更新日 :2019/2/19 調査部 : 本村眞澄 公開可 ロシア : サハリン 3 アヤシ鉱区での探鉱成果 ( 短報 ) サハリン 3 のアヤシ鉱区で Gazprom Neft によって 2017 年に Neptune 油田 2018 年に Triton 油田が発見され その埋蔵量規模から同鉱区は非常に有望視されている Neptune 油田の C1+C2 石油埋蔵量は 4 億 1,580 万トン (30 億 bbl) で サハリン大陸棚で最大 Triton 油田については 原始埋蔵量で石油換算 1 億 3,700 万トン (10 億 bbl) である 同鉱区は サハリン 1 2 の主要油田のある構造系列の東方に位置し この北北西延長上にあるサハリン 5 における出油により 有望性があるとされて来た 今回これが証明された アヤシ鉱区のすぐ北にある東オドプト鉱区は Gazprom Neft が 100% の権益を保有しているが 複数の未試掘構造を有しており 有望視されている 1. サハリン 3 アヤシ鉱区での油田発見 (1) Neptune 油田の発見サハリン 3 のアヤシ (Ayash) 鉱区では Gazprom Neft の子会社 Gazprom Neft Sakhalin により 2017 年に試掘がなされ Neptune 油田が発見された 同社はこの年 7 件の新規油ガス田を発見し 同油田はその中でも最も重要な発見とされた 第 1 井は 2000m~2,700m の区間で 4 枚の油層を見ている 埋蔵量はその時点では 石油換算 2 億 5,500 万トンと試算された 1 ただし Gazprom Neft のプレスリリースで簡単に触れられるのみで 当時大きな報道はなかった 油田の位置に関しては 翌 2018 年 4 月に鉱区北部に位置する Bautinskaya 構造とする報道があったが 2 9 月の同社プレスリリースでは地図上の油田の位置は依然として曖昧な表現ままであった 3 ようやく 11 月のプレスリリースのロシア語版においてのみ 位置の分かる地図が掲載され 鉱区南部の Ayashskaya 構造に成立した油田であることが初めて示された 4 ( 図 1 参照 ) こ 1 Gazprom Neft press release, 2017/11/27 2 International Oil Daily, 2018/4/13 3 Gazprom Neft press release, 2018/9/11 4 Gazprom Neft press release, 2017/11/15 1
の図は 同日の英語版プレスリースには掲載されていない Triton Neptune 図 1 Neptune 油田と Triton 油田の位置 (Gazprom Neft, Press Release, 2018/11/15) (2) Neptune 油田の石油可採埋蔵量 Gazprom Neft は 2018 年夏 国家鉱量委員会と共にオホーツク海の Neptune 油田の埋蔵量の評価を実施し 原始埋蔵量は石油換算で 2 億 5,500 万トン そのうち可採埋蔵量は 7,000 万 ~8,000 万トンと見積った ピーク生産量は年間 500 万 ~600 万トン (10 万 ~12 万バレル / 日 ) になる見込みとした 5 2020 年までに追加で 4 坑の評価井を掘削 同鉱床の開発計画を策定し 2025~2027 年に生産開始の予定である その後 埋蔵量の検討は更に進められ 9 月 11 日 国家鉱量委員会が同鉱床の原油埋蔵量 (C1+C2 カテゴリー ) が 4 億 1,580 万トン (30 億 bbl) と発表した 6 なお サハリン-1 は 3 億トン サハリン-2 は 1.25 億トンであり これらを遥かに上回る規模である Neptune 油田は 同社の資源ポートフォリオの中で最大級となった (3) サハリン 3 アヤシ鉱区におけるパートナー Gazprom Neft は最近 R/D Shell およびアジア企業を含むその他企業と パートナーシップについて協議している 米国の対露制裁により 外国企業は ロシアの北極圏 シェールオイル および大水深での事業に参加することは禁止されているが Neptun 油田は水深 60~70m の浅海に位置しているため 5 Interfax, 2018/6/09 2
大水深鉱床とは看做されず 制裁を課される恐れはないと考えられる (4)Triton 油田の発見 Gazprom Neft は 2018 年 11 月 15 日 アヤシ鉱区北部の Bautinskaya 構造で評価井の掘削および試験を完了し 新規鉱床を発見したことを発表した 同鉱床は Triton 油田 と命名された Triton 油田の原始埋蔵量は推定 1 億 3,700 万 toe(10 億 boe) 7 同社は 2020 年までに同鉱床でさらに 4 坑の評価井を掘削する予定である 同構造はサハリン島の沖合 55km 水深は 90m に位置する 8 なお Triton はギリシャ神話における海の神 Poseidon の子供で Poseidon はローマ神話の Neptune に当たるとされる (5) 今後の計画 Gazprom Neft は 2019 年から 2021 年までに アヤシ鉱区で両構造にそれぞれ 3 坑 合計 6 坑の評価制を掘削する予定である Neptune 油田 (Ayashskaya 構造 ) の目的層深度は 2,150m である Triton 油田 (Bautinskaya 構造 ) の目的層深度は 2,850m である 氷は 6 月初めに解け 11 月に結氷する なお サハリンの各鉱区での活動状況を表 1 にまとめた 2. サハリン-3 の鉱区付与の経緯サハリン-3 の内 ウェーニン (Venin) 鉱区を除く東オドプト (East Odoptu) アヤシ ( Ayash) キリン (Kirin) の 3 鉱区については 1993 年の米国デンバーにおける入札によって PS 契約に基づいて鉱区取得に関して優先的に交渉する権利が付与された ( 図 2) 東オドプト アヤシ鉱区については Mobil( 当時 ) が 66.7% Rosneft とその子会社 SMNG(Sakhalinmorneftegaz) が各 16.65% を取得した キリン鉱区については Mobil 及び Texaco( 当時 ) にそれぞれ 33.3% そして両鉱区の残りの 33.4% については Rosneft および SMNG に各 16.7% が付与された 6 IOD, 2018/9/12 7 Upstream, 2018/10/12 8 IOD, 2018/11/16 3
図 2 サハリン北東大陸棚の鉱区と油ガス田及び発見構造 (JOGMEC 作成 ) 4
外資は揃って PS 契約の締結を希望し キリン鉱区に関しては 2 回目の PS 対象リスト法に記され 1999 年 5 月に議会承認を受けた アヤシ鉱区に関しては これを記載した PS 対象リスト法案が 1999 年 12 月に下院に上程されたが 審議されないままで終わった キリン鉱区に関しては その後 PS 契約に関する交渉は進捗せず 2003 年の第 2 回米ロ商業エネルギー サミットにおいて ExxonMobil のティラーソン副社長 ( 当時 ) は サハリン-3 に関し PS 契約方式を断念 通常の探鉱 生産ライセンスで事業を行う意向を表明した これに対して 2004 年 1 月 29 日に フリステンコ副首相 ( 当時 ) を委員長とする PS 契約に関する政府委員会 は 米国企業に対してライセンスを付与しない方針を決定し この 3 鉱区は改めてテンダーに付されることになった 9 このロシア側の厳しい対応に外資を中心に驚きの声が上がり この件はロシアにおける投資環境の悪化の例と見なされた 最終的に 2008 年 東オドプト鉱区 アヤシ鉱区とともに キリン鉱区は Gazprom が無競争でライセンスを取得することになった ( 図 2 参照 ) その後 鉱区は同社の石油部門子会社の Gazprom Neft に移管された 3. アヤシ鉱区における油田発見の意義 (1) サハリン 5 での先駆的成果 ( 図 2) サハリン 5 については 1998 年 5 月に Rosneft/SMNG が 51% BP が 49% で設立した JV であるエルヴァリ ネフテガス (Elvari Neftegaz) が 2002 年にライセンスを取得した これは BP による最初のロシア進出である なお 2003 年 9 月に BP は合弁企業 TNK-BP を設立して西シベリア等の事業に参加したが サハリンに関しては BP 単独で参加したものであり TNK-BP の事業対象とはなっていない 2013 年の TNK-BP 解消により BP と Rosneft の関係は更に強化されたが そのきっかけはサハリンでの共同事業であったと言える 2004 年に最初の試掘が行われ ペラレイチ (Pela Leich 大波 の意) 構造で複数の良好な砂岩貯留岸からかなりの量の (significant) 石油 ガスを発見した 10 2005 年の掘削シーズンに Pela Leich-1 から西へ 15km 離れた同じカイガン ワシュカン (Kaigansko-Vasyukan) 鉱区内のウダチナヤ (Udachnaya) 構造で 3 つの層準で炭化水素を発 9 Nefte Compass, 2004/2/05 10 IOD, OGI, Reuters, 2004/10/07 5
見した 11 翌 2006 年には南ワシュカン (Yuzhno Vashukan) 構造で成功が報じられたが 詳細は明らかでない その後 サビツ (Savit) 構造に探鉱井が掘削された 2007 年 3 月 Elvary Neftegaz は 連邦地下資源利用庁からカイガンスコ ワシュカンスコエ (Kaigansko-Vasyukanskoye) 海洋油ガス田の発見を証する証明書を受け取った 可採埋蔵量は АВС1 カテゴリーで 原油とガスコンデンセートが 1,614 万トン (1.18 億バレル ) である この油田は オドプト チャイウォ等のサハリン大陸棚主要油田を形成する北北西 - 南南東トレンドの基盤高の更に東方に位置し この地域で初めて炭化水素の形成が確認された例として 注目を集めた ( 図 3) 更に 本油田周辺の地質トレンドに沿って南南東に伸ばすと それはまさにサハリン-3 の東オドプトとアヤシ鉱区に行きつく 即ち サハリン-3 の北部 2 鉱区の地質評価は高まったと言え これらの地質ポテンシャルを検討する上でも貴重な発見であった ただし 商業性が見いだせず BP は 2012 年 1 月にはカイガン ワシュカン鉱区からの撤退を決めた 図 3 サハリン島北部とその大陸棚の東西方向の地質断面図 サハリン -5 におけるカイガンス コ ワシュカン鉱区 ( 油ガス田発見 ) の位置を示す (JOGMEC 作成 ) 11 Interfax,2005/10/31 6
(2) ロスネフチによるサハリン 5 の探鉱の再開ロスネフチ傘下の RN サハリン NIPI 海洋石油 (RN-SakhalinNIPImorneft) は 2018 年 3 月 カイガン ワシュカン鉱区の開発に向けた包括的概念設計の準備作業を入札に掛けた 作業では ペラ レイチ (Pela-Leich) 鉱床および南ワシュカン (Yuzhno-Vasyukanskoye) 鉱床の開発に要する資本費用と操業費が算出され これを基にカイガン ワシュカン鉱区での開発に最適な方式を決定する 現状 2 つの選択肢が検討されており 1 つは ペラ レイチ鉱床単独での開発 もう 1 つはペラ レイチ鉱床および南ワシュカン鉱床の共同開発である 12 (3) 今後の展望今回のアヤシ鉱区での成功により 最も注目を集めているのが そのすぐ北側に隣接する東オドプト鉱区である この鉱区自体が未試掘であり そこの複数のプロスペクトが確認されている 権益は Gazprom Neft が 100% 保有する 現状で どの外国企業がアクセスを試みているか 特段報道はないが いずれ動向が明らかになるものと思われる ( 了 ) 12 Interfax, 2018/3/13 7
表 1 サハリン各校区の現状 ( サハリン 1~6) プロジェクト Sakhalin -1 ブロックと油ガス田 Odoptu, Chaivo, Arkutun- Dagi Sakhalin-2 Luni, Pil'tun- Astokh Sakhalin-3 E.Odoptu 石油 天然ガス埋蔵量 325MMt (2.3Bbbl) 485 Bcm (17.1Tcf) 150MMt (1.1Bbbl) 500Bcm (17.7Tcf) *70MMt,30Bc m 鉱区権者 (%) ExxonMobil(30%) SODECO(30%), ONGC(20%),SMNG(11. 5%) Rosneft (8.5%) Gazprom(50%+1) Shell(27.5%-1), Mitsui(12.5%), Mitsubishi(10%) Gazprom Neft(100%) 備考 総投資額 $170 億 2005 年 10 月原油ガス生産開始 2006 年 DeKastri から輸出開始 生産量約 16 万 b/d(`09) ガスの販売先未定 2010 年 9 月 Odoptu 生産開始 2014 年 A-D 生産開始 Sakhalin Energy 操業 総投資額 $200 億 Phase-1; 1999PA-A (Molikpak) 生産 Phase-2; PA-B, Luni から Prigorodnoye へ石油ガスパイプライン (800km) 建設 2009 年 3 月 LNG 960 万 t/y 生産開始 93 年 Mobil が落札 特段の探鉱実績はなし 04 年 1 月ライセンス発効見送り Gazprom が 09 年 6 月取得 Ayash 416MMt Gazprom Neft(100%) 同上 2017 年 Neptune 油田 2018 年 Triton 油田発見 Venin Kirin Sakhalin-4 Astrakhan Shmidt Sakhalin-5 East-Shmidt (Kaigansko- Vasyukan) Sakhalin-6 Pogranichny Pogranichny- Trough, Okruzhny *1.2MMt, 35Bcm *6MMt 8,737Bcm (30.9Tcf) *16.14MMt Rosneft(74.9%) Sinopec(25.1%) Gazprom(100%) Rosneft(51%), BP(49%)2009.3 撤退 Elvari Neftegaz Rosneft(51%), BP(49%)2011.12 撤退 Pogranichny Block Petrosakh(97%), Sakahlin Oil(3%) 出所 : 各種公表資料から *Rosneft による予想埋蔵量 S-1,2 は確認埋蔵量 5 Rosneft 100% 04 年 KNOC が参加の MOU 締結 05 年 Sinopec 参加 06 年から 3 坑試掘 北 Venin で出ガス 93 年 Texaco が落札 97-98 年 3D 地震探鉱 08 年 Gazprom が取得 09 年 7 月試掘 10 年 8 月南 Kirin 11 年 Mynga 発見 13 年 10 月 Kirin 海底生産システムで生産開始 Astrakhan 鉱区において Rosneft が00 年に試掘 2007 年 2 坑不成功 98 年 BP 参加 02 年ライセンス取得 試掘 Pela Lache (04),Udachnaya(05), South Kaigan(06) で成功 3 坑 不成功 1 坑 2012.12 撤退 Petrosakha に対しては 入札によらずラインセンス付与 陸と海に跨る鉱区 05 年 Okruzhnoy 構造の試掘で油兆 8