28. 社会的養護 児童相談所へ通告したけれど その後どうなっているのかがわからない 一時保護所に措置されたと はきいたが ある日突然クリニックに風邪を引いて受診してきた 児童相談所からのフィードバックがな いということがよくきかれる 子ども虐待対応の現状児童相談所への通告件数は増加の一途をたどって

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1. 子育て短期支援事業の概要 根拠法 子育て短期支援事業 は 児童福祉法 ( 昭和 22 年法律第 164 号 以下 法 という ) 第 6 条の 3 第 3 項に規定する市町村が実施する事業 用語の意味 児童 児童福祉法第 4 条に規定する者をいう 保護者 児童福祉法第 6 条に規定する者をいう

に養育されるよう また 児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合は 児童ができる限り 良好な家庭的環境 において養育されるよう 必要な措置を講ずることとする ( 同法第 3 条の2) なお 家庭 とは 実父母や親族等を養育者とする環境を 家庭における養育環境と同様の養育環境 と

Ⅰ 児童福祉法の理念の明確化等 全ての児童が健全に育成されるよう 児童を中心に その福祉の保障等の内容を明確化する (1) 児童の福祉を保障するための原理の明確化 児童は 適切な養育を受け 健やかな成長 発達や自立等を保障されること等の権利を有することを明確化 ( 児童福祉法 ) (2) 家庭と同様

施設等受給者用 Q&A 問 1 施設等 に入所している児童の児童手当は施設の設置者等に支給されるとのことですが 施設等 とは具体的にはどのような施設が含まれますか? 問 2 施設等が児童手当を申請する場合 どのような児童が支給対象となりますか? 問 3 4 月から 施設等に入所している児童の児童手当

⑤5 地方公共団体における検証等に関する調査結果

児童虐待防止対策体制総合強化プラン 平成 30 年 12 月 18 日 児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定 1. 目的 2016 年 5 月に全会一致で成立した児童福祉法等の一部を改正する法律 ( 平成 28 年法律第 63 号 以下 平成 28 年改正法 という ) においては 子ども

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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

児童虐待防止対策の経緯 児童福祉法による要保護児童対策として対応 平成 12 年 児童虐待の防止等に関する法律 ( 児童虐待防止法 ) の成立 (11 月施行 ) 1 児童虐待の定義 ( 身体的虐待 性的虐待 ネグレクト 心理的虐待 ) 2 住民の通告義務等 平成 16 年 平成 19 年 児童虐待

Microsoft Word - ●資料2「児童自立支援施設について」

H28後 03 社会的養護

 

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障害者虐待の防止と対応

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

和光市保育の必要性の認定に関する条例施行規則 ( 制定準備資料 ) 資料 2 1 条例第 3 条第 1 項関係 ( 保育の必要性の基準 ) 市長は 小学校就学前子どものうちその保護者のいずれもが次の各号のいずれかの事由 ( 以下 保育の必要性の基準 という ) に該当するものを法第 19 条第 1

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(1) 家庭的保育事業 項目 国基準 区分 保育業者 家庭的保育者 市町村長が行う研修を修了した保育士 保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者 家庭的保育補助者 市町村長が行う研修を修了した者 数 0~2 歳児 3:1( 家庭的保育補助者を置く場合 5:2) 保育を行う専用居室

長野県プレスリリース 平成16年7月23日

「運営規程」

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(2) 検討の方向性 1 グループホームを本体施設の近くに設置したり 複数のグループホームを集積することで 本体施設との連携 グループホーム間の連携を強化し 職員の負担の軽減や 子どもの安全確保を強化できないか 地域小規模 FH の隣接複数設置 + 本 4 ユ 園 ニット + 本 園 4 ユ ニット

重症心身障害児施設の省令 ( 指定基準 ) を読む 全国重症心身障害児 ( 者 ) を守る会顧問山﨑國治 Ⅰ はじめに 平成 18 年 9 月 29 日 厚生労働省令第 178 号として 重症心身障害児施設の 人員 設備及び運営に関する基準 が厚生労働大臣から公布されました 省令のタイトルは 児童福

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( 児童養護施設ってどんなところ? ( 社会的養護 ~ 全ての子どもを社会全体で育む ~ 社会には様々な理由により 保護者がいなかったり 保護者の適切な養育を受けられなかったりする子どもたちがいます 社会的養護 は こうした子どもたちを 公的責任で保護 養育するとともに これらの家庭を支援する仕組み

( 産休等代替職員の登録 ) 第 3 条 所定の資格を有する者であって, 産休等代替職員となることを希望する者は, 産休等代 替職員登録申込書 ( 別記様式第 1 号 ) を市町に提出するものとし, 市町長は適当と認めたときはこれを産休等代替職員登録簿 ( 別記様式第 2 号 以下 登録簿 という

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別添2 乳児家庭全戸訪問事業の実施状況

スライド 1

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リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

医療的ケア児について

 

ふくしかくネット 平成 30 年 ( 後期 ) 保育士試験 : 社会的養護一問一答 200 問 目 次 第 1 章現代社会における社会的養護の意義と歴史的変遷...5 第 1 節社会的養護の理念... 5 第 2 節児童養護施設入所児童等調査結果... 7 第 3 節社会的養護の歴史... 9 第

Microsoft Word - 児扶法改正(Q&A)

児童相談所が虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制強化 滋賀県彦根子ども家庭相談センター菅野道英 児童相談所の使命 2 子どもの発達上のニーズを適切に充たし 現在 ~ 未来の 生きやすさ を保障する 子どもが発達の過程で示すさまざまな症状や問題についての相談に応じ 専門的支援を行って

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

(2)-2 退所時 ( 契約入所の場合 ) 保護者と児童福祉施設等の契約に基づき入所している子どもについては 児童福祉法に基づく障害児施設給付費の支給を行う都道府県が把握していることから 当該都道府県が施設の所在する市町村及び保護者の住所地の市町村へ退所した旨を通知することにより 二重支給を防止し

Taro-沖縄県家庭的養護推進計画

障害者福祉ハンドブック

主な事業 ( 平成 27 年度内容 ) 支援の方向事業名内容 / 対象者 / 対応者 / 実施場所 発達支援健診 総合発達相談 健康づくり推進課 各健康支援課 あそびの教室 健康づくり推進課 各健康支援課 発達障害者支援センターの運営 障害者福祉課 障害児等療育支援事業 障害者福祉課 障害児巡回指導


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防府市一時預かり事業実施要綱

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Ⅰ 改正について 児童扶養手当法の改正 Q&A ( 公的年金等と合わせて受給する場合 ) Q1 今回の改正の内容を教えてください A: 今回の改正により 公的年金等 * を受給していても その額が児童扶養手当の額 より低い場合には 差額分の手当が受給できるようになります 児童扶養手当 は 離婚などに

乳児家庭全戸訪問事業(一部改正)

第2節 茨木市の現況

渡邊 : 児童養護施設における特別支援が必要な児童の実態と求められる支援ラウマ ) を負っている場合がある また 入所してくる子どものなかで 知的障害や発達障害など何らかの 障害あり と考えられる子どもが4 分の1 近くいるのも現状である 児童養護では 社会においてすべての子どもの健全な成長発達過程

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草津市 ( 幼保一体化 ) 集計表 資料 4 幼児教育と保育の一体的提供のための現況調査 ( 施設アンケート ) 速報 平成 25 年 7 月草津市 1

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調査結果概要 ( 旭川市の傾向 ) 健康状態等 子どもを病院に受診させなかった ( できなかった ) 経験のある人が 18.8% いる 参考 : 北海道 ( 注 ) 17.8% 経済状況 家計について, 生活のため貯金を取り崩している世帯は 13.3%, 借金をしている世帯は 7.8% となっており

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履修モデル 1 短期大学士 ( ) 二種免許状 保育士 認定ベビーシッター の区分 資格 単位数保育士 資格必要単位数 保育士 認定ベビーシッター 卒修業科選目択必 個々の学生の得意な分野を伸ばし 魅力のある保育者を育てる 子どもの保健 Ⅰ 1 必修 必修 4 保育原理 1 必修 必修 2 児童家庭

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私立幼稚園の新制度への円滑移行について

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神戸市産後ホームヘルプサービス事業実施要綱

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

3 前項の規定にかかわらず 満 3 歳以上の子どもの教育及び保育時間相当利用児の保育に従事する職員は 保育士の資格を有する者でなければならない ただし 幼稚園型認定こども園又は地方裁量型認定こども園にあっては 保育士の資格を有する者を当該職員とすることが困難であると認められるときは 幼稚園の教員の免

07体制届留意事項(就労継続支援A型)

深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

神戸市産後ケア事業実施要綱 ( 目的 ) 第 1 条この要綱は 家族などからの産後の援助が受けられない者で 育児支援を特に必要とする母子を対象に 心身の安定と育児不安を解消し 児童虐待の未然防止を目的として実施する神戸市産後ケア事業 ( 以下 本事業 という ) について必要な事項を定めるものとする

改定事項 基本報酬 1 入居者の医療ニーズへの対応 2 生活機能向上連携加算の創設 3 機能訓練指導員の確保の促進 4 若年性認知症入居者受入加算の創設 5 口腔衛生管理の充実 6 栄養改善の取組の推進 7 短期利用特定施設入居者生活介護の利用者数の上限の見直し 8 身体的拘束等の適正化 9 運営推

H29前 04 児童家庭福祉

平成19年6月

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年中児スクリーニングの事後支援 年中児スクリーニングの事後支援として 22 市町村が園巡回を実施しているが SST は 5 市町村の実施 ペアレントトレーニングは 7 市町村の実施に止まっており 事後支援を実施する市町村の拡大が課題 園巡回 : 専門職が保育所 幼稚園を巡回し 保育士等に指導 助言

乳幼児健康診査について

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2コアメンバー会議の開催時期コアメンバー会議は 事実確認調査で得られた情報や相談 通報内容に基づき 緊急性を判断し 緊急性が高いと判断される事例については 早急に開催します 3 協議内容 虐待の事実認定情報の内容により虐待の事実の有無の判断を行います 情報の内容虐待の事実の有無の判断 高齢者の権利を

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アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

シンポジウム 親権法改正を考える

(2) 設備について 認可基準 ( 下線 : 必須 ) 幼保連携型 建物及び附属施設の設置場所 同一敷地内又は隣接する敷地内 ( 公道を挟む程度 ) 既存幼稚園 保育所からの移行の場合の特例 1~3 をすべて満たせば 同一敷地内にない場合も設置可 1 教育 保育の適切な提供が可能 2 子どもの移動時

資料 7 1 人口動態と子どもの世帯 流山市人口統計資料 (1) 総人口と年少人口の推移流山市の人口は 平成 24 年 4 月 1 日現在 166,924 人で平成 19 年から増加傾向で推移しています 人口増加に伴い 年尐人口 (15 歳未満 ) 及び年尐人口割合も上昇傾向となっています ( 人

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( 別紙 ) 保育士修学資金貸付制度実施要綱 第 1 目的この制度は 指定保育士養成施設に在学し 保育士資格の取得を目指す学生に対し修学資金を貸し付け もってこれらの者の修学を容易にすることにより 質の高い保育士の養成確保に資することを目的とする 第 2 貸付事業の実施主体保育士修学資金 ( 以下


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6 児童福祉法の改正 24 年 4 月には 障害者自立支援法と児童福祉法に分かれていた障がい児 の支援体制を一元化する改正がなされ 市町村が支給決定する障がい児通所支援 と都道府県が支給決定する障がい児入所支援が創設されました 7 障害者虐待防止法の施行 24 年 10 月には 障害者虐待の防止 養

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資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

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里親委託ガイドライン

Taro-平成27年度の取り組み(資料:1)

指定特定相談支援事業 指定障害児相談支援事業の指定に係る Q&A 注意事項事業の実施にあたっては, 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準 や 児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の事業の人員及び運営に関する基準 等を必ず確認

Transcription:

28. 社会的養護 児童相談所へ通告したけれど その後どうなっているのかがわからない 一時保護所に措置されたと はきいたが ある日突然クリニックに風邪を引いて受診してきた 児童相談所からのフィードバックがな いということがよくきかれる 子ども虐待対応の現状児童相談所への通告件数は増加の一途をたどっており 平成 23 年度は速報値で 59,862 件であった 児童相談所へ通告のあった被虐待児の年齢は就学前が約 4 割 小学生が 4 割で 虐待類型はネグレクトが約 4 割 身体的虐待が 4 割 性的虐待は 3~4% である 虐待者は 6~7 割が実母である 約 4 分の 1 に親子分離が行われており 収容先は児童相談所の一時保護所が約 7 割を占める しかしその後 約 9 割の子どもたちは 地域の中で 家庭で生活することになる 1 割が社会的養護の対象になり 乳児院と児童養護施設が大半を占め 里子は 1% に満たない 児童相談所は親子分離と親子再統合という 相反した役割を担わされている 乳児院 児童養護施設から退院 退所し家庭への移行の権限も児童相談所が持っている 家庭への移行に当たって 地域の要保護児童対策地域協議会や保健所 保健センターとの連携が不可欠であるが 十分に機能していないところがある 社会的養護のあり方社会保障審議会児童部会 社会的養護のあり方に関する専門委員会 ( 平成 15 年 10 月 ) は 今日の社会的養護の役割は 子どもの健やかな成長 発達を目指し 子どもの安全 安心な生活を確保するにとどまらず 里親への委託や施設への入所などを通じて 心の傷を抱えた子どもなどに必要な心身のケアや治療を行い その子どもの社会的自立までを支援することにある 子どもの権利擁護を基本とし 今後とも国 地方公共団体 保護者 関係団体などの関係する主体が それぞれの責任を適切に果たしていくことが必要である と述べている 児童福祉法による児童福祉施設とは 助産施設 乳児院 母子生活支援施設 保育所 児童厚生施設 児童養護施設 障害児入所施設 児童発達支援センター 情緒障害児短期治療施設 児童自立支援施設及び児童家庭支援センターである 児童相談所一時保護所一時保護所は児童相談所に付設されており 児童相談所の措置として 原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが 子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には 親の承諾なしに措置できる 一時保護所には以下のような子どもたちが入所する 1 一時保護が必要な子ども緊急保護 ( 棄児 迷子 家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合 ) 虐待 放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合 子どもの行動が自己又は他人の生命 身体 財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合 57

2 行動観察の必要な子ども適切かつ具体的な援助指針を定めるために 一時保護による十分な行動観察 生活指導等を行う必要がある場合 3 短期入所指導の必要な子ども短期間の心理療法 カウンセリング 生活指導等が有効であると判断され 地理的に遠隔または子どもの性格 環境などの条件により 他の方法による援助が困難または不適当であると判断される場合 2010 年 4 月現在 一時保護所は全国に 124 か所あり 年間 2 万人弱が入所し 約 4 割が被虐待 児で 入所児の約 1/4 が児童養護施設などの福祉施設に入所している 一時保護の期間は 2 ヶ月を超えてはならないとされている ただし 児童相談所長または都道府県知事が必要であると認めるときは 引き続き一時保護を行うことができる 援助に当たっては常に子どもの権利擁護に留意し いやしくも身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為は許されない しかし現実には 行き先がなく 長期の入所となることが少なくないのが現状である 一時保護が必要な子どもについては その年齢も乳幼児から思春期まで また一時保護を要する背景も非行 虐待あるいは発達障害など様々であり 一時保護に際しては こうした一人ひとりの子どもの状況に応じた適切な援助を確保することが必要である しかしながら 近年 地域によっては一時的に定員を超過して一時保護所に子どもを入所させる事態が見られ またこうした様々な背景等を有する子どもを同一の空間で援助することが一時保護所の課題として指摘されている 一時保護所の問題点 満床状態が続いている ( 特に都市部で ) 混合処遇であり 入所時の年齢も理由も様々である 24 時間の対応である 人手が足りない アセスメントが不十分になりやすい 初めての親子分離で 不安が強い 学校 幼稚園などに通えない 出入りが激しい 乳児院乳児院は児童福祉法第 37 条の規定に基づき 乳児 ( 保健上 安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には幼児を含む ) を入院させて これを養育し あわせて退院した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設である 乳児院における養育は 乳幼児の心身及び社会性の健全な発達を促進し その人格の形成に資することとなるものでなければならない また 乳幼児期は緊急的な対応を求められる場面も多いことから 適切な養育環境が速やかに手厚く保障されるよう努めなければならないとされている 養育の内容は 乳幼児の年齢及び発達の段階に応じて必要な授乳 食事 排泄 沐浴 入浴 外気浴 睡眠 遊び及び運動のほか 健康状態の把握 健康診断及び必要に応じ行う感染症等の予防処置を含む 乳児院における家族環境調整は 乳幼児の家庭の状況に応じ 親子関係の再構築等が図られるように行う 平成 23 年 10 月現在 全国に 129 か所 2,963 人の子ども達が生活している 58

児童福祉法において乳児とは 1 歳未満の者をさすが 乳児院ではこれまでおおむね 2 歳の誕生日までとされていたが 必要がある場合 小学校入学前の児童までを養育できるようになった かつて孤児院と呼ばれたように 以前は戦災孤児や捨て子等が入所児の大半であったが 現在の入所理由は 虐待 婚姻外出産 母親の病気 離婚や死別等で母親がいない 子ども自身の障害などである 乳児院に入所していた子どもは その後 両親や親族の元へ引き取られたり 養子縁組等で里親の元へ引き取られるが それが困難な場合は 小学校に入学するまでに児童養護施設へ措置変更となることが多い 乳児院就業者の職種として 子ども達の養育に直接携わる保育士 児童指導員 看護師 医師などの有資格者と そのほかに施設長 家庭支援専門相談員 心理療法担当職員 栄養士 調理員 事務職員などである 問題点 不適切な養育環境で育ち 様々な問題を抱えた子どもが増えてきている 医療 リハビリテーションを必要とする子どもの入院のニーズが高い 被虐待 病虚弱 障害など医療 療育の必要な子どもが増加している かかわりの難しい子 (difficult child) が増加している かかわりの難しい保護者を含む支援を必要とする家族が増加している 里親および委託した実親への支援が求められている 児童養護施設児童養護施設は児童福祉法に定められた児童福祉施設の一つである 児童養護施設には災害や事故 親の離婚や病気 不適切な養育を受けているなど さまざまな事情により 家族による養育が困難な 2 歳から 18 歳の子ども達が入所し生活している 近年は入所児の大半は不適切な養育環境で育った さまざまな問題を抱えた子どもたちである 平成 23 年 12 月現在 585 施設 29,114 人 約 3 万人が入所している 厚生労働省によれば虐待を受けた子どもが 53.4% 何らかの障害を持つ子どもが 23.4% と増え 専門的ケアの必要性が増加している 入所児の平均在籍期間は 4.6 年であるが 10 年以上の在籍期間の児童が 10.9% となっている 子どもたちが生活する施設は 全員が一つの建物のなかで生活を送る大舎性のスタイルがまだ多くあるが 一つの建物のなかで少人数のグループに分かれたり より家庭に近いスタイルで生活をする施設や 建物の構造自体が小グループで生活する 小舎制 の施設が望まれ 増えてきている 児童養護施設の中学校卒業児童のうち およそ 8 割が高等学校へ進学 ( 通信定時制含む )1 割強が就職している ( 平成 14 年調査 ) 職員施設長 児童指導員 保育士 心理職 栄養士 調理員 嘱託医が配置され 児童相談所等と連携の基に 児童及びその家族支援のための相談援助などを行う家庭支援専門相談員 ( ファミリーソーシャルワーカー FSW) も配置されるようになった (FSW は乳児院にも配置される ) 専門機能強化型児童養護施設 ( 東京都 ) 近年被虐待児の入所が増加し 様々なこころの問題を抱えた子どもが増加し 児童養護施設の中で専門的な対応が求められている 東京都では専門機能強化型児童養護施設の整備を進めている 1. 子どもの心のケアなどについて 施設職員を指導できる小児精神科 児童精神科 小児科 精神科などの非常勤医師を配置する 59

2. 心理療法などを行う治療指導担当職員 ( 必要により作業療法士 言語聴覚士などでも可 ) を配置する 3. 施設運営向上事業の実施 外部ケア職員や専門家などを活用して 施設運営の向上 適正化の取り組みを実施する 児童養護施設の問題点 職員数が絶対的に少ない 入所児の大半は 入所理由はともあれ 不適切な養育環境で 育ってきている 様々な問題行動 こころの傷を持っている それらは 容易に 時間がたっても改善しない 発達障害の診断基準を満たす者も少なくない 知的に境界域から軽度遅滞の子どもが少なくない 専門性が低い ファミリーソーシャルワーカー 心理職の配属 職員の研修 職員による不適切な対応が おこりやすい職場である ( 専門職による虐待 構造的虐待 ) 入所児童間の虐待がおこりやすい ( 性的虐待を含めて ) 大学への進学は困難 ( 学費は奨学金でまかなえても 生活ができない ) 施設を出ると 保証人 がいない 就職 住居に影響する 貧困から抜け出せない 帰る家がないことが多い 里親制度児童福祉法 (1948 年施行 ) に基づき開始された 里親は 保護者のない児童または保護者に監護させることが不当であると認められる児童 ( 以下 要保護児童 ) を養育することを希望する者であって 都道府県知事が適当と認める者のこと と定義される 児童相談所長は児童を里親に委託する措置をとることができ 養育は委託によるものなので 法律的な親子関係は発生しない 里親の種類 1. 養育里親 : 要保護児童を養育する里親として認定を受けた者 一般の里親 2. 短期里親 :1 年以内の期間 ( 夏季休業期間のみ等 ) を定めて 要保護児童を養育する里親として認定を受けた者 3. 親族里親 : 次に掲げる要件を満たす要保護児童を養育する里親として認定を受けた者 (1) 当該親族里親に扶養義務のある親族 ( 三親等内の親族 ) であること (2) 両親その他要保護児童を現に監護する者が死亡 行方不明または拘禁等の状態となったことで これらの者による養育が期待できないこと 4. 専門里親 :2 年以内の期間を定めて 要保護児童のうち児童虐待等の行為により心身に有害な影響を受けた児童を養育する里親として認定を受けた者 非行などの問題を有する児童 障害のある児童が対象になる 現状平成 22 年度 登録里親数 7,669 人 委託里親数 2,971 人 委託児童数 3,876 人である 日本の社会的養護は 施設が 9 割で里親は 1 割であり 欧米諸国と比べて 施設養護に偏っている しかし 里親等委託率には自治体間で大きな差があり 新潟県の 33.6% など里親等委託率が 3 割を超えている県もある 最近 6 年間で福岡市が 6.9% から 24.8% へ 大分県が 7.4% から 22.7% に増加させているなど 大幅に伸ばした自治体もある これらの自治体では 児童相談所への専任の里親担当職員の設置 里親支援機関の充実 体験発表会 市町村と連携した広報 NPO や市民活動を通じ 60

た口コミなど 様々な努力をしており 里親等委託率を伸ばした県市の取組事例を普及させるなど 取 組を推進することが望まれる 養子縁組血縁としての親子関係がない当事者の間で 法律上の関係を築くのが養子縁組の手続きである 方法には普通養子縁組と特別養子縁組の 2 種類ある 1. 普通養子縁組は手続きも簡単で 離縁することもできる これに対し特別養子縁組の要件は厳しく 原則として離縁できない 2. 普通養子縁組の仕方は 未成年者との間では家庭裁判所の許可が必要となる ここでは双方の意思の合致が重要視されており 互いの協議によって離縁して関係を解消できるため 契約型と呼ばれ 実親との関係も継続できる 3. 特別養子縁組の手続きは厳格である 子どもの年齢は 6 歳未満 ( 養親となるものに 6 歳未満から監護されていれば 8 歳未満 ) である 問題点 養育は1 年 365 日である 安定した関わりを持つことが 困難な児が増えている 里親の支援体制の不備 なり手が少ない 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 2014.3 61