参考資料2 三河湾の物質循環に関わる情報整理

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9-2_資料9(別添)_栄養塩類管理に係る順応的な取組の検討

塩分 大岡分水路 表層 底層 図 1-2 塩分の水平分布 ( 左図 : 表層 右図 : 底層 ) 調査の結果 表層の塩分は 東京湾西岸で低く 東岸に向かうにしたがって高くなる傾向が確認されました 特に 隅田川や荒川 鶴見川, 大岡分水路の河口付近では 塩分が低くなっており これは調査日の3 日前に降

3-3 現地調査 ( カレイ類稚魚生息状況調査 ) 既存文献とヒアリング調査の結果 漁獲の対象となる成魚期の生息環境 移動 回遊形態 食性などの生活史に関する知見については多くの情報を得ることができた しかしながら 東京湾では卵期 浮遊期 極沿岸生活期ならびに沿岸生活期の知見が不足しており これらの

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課題名 実施機関 担当者氏名 平成 26 年度 1-(1) 砂質浅海域における環境及び生物多様性調査 Part Ⅱ (*PartⅡは内田執筆) 主担当 : 日本海区水産研究所資源生産部生産環境部 G 従担当 : 瀬戸内海区水産研究所生産環境部藻場 干潟 G : 瀬戸内海区水産研究所生産環境部環境動態

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資料4 大阪湾の状況について.docx

(1) 生活排水について 地域の実状に応じ 下水道 浄化槽 農業集落排水施設 コミュニティ プラント等の生活排水処理施設の整備及び高度処理化 適正な施設維持管理等の対策を計画的に推進すること 加えて 合流式下水道の改善の取組を推進すること (2) 指定地域内事業場について これまで行われてきた汚濁負

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伊勢湾再生行動計画 ( 第二期 ) 平成 29 年 6 月 伊勢湾再生推進会議

平成22年度 マハゼ稚仔魚の生息環境調査

大阪湾再生水質一斉調査の結果について 1. はじめに 大阪湾再生推進会議 では 平成 16 年 3 月に策定した 大阪湾再生行動計画 の一環として 昨年度に引き続き 国 ( 近畿地方整備局 海上保安庁第五管区海上保安本部 ) 及び地方自治体 ( 大阪府 大阪市 兵庫県 神戸市等 ) の参加を得て 陸

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全窒素 (T-N) 全リン (T-P) は 海域の富栄養化の指標です これらの値が高いほど富栄養化 ( 植物プランクトンが増殖し 海中の有機物が増加するとともに これらの有機物を分解する際に酸素が消費され底層で貧酸素化する ) が進行していることを示します 今回の一斉調査結果: 表層の T-N T-

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淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

整理番号 10 事後評価書 ( 完了後の評価 ) 都道府県名 愛知県 関係市町村 田原市他 事業名地区名 Ⅱ 点検項目 1. 費用対効果分析の算定基礎となった要因の変化 ( 広域水産物供給基盤整備事業 ) 事業主体 愛知県 Ⅰ 基本事項 1. 地区概要 漁港名 ( 種別 ) - 漁場名 アツミガイカ

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S1:Chl-a 濃度 18.6μg/L S1:Chl-a 濃度 15.4μg/L B3:Chl-a 濃度 19.5μg/L B3:Chl-a 濃度 11.0μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 33.7μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 16.6μg/

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別紙 Ⅰ 対象事業の概要環境影響評価法 ( 平成 9 年法律第 81 号 以下 法 という ) 第 15 条に基づき 事業者である国土交通省関東地方整備局及び横浜市から 平成 30 年 6 月 22 日に送付のあった環境影響評価準備書 ( 以下 準備書 という ) の概要は次のとおりである 1 事業

S1:Chl-a 濃度 8.5μg/L S1:Chl-a 濃度 8.4μg/L B3:Chl-a 濃度 8.0μg/L B3:Chl-a 濃度 7.5μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 67.0μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 8.7μg/L S1:

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2-2 公共用水域水質測定計画の毎データ 8) 期間 :198 年 4 ~1998 年 3 の毎 1 回のデータ地点 : 東京湾西岸の9 地点 ( 図 1) 図中には括弧内に水深 (m) を示した 測定水深 : 下層 ( 海底上 1mの位置 ) 測定項目 : 水温 塩分 リン酸態リン(PO 4 -P

1-2 再現性向上に関する事項 1 境界水位のチューニング < 済 > 再現性向上のため 境界の水位 各分潮の遅角差を調和定数表や潮位観測結果を基に 複数ケースの計算を行った その結果 表 1.2 に示す調和定数が最適であり 瀬戸内海西部の平均流 特に三津湾沖合の西流を最もよく再現していた 計算の結

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☆5 資料3 大阪湾の状況及び主な施策の実施状況について.docx

言語表記等から推定すると 例えば 沖縄県石垣島では約 8 割を中国製が占めた一方 東京湾岸の富津では日本製がほとんど全てを占めていました ( 別添 1-2) 3 平成 27 年度のモニタリング調査は 調査実施時期が冬期となり日本海側及び北海道沿岸では調査が困難であったため 太平洋側 瀬戸内海沿岸及び

河口域の栄養塩動態 国土交通省国土技術政策総合研究所沿岸海洋研究部海洋環境研究室主任研岡田知也 国土交通省国土技術政策総合研究所

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東京湾盤洲沿岸での夏季 1 潮汐間におけるアサリ幼生の鉛 直分布の特徴 誌名 日本水産學會誌 ISSN 著者 巻 / 号 鳥羽, 光晴山川, 紘庄司, 紀彦小林, 豊 79 巻 3 号 掲載ページ p 発行年月 2013 年 5 月 農林水産省農林水産技術会議事務

本文(横組)2/YAX334AU

本検討の位置づけ H27 親委員会 H27E2E H27E2E これまでの検討で不足している部分 1

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

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神水セ研報第 7 号 (2014) 65 相模湾沿岸域定置網漁業における漁獲魚種の変遷と主要魚種の資源動向 髙村正造 片山俊之 木下淳司 Transition of catch fish and resource trends of important fishes in fixed net of

7. 海洋環境調査項目に係る変化の程度及び変化の及ぶ範囲並びに予測の方法 7-1 水環境 海水の濁り (SS) (1) 予測の概要同海域で水底土砂の海洋投入処分を実施している国交省の事前影響評価では 浚渫土砂の海洋投入による排出海域における海水の濁り (SS) の予測は 浚渫土砂の投入に


資料3-1_環境省の施策

ドキュメント1

資料4 委員会報告(平成18年12月)への対応状況について(概況報告)

諏訪 気象と黒潮の和歌山県沿岸海域への影響 ついて用意した 水温 塩分分布 本県沿岸における水温 塩分の分布特性を把握するため 各定点各層の水温 塩分について 月毎の 平均値を 12 ヶ月で除した平年値 付表 1 2 を求め これを基に平年分布図を作成した 第 2 3 図 水温-気温 水温-黒潮 塩

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までの間, 毎月 回の頻度でシャットネラ属プランクトン調査を実施し, 本種の同定及び水質観測を行なった また, 湾内の 点 ( 図 ) においてシャットネラ属プランクトンのシスト分布調査を 6 月と 月に実施し, 採取した試泥をフ 6 AKA 8 FT FN 千葉 BC 8 FT BC FN 千葉

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カキ殻加工固形物を使用したアサリ網袋設置式養殖及び天然採苗試験

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ンゴ類及びその他底生生物 ) の生息状況を観察した ジグザグに設置したトランセクト ( 交差することのないよう, かつ, 隣り合う調査線の視野末端が重複するように配置された調査線 ) に沿って ROV を航走させ トランセクト上に宝石サンゴがあった場合は 位置 種 サイズ等を記録した 同時に海底の操

資料6 今後の検討対象水域の状況について(東京湾、伊勢湾)

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資料5 汚濁負荷量の状況

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130204最終発表(小松田) ver2.pptx

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(b) 流れ及び波浪の状況 a) 波浪 ( 波向 波高 ) ( ア ) 経時変化及び最大値顕著な高波浪を記録した夏季について 海域ごとの代表地点における経時変化を図 に示します また 各調査地点における最大値を資料編に示します 波浪調査地点 注 ) 波浪の経時変化 ( 図 -6.

里道 恵﨑 杉野 次に毎月の観測データの長期変動を整理し, 水質の経年変化を検討した それぞれのパラメータの経年変化及び長期トレンドを明らかにするため, 前後 6ヶ月づつ合計 13データの移動平均と回帰直線を示した ( ) 水温 13 月移動平均 2. 福岡湾の植物プランクトンの出現傾向


( トン / 日 ) 化学的酸素要求量 (COD) ( トン / 日 ) 窒素含有量 (T-N) その他 産業廃水 生活廃水 ( トン / 日 ) りん含有量 (T-P) 0 S54 S59

但馬水産技術センターだより 漁況情報 (G1305 号 ) 平成 25 年 8 月 28 日兵庫県立農林水産技術総合センター但馬水産技術センター発行 ハタハタ アカガレイ エチゼンクラゲに関する情報について ( 平成 25 年度底びき漁期前調査結果 ) 平成 25 年 8 月 5 6 日および 8

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水質

目次 1. 奈良市域の温室効果ガス排出量 温室効果ガス排出量の推移 年度 2010 年度の温室効果ガス排出状況 部門別温室効果ガス排出状況 温室効果ガス排出量の増減要因 産業部門 民生家庭部門

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平成24年

20 土地総合研究 2011 年冬号 寄稿 低層住宅地における地価の要因分析 - 名古屋 15 km圏における第一種低層住居専用地域の地価を対象として - 名古屋工業大学工学部津上博行名古屋工業大学大学院工学研究科工学博士兼田敏之 1. 研究の背景と目的 近年 国民の住環境への関心の高まりから建築協

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130830目で見る東京湾の水環境-リンク先修正-

第3 復興整備計画 参考様式集

図 3. 新規 HIV 感染者報告数の国籍別 性別年次推移 図 4. 新規 AIDS 患者報告数の国籍別 性別年次推移 (2) 感染経路 1 HIV 感染者 2016 年の HIV 感染者報告例の感染経路で 異性間の性的接触による感染が 170 件 (16.8%) 同性間の性的接触による感染が 73

土木学会論文集B 海洋開発, Vol. 68, No. 2, I_750-I_755, 年当初の 海輝 による定期環境調査計画は 他機関の調査を把握した上で 重複しないよう かつ他 機関が実施する調査を俯瞰的に捉えることのできる調査 と他機関が実施できていない調査の 2 つの観点

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参考資料5 瀬戸内海再生方策(瀬戸内海環境保全知事・市長会議)

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2. エルニーニョ / ラニーニャ現象の日本への影響前記 1. で触れたように エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海洋 大気場と密接な関わりを持つ大規模な現象です そのため エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海流や大気の流れを通じたテレコネクション ( キーワード ) を経て日本へも影響

第 6 回愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会用資料 アユなど通し回遊魚への開門効果と環境変化の予想 向井貴彦 改善効果 : アユ等の流下仔魚の生残率向上, 遡上量増加, 漁獲量増加 開門によるアユ等への悪影響の懸念 : 想定される悪影響は無い 想定される反論 : 開門による効果

1. 研究の目的 東日本大震災の発生や台風 集中豪雨による災害の頻発をふまえ 災害対応 危機管理のための被害想定やハザードマップの作成が各地で進んでいる 不動産評価にも災害リスクが考慮されつつある一方で ハザードマップの公表や警戒区域の指定が不動産価値の低下につながることを懸念する声もある しかし


平成21年度東京都内湾 赤潮速報

漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査地域検討会

3 くろまぐろの知事管理量について 海洋生物資源の採捕の種類 別又は期間別の数量に関する事項 ( 1) 採捕の種類別の割当量について 2 に掲げる知事管理量の小型魚における採捕の種類別に定め る割当量は 次の表のとおりとし 大型魚は採捕の種類別に定 めないものとする 採捕の種類 小型魚 本県の漁船漁

平成 27(2015) 年エイズ発生動向 概要 厚生労働省エイズ動向委員会エイズ動向委員会は 3 ヶ月ごとに委員会を開催し 都道府県等からの報告に基づき日本国内の患者発生動向を把握し公表している 本稿では 平成 27(2015) 年 1 年間の発生動向の概要を報告する 2015 年に報告された HI

資料 6-4 環境チーム 平成 28 年度事業報告 平成 29 年度事業計画 MH21 環境チームリーダー荒田直

Transcription:

出典 ) 海洋工学論文集 伊勢湾 三河湾における貧酸素水塊の長期間の挙動とその要因 ( 大島ら 2005 年 ) 図 9.3.3 三河湾における貧酸素水塊の年間累計面積と河川流量の関係 表 9.3.1 三河湾における貧酸素水塊の年間累計面積と環境因子の相互関係 出典 ) 海洋工学論文集 伊勢湾 三河湾における貧酸素水塊の長期間の挙動とその要因 ( 大島ら 2005 年 ) また 愛知県水産試験場では 三河湾における貧酸素水塊の最大面積と年間積算河川流入量 夏季積算気温及び積算底層水温 前年積算クロロフィル量及び春季積算クロロフィル量 黒潮の最南下緯度といった要因との関係を検討し 報告している ( 図 9.3.4 図 9.3.5) 三河湾では 貧酸素水塊最大面積と積算底層水温との間に類似した変動パターンがみられるが 河川流量や前年積算クロロフィル量とは逆の変動パターンがみられた 各環境要因のうち 前年及び同年の積算河川流量 同年の春季積算クロロフィル量との間に有意ではないものの高い負の相関がみられた 黒潮との関係では 黒潮が極端に離岸傾向の場合に貧酸素水塊が発達する傾向がみられるが 最南下緯度が中程度の場合には貧酸素水塊が発達する場合としない場合の両方がみられた これらの既存の検討結果から 三河湾では 貧酸素水塊の形成 発達にあたって 河川流量を伴う海水交換の影響が大きくなっていると考えられる 121

出典 ) 愛知県水産試験場研究報告 伊勢湾と三河湾の貧酸素水塊の短期変動および長期変動の比較 ( 黒田伸郎 藤田弘一 2006 年 ) 図 9.3.4 三河湾における貧酸素水塊最大面積と環境要因の関係 出典 ) 愛知県水産試験場研究報告 伊勢湾と三河湾の貧酸素水塊の短期変動および長期変動の比較 ( 黒田伸郎 藤田弘一 2006 年 ) 図 9.3.5 三河湾における貧酸素水塊最大面積と黒潮最南下緯度の関係 122

表 9.3.2 伊勢湾 三河湾における貧酸素水塊最大面積と各環境要素との相関係数 出典 ) 愛知県水産試験場研究報告 伊勢湾と三河湾の貧酸素水塊の短期変動および長期変動の比較 ( 黒田伸郎 藤田弘一 2006 年 ) (2) 三河湾における赤潮及び貧酸素水塊の関係 三河湾では 干潟の急激な埋立が進んだことによって赤潮が頻発するようになったことは 8.3 で紹介した 1970 年代の赤潮の多発化と時を同じくして 貧酸素水塊の拡大も顕著になっており 三河湾東部におけるアサリ漁獲量も減少している 豊橋 田原地区のアサリ漁獲量 出典 ) 水産業における水圏環境保全と修復機能 ( 日本水産学会監修 2002 年 ) 図 9.3.6 三河湾における赤潮発生延べ日数 貧酸素水塊の割合 東三河地域における 累積埋立面積及びアサリ漁獲量の変遷 123

(3) 三河湾における深堀跡の貧酸素化 1 深堀跡の貧酸素化の状況 浚渫等によって生じた窪地 ( 深堀跡 ) は 海水交換が悪いため 貧酸素化しやすい傾向がある 三河湾北東部の御津地区及び大塚地区の周辺には水深 3m 弱 ~4m 強の海底に深さ 3m~4m 程度の窪地が存在している ここでは 春から夏の長期にわたって無酸素となり 生物が生息できない場所となっている 出典 ) 国土交通省中部地方整備局三河港湾事務所 HP 図 9.3.7 三河湾奥部の深堀跡 2 深堀跡 窪地の分布 三河湾内では現在 3 ヶ所の窪地が確認されており その総容積は約 468 万 m 3 であり いずれも勾配は 1/25~1/10 の範囲にある なお これらの窪地以外にも三河湾内には小規模な窪地の存在が考えられる 表 9.3.3 三河湾における既存の窪地一覧 位置 面積 容積 勾配 水深 (m)/ 窪地の幅 (m) 備考 1 大塚地区 約 9 ha 約 17 万 m 3 約 1/25~1/10 約 1/200~1/100 底質 : 強熱減量 9.2% 硫化物量 0.88mg/g 夏季には無酸素を確認 2 大崎地区 約 30 ha 約 61 万 m 3 約 1/10 約 1/250~1/50 底質 : 強熱減量 10.4 ~ 10.6% 硫化物量 2.16~2.60mg/g 夏季には無酸素を確認 3 田原地区 約 78 ha 約 390 万 m 3 約 1/20~1/10 約 1/150~1/40 底質 : 強熱減量 9.8% 硫化物量 0.61mg/g 夏季には無酸素を確認 計 約 117 ha 約 468 万 m 3 出典 ) 第 2 回 伊勢湾再生海域検討会 三河湾部会 資料 124

大塚地区 田原地区 大崎地区 出典 ) 第 2 回伊勢湾再生海域検討会三河湾部会資料 図 9.3.8 三河湾内の窪地の分布 3 浚渫土砂量の変遷 1995 年から 2004 年までの 10 年間に 伊勢湾及び三河湾において合計 4,970 万 m 3 の浚渫土砂が発生している 年により 294 万 m 3 から 707 万 m 3 と幅があるが 平均すると 497 万 m 3 / 年が発生している 三河湾では 概ね 100 万 m 3 前後で推移している 浚渫によって発生した土砂の大部分が埋立に使用され 約 14% が干潟 浅場の造成や覆砂 窪地の埋め戻しといった環境再生事業に利用されている 資料 ) 愛知県水産研究所研究報告茂雄 2006 年 ) 図 9.3.9 短報 伊勢 三河湾における浚渫土砂の発生と処分 ( 船越 伊勢湾 三河湾における浚渫土砂発生量の推移 125

資料 ) 愛知県水産研究所研究報告短報 伊勢 三河湾における浚渫土砂の発生と処分 ( 船越茂雄 2006 年 ) 図 9.3.10 伊勢湾 三河湾における浚渫土砂の用途別処分量の割合 9.4 苦潮の発生状況の変遷 貧酸素水塊が風の影響などにより浅海域に湧昇し発生する苦潮についても整理を行った 苦潮の発生件数は 1980 年頃に多かったが その後減少し 1990 年以降は横ばい傾向にある また 漁業被害件数は苦潮発生件数と同様の傾向を示している 資料 ) 資源環境対策 伊勢湾地域の底層における貧酸素水塊問題の現状と対策の動向 ( 石田基雄 鈴木輝明 2009 年 ) 図 9.4.1 三河湾における苦潮発生件数 被害件数の推移 126

9.5 苦潮発生メカニズム 苦潮は 海底の貧酸素水塊が 潮流や風によって水面近くに浮上することで発生する 出典 ) 三河湾データブック 2007 ( 国土交通省中部地方整備局三河港湾事務所 2007 年 図 9.5.1 苦潮の発生メカニズム 127

9.6 貧酸素水塊及び苦潮による被害 苦潮による大きな被害はアサリの大量斃死である 近年では 2007 年及び 2008 年に三河湾東部の豊川河口部にある六条干潟でアサリの大量死が発生している 2008 年にはアサリの稚貝が約 5,000t 死滅した 豊川河口六条潟アサリの稚貝全滅 台風 13 号など影響 酸素欠乏が原因 愛知県内一のアサリの稚貝の採取場所として知られる豊川河口 ( 豊橋市 ) の六条潟 で 酸素が欠乏する苦潮が 9 月 18~21 日にかけて発生し 稚貝が全滅したことが愛知 県水産試験場 ( 蒲郡市 ) の調査でわかった 苦潮は台風 13 号などの影響で強い風が吹き 三河湾の海底にある 貧酸素水塊 の 海水が海面近くに出てきたのが原因と見られる 死滅した稚貝は 同試験場が六条潟の 6 地点で調査した結果 5000 数百トンに上る と推定される 同じく苦潮で稚貝が死滅した 2001 年 (2400 トン ) や 02 年 (4000 トン ) の被害を上回る 県内各地に放流されるアサリ稚貝の約 9 割が六条潟産 各漁協は 7 月までに稚貝計約 2300 トン分を採取し かなりの量を各漁場に放流しているが 今後の影響が心配され る 県水産課は 六条潟はほかの海域からアサリの幼生が集まる全国的にも珍しい場所 なので 自然回復を期待できるが 今後 海の状況を見ながら必要な対策を講じていき たい としている ( 平成 20 年 10 月 1 日読売新聞 ) 出典 ) YOMIURI ONLINE (2008 年 10 月 1 日読売新聞 ) 128

10. 三河湾の漁業 10.1 漁業構造 (1) 漁業 三河湾では 図 10.1.1 及び図 10.1.2 に示すように 湾西部を中心に漁港及び区画漁業権が多く設定されている 1964 年の愛知県水産要図 ( 図 10.1.3) をみると 湾東部でものり養殖が行われており 湾全体を漁場として利用していた様子がうかがえる 近年でも 三河湾沿岸域にはアサリなどの水産資源が存在していることも知られている ( 図 10.1.4) 資料 ) 伊勢湾環境データベース 図 10.1.1 伊勢湾 三河湾における漁港区域と漁業権分布 129

資料 ) 海上保安庁 漁具設置場所情報 図 10.1.2 三河湾における漁具設置状況 130

資料 ) 愛知県 HP 三河湾里海写真館 図 10.1.3 三河湾における漁業 ( 愛知県水産要図 )(1964 年 ) 資料 ) 愛知県水産要図 ( 愛知県農林水産部水産課 2008 年 ) 図 10.1.4 三河湾における磯根資源分布 131