イオン電流による失火検出 平成 20 年式のダイハツ タント ( 車両型式 DBA L375S エンジン型式 KF VE 走行距離 50,000km) でエンジン不調の相談を受けた エンジン チェックランプが点灯しているという事なので ダイアグノーシスを確認すると P1400 1 気筒のイオン電流検知信号に異常が発生したとき を表示した この車両は 各シリンダ内の燃焼状態 ( 失火及び燃焼限界 ) の検出を燃焼中に発生するイオン電流により行なっており そのイオン電流に異常が生じた時 P1400のコードを検出するようになっている よって 何らかの原因で点火火花が飛ばなくなった時にP1400のコードを検出することがあるので 主な原因としてはイグニション コイルの不良 スパーク プラグの不良 配線関係の不具合 エンジン コンピュータの不良などが考えられる 始めに イグニション コイルの不良を疑い 2 気筒のイグニション コイルと入れ替えてみた イグニション コイルが原因であれば 2 気筒の方に不具合が移行するはずである しかし 症状は変化しなかったため イグニション コイル単体は正常であると判断した 次に スパーク プラグの交換履歴をユーザーに確認したところ 1 度も交換していないとの事だったのでスパーク プラグを交換すると正常となった 今回のトラブルはあまり馴染みのない故障コードで 内容の確認も含め勉強になった事例であった また 最終的な原因はスパーク プラグ不良という点火系の基本的な部分であったため やはり制御が複雑になっても基本が大切な事を再認識した なお 他のメーカーではクランク角センサーによる回転信号の変動により失火検出を行なっているものもあるので 今後の参考にしていただきたい 24 FAS NEWS 2013 6 月号
参考資料 ダイアグノーシスコード表示方法 ( エンジンチェックランプによる表示 ) 1. 車両を停止状態にする 2.SSTを使用し IGスイッチ "ON" の状態でDLCのEFI-T(12)~ E( 4 ) 端子間を短絡させる 注意 DLCの短絡には必ず指定のSSTを使用する 短絡位置を間違えると故障の原因となるので絶対に間違えない 3. コンビネーションメータ内のエンジンチェックランプを点滅し ダイアグノーシスコードが表示される ダイアグノーシスコード消去方法 ( ヒューズ抜き取りによる消去 ) 1. 車両を停止状態にする 2.IGスイッチを"LOCK" にし EFIヒューズを60 秒間以上抜き取る 3. 記憶されているコードはIGスイッチを "LOCK" にし EFIヒューズを60 秒間以上外すことで消去できる 注意 バックアップヒューズを取り外す場合は 念の為に他のシステムのダイアグノーシスコードを出力し 確認し記憶する 参考 EFIヒューズはエンジンルーム内 ( リレーボックス内 ) にある 目安として 約 60 秒程度で消去できるが場合によっては それ以上かかることがある バッテリ電源 ヒュージブルリンクなどのバックアップ回路の接続を切った場合も消去されるが消去に要する時間が長くなることがある FAS NEWS 2013 6 月号 25
コードNo. ウォーニング表示コード記憶 *1 4 桁 2 桁 ( 有 : 無: )( 有 : 無: ) P0010 *2 74 オイルコントロールバルブ制御用電圧に異常が発生したとき P0011 *2 73 バルブタイミング制御に異常が 2 回連続して発生したとき オイルコントロールバルブ異常 オイル通路の異物浸入 P0016 62 カム角センサとエンジン回転センサのズレを 5 回連続して検出したとき タイミングチェーンの伸び P0016 75 バルブタイミングの異常が 2 回連続して発生したとき タイミングチェーンの伸び 誤組み付け 歯とび P0070 46 外気温センサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0105 31 吸気管圧力 吸気温一体型センサ ( 吸気管圧力センサ部 ) からの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0110 48 吸気管圧力 吸気温一体型センサ ( 吸気温センサ部 ) からの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0115 42 水温センサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0120 41 スロットルポジションセンサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0130 21 フロントO 2 センサからの信号に異常が 2 回連続して発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0135 23 フロントO 2 センサヒータ信号に異常が発生したとき フロントO 2 センサヒータ系統の断線 短絡など P0136 22 リアO 2 センサからの信号に異常が 2 回連続して発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0171 25 燃料系統の異常で空燃比が 2 回連続してリーン側にずれているとき 燃圧異常 インジェクタ O 2 センサ異常など P0172 26 燃料系統の異常で空燃比が 2 回連続してリッチ側にずれているとき 燃圧異常 インジェクタ O 2 センサ異常など P0325 18 ノックセンサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0335 13 エンジン回転センサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0340 14 カム角センサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0350 16 点火信号に異常が発生したとき 信号系統の断線など P0351 16 1 気筒の点火信号に異常が発生したとき 信号系統の断線など P0352 16 2 気筒の点火信号に異常が発生したとき 信号系統の断線など P0353 16 3 気筒の点火信号に異常が発生したとき 信号系統の断線など P0443 76 エバポパージ用 VSV 検出信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P0500 52 車速センサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0505 71 ISC 用バルブ検出信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P0512 54 スタータからの信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など * 1 : 故障診断装置を使用した場合の出力コードを示す * 2 :KF-VE 型 26 FAS NEWS 2013 6 月号
コードNo. ウォーニング表示コード記憶 *1 4 桁 2 桁 ( 有 : 無: )( 有 : 無: ) P0535 44 エアコンエバポレータ温度センサからの信号に異常が発生したとき センサの故障 信号系統の断線 短絡など P0603 *5 83 キーフリー ECUとの通信におけるコードの紹介がEFI ECU 内部の故障でできないとき P0622 28 オルタネータF-duty 信号に異常が発生したとき 信号系統の断線など P0850 *2 56 シフトポジションスイッチからの信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P1399 36 イオン電流検知信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P1400 36 1 気筒のイオン電流検知信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P1401 36 2 気筒のイオン電流検知信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P1402 36 3 気筒のイオン電流検知信号に異常が発生したとき 信号系統の断線 短絡など P1546 55 スタータリレー駆動出力に異常が発生したとき スタータリレー出力回路 出力モニタ回路の異常 U0001 88 全てのCAN 信号構成 ECUとの配線確立履歴がないとき EFI ECUのCAN 通信端子の配線の断線など U0101 *3 82 CVT ECUからの通信信号が受信できないとき EFI ECU ~ CVT 間の配線の断線 短絡など U0101 *3 85 CVT ECUへの通信信号が送信できないとき EFI ECU ~ CVT 間の配線の断線 短絡など U0121 *4 86 ABS ECUからの通信信号が受信できないとき EFI ECU ~ ABS ECU 間の配線の断線 短絡など U0156 87 メータECUからの通信信号が受信できないとき EFI ECU ~メータECU 間の配線の断線 短絡など U0164 89 オートエアコン ECUからの通信信号が受信できないとき EFI ECU ~オートエアコン ECU 間の配線の断線 短絡など U0167 *5 81 キーフリー ECUとの通信におけるコードの照会がEFI ECU 内部の故障でできないとき * 1 : 故障診断装置を使用した場合の出力コードを示す * 2 :A/T 車 * 3 :CVT 車 * 4 :ABS 装着車 * 5 : キーフリー装着車 参考 ダイアグノーシスコードP0011/73 P0016/75 P0130/21 P0136/22 P0171/25 P0172/26 P0850/56 P1399/36 P1400/36 P1401/36 P1402/36 については ヒューズ バッテリ外し等でコードの消去を行なった場合は IGスイッチ "ON" エンジン運転 IGスイッチ "LOCK" で10 秒以上保持 再度 IGスイッチ "ON" エンジン運転にてダイアグノーシスコードの確認をする 必ずエンジン運転後に一度 IGスイッチを "LOCK" にしてから 再度エンジンを始動 運転をしないと異常コードを検出しない FAS NEWS 2013 6 月号 27
イオン電流燃焼制御システム (1) 概要エンジンコントロールコンピュータは燃焼中に発生したイオン電流をスパークプラグより検出することで シリンダ内の燃焼状態を検出します これにより 失火検知や燃焼限界の検知を行い 燃焼状態が最適になるように点火時期を制御しています (2) 原理 1. 燃焼時 火炎中にはプラスイオンと電子が発生します 2. 点火のアーク放電終了後 イグニッションコイル 2 次側回路のチャージ電圧をスパークプラグの中心電極に印加すると 火炎中にイオン電流が発生します 3. 検出されるイオン電流は微小出力であるためノイズの影響を非常に受けやすくなります そのため イグニッションコイル部に内蔵されたイオン電流検出回路にてイオン電流波形を矩形波に変換してエンジンコントロールコンピュータへ信号を送り 燃焼 失火の判定を行います 4. エンジンの失火が起こったときにはイオン電流は発生しません したがって エンジンコントロールコンピュータの入力電圧が基準値以下の場合 失火発生と判断します 28 FAS NEWS 2013 6 月号