システムインテグレータのIPv6対応

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Transcription:

システムインテグレータの IPv6 対応 2012 年 11 月 22 日株式会社 NTT データビジネスソリューション事業本部ネットワークソリューション BU 馬場達也

自己紹介 1995 年に NTT データに入社 R&D 部門でネットワークセキュリティの研究開発 現在は エンタープライズのお客様のネットワークの設計 構築 運用ビジネスを行う部門で新ネットワークサービスの開発を担当 2006 年 1 月の IT 新改革戦略 に IPv6 対応が記載されたことから IPv6 対応の取り組みを本格的に開始 IPv6 以外に OpenFlow 無線 M2M などと格闘中 2

システムインテグレータの IPv6 対応 既に構築した / 今後構築するお客様のシステムにアクセスするユーザが IPv6 しか使えなくなる可能性を想定して準備をする必要がある IPv6 対応する対象は インターネット経由で不特定多数のユーザからアクセスされるシステム お客様のシステムにアクセスするユーザの中に IPv6 でしかアクセスできないユーザが出現するまでに対応する必要がある 具体的には以下を実施 市販製品 ( ネットワーク機器 パッケージソフトウェア ) の IPv6 対応状況の調査 既に開発した / 今後開発するアプリケーションの IPv6 対応 IPv4/IPv6 共存環境に移行する手順の検討 3

NTT データでの IPv6 導入検証の実施 代表的な IPv6 対応機器を使用して 企業ネットワークを模した検証環境を構築し IPv6 の動作を検証 4

IPv6 導入にあたって注意すべきポイント IPv4/IPv6 デュアルスタックネットワークの構築は可能 ただし 以下のような問題がある まだ IPv6 に対応していない製品も多い 製品の調査が必要! IPv4 で実装されている機能が IPv6 でも実装されているとは限らない 機能ごとの確認が必要! VPN 機能など IPv6 はハードウェア処理しないものがあり 性能面での問題が発生する可能性がある 事前検証が必要! ファイアウォールの設定や障害の切り分けなどは IPv6 のプロトコルの挙動を知らないと難しい 教育が必要! 5

アプリケーションへの影響 影響を受けるケース 1 通信先の IP アドレスを指定して能動的に通信をしている ( 入力処理 / 通信処理の修正 ) 2 IP アドレスをもとにアクセス制御を行っている ( 入力処理 / アクセス制御処理の修正 ) 3 アプリケーションレベルでアクセスログを取っている ( ログ出力処理 / データベースの修正 ) 4 その他 IP アドレスを識別子として利用している場合など IP アドレス情報を格納 ( アクセスログなど ) データベース 独自開発アプリケーション入力処理 3 2 1 ログ出力アクセス通信処理処理制御処理 IP アドレス情報を入力 ( アクセス制御情報や通信先の設定 ) GUI 設定ファイル コマンド OS/ ミドルウェアも IPv6 対応が必要 Apache 2.0 以降 Microsoft IIS 6.0 以降 IBM WebSphere Application Server 6.0 以降 BEA WebLogic Server 9.0 以降 Oracle Application Server 10g リリース 2 以降など 2005 年以降の AP サーバ製品 Windows Server 2003 以降 Red Hat Enterprise Linux 4 以降 Solaris 8 以降 HP-UX 11i 以降など ミドルウェア (HTTP サーバなど ) OS ( ソケット通信 ) : 確認が必要な個所 (IP アドレスを格納する型や処理に問題がないか確認する ) Java は J2SE 1.4 以降 (Solaris/Linux) J2SE 5.0 以降 (Windows) が必要 6

C 言語で書かれたソフトウェア特有の問題 IPv4 に依存した型や関数が使用されている場合は IPv6 に対応した型や関数に書き換える必要がある in_addr, sockaddr_in, inet_addr, inet_aton, inet_lnaof, inet_makeaddr, inet_netof, inet_network, inet_ntoa, inet_ntop, inet_pton, getservbyport, gethostbyname, gethostbyname2, gethostbyaddr, getservbyname sockaddr_storage, getaddrinfo, addrinfo, if_laddrreq, if_laddrconf などの IPv6 に対応した型や関数に書き換える ソケットの設定において IPv4 を利用するように指定されている場合は IPv6 も利用できるように該当箇所を書き換える必要がある ソケットの設定値に AF_INET と直接記述されている場合 s = socket(af_inet, SOCK_STREAM, IPPROTO_TCP); getaddrinfo 関数又は getnameinfo 関数を用いて 端末がサポートするプロトコルファミリを取得し ソケットの確立を行うよう書き換える 7

IPv4/IPv6 共存パターン ( ロードバランサによる変換 ) ユーザからの IPv6 アクセスは ロードバランサによって IPv4 に変換 IPv6 ユーザ IPv4 ユーザ IPv6 インターネット IPv4 インターネット 既存のルータ ファイアウォール DNS サーバ ロードバランサなどを IPv6 対応 ロードバランサ DNS サーバ IPv4 IPv4 Web サーバ (IPv4) Web サーバ (IPv4) DNS サーバ ISP 接続用ルータ ファイアウォールなどは IPv4/IPv6 の両方に対応する必要があるが Web サーバは IPv6 対応する必要がない DNS サーバには Web サーバのアドレスとして ロードバランサの VIP の IPv4 アドレスと IPv6 アドレスを登録 8

IPv4/IPv6 共存パターン ( トランスレートサービス利用 ) IPv6 ユーザからのアクセスは ISP や CDN の IPv4/IPv6 トランスレートサービスによって IPv4 に変換 IPv6 ユーザ IPv4 ユーザ InterVia(NTTデータ ), Akamaiなど IPv6 IPv4 インターネットインターネット IPv6/IPv4 トランスレートサービス (IPv6 IPv4) 既存のルータ ファイアウォール ロードバランサ サーバなどは IPv4 のままで OK DNS サーバ ロードバランサ Web サーバ (IPv4) Web サーバ (IPv4) ISP 側で IPv6/IPv4 変換が行われるため システム側での IPv6 対応の必要はない DNS サーバには Web サーバのアドレスとして ロードバランサの VIP の IPv4 アドレスと ISP のトランスレートサービスで割り当てられた変換用 IPv6 アドレスを登録 9

IPv4/IPv6 共存パターン (IPv4/IPv6 完全分離 ) IPv6 ユーザ IPv4 ユーザ IPv6 アクセス用に ネットワークを別に用意 IPv6 用のルータ ファイアウォール DNSサーバなどを新たに用意 IPv6インターネット IPv4 インターネット DNS サーバ DNS サーバ ロードバランサ ロードバランサ Web サーバ (IPv4) Web サーバ (IPv4) IPv6 用に DNS サーバ ISP 接続用ルータ ファイアウォール ロードバランサを別途用意 IPv4 用 DNS サーバおよび IPv6 用 DNS サーバの両方に Web サーバのアドレスとして ロードバランサの VIP の IPv4 アドレスと IPv6 アドレスを登録 コストがかかるが 既存の IPv4 アクセスに影響を与えずに移行が可能 IPv4 IPv4 ロードバランサなどで IPv4 に変換 10

IPv6 への対応時期の検討 IPv6 対応するまでには以下の作業が必要となる 対策が必要なシステムの抽出 現状調査 ( 現在使用している製品の機能が IPv6 に対応しているかどうか アプリケーションの改修が必要かどうか ) 対策検討 ( アプリケーションの改修 製品のアップグレード / 代替製品への入れ替え ) 検証 ( 実績が少ないため 十分な検証が必要 ) 対策実施 要員教育 ( 運用者の教育など ) 対応コストとビジネスリスクを考えて対応時期を決めるべき IPv6 でしかアクセスできないユーザがいつ出現するのか 提供サービスの社会インフラとしての重要性や ビジネスとしての機会損失 対応コストなどを考慮して対応時期を検討 11

Copyright 2011 NTT DATA Corporation