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この充放電サイクルをオシロスコープで観測した結果を図 2 に示します トレース 1 はコンパレータの出力 トレース 2 はパッド (C p ) の電圧を示しています 完全な回路図は付録 A に記載しています コンパレータ出力の周波数は パッドの容量に関係します この例では 350 khz の基本周波数を使用しています 100 khz ~ 400 khz の範囲の周波数なら 実用上問題はありません 周波数が高いほど測定サイクルは短くなります 図 2: オシレータの出力 周波数の測定 オシレータが完成したら その周波数を監視して タッチによる周波数の低下を検出できるようにする必要があります 周波数を測定するには オシレータを開始し コンパレータの出力を TMR0 に入力します TMR0 は 8 ビットのタイマ / カウンタで ソフトウェアで設定可能な 8 ビットのプリスケーラを備えています ソフトウェアで一定の待ち時間後 プリスケーラと TMR0 の値を読み出します プリスケーラと TMR0 の値を両方読み出すと オシレータの周波数の 16 ビット値が得られます ( 周波数のカウント数 ) PIC10F ではプリスケーラを直接読み出せないので ソフトウェアを工夫してプリスケーラの値を推定する必要があります 測定後 弛張オシレータを停止し TMR0 のクロックソースを内部オシレータ (FOSC/4) に設定します 次に TMR0 の値の増加またはロールオーバーをソフトウェアでポーリングします TMR0 の値が変化するまでの時間から プリスケーラ値を知ることができます つまり 周波数を測定するには次のシーケンスが必要となります 1. オシレータを起動する 2. TMR0 とプリスケーラをクリアする 3. 一定時間 ( 例 2 では 100 ms) 待つ 4. オシレータを停止する 5. TMR0 の値を読み出す 6. TMR0 のクロックソースとして FOSC/4 を選択する 7. TMR0 の値が変化するまでのサイクル数をカウントし プリスケーラ値を推定する ソフトウェア タッチ判定は 指がパッドに触れると周波数カウント数が平均値から急激に低下するという原理に基づいた検出方式で行います 指がパッドに触れると 容量が増加して周波数が低下します オシレータを初期化するには 次のシーケンスが必要です 例 1: MOVLW TRIS MOVLW OPTION 初期化のコード b'11111001' ;set gp1,gp2 as an output gpio b'11110111' ; _ ps0 ; ps1 ; ps2set prescaler to 1:256 ; psaprescaler assigned to tmr0 ; t0se increment on high to low ; t0cs transition on t0cki ; #gppu pull-ups disabled ; #gpwu wake-up pin change disabled MOVLW b'00001011' ; _ #cwu wake-up on comp ch. disabled ; cpref pos ref is cin+ ; cnref neg ref is internal 0.6V ; cmpon comparator on ; cmpt0cs comp. used as tmr0 source ; pol output is inverted ; #couten output is placed on cout ; cmpout -read only bit- MOVWF cmcon0 CLRF tmr0 ; clear tmr0 and the 1:256 prescaler DS01202B_JP - ページ 2 2009 Microchip Technology Inc.

このシーケンスの後 オシレータをスタートすると プリスケーラと TMR0 がインクリメントします R1 の値を変えると 放電時間の長さを調整できます 今回の例では ソフトウェアは 100 ms 待ってからオシレータを停止しています 100 ms という待ち時間は プリスケーラと TMR0 が十分に大きな値になるように設定しています オシレータの基本周波数が異なる場合は 待ち時間の長さを変える必要があります カウンタの読み取り分解能を高くするためには待ち時間を長くする必要がありますが あまり長すぎるとTMR0がオーバーフローしてしまうので注意してください 例 2: MOVLW gatedtime ; constant equals 100 CALL delay ; wait 100 msec BCF cmcon0,cmpon; turn off oscillator 図 3: 周波数のバースト波形 タッチの検出 ここまでで タッチの検出とシグナリング以外のシステムは完成しました 残りの部分はプログラムのメインループで処理します 2 つの変数と 1 つの定数を使用すると 周波数の低下を簡単に検出できます 以下に例を示します MOVF tmr0,w ; high byte of freq value ; is stored in tmr0 MOVWF freqhi ; low value is still in ; the prescaler 例 4: freqhi:freqlo averagehi:averagelo triphi:triplo ; var Current sensor data ; var Running Average ; const Trip point プリスケーラの値は直接読み出せません プリスケーラの値を推定するには TMR0 のクロックソースを FOSC/4 に変更し TMR0 がインクリメントまたはロールオーバーするまでの時間をソフトウェアループでカウントします 例 3: MOVLW OPTION b'11010111'; change clock ; source to Fosc/4 measureprescaler: INCF freqlo ; was initialised to 255 and ; set to 0 here MOVF tmr0,w ; get the current value of tmr0 XORWF freqhi,w ; compare it with the original ; value of tmr0 BTFSC status,z ; did tmr0 increment? GOTO measureprescaler; no, loop and increment このループの実行には 6 命令サイクルかかるので freqlo の最大値は 43 となります この値を 6 倍して 255 を超える場合は値を 255 とします 下位 2 ビットは使用されないので 結果を 4 で割ります 図 3 に 自走オシレータのスナップショットを示します 上側のトレースは 周期的に 100 ms の期間だけオシレータをオンにしたときの波形です 下側のトレースは PIC マイクロコントローラが空いたピンを利用してリアルタイムデータをシリアルに送信している様子を示しています freqhi:freqlo には 現在のセンサーデータを格納します averagehi:averagelo は過去のサンプルの移動平均で 次の式で求めます 式 1: 例えば n を 4 とすると 現在値に 1/16 の重みをつけ 移動平均に 15/16 の重みをつけることになります こうすると 16 回の平均をとるのに 16 個の変数を保存する必要がなくなります N 回の平均をとるとき N を 2 の階乗とすると ソフトウェア除算の代わりに右シフトを使用できるので処理時間を短縮できます 最もシンプルなタッチ検出アルゴリズムは 現在の値が平均値から一定の値だけ下回った場合にタッチと判定するというものですが その擬似コード例を次に示します 例 5: (( 2 n) 1) x averagevalue + currentvalue 2 n If (freq < (average - trip) then ; button is pressed ; user code here Else ; button is not pressed ; user code here EndIf 2009 Microchip Technology Inc. DS01202B_JP - ページ 3

分かりやすい例で説明すると 指でボタンを押下していない場合オシレータ周波数のカウント数を 10,000 と仮定します このとき 平均値と現在値も 10,000 となります 設計者がトリップ値に 1,000 を設定したと仮定します 指でボタンを押下すると 現在値はただちに 8,500 に低下しますが 平均値はまだ 10,000 のままです 8,500 は 9,000 より小さいので 例 5 の If 文は真になります これによって ボタンが押下されたと判定されます そして 必要に応じてフラグをセットするか または何らかの応答処理を実行します 注 : 周波数の低下はすべてのタッチ検出方式に共通する基本的な変化であり 上記の例はこれを非常に単純化して示したものです ボタンが押されたことを検出する別のソフトウェアアルゴリズムを アプリケーションノート AN1103 キャパシティブセンシングにおけるソフトウェア処理 で紹介しています 連続タッチの実装 このソフトウェアは平均処理のメカニズムを採用しているため 平均値と現在値が再び同じになった時点でタッチ判定が正しく動作しなくなります 図 4 の赤の点線は平均値 黒の実線は実測値を示しています これを見ると 平均値が現在値にゆっくりと追従していることが分かります 現在値と平均値の差がトリップポイントの値より小さくなると キーは解放されます 図 4: 平均処理のメカニズム A 図 5: 連続タッチ A A 平均値はまだ現在値に追従している B タッチが検出され 平均値がロックされる 平均値から一定値が引き算される C キーが解放され 平均処理のアルゴリズムが再開される この機能を有効にする方法の詳細は ファームウェアのソースコードを参照してください 近接スイッチの実装 近接スイッチは 非接触型スイッチの 1 種です 一般に 近接スイッチは手などの物体が存在するかどうかを非接触で検知するために使用します 近接スイッチは ハンドドライヤーやドアアクセス制御などのアプリケーションで広く使用されています これまでに示した回路は わずかな変更を加えるだけで近接スイッチにすることができます 具体的には センサー要素となるパッドを大きくし 放電抵抗器 R1 の値を調整します 近接センサーとするためには トリップポイント (triphi:triplo) も調整する必要があります タッチセンサーに比べ 近接センサーではトリップポイントの値をきわめて小さく設定する必要があります 経験則として センサーパッドから手までの最大検出距離は センサーパッドの直径と等しくなります つまり パッドを大きくするほど検出距離が大きくなります 手とセンサーの間に何らかの物質が存在すると 最大検出距離が低下することがあります B C A - キーが解放される 図 6: 近接スイッチ 連続タッチを実装するには アルゴリズムを変更する必要があります 現在値がトリップのしきい値よりも小さくなったら 平均処理を中止して平均値が現在値に追従しないようにします また キーが戻らなくなるのを防ぐため 平均値から一定のヒステリシスを引き算します これは ドリフトの影響によって現在値がタッチ前と同じ値まで戻らないことがあるためです タッチ検出後に平均値をロックした様子を図 5 に示します 緩やかな変動に対してのみ 平均値が追従しています DS01202B_JP - ページ 4 2009 Microchip Technology Inc.

センサーは プリント基板上に大型の銅箔として作り込む以外にも プラスチックエンクロージャ内に伝導性テープを封止して実装できるため 単曲面または複曲面での成形加工も可能です 金属製エンクロージャなども 物理的に接地されていなければセンサーとして使用できます 近接スイッチで大型のパッドを使用する際は 標準のタッチボタンより容量が大きくなります したがって 周波数も低くなります 基本周波数が 100 khz ~ 400 khz の間におさまるように R1 の値を調整してください 注意事項 図 7: VDD の立ち上がり時間 VDD VDD PIC10F20X TMR0 のオーバーフロー この設計では TMR0 の値を読み出すことが測定の基本となっているため TMR0 がオーバーフローしてはなりません 測定サイクルを長くするとカウント数を大きくすることができますが あまり長くしすぎると TMR0 がオーバーフローしてしまうので注意してください オシレータの周波数を高くすると 分解能を損なわずに測定サイクルを短くすることができます ボタンの戻り 連続タッチアルゴリズムの実装では 平均処理メカニズムを停止します ドリフトの影響により 現在値がタッチ前と同じ値まで戻らないことがあります ヒステリシスを十分に大きくとって 現在値のドリフトを補償するようにしてください 電源の変動 オシレータのトリップポイントは内部リファレンスの 0.6V です 容量は VDD から 0.6V に放電されるので VDD が急激に変化するとオシレータの周波数が変化します これにより タッチの誤検出が発生することがあります ゆっくりとした変動 ( バッテリ電圧の変化など ) は 平均処理メカニズムによって補償されます なるべく安定化電源を使用し PIC マイクロコントローラの近くにデカップリングコンデンサを使用してください また VDD の立ち上がり時間も考慮する必要があります 最小 VDD 立ち上がり時間を満たせない場合 動作パラメータの条件が満たされるまでデバイスをリセット状態に保持する必要があります または 図 7 に示した回路を使用することもできます この方法では MCLR ピンを汎用入力ピンとして使用できます 回路基板の説明 完全な回路図は付録 A に記載しています このボードには 外付け電源またはシリアルポートから電力が供給されます RTS (Request To Send) および DTR (Data Terminal Ready) ピンを利用して ボードに十分な電流を供給できます これらのピンは D3 を経由して LDO に接続されます PIC MCU には MCP1703 を使用して 5V の安定化電源を供給しています ジャンパ K3 を適切な位置に設定すると 空いた I/O ピンを LED やブザーに接続するか シリアルポートに接続するかを選択できます トランジスタ Q1 は 電圧レベルを RS-232 互換レベルにシフトするために使用しています 負レベル (V-) は PC の送信ピン TX から D5 を経由して取り出しています J1 は モード切り替え用のジャンパです ジャンパを取り付けると PIC10F は平均値 現在値 トリップポイント 平均処理の深さなどのリアルタイムデータを送信します ジャンパを取り外すと この回路はボタンとして機能し LED とブザーを作動させます モードに応じてジャンパ K3 を適切な位置に設定してください K7 はプログラミング用コネクタです ICD 2 または PICkit 2 を使用してオンボードプログラミングが行えます プログラミングが完了したらプログラマを取り外してください プログラマの PGD ピンはタッチパッドと共用なので 取り付けたままだと自走オシレータが正しく動作しません 2009 Microchip Technology Inc. DS01202B_JP - ページ 5

結論 本アプリケーションノートには 設計の詳細を理解して短期間で実装していただけるよう ソフトウェアが付属しています キャパシティブセンサーのソフトウェアは 非常にシンプルなものにすることも 複雑なアルゴリズムでボタン検出を実行することもできます その他の参考資料は次のとおりです AN1101 容量検知ソリューションの紹介 AN1102 キャパシティブセンシングにおけるレイアウトおよび物理的設計ガイド AN1103 キャパシティブセンシングにおけるソフトウェア処理 AN1104 容量性マルチボタンの構成 DS01202B_JP - ページ 6 2009 Microchip Technology Inc.

PIC10F を使用したキャパシティブセンサー 付録 A 完全な回路図 2009 Microchip Technology Inc. DS01202B_JP - ページ 7

PIC10F を使用したキャパシティブセンサー ノート : DS01202B_JP - ページ 8 2009 Microchip Technology Inc.

マイクロチップ社デバイスのコード保護機能に関する以下の点にご留意ください マイクロチップ社製品は その該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています マイクロチップ社では 通常の条件ならびに仕様どおりの方法で使用した場合 マイクロチップ社製品は現在市場に流通している同種製品としては最もセキュリティの高い部類に入る製品であると考えております コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在します マイクロチップ社の確認している範囲では このような方法のいずれにおいても マイクロチップ社製品をマイクロチップ社データシートの動作仕様外の方法で使用する必要があります このような行為は 知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます マイクロチップ社は コードの保全について懸念を抱いているお客様と連携し 対応策に取り組んでいきます マイクロチップ社を含むすべての半導体メーカーの中で 自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はありません コード保護機能とは マイクロチップ社が製品を 解読不能 として保証しているものではありません コード保護機能は常に進歩しています マイクロチップ社では 製品のコード保護機能の改善に継続的に取り組んでいます マイクロチップ社のコード保護機能を解除しようとする行為は デジタルミレニアム著作権法に抵触する可能性があります そのような行為によってソフトウェアまたはその他の著作物に不正なアクセスを受けた場合は デジタルミレニアム著作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があります 本書に記載されているデバイスアプリケーションなどに関する情報は ユーザーの便宜のためにのみ提供されているものであり 更新によって無効とされることがあります アプリケーションと仕様の整合性を保証することは お客様の責任において行ってください マイクロチップ社は 明示的 暗黙的 書面 口頭 法定のいずれであるかを問わず 本書に記載されている情報に関して 状態 品質 性能 商品性 特定目的への適合性をはじめとする いかなる類の表明も保証も行いません マイクロチップ社は 本書の情報およびその使用に起因する一切の責任を否認します マイクロチップ社デバイスを生命維持および / または保安のアプリケーションに使用することはデバイス購入者の全責任において行うものとし デバイス購入者は デバイスの使用に起因するすべての損害 請求 訴訟 および出費に関してマイクロチップ社を弁護 免責し 同社に不利益が及ばないようにすることに同意するものとします 暗黙的あるいは明示的を問わず マイクロチップ社が知的財産権を保有しているライセンスは一切譲渡されません 商標 Microchip の社名とロゴ Microchip ロゴ Accuron dspic KEELOQ KEELOQ ロゴ MPLAB PIC PICmicro PICSTART rfpic SmartShunt UNI/O は 米国およびその他の国における Microchip Technology Incorporated の登録商標です FilterLab Linear Active Thermistor MXDEV MXLAB SEEVAL SmartSensor The Embedded Control Solutions Company は 米国における Microchip Technology Incorporated の登録商標です Analog-for-the-Digital Age Application Maestro CodeGuard dspicdem dspicdem.net dspicworks dsspeak ECAN ECONOMONITOR FanSense In-Circuit Serial Programming ICSP ICEPIC Mindi MiWi MPASM MPLAB Certified ロゴ MPLIB MPLINK mtouch nanowatt XLP PICkit PICDEM PICDEM.net PICtail PIC 32 logo PowerCal PowerInfo PowerMate PowerTool Real ICE rflab Select Mode Total Endurance TSHARC WiperLock ZENA は 米国およびその他の国における Microchip Technology Incorporated の商標です SQTP は米国における Microchip Technology Incorporated のサービスマークです その他 本書に記載されている商標は 各社に帰属します 2009, Microchip Technology Incorporated, Printed in the U.S.A., All Rights Reserved. 再生紙を使用しています マイクロチップ社では Chandler および Tempe ( アリゾナ州 ) Gresham ( オレゴン州 ) の本部 設計部およびウエハ製造工場そしてカリフォルニア州とインドのデザインセンターが ISO/TS-16949:2002 認証を取得しています マイクロチップ社の品質システムプロセスおよび手順は PIC MCU および dspic DSC KEELOQ コードホッピングデバイス シリアル EEPROM マイクロペリフェラル 不揮発性メモリ アナログ製品に採用されています また マイクロチップ社の開発システムの設計および製造に関する品質システムは ISO 9001:2000 の認証を受けています 2009 Microchip Technology Inc. DS01202B_JP - ページ 9

世界各国での販売およびサービス 北米 アジア / 太平洋 アジア / 太平洋 ヨーロッパ 本社 2355 West Chandler Blvd. Chandler, AZ 85224-6199 Tel: 480-792-7200 Fax: 480-792-7277 テクニカルサポート : http://support.microchip.com ウェブアドレス : www.microchip.com アトランタ Duluth, GA Tel: 678-957-9614 Fax: 678-957-1455 ボストン Westborough, MA Tel: 774-760-0087 Fax: 774-760-0088 シカゴ Itasca, IL Tel: 630-285-0071 Fax: 630-285-0075 クリーブランド Independence, OH Tel: 216-447-0464 Fax: 216-447-0643 ダラス Addison, TX Tel: 972-818-7423 Fax: 972-818-2924 デトロイト Farmington Hills, MI Tel: 248-538-2250 Fax: 248-538-2260 ココモ Kokomo, IN Tel: 765-864-8360 Fax: 765-864-8387 ロサンゼルス Mission Viejo, CA Tel: 949-462-9523 Fax: 949-462-9608 サンタクララ Santa Clara, CA Tel: 408-961-6444 Fax: 408-961-6445 トロント Mississauga, Ontario, Canada Tel: 905-673-0699 Fax: 905-673-6509 アジア太平洋支社 Suites 3707-14, 37th Floor Tower 6, The Gateway Harbour City, Kowloon Hong Kong Tel: 852-2401-1200 Fax: 852-2401-3431 オーストラリア - シドニー Tel: 61-2-9868-6733 Fax: 61-2-9868-6755 中国 - 北京 Tel: 86-10-8528-2100 Fax: 86-10-8528-2104 中国 - 成都 Tel: 86-28-8665-5511 Fax: 86-28-8665-7889 中国 - 香港 SAR Tel: 852-2401-1200 Fax: 852-2401-3431 中国 - 南京 Tel: 86-25-8473-2460 Fax: 86-25-8473-2470 中国 - 青島 Tel: 86-532-8502-7355 Fax: 86-532-8502-7205 中国 - 上海 Tel: 86-21-5407-5533 Fax: 86-21-5407-5066 中国 - 瀋陽 Tel: 86-24-2334-2829 Fax: 86-24-2334-2393 中国 - 深川 Tel: 86-755-8203-2660 Fax: 86-755-8203-1760 中国 - 武漢 Tel: 86-27-5980-5300 Fax: 86-27-5980-5118 中国 - 厦門 Tel: 86-592-2388138 Fax: 86-592-2388130 中国 - 西安 Tel: 86-29-8833-7252 Fax: 86-29-8833-7256 中国 - 珠海 Tel: 86-756-3210040 Fax: 86-756-3210049 インド - バンガロール Tel: 91-80-3090-4444 Fax: 91-80-3090-4080 インド - ニューデリー Tel: 91-11-4160-8631 Fax: 91-11-4160-8632 インド - プネ Tel: 91-20-2566-1512 Fax: 91-20-2566-1513 日本 - 横浜 Tel: 81-45-471-6166 Fax: 81-45-471-6122 韓国 - 大邱 Tel: 82-53-744-4301 Fax: 82-53-744-4302 韓国 - ソウル Tel: 82-2-554-7200 Fax: 82-2-558-5932 または 82-2-558-5934 マレーシア - クアラルンプール Tel: 60-3-6201-9857 Fax: 60-3-6201-9859 マレーシア - ペナン Tel: 60-4-227-8870 Fax: 60-4-227-4068 フィリピン - マニラ Tel: 63-2-634-9065 Fax: 63-2-634-9069 シンガポール Tel: 65-6334-8870 Fax: 65-6334-8850 台湾 - 新竹 Tel: 886-3-6578-300 Fax: 886-3-6578-370 台湾 - 高雄 Tel: 886-7-536-4818 Fax: 886-7-536-4803 台湾 - 台北 Tel: 886-2-2500-6610 Fax: 886-2-2508-0102 タイ - バンコク Tel: 66-2-694-1351 Fax: 66-2-694-1350 オーストリア - ヴェルス Tel: 43-7242-2244-39 Fax: 43-7242-2244-393 デンマーク - コペンハーゲン Tel: 45-4450-2828 Fax: 45-4485-2829 フランス - パリ Tel: 33-1-69-53-63-20 Fax: 33-1-69-30-90-79 ドイツ - ミュンヘン Tel: 49-89-627-144-0 Fax: 49-89-627-144-44 イタリア - ミラノ Tel: 39-0331-742611 Fax: 39-0331-466781 オランダ - ドリューネン Tel: 31-416-690399 Fax: 31-416-690340 スペイン - マドリッド Tel: 34-91-708-08-90 Fax: 34-91-708-08-91 英国 - ウォーキンガム Tel: 44-118-921-5869 Fax: 44-118-921-5820 03/26/09 DS01202B_JP - ページ 10 2009 Microchip Technology Inc.