倉庫契約により倉庫営業者は物品を蔵置し, かつ, 保管する義務を負うと定め, 運送法の規律に準拠して倉庫契約を位置づけることとしたが, 過失の推定を行うものの過失責任として位置づけるなど責任に関する規律は運送業者及び運送取扱業者の責任とは異なる 最近のドイツ商法典の改正で特に注目されるのは,EU 法における調和 統合, とりわけEU 指令の影響を大きく受けている点である 例えば, 計算規定についてはEU 指令を国内法化したものが少なくないし,1989 年代理商法の改正により,EU の1986 年の代理商指令に基づく規定が置かれることになった 4 日本法との関係と日本法への影響日本の現行商法である明治 32 年商法は, 明治 23 年商法を基礎として制定された 明治 23 年商法は, ヘルマン レスラー博士の起草に係る明治 17 年のレスラー草案から多大の影響を受けている レスラー博士は, ドイツ法のみならず, フランス法やイギリス法など当時の欧州諸国の商法を広く参照しながら草案を起草したとされる 明治 23 年商法の編別についてはフランス商法典が最も参考にされているものの, 内容的には1861 年のプロイセン株式法のほか, とりわけドイツ商法典の前身である1861 年のドイツ普通商法典 -5-

(ADHGB;Allgemeine Deutsche Handelsgesetzbuch) が基礎となっていることは明らかである したがって, 日本の商法典は, ドイツ法を母法にするものであるといえる もっとも, 例えばドイツ商法典は, 商行為概念を 商人 概念と 商業 概念に基づき規定しており 絶対的商行為 概念を有しないのに対し, ドイツ普通商法典及びそれを参考とした日本商法は 絶対的商行為 概念を有するなど, 両者の間には当初から相違点もあったことには注意を要する 日本に目を向けると, 会社法及び保険法が商法典から独立し単行法化され, 商法の空洞化が進行しており, また, 現在進行中の民法 ( 債権関係 ) 改正においては, 有価証券に関する規定や契約の申込みに関する規定の一部が民法に移動し, 商事消滅時効や商事法定利率が廃止されることが予定されているなど, 商法の空洞化がさらに進行しようとしている このような状況の下, 日本同様, 商法の空洞化の歴史を経ながら, 独自の発展を続けている日本商法の母法と位置づけられるドイツ商法典の動向は, 注目に値する とりわけ, 本法務資料において翻訳されている第 1 編 商事 ( 商法総則に相当 ), 第 2 編 商事会社及び匿名組合, 第 3 編 商業帳簿 及び第 4 編 商行為 は, 日本の今後の商事法制の行方を検討するに際し, 参考になるものと考えられる -6-

凡例 翻訳に当たっては,2016 年 3 月 31 日現在の法文を用いた 翻訳としての読みやすさを考え, 可能な限り原語を付すことはせず, 特殊な 用語等に限り, 必要最小限の範囲で原語をカッコ内に示した ドイツ商法典の条文には, 原文に見出しが付されているものと見出しのないものがある 原文に付されている見出しの場合は,( ) 内に示した 見出しのない条文については,Beck-Texte im dtv 版において編者が用いた見出しを用い, 内に示した 原文中にセミコロン (;) が用いられている場合があるが, 日本語ではこれ を用いないことが通常であることから, 適宜, 句点に置き換えた EU の法令が引用されている条文については, 法令名について適宜の翻訳を したが, 官報名等は, 検索に際しての便宜等を考え, 原文のまま残している 法文の中に複数の文が含まれる場合, 各文の文頭に番号 (1,2 ) を付 した ( 松井秀征 ) -7-

ドイツ商法典 ( 第 1 編 ~ 第 4 編 )

第 1 編 商事 第 1 章 商人 第 1 条 固有の商人 ⑴ 本法において商人とは, 商業を営む者を指す ⑵ 商業とは, 全ての営業活動をいう ただし, 企業が, その種類や量ゆえに商人的に組織化された営業活動を必要としない場合を除く 第 2 条 任意的商人 1その営業が第 1 条第 2 項による商業に該当しない場合でも, 当該営業を行う企業がその商号を商業登記簿に登記している場合, その営業活動を本法における商業とみなす 2 営業主は, 商人の商号の登記に適用される規定に従って, 登記することができるが, 登記すべき義務を負うわけではない 3 商号の登記後, 第 1 条第 2 項の要件が満たされていない場合に限り, 営業主の申請によりその商号を登記簿から抹消することができる 第 3 条 農業及び林業, 任意的商人 ⑴ 第 1 条の規定は農業及び林業には適用しない ⑵ 農業又は林業について, その種類や量ゆえに商人的に組織化された方法で営業することを必要とする場合, 第 2 条を適用する この場合, 商業登記簿に登記後の商号の削除は, 商人の商号の抹消に適用される一般的規定によってのみ行う ⑶ 農業又は林業に関連する企業があり, その企業が農業又は林業の副業としてのみ営まれている場合, 当該企業につき第 1 項及び第 2 項の規定を準用する 第 4 条 ( 削除 ) 第 5 条 登記による商人 商号を商業登記簿に登記した場合, その登記を援用する者に対して, 当該商号のもとでなされた営業活動が商業ではないと主 -9-

張することはできない 第 6 条 商事会社, 形式商人 ⑴ 商人に適用される規定は, 商事会社にも適用される ⑵ 企業目的のいかんにかかわらず, 本法が商人たる資格を付与した社団の権利及び義務は, 第 1 条第 2 項の要件を満たさなくても, 影響を受けない 第 7 条 商人たる資格と公法 商人に関する本法の規定は, 営業権を排除し, 又は特定の条件にかからしめる公法上の規制により, 適用を妨げられない 第 2 章 商業登記簿 企業登記簿 第 8 条 ( 商業登記簿 )⑴ 商業登記簿は裁判所によって電磁的に取り扱う ⑵ 他の情報開示書類について, 商業登記簿 の表示を取引の中で, 使用又は付加してはならない 第 8a 条 ( 商業登記の申請, 法令上の申請手続 )⑴ 商業登記の申請は, 商業登記申請用に割り当てられた電子情報処理装置に申請が保存され, 内容の変更なく判読可能な状態でいつでも再取得できる状態に置かれたときに効力を生じる ⑵ 1 州政府は, 商業登記の電磁的取扱い, 電子申請, 電磁的方法による文書提出及びそれらの保存に関して, 家事事件及び非訟事件の手続に関する法律第 387 条第 2 項に基づき連邦司法 消費者保護省が関連する諸規定を定めていない範囲において, 法規命令によって詳細な規定を置くことができる 2 また, 裁判所による処理手続の適正を確保するために, データの伝送及び電磁的書類の書式についても規定を置くことができる 3 州政府は, 法規命令により州司法省に権限を委任することができる 第 8b 条 ( 企業登記簿 )⑴ 第 9a 条第 1 項に規定する場合を除き, 企業登記簿は連邦司法 消費者保護省により電磁的に管理される ⑵ 企業登記簿のインターネットサイトでは次の文書を閲覧できる ⒈ 商業登記簿の記録及びその公告, 並びに商業登記申請書類 -10-

⒉ 協同組合登記簿の記録及びその公告, 並びに協同組合登記申請書類 ⒊ パートナーシップ登記簿の記録及びその公告, 並びにパートナーシップ登記申請書類 ⒋ 第 325 条及び第 339 条に基づく決算提示書類及び第 341w 条による書類 ただし, 開示されたものに限る ⒌ 連邦官報に掲載された会社法上の公告 ⒍ 株式法第 127a 条に基づき連邦官報上の株主フォーラム欄に掲載された記載 ⒎ 有価証券取引法又は財産投資法に基づき企業が官報に掲載する開示, 並びに有価証券の取得及び買付けに関する法律に基づき公開買付者, 会社, 取締役, 監査役が官報に掲載する開示, 並びに取引所上場認可規則に基づき官報に掲載される開示 ⒏ 資本投資法典, 投資法, 及び投資税法に基づき, 投資運用業者と外国投資会社が連邦官報に掲載する公告及び開示 ⒐ 有価証券取引法第 2c 条, 第 15 条第 1 項 第 2 項, 第 15a 条第 4 項, 第 26 条第 1 項, 第 26a 条, 第 29a 条第 2 項, 第 30e 条, 第 30f 条第 2 項, 第 37v 条第 1 項から第 37x 条第 2 項まで, 第 37y 条, 第 37z 条第 4 項, 及び第 41 条により, 公告又は他の方法により公衆に提供される情報 ただし, 本項第 4 号又は第 7 号に基づき, 既に企業登記簿における開示事項として該当するものを除く 10. 連邦金融監督庁に提出する資本市場法上の開示事項 ただし, 当該開示自体が, 本項第 7 号又は第 9 号に基づき, 既に企業登記簿に含まれている場合を除く ⒒ 倒産法第 9 条に基づき倒産裁判所がなす公告 ただし倒産法第 9 編による手続の場合を除く ⑶ 1 企業登記簿に登記するには, 次の事項を次に掲げる者により企業登記簿に伝えなければならない ⒈ 本条第 2 項第 4 号から第 8 号までに係る事項, 及び第 326 条第 2 項によ -11-

り小資本会社に求められる年度末決算書類については, 連邦官報の運営者が伝達する ⒉ 本条第 2 項第 9 号及び第 10 号に係る事項は, それぞれの開示義務を負う者, 又はこの者から開示の委託を受けた第三者が伝達する 1 企業登記簿のインターネットサイトにおいて, 原本のデータへのアクセスを開始するために必要である場合には, 本条第 2 項第 1 号から第 3 号に係る事項及び第 11 号に係る事項につき, 州司法省が企業登記簿に伝達する 3 連邦金融監督庁は, 有価証券取引法第 2c 条, 第 15 条第 1 項第 2 項, 第 15a 条第 4 項, 第 26 条第 1 項, 第 26a 条, 第 29a 条第 2 項, 第 30e 条, 第 30f 条第 2 項, 第 37v 条第 1 項から第 37x 条第 2 項まで, 第 37y 条, 第 37z 条第 4 項, 第 41 条により開示及び他の方法で公衆に提供されるべき情報が, 商業登記簿に登記, 保存のために伝達されていることを監督し, その適切な執行のために必要に応じて命令を出すことができる 4 第 3 文の開示, 公衆に提供されるべき情報, 及び通知の伝達事項につき, 当該伝達がなされなかったり, 誤っていたり, 不完全であったり, 適法な書式にのっとっていなかったりした場合, 連邦金融監督庁は, 義務者の負担において, 当該伝達を行うことができる 5 連邦金融監督庁による監督業務は, 有価証券取引法第 4 条第 3 項第 1 文, 第 3 文, 第 7 項, 第 9 項, 第 10 項, 第 7 条及び第 8 条の規定が適用される ⑷ 1 企業登記簿の管理には, 本条第 2 項第 4 号における決算書類中, 企業登記簿に保存された情報を印刷し, 第 9 条第 3 項及び第 4 項に従って認証することも含まれる 2 第 9 条第 2 項により商業登記簿に提出された書類の電子送付も同様であるが, この場合の申請は, 本条第 2 項第 4 号の意味における決算書類に限られる この場合, 第 9 条第 3 項を適用する 第 9 条 ( 商業登記簿及び企業登記簿の閲覧 )⑴ 1 何人も, 情報取得の目的で商業登記及び商業登記申請書類を閲覧することができる 2 州司法省は, 商業登記簿から呼び出し得るデータに関する電子的情報及び通信システムを決定し, その電磁的取得の手続操作について管轄する 3 州政府は法規命令により, 管轄につき異なる定めをおくことができる 法規命令により州司法省 -12-

に当該権限を委任することができる 4 複数の州は, 州をまたがる中央電子情報通信システムを定めることができる 5 州は, 他の州の管轄部署に商業登記事務を委託することもできるし, 企業登記簿管理者と合意して企業登記簿に事務委託することもできる ⑵ 商業登記申請書類が書面でのみ存在する場合, 商業登記申請時より以前の 10 年内に作成された書類についてのみ, 電子的方法による伝送を請求することができる ⑶ 1 商業登記簿の内容及び商業登記簿に提出された書類と伝送されたデータとの一致は, 申請に基づき裁判所が認証する 2このとき電子署名法に基づく電子署名が使用される ⑷ 1 登記及びその申請書類のプリントアウトを請求することができる 2 商業登記簿に提出された書類が書面のみである場合, その写しを請求できる 3 認証を放棄しない限り, 写しは書記課で認証され, プリントアウトも公的な印刷として作成される ⑸ 裁判所は, 請求に基づき, 登記対象事項につき他の登記がないこと, 及び特定の登記が行われていないことにつき証明書を発行しなければならない ⑹ 1 企業登記簿の閲覧について, 本条第 1 項第 1 文を適用する 2 本条第 2 項から第 5 項の申請は, 企業登記簿についても, 裁判所に伝達される 3 小資本会社の貸借対照表の閲覧 ( 第 267a 条 ) は, 第 326 条第 2 項による権利行使があった場合, 申請に基づきコピーの閲覧が可能である 第 9a 条 ( 企業登記簿管理の移管, 法令による委任 )⑴ 1 連邦司法 消費者保護省は, 第 8b 条に基づき, 連邦参議院の承認があれば法規命令によって, その職務権限を私法人に委任することができる 2 委任を受けた者は連邦司法当局の職務上の地位を取得する 3 委任を受けた者が認証を作成するには職務印を使用する 第 1 文に基づき, 詳細につき法規命令で定めることができる 4 権限委任期間には期限を設けなければならない 当該期間は,5 年を下回ることはできない 重大な事情に基づく解約権限は予定されなければならない 5 私法人は, 資本市場法上の情報開示や裁判上の告知, 特に商業 -13-

登記簿のデータに関する基本的な経験を有し, かつ, 長期間, 安全に企業登記簿を管理できるだけの十分な技術上 財政上の基盤が利用できるものである場合に限り, 委任を受けることができる ⑵ 1 連邦司法 消費者保護省は, 連邦参議院の承認があれば法規命令によって, 州当局と企業登記簿との間における, データの書式の基準を含む情報伝送に関する個別的事項について定めることができる 2 州法により手続規定について別段の定めを置くことはできない ⑶ 1 連邦司法 消費者保護省は, 連邦参議院の承認なくして, 法規命令により, 企業登記簿の構成及び管理に関する技術的事項, データ書式の基準を含む情報伝送に関する事項で本条第 2 項に該当しないもの, 企業登記簿に登録されたデータの抹消期間, 企業登記簿に対する連邦金融監督庁の監督権限であって汎ヨーロッパ情報登録ネットワークの構成の枠内における他のEU 加盟国又は欧州経済圏協定締約国の公的情報登録システムとの協働を含む, 資本市場法に関するデータについての伝送, 調整, 処理及び回復に関するもの, さらに, 企業登記簿の管理と結びつけられた本法に基づく事務からは逸脱する, 企業登記簿に蓄積されたデータに関する情報サービスの許容性及びその種類や範囲に関して, 規定を置く権限を有する 2 資本市場法に関するデータに関して規定する場合, 第 1 文に基づく法規命令は連邦財務省と合意の上で発しなければならない 3 第 1 文に基づく法規命令は, 企業の正当な利益に資するように利用されなければならず, 登記簿に登記された情報の目的外使用が排除されるように扱われなければならない 第 9b 条 ( 汎ヨーロッパ情報登録ネットワークシステム, 法令による委任 ) ⑴ 1 商業登記簿の登記と商業登記簿に提出された書類, 及び第 325 条に基づく決算書類は, それに関わる資本会社又はその支店が他のEU 加盟国又は欧州経済圏協定締約国の法の適用を受ける限り,e-Justice ポータルサイトからもアクセスし得る 2このため, 州司法省は商業登記簿の情報を, 企業登記簿の管理者は決算書類のデータを, 欧州中央プラットフォーム (2009 年 9 月 16 日の欧州議会 理事会指令 2009/101/EC 加盟国及び第三者の保護のため -14-

に, 加盟国に要求される条約第 48 条第 2 項の意味における会社のセーフガードの均質化を目指すセーフガードの協調に関する指令 (2009 年 1 月 20 日付け官報 258,11ページ ), 最終改正 2013/24/EU (2013 年 10 月 6 日付け官報 158, 365ページ ) 第 4a 条第 1 項により設置されるプラットフォーム ) に伝送する ただし,e-Justiceポータルのインターネットサイトの検索サービスにおいて原本データへのアクセス開始のために必要である場合に限る ⑵ 1 登記裁判所は, 第 1 項第 1 文の意味における資本会社又はその支店の登記申請書を取り扱うことにより, 欧州中央プラットフォームの登記に関する情報交換に参加する 2この目的のために, 欧州単一識別子が本条第 1 項第 1 文の意味における資本会社又はその支店に割り当てられる 3 登記裁判所は次項に従って, 次の情報を欧州中央プラットフォームに伝送する ⒈ 会社財産の倒産手続の開始, 停止又は終結の登記 ⒉ 会社の解散登記, 及び清算結了, あるいは会社の継続に関する登記 ⒊ 会社の財産欠如による解散 ⒋ 組織変更法 (UmwG) 第 122a 条に基づく合併の効力 ⑶ 1 州司法省は, 商業登記簿からデータにアクセスし ( 本条第 1 項 ), 及び登録簿間における情報交換の枠組みにおいてデータの送受信を行う ( 本条第 2 項 ) 電磁的情報通信システムを決定し, また, 本条第 1 項第 2 文の企業登記簿管理人の権限は留保した上で, 本条第 1 項及び第 2 項に基づき情報通信の処理についての権限を有する 2 第 9 条第 1 項第 3 文から第 5 文はこれに適用する ⑷ 連邦司法 消費者保護省は, 連邦参議院の承認のもと, 法規命令によって, 以下に関する規定を設けることができる ⒈ 欧州単一識別子の構成, 割当て及び使用 ⒉ 登記簿と送付されるべきデータのリストとの間の情報交換に関する通知義務の範囲 ⒊ データの書式や支払態様の要件を含む, 本条第 1 項及び第 2 項による電磁的データ通信の詳細 -15-

⒋ 初回のデータ送信の時期第 10 条 ( 商業登記簿の公告 ) 1 裁判所は, 州司法省が指定した電磁的情報通信システムに, 商業登記簿の登記事項を登記後一定の期間内に公告する このとき第 9 条第 1 項第 4 文及び第 5 文を適用する 2 法により別段の定めがなされていない限り, 登記事項はその全部を開示する 第 11 条 (EU 加盟国の公用語による公開 )⑴ 1 商業登記簿に提出されるべき書類及び登記事項の内容はEU 加盟国それぞれの公用語でも提出できる 2 翻訳は適切になされなければならない 3ここでも第 9 条が適用される ⑵ 提出された翻訳がオリジナル版から相違してしまった場合, 翻訳版をもって第三者に対抗することはできない ただし, 第三者がオリジナル版を知っていたと登記申請者が証明した場合を除き, 第三者は提出された翻訳版を信頼することができる 第 12 条 ( 登記申請及びその提出手続 )⑴ 1 商業登記簿への登記申請は公的に認証された書式を利用して電磁的に行われるものとする 2 代理申請を行う場合の代理権の証明にも同様に公的に認証された書式を必要とする 3 連邦公証人法第 21 条第 3 項に基づく公証人による証明をもって, 代理権証明に代えることもできる 4 当事者の地位を承継した者は, 当該承継につき, 公的書類で実施可能な範囲で承継を証明しなければならない ⑵ 1 申請書は電磁的手法により提出されるものとする 2 原本又は単純コピーを提出しなければならない場合, 又は当該書類につき特定の書式がある場合は, それらの書類の電磁的記録の提出で足りる 公証人が作成した文書又は公的な認証のある写しを提出しなければならない場合には, 単純電子認証 ( 公正証書作成法第 39a 条 ) が付された書面を提出すべきものとする 第 13 条 ( 国内に所在する支店 )⑴ 1 支店を設置した場合, 個人商人あるいは法人の場合は本店所在地の裁判所で, 商事会社の場合は当該会社の本拠地の裁判所で, 支店の住所地又は国内業務所在地, 及び支店の商号に付記がされている場合にはその付記を申告して, 登記を申請しなければならない 2 支店に関連する事項で変更があった場合も同様に登記しなければならない -16-

⑵ 管轄裁判所は, 本店登記に付記して, 又は支店の商号に付記がされている場合には支店の住所地あるいは国内業務所在地の登記に付記して, 支店を登録する ただし, 支店が明らかに設置されていない場合を除く ⑶ 本条第 1 項及び第 2 項は支店を廃止する場合にも適用される 第 13a 条から第 13c 条 ( 削除 ) 第 13d 条 ( 住所地又は本店が外国に所在する場合 )⑴ 個人商人又は法人の本店, あるいは商事会社の本拠が外国にある場合, 国内の支店に関連する登録申請, 提出及び登記は, 当該支店を管轄する区域の裁判所において行われる ⑵ 支店設置の登記には支店の住所地及び国内業務所在地が含まれていなければならない 支店の名称に付記がされている場合には, その点について登記されなければならない ⑶ その他の点について, 本店又は会社の本拠にある営業所に適用される規定は, 外国法が別異の規定を必要としていない限り, 個人商人, 商事会社, あるいは法人 ( ただし, 株式会社, 株式合資会社, 及び有限会社を除く ) の支店について登録申請, 書類提出, 登記, 公告及び申請内容の変更に準用される 第 13e 条 ( 外国に本拠が所在する資本会社の支店 )⑴ 第 13d 条に加えて, 外国に本拠が所在する株式会社及び有限会社の支店には, 以下の規定が適用される ⑵ 1 株式会社の支店を設置する場合, 取締役会が商業登記簿に登記申請を行い, 有限会社の支店の設置の場合は, 業務執行者が申請しなければならない 2 申請の際, 当該会社の存在を証明しなければならない 3 申請には, 支店の国内所在地及び目的についても含まれていなければならない 4また, 会社に対する意思表示や通知を受領する権限のある人物について, その国内の住所を商業登記簿に登記しなければならない 受領権限は, 商業登記から抹消され, 抹消が公示されるまで, 第三者に対して効力を保持する ただし, 当該第三者が受領権限のないことを知っていた場合を除く 5 申請書には以下の内容が含まれる -17-

⒈ その会社の住所地における法が予定する範囲において, 会社が登録しようとする登記簿 ( の名称 ) と登録番号 ⒉ 会社の法的形式 ⒊ 常任の代表者として, 支店の行為につき裁判上及び裁判外の事項に関し会社を代理する権限を持つ者の氏名と, 合わせてその有する権限の表示 ⒋ 会社にEU 加盟国の法も欧州経済圏協定締約国の法も適用されない場合, 当該会社が適用を受ける国の法 ⑶ 1 本条第 2 項第 5 文第 3 号に該当する者については, その者が交代するごとに, またその者の代理権限に変更が生じるごとに, 商業登記簿に登記しなければならない 2 会社の法的な代表者に対しては, 支店に関し, 株式法第 76 条第 3 項第 2 文 3 文, 及び有限会社法第 6 条第 2 項第 2 文 3 文が準用される (3a) 1 本条第 2 項第 5 文に該当する者は会社の代表者として, 商業登記簿に登記された支店の国内の業務所在地における意思表示を受領でき, 書類の宛先となる 2この点によらず, 本条第 2 項第 4 文により当該権限ある者の登記済の住所にも, 意思表示や送達ができる ⑷ 本条第 2 項第 5 文第 3 号に該当する者, 又はそのような者がいなければ会社の法的な代表者は, 倒産手続又はそれに類する会社財産に係る手続の開始又は開始の却下につき, 登記しなければならない ⑸ 1 会社が国内に複数の支店を設置する場合, 定款及びその改正は, 会社の選択により一つの支店の商業登記においてのみ, 登録されていればよい 2 このとき本条第 2 項第 1 文によりその他の支店について商業登記簿への登記申請義務を負う者は, 会社が選んだ登記簿に, 設置した支店の数を合わせて登記するものとする ⑹ 州司法省は, 外国に本拠を置く資本会社の情報が, 汎ヨーロッパ情報登録ネットワークシステム ( 第 9b 条 ) が受信した範囲で, 当該会社の国内支店につき管轄する登録裁判所のもとに伝送されることを保障する 第 13f 条 ( 外国に本拠が所在する株式会社の支店 )⑴ 外国に本拠のある株式 -18-

会社の支店に対しては以下の補充規定を適用する ⑵ 1 登記を申請する際, 公的に認証された定款の写し, 及び定款がドイツ語で書かれていない場合は認証済みの翻訳文とを添付しなければならない 2 株式法第 37 条第 2 項 第 3 項の規定が適用される 3 外国法において異なる取扱いが求められていない限り, 株式法第 23 条第 3 項 第 4 項, 及び第 24 条第 25 条第 2 文の規定により要求される内容を含んだ定款規定, 及び取締役構成に関する定款規定についても, 登記申請時の添付書類に含まれるものとする また, 申請が当該会社の住所地の商業登記簿に会社が登記されてから最初の2 年間になされたものであるとき, 株式法第 26 条, 第 27 条による確定額の表示, 株式の発行価額, 及び発起人の氏名と住所が, 含まれていなければならない 4また, 会社の住所地に対してなされた裁判所の公告も, 申請書に添付するものとする ⑶ 支店設立の登記は, 株式法第 39 条により要求される事項, 及び本法第 13e 条第 2 項第 3 文から第 5 文までにより要求される事項も含まれていなければならない ⑷ 1 外国会社の定款変更は, 取締役によって, 商業登記簿に登記申請されなければならない 2 外国法において異なる取扱いが要求されていない限り, 申請には株式法第 181 条第 1 項 第 2 項の規定が準用される ⑸ その他の事項については, 外国法において異なる取扱いが要求されていない限り, 株式法第 81 条, 第 263 条第 1 文, 第 266 条第 1 項 第 2 項, 第 273 条第 1 項第 1 文が準用される ⑹ 支店の廃止の際には, 支店設置に関する規定が準用される ⑺ 外国に本拠を置く株式会社の支店に関する条項は, 株式法第 278 条から第 290 条までの規定により, あるいは取締役を設置していないことにより, 別段の取扱いを受ける場合でなければ, 外国に本拠を置く株式合資会社の支店にも準用される 第 13g 条 ( 外国に本拠が所在する有限会社の支店 )⑴ 外国に本拠が所在する有限会社の支店に対しては以下の補充的規定が適用される -19-

⑵ 1 登記を申請する際, 公的に認証された定款の写し, 及び定款がドイツ語で書かれていない場合は認証済みの翻訳文とを添付しなければならない 2 有限会社法第 8 条第 1 項第 2 号と第 3 項 第 4 項の規定が適用される 3 外国法において異なる取扱いが要求されない限り, 支店の設置に関する登記申請が, 当該会社の住所地の商業登記簿に会社が登記されてから最初の2 年以内になされたものであるとき, 申請書には有限会社法第 5 条第 4 項による額面が含まれていなければならない ⑶ 支店設置の登記は, 有限会社法第 10 条により要求される事項, 及び本法第 13e 条第 2 項第 3 文から第 5 文までにより要求される事項も含まれていなければならない ⑷ 1 外国会社の定款変更は, 業務執行者によって, 商業登記簿に登記申請されなければならない 2 外国法において異なる取扱いが要求されていない限り, 申請には有限会社法第 54 条第 1 項 第 2 項の規定が準用される ⑸ その他の事項については, 外国法において異なる取扱いが要求されていない限り, 有限会社法第 39 条, 第 65 条第 1 項第 1 文, 第 67 条第 1 項第 2 項, 第 74 条第 1 項第 1 文が準用される ⑹ 支店の廃止の際には, 支店設置に関する規定が準用される 第 13h 条 ( 国内の本店所在の変更 )⑴ 個人商又は法人の本店所在地, あるいは商事会社の本拠を国内において変更した場合, 従前の本店又は従前の本拠の裁判所において変更登記を申請しなければならない ⑵ 1 本店所在地又は本拠が, 従前の管轄裁判所の管轄外に変更された場合, 従前の管轄裁判所から新しい本店所在地又は新しい本拠の管轄裁判所へ速やかに通知されなければならない 2 通知は, 従前の本店所在地又は本拠における登記事項と, 従前の管轄裁判所が保管していた証書とともになされるものとする 3 新しい本店所在地又は新しい本拠の裁判所は, 本店所在地又は本拠が有効に変更されていること, 及び本法第 30 条が遵守されていることを調査しなければならない 4これらを満たす場合, 変更を登記し, さらに調査することなく送付された商業登記簿の記載事項を引き継ぐものとする -20-

5 変更登記後, 従前の本店所在地又は本拠の裁判所にその旨通知する 6また, これらの裁判所は職権により必要事項を登記しなければならない ⑶ 1 本店が, 従前の所在地の管轄裁判所の管轄内で移転した場合, 当該裁判所が, 移転が有効か, 本法第 30 条を遵守しているかを調査しなければならない 2その点が満たされたら, 所在地の変更を登記するものとする 第 14 条 強制金の確定 1 登記又は商業登記簿への書類提出にかかる義務に違反した者は, 登記裁判所から強制金を課せられる 2 強制金は1 回あたり 5000ユーロを超えないものとする 第 15 条 商業登記簿の公示 ⑴ 商業登記簿に登記すべき事項が登記も公告もされていないとき, 登記義務者は第三者に登記すべき事項について対抗することができない ただし, 第三者が登記すべき事項につき悪意の場合はこの限りでない ⑵ 1 登記すべき事項が登記され, 公告された後は, 第三者にも対抗できる 2この点は, 第三者が登記事項を知らず, 知るべきであったとはいえない場合で, 公表後 15 日以内になされた取引の法的効力には適用されない ⑶ 登記すべき事項につき不正確な事実が公告された場合, 第三者は登記義務者に対して, 公表された事実を信頼した旨, 主張できる ただし, 第三者が公表内容が不正確であることにつき悪意の場合はこの限りでない ⑷ 外国に本拠または本店が所在する会社の支店で, 商業登記簿に登記されたものとの間の取引については, 関連する規定に従って, 支店を管轄する裁判所が, 登記及び公告につき決定する 第 15a 条 ( 公示送達 ) 1 国内の業務所在地を商業登記簿に登記するよう義務付けられている法人に対し, 登記された場所において, 又は通知権限ある人物の住所として登記された住所地において, 意思表示を到達させることができず, あるいは他の国内所在地となり得るものとして特に調査することなく知られている場所において意思表示を到達させられない場合, 民事訴訟法の規定に従った公示送達を利用することができる 2 会社の国内業務所在地として登記された場所を管轄する地方裁判所が, これを行う権限を持つ 3 本 -21-

条によっても民法典第 132 条の適用は否定されない 第 16 条 受訴裁判所の判断 ⑴ 1 受訴裁判所による既判力又は執行力ある判決により, 商業登記簿への申告に協力すべき義務を確定したとき, 又は登記事項となるような法律関係について複数の関係者のうちの1 名について確定した場合, 登記に関してはその他の関係者のなす申請手続で足りる 2そのような登記を命じる判決が取り消された場合には, 関係者のうちの1 名の申立てにより, 商業登記簿にこの旨登記されなければならない ⑵ 受訴裁判所による既判力又は執行力のある判決により, 登記が不適法であると宣言された場合, 当該判決を受けた者の異議に反して, 登記することはできない 第 3 章 商号 第 17 条 定義 ⑴ 商人の商号とは, 商人がそれをもって事業に関する取引を行い, 署名をなす名称をいう ⑵ 商人はその商号をもって, 訴え, 又は訴えられることができる 第 18 条 商人の商号 ⑴ 商号は, 商人を識別するために適当なものでなければならず, 他のものと区別が可能でなければならない ⑵ 1 商号には, 関連する取引圏の関係者にとって重大な業務上の事情について混同を招くような事柄を含めてはならない 2 誤認混同が明らかな場合にのみ, 登記裁判所の手続においてその誤認混同の可能性が考慮される 第 19 条 個人商人, 合名会社, 又は合資会社の商号の表示 ⑴ 商号は, 本法第 21 条, 第 22 条, 第 24 条又は他の法律の規定による商号の継続使用があった場合でも, 次の語が含まれなければならない ⒈ 個人商の場合は 登記済み商人, 又はこの呼称につき一般に普及している略語, 特に e.k., e.kfm. 又は e.kfr. ⒉ 合名会社の場合は, 合名会社 又はこの呼称につき一般に普及している略語 -22-

⒊ 合資会社の場合は, 合資会社 又はこの呼称につき一般に普及している略語 ⑵ 合名会社又は合資会社に人的責任を負う自然人が存在しない場合, 商号は, 本法第 21 条, 第 22 条, 第 24 条又は他の法律の規定による商号の継続使用があった場合でも, 責任制限を示す呼称が含まれていなければならない 第 20 条 ( 削除 ) 第 21 条 氏名の変更時の商号の継続使用 自己の氏名を商号に使用している個人事業主又は社員につき, 当事者が変更されることなく氏名のみが変更される場合, 従前の商号の使用を継続できる 第 22 条 事業承継における商号の継続使用 ⑴ 既存の事業を, 生存中又は死亡による処分によって取得する者は, その商号に前の事業主の氏名を使用していた場合でも, 従前の商号の使用を継続できる このとき前の事業主又はその相続人が商号の継続について明示的に同意していれば, 承継関係を表示する付加語を付し, 又は付さずに使用できる ⑵ 用益権, 賃借権又はそれに類する関係に基づいて事業が承継されたとき, 本条の規定を準用する 第 23 条 譲渡禁止 商号が使用されている場合, 事業を伴わずに商号だけ分離して移転させることはできない 第 24 条 社員構成の変更と商号の継続使用 ⑴ 現在の事業に社員として加入し, 又は商事会社に新たな社員として加入し, 若しくは社員がそのような事業から退社した場合, そのような変更にもかかわらず, 従前の事業主や社員の名前を商号に使用している場合であっても, 従前の商号の使用を継続できる ⑵ 自己の氏名が商号に含まれている社員が退社したとき, 従前の商号を継続的に使用するには, 当該社員又はその相続人の明示の承諾を要する 第 25 条 商号の継続使用における承継者の責任 ⑴ 1 生存中に事業を引き継いだ者で, 従前の商号の使用を継続する者は, 承継関係を示す付加語を使用している場合もそうでない場合も, 従前の事業主のなした事業において生 -23-

じた一切の債務について責任を負う 2 従前の事業主又はその相続人が明示的に商号の継続使用に同意していた場合, 事業に起因する債務は, 債務者に対しては, 事業の取得者に移転されたものとみなす ⑵ これと異なる合意は, 商業登記簿に登記及び公告された場合か, あるいは, 取得者又は譲渡人が第三者に通知した場合に限って, 第三者に対し効力を有する ⑶ 商号の使用が継続されない場合, 事業の承継者は, 特別な債務負担根拠が存在する場合, 特に承継者が債務の引き受けを商慣習法上の方法により広告した場合にのみ, 従前の事業上の債務についての責任を負う 第 26 条 第 25 条による責任の期間 ⑴ 1 事業の取得者が, 商号の継続使用, 又は第 25 条第 3 項による広告に基づき, 従前の事業主の事業上の債務に関する責任を負うべき場合, 従前の事業主は,5 年以内に弁済期が到来し, かつ, 民法典第 197 条第 1 項第 3 号から5 号までに示された方法により確定されているか, 又は裁判上ないし行政庁による執行手続が行われ若しくは当該手続が申し立てられた場合, これらの債務につき責任を負う 公法上の債務については, 行政行為の発布をもって足りる 2 責任期間の始期は第 25 条第 1 項の場合は, 新しい事業主が本店所在地の裁判所にある商業登記簿に商号を登記した日の終了時から, 第 25 条第 3 項の場合は事業承継が公示された日の終了時から起算する 3 消滅時効に関する民法典第 204 条,206 条,210 条,211 条, 212 条第 2 項及び第 3 項の規定が準用される ⑵ 従前の事業主が書面をもって債務の存在を認めている場合には, 民法典第 197 条第 1 項第 3 号から第 5 号に示される方法によって確定される必要はない 第 27 条 事業承継における承継人の責任 ⑴ 相続人が遺産に属する事業を承継したとき, 従前の事業における義務に関する相続人の責任には, 第 25 条の規定を準用する ⑵ 1 第 25 条第 1 項による無限責任は, 相続人が相続の事実を知って取得した日から3か月以内に承継した事業の継続を停止した場合, 発生しない 2こ -24-

の期間の経過につき民法典第 210 条による消滅時効の規定を準用する 33 か月の期間の経過にあたり相続放棄の権利が消滅していないとき, 相続放棄期間が経過する前にこの期間は終了しない 第 28 条 個人商人の事業への入社 ⑴ 1 無限責任社員, あるいは有限責任社員として個人商人の事業に加わる者は, 従前の商号を継続使用しない場合であっても, 従前の事業主 ( 個人商人 ) の事業経営の中で生じた一切の義務について, 会社として責任を負う 2 事業経営の中で生じた債務は, 債務者との関係では, 会社に移転したものとみなす ⑵ これと異なる合意は, 商業登記簿に登記及び公告された場合か, あるいは, 社員が第三者に通知した場合に限って, 第三者に対し効力を有する ⑶ 1 従前の事業主が有限責任社員となり, 会社が事業経営の中で生じた義務の責任を引き継いだ場合, 第 26 条の規定が準用され, その責任を限定することができる このとき, 会社が商業登記簿に登記された日の終結時を第 26 条第 1 項に規定される期間の起算点とする 2この点は, 従前の事業主が, 当該会社の経営に積極的に関わり, 又は社員として当該会社に従属する企業の経営に積極的に関わっている場合も同様である 3 有限責任社員としての責任は影響を受けない 第 29 条 商号の登記 商人は, その商号, 所在地, 及び国内の営業所の所在地を, その営業所所在地を管轄する地域の裁判所の商業登記簿に登記する義務がある 第 30 条 区別可能であること ⑴ 新たな商号は, 同じ地域又は同じ市町村内において, 既に存在し, かつ, 商業登記簿又は組合登記簿に登記されている商号と, 明確に区別できなければならない ⑵ 商人が, 既に登記されている商人と同姓同名であって, かつ, 自らの氏名を商号として利用することを希望する場合, 登記済みの商号と明確に区別され得るような付加文字を商号に付さなければならない ⑶ 支店を設置しようとする地域又は市町村において, 既に登記済みの同一の商号が存在しているとき, 支店の商号には第 2 項に基づく付加文字を付さな -25-

ければならない ⑷ 州政府は, 隣接する地区又は市町村をもって, 本条における同一の地区又は市町村とみなす旨規定することができる 第 31 条 商号の変更, 廃止 ⑴ 商号の変更, 事業主の変更, 営業所の地域外転出, 国内の事業所在地の変更については, 第 29 条の規定により, 商業登記簿に登記されるものとする ⑵ 1 商号を廃止する場合も同様である 2 第 14 条に示された手法によったとしても, 登記義務者が登記済み商号の廃止につき登記しない場合, 裁判所は職権により, 廃止を登記しなければならない 第 32 条 倒産手続 ⑴ 1 商人の財産につき倒産手続が開始された場合, 裁判所は職権でこれを商業登記簿に登記しなければならない 2また, 以下の点についても同様である ⒈ 倒産手続開始決定の取消し ⒉ 債務者に対し, 追加的に, 一般的な財産処分禁止が発せられている場合, 又は, 仮倒産管財人の同意がある場合についてのみ債務者による財産処分が有効となる旨命じられている場合, 仮倒産管財人の選任及びそのような保護措置の終了 ⒊ 債務者による自己管理命令とその取消し, 及び債務者の特定の法律行為につき承認を要する旨の命令 ⒋ 手続の開始及び終結 ⒌ 倒産計画の履行の監視と監視の終了 ⑵ 1 本条の登記は公告されない 2 第 15 条の規定は適用されない 第 33 条 法人 ⑴ 事業の目的, 又はその種類や範囲に関し商業登記簿への登記が義務付けられている法人は, 取締役全員により登記申請を行わなければならない ⑵ 1 登記申請にあたり, 法人の定款, 取締役の選任に関する書類の原本又は公的に認証された写しを添付しなければならない また, 取締役がどのような代表権を持つのかも申告しなければならない 2 商号, 法人の所在地, 企 -26-

業の目的, 取締役及びその代表権について, 登記の時に申告しなければならない 3 定款に企業の存続期間に関する特別の規定を置いている場合は, それも同様に登記されなければならない ⑶ 支店の設置は取締役により登記されるものとする ⑷ 本条第 1 項の意味における法人につき, 第 37a 条の規定が準用される 第 34 条 変更登記と申請 ⑴ 第 33 条第 2 項第 2 文 第 3 文により登記すべき事項又は定款規定に変更があったとき, 倒産手続の開始によらず法人が解散したとき, 清算人の変更及び清算人の代理権限の変更があったときには, 商業登記簿に登記するため, 申請しなければならない ⑵ 定款の変更を登記するに当たり, それが第 33 条第 2 項第 2 文 第 3 文に規定された事項に関する変更でなければ, 変更につき, 裁判所に提出された書類の引用で足りる ⑶ 取締役, 又は最初の清算人の申請後初めて登記する場合は, 清算人が変更登記を申請しなければならない ⑷ 裁判所において選任された取締役又は清算人の登記は職権で行われる ⑸ 倒産手続の場合は, 第 32 条の規定が適用される 第 35 条及び第 36 条 ( 削除 ) 第 37 条 商号の不正使用 ⑴ 本章の規定に基づき自己に帰属する商号ではない商号を使用する者に対し, 登記裁判所は過料を課して, そのような商号の使用をやめるよう命じるものとする ⑵ 1 他人による商号の不正使用によって, 自らの権利が侵害された者は, 当該 ( 侵害した ) 他人に対し, 商号の使用をやめるよう請求することができる 2 他の規定に基づく損害賠償請求権は影響を受けない 第 37a 条 文書中の表示 ⑴ 特定の受領者に向けた形式を有する商人の全ての業務信書は, 等しく商号, 第 19 条第 1 項第 1 号に示される表示, 営業所の場所, 商号を商業登記簿に登記した際の登記裁判所と登記番号を明示しなければならない ⑵ 前項の事項は, 既存の業務関係の間で発せられた通知や報告書には不要で -27-

あり, あらかじめ印刷された書式を利用して, 必要なら特定の事項につき個別に挿入することで足りる ⑶ 1 注文書は本条第 1 項の意味における業務信書とみなす 2 前項の規定は適用されない ⑷ 1 本条第 1 項の義務に従わない者に対し, 登記裁判所は過料を課して, これに従うよう命じるものとする 2 第 14 条第 2 文が準用される 第 4 章 商業帳簿 第 38 条から第 47b 条 ( 削除 ) 第 5 章 支配権及び商事代理権 第 48 条 支配権の授与, 共同支配権 ⑴ 支配権は営業主又はその法定代理人に限り, かつ, 明示的な意思表示によってのみ, 付与することができる ⑵ 支配権は, 複数人に対して共同に付与することができる ( 共同支配権 ) 第 49 条 支配権の範囲 ⑴ 支配権は, 商業の活動に関する, あらゆる種類の裁判上及び裁判外の業務, 及び法的行為をなす権限を含む ⑵ 支配人は, 不動産の譲渡及び負担については, 自己に対し明示的にその権限を付与されている場合に限って, なすことができる 第 50 条 支配権の制限 ⑴ 支配権の制限は第三者に対して効力を有しない ⑵ 特に, 支配権を特定の取引又は特定の種類の取引に限定し, あるいは特定の状況又は特定の期間, 若しくは特定の場所に限定する場合も同様である ⑶ 1 営業主の複数の営業所のうちの一つにかかる営業に支配権が制限される場合, そのような制限は, 各営業所が異なる商号のもとに区別されて経営される限りにおいて, 第三者に対して効力を有する 2 本条における商号の区別とは, 支店の商号として表示すべき付加語を商号に付することを指す 第 51 条 支配人の署名 支配人は, 支配権を示す付加語を付した自らの名前 -28-

を商号に添書する方法により署名しなければならない 第 52 条 取消可能 譲渡不能 営業主の死亡 ⑴ 支配権は, その授与の原因となる法律関係にかかわらず, いつでも取り消し得る このことは, 契約上の報酬請求権を損なうものではない ⑵ 支配権は譲渡できない ⑶ 支配権は営業主の死亡によっても消滅しない 第 53 条 支配権の授与と消滅 支配人の署名 ⑴ 1 支配権の授与をしたとき, 営業主は商業登記簿にその旨登記しなければならない 2また, 共同支配権として支配権を授与したときも, 営業主はその旨登記しなければならない ⑵ 支配権の消滅の場合も, 支配権の授与と同様の方法で登記しなければならない 第 54 条 商事代理権 ⑴ 支配権の授与以外で, 商業の遂行, 又は商業に属する種類の取引, 若しくは商業に属する個々の取引につき委任された場合, その者の代理権 ( 商事代理権 ) は, そのような商業の遂行又はそのような取引行為に通常伴うべき一切の取引及び法的行為に及ぶ ⑵ 土地の譲渡又は担保設定, 手形債務の負担, 消費貸借の締結, 及び訴訟の追行については, 商事代理人はこれらの権限につき特に授与を受けた場合にのみ, これをなし得る ⑶ 商事代理権に関するその他の制限は第三者に対して効力を有しない ただし, 第三者がこれを知り又は知り得べき場合はこの限りでない 第 55 条 締約代理権者 ⑴ 締約代理商又は商業使用人として, 営業主の事業所外で営業主の名前で取引を行う商事代理人にも, 第 54 条の規定が適用される ⑵ これらの締約代理権を与えられた者に, 既に締結された契約を修正する権限, 特に支払時期を延期する権限は認められない ⑶ これらの者は, 特に授権されている場合に限り, 支払を受領する権限を有する -29-

⑷ これらの者には, 商品の瑕疵に関する通知, 商品の処分の意思表示, 及びそれらに類する, 瑕疵のある給付であったことから生じる権利につき第三者がなす請求又は留保に関する意思表示を受領する権限があるものとみなす またこれらの者は, 証拠の保全のために, 営業主 ( 本人 ) に属する権限を主張することができる 第 56 条 店舗従業員又は倉庫従業員 店舗又は一般の用に供される倉庫の使用人は, その店舗又は倉庫において通常行われる販売又は受領を行う権限を有する 第 57 条 商事代理人の署名 商事代理人は, その署名の際, 支配権の存在を示すような付加語を使用してはならない 商事代理人は, 代理関係を示す付加語を付して署名しなければならない 第 58 条 商事代理権の譲渡不能 商事代理人は, 営業主の承認なくして, その商事代理権を他人に譲渡することはできない 第 6 章 商業使用人及び商業徒弟 第 59 条 商業使用人 1 商業に関し, 商人的な労務に従事してその対価として報酬を得る者 ( 商業使用人 ) は, その労務の種類及び範囲や自己の報酬に関して特別の合意のない限り, その地方の慣習に従って労務を提供し, またその地方の慣習に従った報酬を請求する 2 地方の慣習がない場合には, 当事者は当該事情のもとで相当の給付につき合意したものとみなす 第 60 条 法律上の競業の禁止 ⑴ 商業使用人は, 営業主の同意がない限り, 商業を営み, 又は自己又は第三者の計算で営業主の事業の部類に属する行為をすることはできない ⑵ 使用人の雇用時に, 使用人が商業を営んでいることを営業主が知っており, かつ, 明示的にその営業を放棄する旨合意していない場合には, 営業主は使用人が商業を営むことにつき同意したものとみなす 第 61 条 競業の禁止違反 ⑴ 商業使用人が第 60 条による義務に違反したと -30-

きは, 営業主は損害賠償を請求できる 営業主は, 損害賠償に代えて, 商業使用人が自己の計算でなした行為を営業主のためになしたものとみなすこと, 及び商業使用人が他人のためになした行為から取得した報酬を営業主に引き渡すこと, 又はそのような報酬請求権を営業主に譲渡することを, 請求することができる ⑵ 前項の請求権は, 営業主が当該行為の締結を知ったとき, 又は重過失なかりせば知り得た時から3か月で時効により消滅する これを知っていたか, 重過失により知らなかったかにかかわらず, 行為の締結の時から5 年で時効により消滅する 第 62 条 営業主の配慮義務 ⑴ 営業主は, 営業の性質の許す限り, 健康に対する危険から使用人を守り, また善良な道徳及び品行の維持を確保するために, 営業の場所, 業務に用いられる特定の設備や器具を準備し, これを維持し, さらに業務や就業時間を規定する義務がある ⑵ 商業使用人が営業主の家庭に同居するとき, 営業主は, その居室及び寝室, 就業時間及び休憩時間につき, 使用人の健康, 道徳, 宗教の観点から必要な範囲で設定し, 命じなければならない ⑶ 営業主が使用人の生活と健康に関する義務を履行しない場合, その損害賠償責任につき, 民法典第 842 条から第 846 条による不法行為の規定を準用する ⑷ 以上の営業主の義務は, あらかじめ契約によって排除したり制限したりすることはできない 第 63 条 ( 削除 ) 第 64 条 給与の支払 1 商業使用人への給与の支払は毎月の末日に行うものとする 2 給与の支払を延期する旨のいかなる合意も無効である 第 65 条 手数料 商業使用人が自身による取引行為の締結又は媒介に手数料を受け取る旨約定した場合, 第 87 条第 1 項, 第 3 項及び第 87a 条から第 87c 条までの代理商に関する規定を適用する 第 66 条から第 73 条 ( 削除 ) 第 74 条 契約による競業の禁止, 有償の待機期間 ⑴ 営業主と商業使用人 -31-

との間で, 雇用関係終了後の一定期間における営業上の行為の制限 ( 競業の禁止 ) を合意する場合は書面によってなされ, 営業主が署名し, 合意した契約条件を記載した書面を商業使用人に交付しなければならない ⑵ 競業の禁止は, 営業主が禁止期間につき補償金を支払う義務を負う場合に限り, 効力を有する 補償金は, 当該商業使用人が受領していた最終の契約上の給付の少なくとも2 分の1に相当する額を, 禁止期間中毎年支払わなければならない 第 74a 条 拘束力のない, あるいは無効の競業の禁止 ⑴ 1 営業主の営業上の正当な利益を保護するためではない場合, 競業の禁止は効力を有しない 2さらに, 支払われた補償額に対し, 場所, 期間及び対象となる事項からみて使用人の生計を不当に害するものである場合も, 競業の禁止は無効となる 3 競業禁止は雇用関係の終了から2 年の期間を超えてはならない ⑵ 1 使用人が契約締結当時未成年であった場合, 又は営業主が使用人に誓約又はこれに類似する保障をさせて約束させる場合, 競業の禁止は無効である 2 使用人が, 雇用契約終了後の自己の営業活動を制限する義務を使用人に代わって第三者に引き受けさせる契約も無効である ⑶ 公序良俗に反する法律行為の無効に関する民法典第 138 条の規定の適用を妨げない 第 74b 条 保証金の支払及び計算 ⑴ 第 74 条第 2 項により商業使用人に支払われるべき補償金は, 毎月月末に支払われるものとする ⑵ 1 使用人に帰属する契約上の給付が, 手数料又はその他変動所得である場合に限り, 補償額は, 直近 3 年の平均値により算定されるものとする 2 雇用契約の終了時に適用されるべき契約の存続が3 年に達していない場合, 当該契約条項の有効期間の平均値により算定される ⑶ 労務の遂行により生じる特別の費用の補填のためになされた給付は算定の基礎に含まれない 第 74c 条 他の所得の控除 ⑴ 1 商業使用人は, 補償金が支払われるべき期間に, 自己の労働力を他に使用して取得した所得, 又は故意に取得を怠った -32-

所得について, 弁済期の到来した保証金から控除することができる ただし, 保証金の額にこれらの金額を加算した額が, 使用人が最後に受領した契約上の給付額の10 分の1を超える場合に限られる 2 使用人が, 競業の禁止のために, その住所を移さざるを得なくなった場合は, 先述の給付額の10 分の1に代えて4 分の1とする 3 使用人が自由刑に服役していた期間については補償を請求できない ⑵ 使用人は, 営業主からの請求により, 営業主に対しその所得額に関する情報を提供する義務がある 第 75 条 競業の禁止の失効 ⑴ 使用人が, 営業主の契約違反のために第 70 条及び第 71 条によって雇用関係を終了した場合, 解約告知の時から1か月以内に, 使用人が書面によって合意に拘束されない旨を表示した場合, 競業の禁止は無効となる ⑵ 1 営業主の側から雇用契約を終了した場合, 競業の禁止は前項と同様の方法により無効となる ただし, 雇用契約の終了につき使用人個人に重大な原因があった場合, 又は営業主が書面をもって, 使用人が最後に取得した契約上の給付額全額を競業禁止期間にも支払う旨誓約した場合は, この限りでない 2 後者の場合, 第 74b 条の規定を準用する ⑶ 営業主が, 使用人の契約違反により第 70 条及び第 72 条の規定に基づいて雇用関係を解消した場合, 使用人に補償請求権はない 第 75a 条 営業主による競業の禁止の放棄 営業主は, 雇用契約の終了前に, 書面による表示をもって, 競業の禁止を放棄することができる このとき, 営業主の意思表示後 1 年を経過すれば, 営業主は補償金支払義務を免れる 第 75b 条 ( 削除 ) 第 75c 条 違約金 ⑴ 1 商業使用人が, 合意により負担した義務の不履行があった場合違約金を支払う旨約束したとき, 営業主は民法典第 340 条の規定に従った態様による場合にのみこれを請求できる 2 不当に多額の違約金の減額に関する民法典の規定の適用は影響を受けない ⑵ 合意による義務が営業主の使用人に対する補償金支払義務にかからしめら -33-

れていない場合で, 使用人が第 1 項による違約金に服する場合, 営業主は, 課している違約金のみ請求できる 履行の請求やその他の損害賠償を請求することはできない 第 75d 条 逸脱した合意 1 営業主は, 第 74 条から第 75c 条の規定から逸脱して, 商業使用人に対して不利益となるような合意を援用することはできない 2 相殺又はその他の方法によって, 賠償額の最低限度に関する法の規定を回避しようとする合意についても同様である 第 75e 条 ( 削除 ) 第 75f 条 使用者間の封鎖協定 1 営業主が, 他の営業主に対して, 当該他の営業主のもとで雇用されている使用人を雇用しない, あるいは特別な条件の下でのみ雇用するとの義務を負う旨合意をした場合, 両当事者は自由にこの合意を解約することができる 2この合意からは何らの訴権も抗弁も発生しない 第 75g 条 媒介使用人 1 第 55 条第 4 項の規定は, 営業主の営業所の外でその事業を媒介する権限を有する商業使用人にも適用される 2その権限に対する制限は, 第三者がこれを知り, 又は知り得べき場合にのみ対抗できる 第 75h 条 代理権の不存在につき善意の場合 ⑴ 商業使用人が, 営業主の営業所の外で取引を媒介するのみの権限を有しているにもかかわらず, 営業主の名義で取引を締結してしまった場合であって, かつ, 第三者がその代理権限の不存在を知らなかった場合, 営業主は, 当該取引の締結及び重要事項につき商業使用人又は第三者から通知を受けてから遅滞なく取引を否認しなければ, 当該取引について承認したものとみなす ⑵ 商業使用人が取引締結の権限を持ちつつ, 営業主の名前で締結する代理権を持っていなかった場合に, 営業主の名前で取引を行ったときも同様である 第 76 条から第 82 条 ( 削除 ) 第 82a 条 無給の見習いの競業の禁止 徒弟として雇用された場合を除き, 職業訓練のために無給で商人の営業に労務を提供するもの ( 見習い ) に対す -34-

る競業の禁止は, 商業使用人に支払われるべき報酬に関する部分以外の点につき, 商業使用人の規定が適用される 第 83 条 その他の従業員 商業を営むに当たり, 商人的な労務以外を提供する者については, その者の労務関係において適用される規定のみが適用される 第 7 章 代理商 第 84 条 代理商の定義 ⑴ 1 代理商は, 独立の営業主体として, 常時, 他の営業主 ( 委託者 ) のためにその取引を媒介し, 又は委託者の名前で契約を締結する権限を有する者である 2 独立 とは, ある人が本質的に自由にその活動と労働時間を決定できることを指す ⑵ 前項の意味における独立性を持たず, 常時, 委託者のためにその取引を媒介し, 又は委託者の名前で契約を締結する権限を有する者は, 従業員とみなす ⑶ 委託者も代理商となり得る ⑷ 本章の規定は, 代理商の委託者が, その事業の種類及び規模ゆえに商人的に組織された方法で営業することを必要としない場合においても適用される 第 85 条 契約書類 1いずれの当事者も, 契約内容及びその他契約に関する追加的な合意につき, 相手方当事者の署名を付した書面を要求できる 2この請求権は契約によって排除できない 第 86 条 代理商の義務 ⑴ 代理商は契約の媒介又は締結に尽力する義務がある その際, 代理商は委託者の利益のために行動しなければならない ⑵ 代理商は委託者に対し, 必要な事項を通知しなければならない 特に, 取引の媒介又は締結をした場合はその都度, 遅滞なく署名を付した上で通知しなければならない ⑶ 代理商は, 通常の商人が持つべき注意義務を尽くさなければならない -35-

⑷ 本条第 1 項及び第 2 項に反するいかなる合意も効力を有しない 第 86a 条 委託者の義務 ⑴ 委託者は代理商に, 見本, 図面, 価格表, 広告印刷物, 取引条件などその職務の遂行に必要な書類を, 自由に利用させなければならない ⑵ 1 委託者は代理商に必要な情報を通知しなければならない 2 特に代理商が媒介した取引や代理権のないまま締結した取引につき承諾するのか拒絶するのかを, 遅滞なく通知しなければならず, また代理商が媒介又は締結した取引に不履行があったときも, 速やかに通知しなければならない 3さらに, 委託者としては, 代理商が通常の状況下で期待できる場合よりも相当小さい範囲においてのみ, 契約締結できる, 又はその意思があるという場合も, 遅滞なく代理商に通知しなければならない ⑶ 第 1 項及び第 2 項に反する合意は効力を有しない 第 86b 条 履行補償手数料 ⑴ 1 代理商が取引から生じる義務の履行を保障した場合, 代理商は特別の報酬 ( 履行補償手数料 ) を請求することができる この請求権は事前に排除することはできない 2 履行補償は, 代理商が媒介又は締約した特定の取引についてのみ, あるいは特定の第三者との間の取引についてのみ, 引き受けることができる 3この引受けは書面によりなされなければならない ⑵ 履行補償手数料の請求権は取引の締約時に発生する ⑶ 1 第 1 項の規定は, 委託者又は第三者の営業所, 又は営業所がない場合にはその住所地が外国にあるとき, 適用されない 2さらに, 代理商に契約締結及び履行に関する制限のない代理権がある場合, その契約には適用されない 第 87 条 手数料支払義務のある取引 ⑴ 1 代理商は, 代理商契約関係の存続期間中に, その職務遂行により契約締結に寄与し, あるいは同種の取引の際に顧客として獲得した第三者と契約を締結したことにより, 締約された全ての取引につき, 手数料請求権がある 2 手数料が本条第 3 項により, 元代理商に帰属する場合には, 手数料請求権は認められない -36-

⑵ 1 代理商に特定の地域又は特定の顧客層が割り当てられているとき, 代理商契約関係において指定された地域又は顧客層の相手方の協力なくなされた取引についても, 手数料請求権がある 2ただし, 手数料が第 3 項により元代理商に支払われるべきであるときには適用されない ⑶ 1 代理商契約関係が終了した後に締結された取引について, 代理商は次の場合にのみ手数料請求権を有する ⒈ 代理商が取引を媒介し, 又は開始し準備して, その取引の締結につき主として当該代理商の働きに帰せられる場合で, かつ, 代理商契約関係の終了から合理的な期間内に取引が締結されている場合, 又は, ⒉ 代理商契約の終了の前に, 第三者から, 第 1 項又は第 2 項第 1 文により代理商が手数料請求権を持ち得るような取引の締結申込み, 代理商又は委託者がその申込みを受領していた場合 2 特定の状況下において, 承継した代理商に対しても公平性の見地から手数料を割合的に支払うべき場合, 承継した代理商にも第 1 項による手数料請求権は, 割合に応じて帰属する ⑷ 取引締結時における手数料請求権に加えて, 代理商が取立てを委任されてこれを行ったときにはその集金額について, 代理商は, 取立手数料請求権も有する 第 87a 条 手数料支払の弁済期 ⑴ 1 代理商は, 委託者が取引を実行したら直ちに, そしてその限りにおいて, 手数料請求権を取得する 2これと異なる合意をすることはできるが, 委託者による取引の実行についての相当範囲での前払請求権につき, 遅くともその1か月後の末日をもってその弁済期とする 3しかし, いかなる合意ともかかわりなく, 代理商は, 第三者が取引を締結したら直ちに, そしてその限りにおいて, 手数料請求権を取得する ⑵ 第三者が履行しないことが確実である場合, 手数料請求権は発生しない 既に受け取った金額は返還すべきものとする ⑶ 1 代理商は, 委託者が取引を履行しないことが確実であるとき, 又は一部のみ履行することが確実であるとき, あるいは合意した方法で履行しないこ -37-

とが明らかであるときもまた, 手数料請求権を有する 2ただし, 不履行が委託者の支配の及ばない理由に基づく場合に限り, 手数料請求権は発生しない ⑷ 手数料は, 第 87c 条第 1 項により, その請求額の計算がなされた月の末日を弁済期とする ⑸ 本条第 2 項前段, 第 3 項, 第 4 項に反する合意は, 代理商にとって不利益なものである場合, 無効となる 第 87b 条 手数料額 ⑴ 手数料額が特定されていない場合, 通常の価額により合意されたものとみなす ⑵ 1 手数料は, 第三者又は委託者が支払う義務のある価額をもとに計算されるべきものとする 2 現金払による割引は控除されない 同様に, 運送費, 梱包費, 関税及び税金のような雑費についても, 個別に第三者の負担とするのでない限り, 控除されない 3 売上税については, 税法上の規定に基づき計算書の中で別個に示されているだけである場合には, 区別して負担させるべきものではない ⑶ 1 特定期間の使用 用益貸借契約については, 手数料は契約期間における対価として計算される 2 契約期間が特定されていない場合, 第三者が契約を終了できる時点までの対価として計算される 代理商は, 契約が更新されると, それに基づき計算された追加の手数料の請求権を有する 第 87c 条 手数料の精算 ⑴ 1 委託者は, 毎月, 代理商に支払うべき手数料額について精算しなければならない 精算のための積算期間は最長 3か月まで伸張できる 2 精算は, 遅滞なく, 遅くとも翌月の末日までになされなければならない ⑵ 代理商は, 精算の際, 第 87 条により付与される手数料に関する全ての取引についての帳簿の抄本を請求できる ⑶ さらに, 代理商は, 手数料請求権やその弁済期, 及び手数料額に関する重要事項の全てに関する情報を請求することができる ⑷ 帳簿の抄本の請求が拒絶され, あるいは精算や帳簿の抄本の正確性や完全 -38-

性に合理的理由をもって疑念がある場合, 代理商は, 委託者の選択に基づき, 代理商自身, 又は代理商が指定した公認会計士又は宣誓した帳簿鑑定者が, 取引台帳, あるいは精算又は帳簿の正確性や完全性に関する正当性を確認するために必要な範囲でその他の書類の閲覧することを認めるよう, 請求できる ⑸ 代理商のこれらの権利は排除したり制限したりすることはできない 第 87d 条 費用の償還 代理商は, 商慣習上, 通常と認められる範囲で取引行為により生じた費用のみを請求できる 第 88 条 ( 削除 ) 第 88a 条 留置権 ⑴ 代理商は, 事前に法定の留置権を放棄することはできない ⑵ 契約関係の終了により, 代理商は, 弁済期の到来した手数料請求権及び費用償還請求権のためにのみ, 一般規定に基づき発生する留置権によって, 使用していた書類 ( 第 86a 条第 1 項 ) を留置し得る 第 89 条 代理商契約の終了 ⑴ 1 代理商契約に特定の期間の定めがある場合, 契約期間が1 年の場合は期間経過の1か月前,2 年の場合は2か月前, 3 年から5 年の場合は3か月前の告知により解約できる 25 年以上の契約期間の場合は6か月前の告知により解約できる 3 解約の効果は, 他に別段の合意がなければ, その月の末日にのみ生じる ⑵ 1 前項第 1 文 第 2 文による解約告知の期間は, 合意により伸張できる また委託者からの解約告知の場合, 代理商からの解約告知の場合よりも告知期間を短縮することができない 2 委託者からの解約につき告知期間を短縮して合意した場合, それは代理商からの告知期間について合意したものとする ⑶ 1 特定の期間の定めのある契約関係において, 契約期間の終了時に両当事者が継続を合意した場合, 期間の定めのない契約として延長されたものとみなす 2 本条第 1 項第 1 文 第 2 文による契約終了のための解約告知期間の算定については, 契約関係のあった全期間を基準に決定される -39-

第 89a 条 即時の解約告知 ⑴ 1 代理商契約関係は, 重大な理由がある場合, 一定期間前の解約告知がなくとも, 一方当事者から解約できる 2この権利は排除も制限もできない ⑵ 解約告知が, 一方当事者の行為に起因する場合, 当該当事者は他方当事者に対し, 契約関係の終了により生じた損害を賠償する義務がある 第 89b 条 補償請求権 ⑴ 1 代理商は, 契約期間の満了後, 次の場合に限り, 委託者に相当額の補償を請求することができる ⒈ 委託者が, 代理商契約の終了後も, 代理商が獲得した新規顧客との取引関係から相当の利得を得ている場合, かつ, ⒉ 当該顧客との取引から代理商が取得できなくなった手数料など, 補償の支払につきあらゆる事情を勘案した上で公平であると評価される場合 2 新規顧客の獲得 について, 代理商が既存の顧客との取引関係を相当程度拡大させた場合は, 新規顧客の獲得と経済的に同等のものと評価する ⑵ 補償額は, 代理商の活動期間の最終の5 年間における年間手数料の平均額, 又は年間報酬の平均額を上限とする 契約期間が5 年に満たない場合には, 活動期間における平均額を適用する ⑶ 次の場合には補償請求権は発生しない ⒈ 代理商が契約関係を解約したとき ただしその原因が委託者の行為によるものであるとの根拠があるとき, あるいは代理商がその年齢又は健康上の理由から活動を継続できなくなったときを除く ⒉ 委託者が代理商との契約関係を解約し, それが代理商の責めに帰すべき行為を重大な理由とするとき, あるいは, ⒊ 第三者が代理商の代わりに契約に介入するとの合意が代理商と委託者との間にあることを理由とする場合 そのような契約は代理商契約関係の終了前に取り決めることはできない ⑷ 1 補償請求権は事前に排除できない 2 当該請求権は, 代理商契約の終了後 1 年以内に行使しなければならない ⑸ 1 本条第 1 項, 第 3 項及び第 4 項は, 保険代理商の場合にも適用され, 代 -40-

理商が獲得した新規顧客との取引 を, 保険代理商が新たに媒介した保険契約 に読み替える また, 保険代理商が既存の保険契約を相当程度拡張したことを, 経済的には新規に保険契約を媒介したものと評価する点についても同様である 2 保険代理商の補償額は, 第 2 項に代えて,3 年分の年間手数料又は年間報酬に相当する額を上限とする 3 本項第 1 文及び第 2 文は住宅貯蓄金融の代理商にも準用される 第 90 条 取引及び業務上の秘密 代理商は, 委託者のための営業上の活動を通じて, 代理商に開示された, あるいは知るに至った取引上及び業務上の秘密を, 代理商契約終了後においても, 利用したり第三者に伝えたりしてはならない ただし, あらゆる事情からして, 通常の商人が職業上当然に持ち得る基準に相反する場合はこの限りでない 第 90a 条 競業に関する合意 ⑴ 1 代理商がその契約関係終了後においてその営業上の活動を制限する合意は ( 競業制限特約 ), 書面によってなされなければならず, 契約条項を記載した書面に委託者が署名した上で, 代理商に交付されなければならない 2この合意は, 代理商契約の終了から長くとも 2 年を超えない期間においてのみ設定できる 合意は, 代理商に割り当てられた地理的範囲, あるいは顧客の範囲についてのみ設定されるものとし, かつ, 代理商が委託者のために媒介又は締結に尽力した取引の種類についてのみ設定できるものとする 3 委託者は代理商に対し, 競業を制限する期間につき合理的な額の補償金を支払う義務がある ⑵ 委託者は, 代理商契約の終了までに, 文書で, 競業の制限を有効に放棄することができる そのような意思表示から6か月の期間の経過後に, 委託者は補償金の支払を免れることができる ⑶ 代理商契約の一方当事者が, 他方当事者の責めに帰すべき重大な理由から, 代理商契約を解消した場合, その者が解約後 1か月以内に書面によって意思表示すれば, 競業制限特約の拘束を受けない ⑷ これらの規定につき, 代理商に不利益になるような合意をすることはできない -41-

第 91 条 代理商の代理権 ⑴ 第 55 条の規定は, 委託者から取引の締結の代理権を与えられている代理商で, 商人でないものにも適用される ⑵ 1 代理商は, 取引を締結するための代理権を与えられていなくても, 商品の欠陥に関する通知, 商品の処分に関する意思表示, 及び, 瑕疵ある給付から生じる権利につき第三者が請求又は留保するための類似の意思表示につき, 受領する権限があるものとされる また, 代理商は, 委託者に属する権利の証拠を保全することもできる 2この権利の制限は, 第三者がこれを知り又は知り得べき場合に限って, 第三者に対抗できる 第 91a 条 代理権の欠缺 ⑴ 取引を媒介する権限のみ与えられている代理商が, 委託者の名前で契約を締結し, かつ, 第三者が代理権の欠缺を知らなかった場合で, 代理商又は第三者から取引の締結及び重要な内容について知らされた後に遅滞なく第三者に対して取引を拒絶しなかった場合には, 取引は委託者により同意されたものとみなす ⑵ 代理商が締約代理商であっても, 当該取引につき委託者の名で締結する代理権を有していなかった場合に委託者の名前で取引を締結した時も同様である 第 92 条 保険代理商及び住宅貯蓄金融の代理商 ⑴ 保険代理商とは, 保険契約を媒介又は締結するための権限を与えられている代理商である ⑵ 保険代理商と保険者との契約関係には, 本条第 3 項, 第 4 項を除く他, 代理商と委託者との間の契約関係に適用される条項が適用される ⑶ 1 第 87 条第 1 項第 1 文にかかわらず, 保険代理商は, その職務の遂行による取引についてのみ手数料請求権を有する 2 第 87 条第 2 項は保険代理商に適用しない ⑷ 保険代理商は, 保険契約者が保険料を支払い次第, 契約関係に基づき保険料から算定される手数料を請求する権利 ( 第 87 条第 1 項 ) を有する ⑸ 本条第 1 項から第 4 項までの規定は, 住宅貯蓄金融の代理商にも準用される 第 92a 条 最低労働条件 ⑴ 1 契約により他の委託者のために活動すること -42-

が許されていない, あるいは取引活動の種類及び範囲からそれができない代理商の契約関係について, 連邦司法 消費者保護省は, 連邦経済エネルギー省と協力して, 代理商団体及び委託者団体による公聴会を経た上で, 委託者が契約上給付すべき最低限度を確定し, これらの代理商や特定の代理商のグループにとって社会的 経済的に必要な物資が確保されるように, 法規命令をもって整備することができる このとき連邦参議院の承認を要しない 2 確定した給付額は, 契約によって排除することも制限することもできない ⑵ 1 前項の規定は, 一つ又は複数の契約に基づき, 同一の保険コンツェルン又は既存の組織共同体に属している複数の保険者のために, 取引を媒介又は代理する権限を有する保険代理商にも適用される ただし, これらの保険者のうちの一つとの契約関係の終了が, 他の保険者との契約関係の終了に影響を及ぼし得る場合に限る 2さらにこの場合において, 全ての保険者が連帯して又は分割して, あるいは保険者のうちの一人によって確定された給付が履行されること, 及びどのようにして彼らに対する補償が実行されるべきかについて, 連邦参議院の承認を要することなく法規命令をもって定めることができる 第 92b 条 副業としての代理商 ⑴ 1 第 89 条及び第 89b 条の規定は, 副業として代理商を行う者に適用されない 2 契約関係に期間の定めがないとき, 1か月前に解約告知をした上で, 暦月の末日に契約を解約することができる 解約告知期間として別の合意をする場合, 両当事者について同じ内容でなければならない 3 第 87 条第 1 項第 2 文による相当額の前払請求権は合意によっても排除されない ⑵ 第 1 項の規定は, 明示的に副業の代理商として, 取引の媒介又は代理の権限を付与した委託者のみが, 援用できる ⑶ 代理商が副業の代理商としてのみ活動するか否かは, 取引通念に従い決せられる ⑷ 第 1 項から第 3 項までの規定は保険代理商及び住宅貯蓄金融の代理商に準用される -43-

第 92c 条 欧州共同体の代理商, 海事代理商 ⑴ 代理商が, その契約上, 委託者のためになすべき活動を欧州共同体圏外で執行しなければならないとき, 又は欧州経済圏協定の他の締約国で執行しなければならないとき, 本章の全ての条項は, 本章とは異なる合意をすることができる ⑵ 代理商が, 船積, 通関, 又は船舶の艤装, あるいは航路の予約に関する取引を媒介又は代理する権限を与えられた者であるときも, 同様に適用される 第 8 章 商事仲立人 第 93 条 定義 ⑴ 契約関係に固定されることなく, 業として他人のために, 物品又は有価証券の買入又は売却, 貨物運送, 船舶賃貸借, 又はその他商取引の対象とされている事柄につき, 仲介を引き受けている者は, 商事仲立人の権利義務を有する ⑵ 上記に掲げた行為以外の仲介, 特に不動産に関する取引の仲介については, 商事仲立人により行われたとしても, 本章の規定の適用はない ⑶ 本章の規定は, 商事仲立人の企業が, その種類及び量において, 商人的に組織化された営業活動を必要としない場合であっても, 適用される 第 94 条 結約書 ⑴ 商事仲立人は, 当事者がその交付を免除せず, 又は取引目的物の種類からその地域の慣習上免除される場合を除き, 取引の締結後遅滞なく, 自らの署名を付した結約書を両当事者に交付しなければならない 結約書には, 両当事者の氏名, 取引の目的物及び取引条件, 特に物品又は有価証券の販売の場合には, その種類及び量, 並びに価額及び引渡時期について記載されていなければならない ⑵ 直ちに履行すべき取引ではない場合, 結約書は両当事者に署名のために交付することを要する このとき, それぞれ一方当事者の署名済みの結約書が他方当事者に送付されるものとする ⑶ 一方当事者が結約書の受取又は署名を拒否したとき, 商事仲立人は他方当 -44-

事者に遅滞なく通知しなければならない 第 95 条 通知の留保 ⑴ 商事仲立人が一方当事者の氏名の表示を留保した結約書を, 他方の当事者が受け取ったとき, 後日結約書に当事者氏名を記載されるべき当事者と取引を締結したものとする ただし, 相応の理由を持って当事者が異議を申し立てる場合はこの限りではない ⑵ 他の当事者の氏名は, その地域の商慣習に基づく期間内に記載されなければならない そのような期間がない場合には, 個別の事情において合理的な期間内に記載されるものとする ⑶ 1 当事者の氏名が明かされないままのとき, あるいは記載された者又は会社に対して異議を申し立てる相応の理由があるとき, 当事者は商事仲立人に対し, 取引の履行を請求することができる 2 当事者が商事仲立人の催告に対し, 履行請求の有無につき遅滞なく意思表示を行わなかった場合, この請求権は排除される 第 96 条 見本の保管 1 商事仲立人は, 当事者双方が免除し, 又は取引目的物の種類からその地域の商慣習上免除される場合を除き, 仲立人の媒介により見本売買によって販売された商品の見本の交付を受けている場合, 商品が品質に関する異議を申し立てられることなく受領され, 又は他の方法により取引が完了したといえるまで, これを保管しなければならない 2 商事仲立人は見本を識別できるようにしておかなければならない 第 97 条 集金に関する権限の不存在 商事仲立人は, 支払の受領, 又は契約によって定められたその他の給付を受領する権限を有しないものとみなす 第 98 条 両当事者に対する責任 商事仲立人は, 両当事者の双方に対して, 自己の過失によって生ずる損害につき責任を負う 第 99 条 両当事者に対する報酬請求権 当事者間でいずれが仲立人に報酬を支払うべきかにつき特に合意をしていなければ, これと異なる地域の商慣習がない限り, 両当事者が半額ずつ支払うものとする 第 100 条 日記帳 ⑴ 1 商事仲立人は, 日記帳を作成して, 全ての締結した取引に関し, 日々記帳する義務を負う 2 記帳は時系列で行われなければな -45-

らない また第 94 条第 1 項に掲げる事項につき記載されなければならない 3 記帳につき, 商事仲立人は毎日これに署名し, 又は民法典第 126 条第 1 項による電子署名を付さなければならない ⑵ 商業帳簿の作成及び保存に関する第 239 条及び第 257 条の規定は, 商事仲立人の日記帳に適用される 第 101 条 日記帳の抄本 商事仲立人は, 当事者の求めに応じていつでも, 当事者の双方に対して, 日記帳の抄本を交付する義務を負う その抄本には, 商事仲立人の署名が付され, 仲立人が媒介した取引に関して記載したあらゆる事項が含まれていなければならない 第 102 条 訴訟手続における文書提出 訴訟係属中, 裁判所は, 当事者からの請求がない場合でも, 結約書, その抄本, その他の証拠と比較するために日記帳の提出を命じることができる 第 103 条 秩序違反行為 ⑴ 商事仲立人が以下の行為をした場合は, 秩序違反行為とする ⒈ 故意又は過失によって, 締結された取引に関する日記帳を作成 保存せず, 又は第 100 条第 1 項により指定された手法に従った日記帳を作成しなかった場合, 又は, ⒉ 法定の保存期間の終了前に日記帳を破棄した場合 ⑵ 秩序違反行為があった場合,5000 ユーロまでの過料に処することができる 第 104 条 小規模商事仲立人 1 小規模な商品取引の媒介を行う者に対して, 結約書及び日記帳に関する規定は適用されない 2 保険契約及び住宅貯蓄契約の媒介を行う者に対して, 日記帳に関する規定は適用されない 第 9 章 過料規定 第 104a 条 ( 過料規定 )⑴ 1 故意又は過失によって第 8b 条第 3 項第 1 文第 2 号に掲げられた事項につき記載していない場合, 又は記載が不正確, あるい は不完全である場合には, 秩序違反行為があったものとする 2 秩序違反行 -46-

為に対しては,20 万ユーロまでの過料に処することができる ⑵ 秩序違反行為法第 36 条第 1 項第 1 号の意味における行政庁は, 連邦金融監督庁とする -47-

第 2 編 商事会社及び匿名組合 第 1 章 合名会社 第 1 節 会社の設立 第 105 条 合名会社の概念 民法典の適用 ⑴ 共通の商号の下で商業を営むことを目的とする会社であって, いずれの社員も会社債権者に対する責任を制限されないものは, 合名会社とする ⑵ 1その営業が第 1 条第 2 項によっても商業とされない会社, 又はただ自己の財産を管理するのみの会社は, その企業の商号が商業登記簿に登記されている場合に限り, 合名会社となる 2 第 2 条第 2 文及び第 3 文は, この場合に準用する ⑶ 民法典の組合に関する規定は, 本章に異なる定めがない限り, 合名会社に適用する 第 106 条 商業登記簿への申請 ⑴ 会社は, その本拠を管轄する裁判所に対し, 商業登記簿への登記のために申請を行わなければならない ⑵ 申請は, 次の内容を含まなければならない ⒈ 各社員の姓, 名, 生年月日, 及び居住地 ⒉ 会社の商号, 本拠地, 及び内国の事業上の住所 ⒊ ( 削除 ) ⒋ 社員の代表権第 107 条 申請を要する変更 会社の商号を変更する場合, 会社の本拠を異なる場所に移転する場合, 内国の事業上の住所を変更する場合, 新たに社員が加入する場合, 又は社員の代表権を変更する場合, いずれも商業登記簿への登記のために申請を行わなければならない -48-

第 108 条 全社員による申請 申請は, 総社員により行われなければならない 第 2 節 社員相互間の法律関係 第 109 条 定款 社員相互間の法律関係は, 定款に従う 第 110 条から第 122 条までの規定は, 定款が異なる定めを置いていない場合に限り, 適用される 第 110 条 費用及び損失の補償 ⑴ 社員が, 会社に関する事項につき, その状況に応じ必要と判断される費用を投下し, 又は業務執行ないしこれと不可分の危険により損失を負担した場合, 会社は当該社員に対しこれを補償する義務を負う ⑵ 会社は, 費用として投下された金銭について, その費用投下の時点から利息を付す義務を負う 第 111 条 利息を付す義務 ⑴ 適時に金銭の出資を行わず, 受け取った会社の金銭を適時に会社の金庫に引き渡さず, 又は権限なく会社の金庫から自己のために金銭を引き出した社員は, 出資が行われるべきであった日, 金銭の引渡しがなされるべきであった日, 若しくは金銭の引き出しがなされた日から利息を支払わなければならない ⑵ その他の損害の主張は, 排除されない 第 112 条 競業の禁止 ⑴ 社員は, 他の社員の承諾を得ることなく, 会社の事業の部類に属する取引に参加し, 又は他の同種の商事会社に人的に責任を負う社員として参加することはできない ⑵ 社員が他の会社に入社する場合において, 他の社員が当該社員が人的に責任を負う社員として参加することを知っており, かつ, それにもかかわらず当該出資を断念すべきことが明示に約されない場合, 当該社員による他の会社への入社の承諾が与えられたものとみなす 第 113 条 競業の禁止に対する違反 ⑴ 社員が第 112 条により課された義務に違反した場合, 会社は損害賠償を請求することができる 会社は, 損害賠償請求に代わり, 当該社員に対して, 当該社員が自らの計算で行った取引を -49-

会社の計算で行った取引とみなし, かつ, 第三者の計算で行われた取引に関する報酬を引渡し, 又は当該報酬に対する当該社員の請求権を移転するよう請求することができる ⑵ 会社による請求権の主張は, その他の社員の決議により行う ⑶ 当該請求権は, 取引の締結又は社員による他会社への参加をその他の社員が認識した時点, 若しくは重過失がなかったならばこれを認識できた時点から3か月の経過をもって時効により消滅する 当該認識があった場合又は重大な過失により認識できなかった場合でも, 当該請求権の発生時から5 年の経過をもって時効により消滅する ⑷ 社員による会社解散を求める権利は, これらの規定により影響を受けない 第 114 条 業務執行 ⑴ 会社の業務執行は, 全ての社員がその権限を有し, またその義務を負う ⑵ 定款の定めにより業務執行を一又は複数の社員に委任した場合, その他の社員は業務執行から排除される 第 115 条 複数社員による業務執行 ⑴ 業務執行の権限が全社員又は複数の社員に属する場合, 当該社員の各自が一人でこれを行う権限を有する ただし, その他の社員がある行為の実行に異議を唱えた場合, 当該行為は行われてはならない ⑵ 定款の定めにより業務執行の権限を有する社員が共同でのみ行為できる場合, 各業務は業務執行の権限を有する全ての社員の同意を要する ただし, 危険が差し迫っている場合はこの限りでない 第 116 条 業務執行の権限の範囲 ⑴ 業務執行の権限は, 会社の商業にかかる通常の業務に当然に随伴する全ての行為に及ぶ ⑵ これを越える行為の実行は, 総社員の決議を要する ⑶ 1 支配人の選任は, 業務執行の権限を有する全ての社員の同意を要する ただし, 危険が差し迫っている場合はこの限りでない 2 支配権の撤回は, 当該権限の付与にかかる権限ある社員又は当該権限の付与に関与する権限の -50-

ある社員のいずれかにより行うことができる 第 117 条 業務執行の権限の剝奪 業務執行の権限は, 重大な事由がある場合, 他の社員の申立てに基づき, 裁判上の決定により, 社員からこれを奪うことができる 当該重大な事由とは, 特に重大な義務違反がある場合, 又は秩序に従った業務執行をする能力を欠く場合をいう 第 118 条 社員の監督権 ⑴ 社員は, 業務執行から排除された場合であっても, 会社に関する事項について情報を獲得し, 会社の商業帳簿及び書類を閲覧し, かつ, これらを用いて貸借対照表並びに年次決算を作成することができる ⑵ 前項の権利を排除し又は制限する合意がある場合でも, 不誠実な業務執行がなされたとの理由が存在する場合, 当該権利の主張は妨げられない 第 119 条 決議 ⑴ 社員により決議をすべき場合, 当該決議に関与するために招集された社員全員の同意を要する ⑵ 定款の定めにより多数決により決定をすべきものとされた場合であって, 疑義が生じた場合, その多数は社員の数に従い計算する 第 120 条 利益及び損失 ⑴ 各事業年度末に貸借対照表に基づき当該年度の利益又は損失を確定し, 各社員のこれに対する割合を計算する ⑵ ある社員に帰属すべき利益は, 当該社員の資本持分に繰り入れる ある社員が負担すべき損失及び当該事業年度において資本持分から引き出された金銭は, 当該資本持分から控除する 第 121 条 利益及び損失の分配 ⑴ 1 年次の利益から, まず各社員の資本持分の100 分の4の額に当たる分配分が, 各社員に帰属する 2 年次の利益がこれに足りない場合, 当該分配分は, 比例的に低い割合により定められる ⑵ 1 第 1 項により社員に帰属すべき利益の分配分を計算するに際し, 当該社員が年度内に出資として行った給付がある場合, 当該給付時から経過した期間を割合的に考慮する 2 当該社員が年度内に金銭を資本持分から引き出した場合, 当該引出額は当該引出しまでに経過した期間に従って割合的に考慮する -51-

⑶ 第 1 項及び第 2 項により計算された利益の分配分を越える年次利益の部分, 及び当該事業年度の損失は, 社員の頭数に従い分配する 第 122 条 金銭の引出し ⑴ 各社員は, 直近の事業年度において確定された自らの資本持分の100 分の4の額に至るまで, 自らの負担において, 会社金庫より金銭を引き出す権限を有し, 及び会社に明白な損害をもたらすものでない限り, 当該額を超えて前年度利益に対して有する割合分の支払を求めることもできる ⑵ 以上の場合を除くほか, 社員は, 他の社員の同意なしに自己の資本持分を減ずることはできない 第 3 節 社員の第三者に対する法律関係 第 123 条 第三者に対する関係での効力 ⑴ 合名会社の効力は, 第三者との関係では, 当該会社が商業登記簿に登記された時点をもって生じる ⑵ 会社がその業務を登記の前に開始した場合, 会社の効力は当該業務開始の時点で生じる ただし, 第 2 条又は第 105 条第 2 項により異なる結果が生じない場合に限る ⑶ より遅い時点で会社を開始する旨の合意は, 第三者に対しては効力を生じない 第 124 条 法的独立性, 会社財産に対する強制執行 ⑴ 合名会社は, 自己の商号の下で権利を取得し, 債務を負い, 不動産に対する所有権その他物的権利を取得し, 裁判上訴え, 又は訴えられることができる ⑵ 会社財産に対する強制執行を行うには, 会社に対し裁判に基づく執行可能な債務名義を要する 第 125 条 会社の代表 ⑴ 各社員は, 会社を代表する権限を有する ただし, 定款の定めにより当該社員が代表権から排除されている場合を除く ⑵ 1 定款の定めにより, 全社員又は複数の社員が共同してのみ会社を代表することができる旨定めることができる ( 共同代表 ) 2 共同代表の権限を与 -52-

えられている社員は, 当該社員のうち個別の者に特定の業務又は特定の種類の業務を行う権限を与えることができる 3 会社に対する意思表示がなされるべき場合, 代表に関して協働する権限ある社員の一人に対して意思表示がなされれば足りる ⑶ 1 複数の社員が共同して行為をしない場合, 定款の定めにより, 社員が支配人と共同してのみ会社を代表することができる旨定めることができる 第 2 項第 2 文及び第 3 文はこの場合に準用する 第 125a 条 業務信書における明示事項 ⑴ 1 特定の受領者に向けた形式を有する会社の全ての業務信書は, 等しく会社の法的形式及び本拠, 登記裁判所, 並びに会社の商業登記簿における登記番号を明示しなければならない 2 社員に自然人を有しない会社においては, 以上に加え業務信書において, 社員の商号, 及び有限会社法第 35a 条又は株式法第 80 条により業務信書について規定する事項を当該社員に関して明示しなければならない 3 会社の社員に合名会社又は合資会社が存在し, 当該合名会社又は合資会社において人的責任を負う社員が自然人である場合, 第 2 文による明示は要しない ⑵ あらかじめ印刷された書式用紙又は注文票については, 第 37a 条第 2 項及び第 3 項を, 会社の代表権を有する社員又はその機関上の代表者及び清算人に対する過料については, 第 37a 条第 4 項を準用する 第 126 条 代表権の範囲 ⑴ 社員の代表権は, 不動産の譲渡及び負担, 並びに支配権の付与及び撤回を含め, 全ての裁判上及び裁判外の業務及び法的行為に及ぶ ⑵ 代表権の範囲の制限は, 第三者に対して効力を有しない これは, 特に代表権が特定の業務及び業務の種類にのみ及ぶとする制限, 又は代表権が特定の状況, あるいは特定の時ないし個別の場所においてのみ生ずるとする制限に妥当する ⑶ 会社の複数の営業所のうちの一にかかる営業に代表権が制限される場合, 第 50 条第 3 項の規定を準用する 第 127 条 代表権の剝奪 代表権は, 重大な事由がある場合, 他の社員の申 -53-

立てに基づき, 裁判上の決定により, ある社員からこれを奪うことができる 当該重大な事由とは, 特に重大な義務違反がある場合, 又は秩序に従った業務執行をする能力を欠く場合をいう 第 128 条 社員の人的責任 1 社員は, 債権者に対して, 会社の債務につき, 連帯債務者として人的に責任を負う 2これに反する合意は, 第三者に対しては効力を有しない 第 129 条 社員の抗弁 ⑴ 会社の債務について社員に対する請求が行われた場合, 当該社員は, 自己の人的な理由に基づかない抗弁であって, 会社であれば提出できたであろうものに限り, 主張することができる ⑵ 社員は, 会社の債務の基礎となる法律行為を取り消す権利が会社に属する場合, 債権者に対する弁済を拒むことができる ⑶ 社員は, 債権者が会社の弁済期にある債権との相殺を通じて満足を受けられる場合, 同様に相殺をなす権限を有する ⑷ 社員に対する強制執行は, 会社に対する裁判に基づく執行可能な債務名義により行うことはできない 第 129a 条 ( 削除 ) 第 130 条 加入社員の責任 ⑴ 既に存在する会社に入社する者は, 第 128 条及び第 129 条の基準に従い, 自らの入社より前に確定した会社の債務について, 商号の変更の有無にかかわらず, 他の社員と同様に責任を負う ⑵ これに反する合意は, 第三者に対しては効力を有しない 第 130a 条 支払不能又は債務超過時の倒産手続申立義務 ⑴ 1 社員に自然人を有しない会社において, 支払不能となり又は債務超過の状態となった後は, 会社の代表権を有する社員の機関上の代表者及び清算人は, 会社のために支払を行ってはならない 2 当該時点の後であっても, 秩序に従い誠実な業務管理者の注意義務に合致する支払については, この限りでない 3 社員に対する支払は, これが会社の支払不能を惹起すべきものである限りにおいて, 第 1 文と同様とする ただし, 第 2 文に示す注意義務を考慮しても, 認識できなかった場合にはこの限りでない 4 第 1 文から第 3 文は, 会社の社 -54-

員に合名会社又は合資会社が存在し, 当該合名会社又は合資会社において人的責任を負う社員が自然人である場合, 適用しない ⑵ 1 倒産法第 15a 条第 1 項に反し倒産手続開始の申立てがされず又は適時にされない場合, 若しくは第 2 項に反し支払がされた場合, 会社の代表権を有する社員の機関上の代表者及び清算人は, 会社に対し, 連帯債務者としてこれにより生じた損害を賠償する義務を負う 2これらの者が, 秩序に従い誠実な業務管理者の注意義務を尽くしたか否かに争いがある場合, これらの者が立証責任を負う 3 当該損害賠償義務は, 社員との合意により制限し又は排除することはできない 4 会社債権者に対する弁済のために損害賠償が必要である場合, 当該損害賠償義務は, 会社が放棄又は和解をなし, 若しくは社員の決議により消滅させることはできない 5 損害賠償義務者が支払不能であり, かつ, 倒産手続の適用によりその債権者との合意が成立した場合, 又は損害賠償義務が倒産計画により規律される場合, 第 4 文は適用しない 6 本条による請求権は,5 年の経過をもって時効により消滅する ⑶ 第 1 項及び第 2 項にいう機関上の代表者が社員に自然人を有しない会社である場合, 又は同様の会社の結合が連なる場合, その趣旨に従い本条を適用する 第 130b 条 ( 削除 ) 第 4 節 会社の解散及び社員の退社 第 131 条 解散事由 ⑴ 合名会社は, 次の場合に解散する ⒈ 会社が存続する期間の満了 ⒉ 社員の決議 ⒊ 会社財産に対する倒産手続の開始 ⒋ 裁判上の決定 ⑵ 1 人的責任を負う社員が自然人ではない合名会社は, 次の場合にも解散する -55-

⒈ 財団不足により倒産手続の開始が拒絶される旨の決定の法的効力 ⒉ 家事事件及び非訟事件の手続に関する法律第 394 条に基づく財産欠如 (Löschung) 2 人的責任を負う社員が他の合名会社又は合資会社であって, その人的責任を負う社員が自然人である場合, これは適用しない ⑶ 1 特段の契約上の定めがない場合, 社員は次の事由により退社する ⒈ 社員の死亡 ⒉ 社員の財産に対する倒産手続の開始 ⒊ 社員による解約告知 ⒋ 社員の私的債権者による解約告知 ⒌ 定款で予定された事情の発生 ⒍ 社員の決議 2 社員は当該事由の発生をもって退社するが, 解約告知の場合, 解約告知期間の経過前には退社しない 第 132 条 社員の解約告知 会社が期間の定めなく存続する場合, 社員の解約告知は, 事業年度の終了をもってのみこの効果が生じる 当該解約告知は, 効果発生の時点より少なくとも6か月前に行われなければならない 第 133 条 裁判上の決定による解散 ⑴ 重大な事由が存する場合, 社員の申立てに基づき, 裁判所の決定により, 定められた存続期間の経過前又は存続期間の定めのない会社の場合でも会社の解散を宣告することができる ⑵ 当該重大な事由が特に存在する場合とは, 他の社員が故意又は重大な過失により定款の規定により自らに課された本質的な義務に違反し, 又は当該義務の履行が不可能な場合をいう ⑶ 社員の会社解散を請求する権利を排除し, 又は本規定に反してこれを制限する合意は, 無効とする 第 134 条 社員の生存期間にかかる会社, 会社の継続 社員の生存期間を存続期間とする会社, 又は存続期間の経過後もそのまま継続している会社は, 第 132 条及び第 133 条の定める存続期間の定めのない会社と同様に扱う -56-