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光符号分割多重アクセス技術に関する研究開発 片岡伸元 1, 和田尚也 1, 北山研一 2, 寺田佳弘 3, 坂元明 姫野明 4, 才田隆志 4, 津田信一 4 3 1 独立行政法人情報通信研究機構 2 大阪大学 3 株式会社フジクラ 4 NTT エレクトロニクス株式会社 1 はじめにインターネットを用いたデータサービスの多様化により, 各ユーザが取り扱う通信帯域の拡大が急速に進んでいる. 日本国内のブロードバンド契約者のダウンロードトラヒック総量を見てみると, 図 1(a) に示すように年率 20% 以上で増加しつづけている [1]. また, 日本国内のブロードバンドサービス契約数の内訳では, 図 1(b) に示すように光ファイバによって通信サービスを行う FTTH(Fiber to the home) が DSL の契約数を上回り増加を続けている [2]. これらは各ユーザに直結するアクセス系のネットワークにおいて, ユーザ数の増加に耐えうる光アクセスネットワークインフラの広帯域化が必要であることを意味する. このような要求に対し, 光アクセスネットワークの大容量 高速化を行う多重アクセス方式として光符号分割多重アクセス (Optical Code Division Multiple Access: OCDMA) 技術が注目を浴びている.OCDMA システムはユーザ毎に異なる符号で情報ビットを光符号化することにより, 1つの伝送線路を多くのユーザで共有可能とする多重アクセス技術であり, 完全非同期性 低遅延アクセス 高拡張性 高秘匿性などの優れた性質を持つ. 筆者らは OCDMA システムの大容量 高速化を実現するため, 光符号 復号器デバイスおよびプロトタイプシステムの研究開発を行い, 実証実験によりその有効性を確認した. (a) (b) 図 1:(a) インターネットトラヒックの推移 [1], (b) 国内におけるブロードバンドサービス等の契約数の推移 [2] 1

2 OCDMA 技術における課題 OCDMA システムにおける最大の問題点は, 干渉ノイズによる確保可能な多重 ( ユーザ ) 数の制限である.OCDMA 技術は 1980 年代に提案されて以来, 多くの機関によって様々な提案 研究開発が行われており, これまでの多くの報告では干渉雑音を除去するため方法として, 時間ゲート処理 および 光閾値処理 などが用いられてきた. ここで, 時間ゲート処理とは, 光復号化された信号と同期する信号を用いて, あるウィンドウ時間以外の干渉雑音を除去する方法である. しかし, この方式は, 受信側でチップレベルの厳密な同期が必要であり OCDMA 方式の最も魅力的な特性である非同期性を失ってしまうと共にシステムが複雑になってしまう大きな問題点がある. また, 光閾値処理とは, ある閾値以上の光強度を持つ光は透過させ, 閾値以下の光強度を持つ光は遮断する伝達関数を光領域で実現する雑音除去技術である. しかし, 報告されている光閾値処理は装置の規模が非常に大きく, 複雑な制御が必要であるなどの問題点がある. これらの処理を用いず, 光符号の特性のみで OCDMA システムを構築した場合, 一般的に干渉雑音レベル (ξ) は, 符号の拡散チップ数 N およびパワーコントラスト比 (Power contrast ratio: PCR) を用いて次式で表される [3]. ξ=1/(n PCR) ここで,PCR とは自己相関 ( 符号一致 ) 出力と相互相関 ( 符号不一致 ) 出力の光強度比を表す. つまり, 干渉雑音を低減するためには拡散チップ数を増やすか PCR を大きくする必要がある. しかし拡散チップ数を増やす方法では, 時間的に拡散を行った場合, 拡散長が信号ビットレート間隔以上になってしまい, 高速化の障害となる. そのため, 本報告では高 PCR 特性を持つ光符号およびそのデバイスの検討 開発を行い, 実証実験によってその有効性を確かめた. 3 研究開発技術 OCDMA システムにおける干渉雑音を低減し多重数増加を可能とする技術として高 PCR を持つマルチポート光符号 復号器および SSFBG 光符号 復号器の開発を行った. また, 完全非同期アクセスを可能にする OCDMA プロトタイプの開発を行った. 3.1 マルチポート光符号 復号器図 2 に開発したマルチポート光符号 復号器の構成および光符号 復号化の概要を示す. このデバイスは N 個の入出力ポートを持ち, 入出力ポートの組み合わせ方によって符号系列の異なる光符号を 1 台で同時に生成及び復号処理することが可能な受動デバイスであり, 平面光波回路 (PLC: Planar lightwave circuit) 技術によって実現されている. この光符号器に1つの光パルスを入力すると N 個の出力ポートからは N チップのパターンが異なる光 PSK(phase shift keying) 符号が出力される. 光復号化は光符号化する際の入出力ポートと同じ組み合わせのポートから入出力した場合にのみ符号が一致し高いピークパワーを持つ自己相関波形が得られ, それ以外は非常に低いパワーを持つ相互相関波形となる. 図 3 に今回開発した 16x16 および 0x0 ポート光符号 復号器の PCR 特性を示す. これより干渉レベルの抑圧に十分な, 最大 20dB 以上の高 PCR 2

特性を実現できていることがわかる. マルチポート光符号 復号器は, 高 PCR 特性を持つとともに 1 台で複数の符号を生成 処理可能であり, また周波数周期特性を有しているため波長分割多重 (WDM: wavelength division multiplexing) 用の波長多重デバイスとしても利用することが可能であるため, 複数のユーザに対して光符号化 復号化行う必要がある中央局 (OLT:Optical line terminal) で用いるデバイスとして有効である. (a)16x16 ポート光符号 復号器 (b) 光符号化光パルス N チップ OC 1 (c) 光復号化 OC 2 OC 1 相互相関 図 2:(a)16x16 マルチポート光符号 復号器写真,(b) 光符号化,(c) 光復号化. 自己相関 (a) 2 (b) 30 20 PCR, db 1 10 PCR, PCR, db db 20 10 0 1 3 7 9 11 13 1 Port 番号 0 0 10 10 20 1 30 20 40 2 0 Port Port number 番号 図 3:PCR 特性 ( マルチポート光符号 復号器 ):(a)16x16,(b)0x0. 3.2 超構造ファイバブラッグ回折格子 (SSFBG) 光符号 復号器第 3.1 節で述べたマルチポート光符号 復号器は複数の光符号を処理する必要がある OLT での利用には有効であるが, 加入者宅 (ONU: optical network unit) では各ユーザ固有の光符号処理のみ必要かつ各家庭に設置されることから小型化する必要がある. そこで光ファイバの長手方向にある屈折率変化を与え, 時間拡散および位相制御をすることが可能である超構造ファイバブラッグ回折格子 (SSFBG: super structured fiber Bragg grating) 光符号 復号器の開発を行った.SSFBG は光ファイバベースのデバイスのため小型化が可能であり, 偏波無依存, 波長分波機能を有するなど ONU 用の光符号 復号器として非常に有効である. また, この SSFBG 光符号 復号器で生成 処理される光符号の種類は 16x16 ポート光符号 復号器と同一のものを使用しているため, 高 PCR も実現されている. 図 4 に SSFBG 光符号 復号器の PCR 特性および光符号化 復号化 3

波形を示す. これより高 PCR 特性が実現され, マルチポート光符号 復号器と同じ符号特性を有していることがわかる. 符号化 復号化 PCR, db 2 20 1 10 0 1 3 7 9 11 13 1 Port 番号 SSFBG 80 ps マルチポート光符号器マルチポート光復号器自己相関 SSFBG 光符号器 SSFBG 光復号器自己相関 入力光パルス マルチポート 相互相関 相互相関 図 4:PCR 特性 (SSFBG 光符号 復号器 ) および光符号化 復号化波形. 3.3 OCDMA プロトタイプ本節では, 完全非同期 OCDMA システムの実証を行うため,10Gb Ethernet(10GbE) インターフェースを持つ OCDMA プロトタイプの開発について述べる. 図 (a) に OCDM 送信器 (OCDM Tx) の構成を示す.OCDM Tx は,OCDM Tx ボード, モード同期半導体レーザ (Mode-locked laser diode: MLLD), ニオブ酸リチウム位相変調器 (LiNbO3 Phase Modulator: LN-PM), エルビウム添加ファイバ増幅器 (Erbium-Doped Fiber Amplifier: EDFA) 及び光符号器により構成される.10GbE 信号が OCDM Tx に入力されると,OCDM Tx ボードにより 10.312GHz のクロック信号及び光信号を変調するための差動位相変調 (Differential phase shift keying: DPSK) プリコーディングが施された電気信号に変換される. クロック信号は MLLD に入力され, 電気信号は LN-PM に入力される.MLLD からはパルス幅 1.8ps, 繰り返し周波数 10.312GHz の光パルスが出力される. 出力された光パルス列は LN-PM で DPSK 変調される. 本システムでは, 光信号の変調方式として対雑音特性に優れる DPSK 変調を用いる [4]. 変調された DPSK 信号は光符号器によって光符号化され,EDFA により増幅され出力される. 図 (a) に OCDM 受信器 (OCDM Rx) の構成を示す.OCDM Rx は,EDFA, 光復号器,1bit 遅延干渉器, デュアル PIN フォトダイオード,OCDM Rx ボードにより構成される.OCDM Rx OCDM 送信器 OCDM 受信器 10GbE 信号 OCDM 10G データ送信ボードクロック MLLD 位相変調器 1 ビット遅延器 バランス型光検出器 OCDM 受信ボード 10GbE 信号 図 :(a)ocdm Tx,(b)OCDM Rx. 4

に入力された OCDM 信号は光復号器により復号化され, 所望の符号チャネルのみ, 強い光強度を持つ自己相関波形を出力する. 自己相関出力は 1bit 遅延器, デュアル PIN フォトダイオードにより DPSK 復調される. 検出された電気信号は OCDM Rx ボードによって 10GbE の光信号に変換される. これら OCDMA プロトタイプと 10GbE 信号を用いることにより, 各送受信器間での同期が不要となり, 完全非同期状態での OCDMA システムの実証を行うことが可能となった. 4 多重アクセス検証実験本章では, 第 3 章で述べた技術 装置を用いた OCDMA システムの実証実験結果について述べる. 第 4.1 節では, 非同期アクセスでの多重数増加を目的とし,0x0 ポート光符号器を用いた 2OCDMA ユーザ 波長 (12 ユーザ ) フィールド伝送実験を行った結果について述べる. 第 4.2 節では, 一芯のファイバ当たりの利用効率向上を目的とした,16x16 ポート光符号 復号器,SSFBG 光符号 復号器および OCDMA プロトタイプを用いた全二重完全非同期伝送実験結果を述べる. これらの実験における各ユーザあたりのビットレートは将来の高速アクセスネットワークを想定し 10Gbps とする. 4.1 2 ユーザ x 波長フィールド伝送実験図 6 に実験の構成を示す. 光源としてスーパーコンティニュウムを用いた広帯域短パルス光源を 2 台用いた. これより波長間隔 600GHz の 波長を切り出し, 位相変調器により誤り訂正符 SC source 1 DFF ML LD -1 19 nm DFF MLLD-2 16 nm SC source 2 LN-PM LN-PM λ1 λ3 λ λ2 λ4 4 nm Fiber delay lines: 0, 10,, 20 m Port 21 C 1 PC C 2 41 C 3 13 0x0 ポート光符号器 C 24 31 C 2 Port 1 Optical switch 2:1 36 nm JGN2 フィールド敷設ファイバ 0km 小金井大手町 0km 小金井大手町 DCF 10.71GHz Clock Synthesizer 1 RF Amp. Synthesizer 2 Fiber delay lines: DPSK, 10, 1, 20 2 m Encoder Pattern Generator/ BER tester DPSK Encoder OTN (PRBS 2 31 ) Pattern Generator/ BER tester Data CDR (Anritsu MP190B) Clock FEC on/off DPSK detection Interferometer (10.71GHz) + Dual- pin Photo - detector (~93ps) nm 36 nm WDM DMUX 600GHz 600GHz 600GHz 600GHz λ1 λ2 λ3 λ4 λ 0x0 ポート光復号器 図 6: フィールド伝送実験系.

号 (FEC: Forward error correction) オーバーヘッドが付加された疑似ランダム信号の DPSK 変調を行い, それぞれ 0x0 ポート光符号器の異なる つのポートへ入力した. 光符号器の各出力ポートからは波長多重されたポート毎に異なる光符号を持つ光符号化信号 (0 チップ 00Gchip/s) が出力される. 今回, 光符号器の 2 本の出力ポートを用いて 2OCDMA 多重を行った. 本実験では,NICT が運用する JGN2 光テストベッドを用いた []. 本光テストベッドは図 6 中に示すように小金井 NICT 本所から大手町局間 0km のシングルモードファイバ (SMF: single mode fiber) を折り返し構成で使用し, 総伝送距離 100km で行った. また, 伝送後の信号に分散補償ファイバによって分散補償を施した. 伝送信号は光帯域通過フィルタにより各波長に分波され,0x0 ポート光復号器に入力される. 光復号器の各出力ポートからは所望の信号のみ自己相関波形が出力され, それ以外の符号は拡散される. 光復号器の出力は DPSK 受信器およびクロックデータ再生回路 (CDR) を用いて受信され, 誤り率測定器 (Bit error rate tester: BERT) によってビット誤り率 (BER: Bit error rate) の測定を行った. 図 7 にビット誤り率の測定結果を示す. これらより,FEC 適用後すべての波長 符号においてエラーフリー (BER<10 ) を確認し, その有効性を確認した. この結果は現時点において完全非同期での世界最高のユーザ数である. λ1 λ2 λ3 - (C1,,10,1,20,2) (C1~2) ~10-10 8 6 4 2 0-28 -2 - (C1,,10,1,20,2) (C1~2) 8 6 4 2 0-28 -26 - (C1,,10,1,20,2) (C1~2) 8 6 4 2 0-28 -26 λ4 λ - (C1,,10,1,20,2) (C1~2) 8 6 4 2 0-28 -26 Power, dbm - (C1,,10,1,20,2) (C1~2) 8 6 4 2 0-28 -26-24 図 7:BER 測定結果. 4.2 全二重完全非同期 OCDMA 実験図 8 に全二重 10Gbps 完全非同期 OCDMA システムの実験系を示す.OLT は OCDM Tx,16x16 ポート光符号器,EDFA, 可変光減衰器 (Variable Optical Attenuator: ), 偏波コントローラ (Polarization Controller: PC) により構成される. 各 OCDM Tx は, それぞれ信号源からのデータ入力を DPSK 変調した中心波長 11nm, 繰り返し周波数 10.312GHz の光パルス列を出力する. OCDM Tx により生成された光信号を光カプラにより 8 分岐し, それぞれマルチポート光符号器の異なるポートに入射し,16 チップ (200Gchip/s) の光符号を生成した. マルチポート光符号器では入出力ポートの組み合わせ方によって異なるパターンに光符号化が行われるため, 出力信号は 8 種類の異なる符号が多重された OCDM 信号となる. それぞれの光符号信号は によっ 6

て出力光強度が同一になるよう調整した. 図 8 に生成された (ii) 光符号波形,(iii)8 ユーザ OCDM 信号波形を示す.OCDM 信号は異なる符号がランダムに重なっているため雑音のような時間波形が観測されていることがわかる. 生成した OCDM 信号は EDFA により増幅され, シングルモードファイバ (Single mode fiber: SMF) と分散補償ファイバ (Dispersion compensation fiber: DCF) 併せて 0km の伝送ファイバに入射される. 伝送後,OCDM 信号を 1:8 カプラにより 8 分岐し各 ONU に入射した.ONU は OCDM Rx により構成され, 到着した OCDM 信号の光復号化 ( 図 8(iv)),DPSK 復調 ( 図 8(v)) が行われる. 受信信号伝送品質を評価するため,CDR(Clock and data recovery) 回路及び BERT を用いてビット誤り率を測定した. 図 8(vi) に CDR の出力波形を示す. 各 ONU は 4 台の OCDM Tx(1~4),SSFBG 光符号器,,PC により構成される. 各 OCDM Tx はダウンリンク実験と同様, それぞれ信号源からのデータ入力を DPSK 変調した中心波長 11nm, 繰り返し周波数 10.312GHz の光パルス列を出力する ( 図 8(vii) 参照 ).OCDM Tx により生成された光信号はそれぞれ異なる符号パターンを持つ SSFBG 光復号器に入射し,16 チップ (200Gchip/s) の光符号を生成した. これらの信号を光カプラで合波し 4 ユーザ OCDM 信号にする. ここで, それぞれのユーザからの信号の条件を同じにするため光強度, 偏波を揃えている. 図 8 に生成された (viii) 光符号波形,(ix)4 ユーザ OCDM 信号波形を示す. 生成した OCDM 信号は EDFA により増幅され, ダウンリンク実験と同様の 0km 伝送ファイバに入射される. 伝送後,OCDM 信号は OLT に入射される.OLT はマルチポート光復号器,OCDM Rx により構成され, 到着した OCDM 信号の光復号化 ( 図 8(x)),DPSK 復調 ( 図 8(xi)) が行われる. 最後にダウンリンク実験と同様にビット誤り率を測定した. 図 8(xii) に CDR の出力波形を示す. Downlink (i) DPSK signal (ii) Encoding (iii) 8 OCDM (iv) Decoding (v) DPSK detector (vi) After CDR PC Multi-port Encoder OLT ONU-1 OCDM Tx 1 (ii) (viii) (vii) 10.312GHz (iii) (i) PPG 9 10.312GHz ISO 13 PM MLLD 1 OCDM Tx 7.6nm 0km λ:11nm λ:11nm 3 (vi) 7 SMF Balanced 11 RDF Photo CDR ED 1 1:8 detector Random delay line (x) splitter (iv) (v) OCDM Rx 1 1 OCDM Rx (xi, xii) OCDM Rx 2 (ix) OCDM Rx 3 9 ONU λ:11nm OCDM Rx 4 13 Multi-port Decoder ONU-8 λ:11nm (xii) After CDR (xi) DPSK detector (x) Decoding (ix) 4 OCDM (viii) Encoding (vii) DPSK signal 図 8: 全二重完全非同期 OCDMA 伝送実験系および波形. Uplink 7

図 9 に単方向および全二重伝送におけるアップリンク ダウンリンクの BER 測定結果を示す. これより, すべてのユーザ, 波長においてエラーフリー (BER<10 ) となることを確認し, その有効性を確認した. アップリンクダウンリンク - 4 ユーザ 1 ユーザ -4-40 Received 0-2 -20 power (dbm) -1 図 9:BER 測定結果. - 8 ユーザ 1 ユーザ -4-40 Received 0-2 -20 power (dbm) -1 OCDMA システム実現による波及効果完全非同期 OCDMA システムが実現すると, 大容量 高速アクセスネットワークが構築できるだけでなく以下に列挙する項目の実現が期待される. 現在の FTTH ではアップリンクの高速化 多重化が問題となっているが,OCDMA システムでは双方向で大容量データを完全非同期送信可能であるためアップリンクの高速化も可能 将来の光多重アクセス技術の一つである波長分割多重を利用した WDM-PON が導入された際にも,OCDMA システムは WDM-PON の各波長にオーバーレイすることによりオンデマンドで容量を増やすことが可能であるため導入に際して既存のフォーマットに与える影響が少なく高拡張性を持つ 信号が物理層で光符号化され, かつ多重化されて送信されるため物理層での秘匿性が 容易に 増加 無線の CDMA とシームレスなネットワーク構築 6 まとめ光アクセスネットワークの大容量 高速化を実現する OCDMA システムを構築するため, 光符号 復号化技術および完全非同期動作 OCDMA プロトタイプの研究開発を行った. 開発したデバイスを用いて 10Gbps 2 OCDMA ユーザ 波長の 100km フィールド敷設ファイバの伝送実験に世界で始めて成功した. また, 全二重 10Gbps 完全非同期 OCDMA システム ( アップリンク :4 ユーザ, ダウンリンク :8 ユーザ ) の伝送実験に始めて成功した. 7 参考文献 [1] 総務省報道資料 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000010371.pdf) [2] 総務省報道資料 (http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/081217_3.html) [3] X. Wang and K. Kitayama, "Analysis of Beat Noise in Coherent and Incoherent Time-Spreading 8

OCDMA," IEEE/OSA J. Lightwave Technol., Vol. 22, No. 10, pp. 2226-223, Oct. 2004. [4] X. Wang, N. Wada, T. Miyazaki, G. Cincotti, and K. Kitayama, Trial of 3-WDM x 10-OCDMA x 10.71-Gb/s Asynchronous WDM/DPSK-OCDMA Using Hybrid E/D Without FEC and Optical Thresholding, IEEE/OSA J. Lightwave Technol., vol. 2, no. 1, pp. 207-21, Jan. 2007. [] http://www.jgn.nict.go.jp/ 9