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White Paper 48 改訂 1 by Victor Avelar > 要約 IT システムの可用性は切換スイッチと二系統給電によって強化されてきましたが 統計的な可用性を分析したところ一般的ないくつかの方法の間で可用性に大きな差異があることが分りました このホワイトペーパーでは データセンタ ( サーバルームおよび電算室 ) で使用されているさまざまな配電構成の冗長性について検証します そして それぞれの構成の可用性について分析を行い その結果から全体的な性能が最も高い方法を選び出し 性能やコストの面からその他の方法と比較します コンテンツセクションをクリックして次に進む はじめに 2 ラックへの給電方法 2 可用性の分析方法 8 結果 9 結論 12 リソース 13 付録 14

ラックマウントPDU はじめに 冗長電源を備えた機器は 電源コードが 2 本あることからデュアルコード機器と呼ばれることがあります ダウンタイムは配電システム内のたった 1 つの故障からも発生します デュアルコード機器の使用は 冗長性を提供することによりダウンタイムを防止し IT 機器に最適な可用性を維持する現実的な方法です また 電源管理も容易にするという利点があります しかし 残念なことに ミッションクリティカルなシステムの多くはこの方法を取り入れていません 本書では 現在のデータセンタ ( サーバルームおよび電算室 ) で使用されているさまざまな配電構成を紹介し それぞれの可用性分析を行い その結果を提示します ラックへの給電方法 以下の図は ラックマウントタイプの機器の可用性を向上する方法を示していますが ラックマウントではない機器にも適用できます コストは可用性レベルに比例して増加するので 通常は目標とする可用性のレベルに合った方法を選択します 図 1 と図 2 は データセンタ ( サーバルームおよび電算室 ) のラック内の給電方式を示しています モニタ モニタ 図 1 (left) 典型的なラックマウントタイプ方式電源源 キーボードサーバ キーボードサーバ 図 2 (right) 典型的な集中設置方式電 サーバ サーバ ストレージ ストレージ ラックマウント UPS 大型 UPS から電源供給 図 1 は小中規模のサーバルームとワイヤリングクロゼットで一般的に使用される構成です 内部に UPS( 無停電電源装置 ) によるバックアップとサージ保護を備え ラックを簡単に移動できるようになっています 一方 数十本から数百本のラックを使用しているデータセンタでは 一般的に図 2 のような大きな UPS を集中設置する方法が適用されています どちらの方法も 電力の冗長性はありません リソース APC White Paper 62 Powering Single Corded Equipment in a Dual Path Environment その他の給電構成として 主電源から副電源への切換装置を使用する方法があります 例えば静止型切換スイッチ (STS) と自動切換スイッチ (ATS) があります どちらも 1 キロワットから 1 メガワットまでのサイズが揃っています 詳細は APC White Paper 62 Powering Single Corded Equipment in a Dual Path Environment (URL: http://www.apc.com/ ) を参照してください 以下に例を示します APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 2

ラックマウント 3 相 6kVA ATS 3 相 300kVA STS 図 3 と図 4 は 大規模なデータセンタ ( サーバルームおよび電算室 ) での給電構成を示します どちらの例も図 1 と図 2 のデータセンタの構成を改善したもので STS に 2 つの冗長電源経路が繋がっていますが UPS に接続されている電源は 電力会社の変電所の可用性やコストによって冗長でない場合があります この 2 つの例の差異は 1 点だけです 図 3 は STS の下流に単一の変圧器を使用し 図 4 は STS の上流に変圧器を 2 台使用しています しかし どちらの例でも STS と下流の分電盤 それらの間の配線のどこか一カ所が故障することによりダウンタイムが発生する可能性があります ある程度の冗長性は得られますが 冗長性のないコンポーネントに故障の危険があり 管理が複雑になります APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 3

ックマウントストレージラPDUックマウントPDU モニタ 図 3 キーボードサーバ STS を使用した冗長性 ( 単一の変圧器 ) 主電源経路 UPS 1 STS を使用した PDU サーバ STS 降圧変圧器分電盤 UPS 2 副電源経路 図 4 STS を使用した冗長性 ( 複数の変圧器 ) 主電源経路 UPS 1 変圧器 1 ラSTSを使用したPDU STS 分電盤 モニタキーボードサーバサーバストレージ UPS 2 変圧器 2 副電源経路 図 5 は 冗長性を推進して図 3 と図 4 に見られた欠点を改善したものです この方法は STS を使用せず分電盤を追加し ラックマウント ATS に到達するまで冗長性を得られるようにしています ラックマウント ATS より上流のコンポーネントの保守は 稼働を停止しないでできるようになりました この方法は図 3 と図 4 よりは冗長性がありますが ラックマウント ATS ( 自動切換スイッチ ) とその電源がダウンタイムの原因となる可能性があります APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 4

ラックマウントPDU モニタ キーボード サーバ 図 5 ATS を使用した冗長性 サーバ ストレージ 主電源経路 PDU ラックマウント ATS UPS 1 変圧器 1 分電盤 1 副電源経路 PDU UPS 2 変圧器 2 分電盤 2 図 6 は デュアルコード機器に冗長電源を使用して完全な冗長性を実現する方法を示します 図 5 の方法と比較するとラックマウント ATS が取り除かれ デュアルコード機器が使用されているという 2 つの大きな改善点があります 完全な冗長性が IT 機器全体に適用されています 冗長性を維持するため ラックマウント PDU が 1 つ追加されていることに注目してください この方法は今までに紹介した方法より高い可用性を提供しますが 最もコストがかかり 特別に設計されたデュアルコード機器を使用しなければならないという問題点があります APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 5

ラックマウントPDUラックマウントPDU モニタ 図 6 デュアルコード機器を使用した冗長性 キーボードサーバ サーバ ストレージ 主電源経路 PDU UPS 1 変圧器 1 分電盤 1 PDU 副電源経路 UPS 2 変圧器 2 分電盤 2 図 7 は 図 5 と図 6 の構造を組み合わせて シングルコード ( 電源コードが 1 本 ) とデュアルコードの両方の機器に対応する方法を示しています 今までに検証してきた方法を組み合わせた方法です デュアルコードのコンピュータ機器には完全な電力の冗長性があります シングルコードの機器に対しては ラックマウント ATS までは冗長性が確保されていますが ATS とその下流の機器には冗長性がありません 図 7 には物理的な配置の分離も加わっています これはしばしば 区画分け と呼ばれ 給電系統内のサブシステムやバックアップシステムが異なる場所に設置されます 配置の分離が正しく実行されると 一方の経路で機械の故障などの深刻な事態が発生しても 他方の経路はそのまま稼働を継続することができます APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 6

ラックマウントラックマウントPDUラックマウントPDUPDU モニタ デュアルコード機器 キーボードサーバ サーバ ストレージ ソース 1 UPS 1 変圧器 1 分電盤 1 物理的な分離 図 7 ソース 2 UPS 2 変圧器 2 分電盤 2 シングルコードとデュアルコードを併用した冗長構造 モニタキーボード サーバ サーバ シングルコードの機器 ストレージ ラックマウント ATS 図 3 図 4 図 5 図 7 の構成は切換スイッチを採用しています 大きな切換スイッチの場合は一カ所が故障すると広い範囲の機器に影響が出ますが 小さなスイッチであればラック 1 本のみが使用できなくなるだけです 企業によっては 1 本のラックが使えなくなることで 50 本のラックが使えなくなった場合と同様の結果になることもありますが 一般的に使用不可能になるラックが少ない方が有利であるということができます ラックマウント ATS は故障の影響を狭い範囲に限定します 考慮するべきもう 1 つの要因は これらのスイッチの修理にかかる時間です 小さな切換スイッチの場合 修理せずにスペアの装置と取り換えてしまうことにより すぐに稼働を再開できます それに加えて 必要ならばバイパスさせることも素早くできます 大きなスイッチの場合は修理が必要で 設置されている場所によっては修理業者が到着するまでに相当な時間を要する場合があり システムの診断と修理の時間 さらに部品が足りない場合は取り寄せの時間もかかります つまり 高度な設計を評価するときにはこれらの問題点も評価の対象に加え 最適な決定を下す必要があります 修理時間は後述の統計可用性モデルに含まれています 一般的に 高可用性を持つデータセンタやサーバルームには シングルコードの機器は不適切であるといえます ラックマウントタイプの機器だけでなく どのような重要機器に対しても同様です 十分に練られた最高の設計でも どこか一カ所が故障すれば結果的にダウンタイム APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 7

が発生します 真の高可用性環境が必要な場合は 給電系統の故障が最小限に 可能ならば皆無になるような構成にする必要があります 可用性の分析方法 ここではシングルコード装置を使用したときとデュアルコード装置を使用したときの影響度を算出し 可用性の分析を行います 以下の 5 種類の可用性分析を実行しました ケース 1 - 図 2 で示したシングルコードの機器 ケース 2 - 図 3 で示したSTSを用いたシングルコードの機器 ( 単一の変圧器 ) ケース 3 - 図 4 で示したSTSを用いたシングルコードの機器 ( 複数の変圧器 ) ケース 4 - 図 5 で示したラックマウントATSを用いたシングルコードの機器 ケース 5 - 図 6 で示したデュアルコードの機器 信頼性ブロック図 (RBD) としても知られる一次結合分析を使用して これら 5 つのケースの電力の可用性を示します システムをモデル化するこの方法は最も直接的で システムの状態がほとんど変化しない場合に有効です 信頼性のあるデータを使用して分析中の構成のシステムモデルを作成します この分析は構成の違いのみに焦点をあてるので UPS システムの上流にあるコンポーネントは商用電源も含めて全て問題がないと見なします 従って ここで示される可用性は実際の可用性よりも高くなります 分析の詳細は 付録 を参照してください 分析に使用したデータ コンポーネントのモデルに使用したデータのほとんどは第三者から入手しました ラックマウント ATS のデータは APC のラックマウント ATS 製品のフィールドデータを基にしています この製品は米国で発売されてから約 5 年になり 豊富な使用実績があります この分析の主なコンポーネントは以下のとおりです 1. 端子 2. サーキットブレーカ 3. UPSシステム 4. PDU 5. 静止型スイッチ (STS) 6. ラックマウントATS PDU は 3 つの基本サブコンポーネント ( サーキットブレーカ 降圧変圧器 端子 ) に分解されます 分電盤は 1 つのメインブレーカ 1 つの分岐回路ブレーカ 複数の端子を直列に繋いでいます 4 番目のケースでラックマウント ATS を使用しています 各サブコンポーネントの 故障率 1 MTTF と回復率 1 MTTR の値とデータソースは 付録 に記載されています MTTF(Mean Time To Failure) は平均故障時間 MTTR(Mean Time To Recover) は平均回復時間を意味します 各ケースの故障率と回復率も 付録 に記載されています 分析の前提条件 どの可用性分析でも 有効なモデルを作るには前提条件を設定する必要があります 表 1 はこの分析で使用した基本的な前提条件を示します APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 8

表 1 分析の前提条件 前提条件 コンポーネントの故障率 修理チーム 説明 分析されるコンポーネントは全て一定の故障率を示しているとします 機器が設計耐用期間だけ使用されていると仮定する場合に最も合理的な方法です 機器が設計耐用期間以上使用される場合には 故障率に非線形性を組み込む必要があります コンポーネントと同数の修理担当者が作業を行うと仮定します 稼働可能なシステムコンポーネント故障の独立性 故障したコンポーネントの修理中 システムの他のコンポーネントはすべて稼働していると仮定します これらのモデルは業界が推奨する最良の方法によって構築されていると仮定します つまり 物理的な隔離と電気的な分離によって 障害が他に波及する可能性は非常に低くなっています 配線の故障率 人的エラー 電力の可用性を分析 配線故障率は非常に低く 確実性と統計的な妥当性のある予測が難しいので 構成内の各コンポーネント間の配線は計算に含まれていません 以前の調査によれば 配線の故障は非常にまれであるため 全体の可用性にほとんど影響しません 主要な端子は計算に含まれています この分析では人為的ミスを原因とするダウンタイムは考慮されていません 人為的ミスはデータセンタのダウンタイムの原因としてかなりの比重を占めますが この分析の目的は電源インフラの構造を比較し 各構造の物理的弱点を明らかにすることです また 人為的ミスが可用性にどのように影響するかについてはデータがありません この分析は電力の可用性に関する情報を提供します 電力が回復しても仕事がすぐに再開できるとは限らないので 一般的に業務上の可用性は電力の可用性よりも低くなります IT システムを再起動するには多少の時間がかかりますが この起動時間は分析には含まれていません 故障隔離の利点なし ラック 1 本が故障しただけでも 全ラックが一度に故障した場合と同じ結果になるときもあります ここではケース 4 とケース 5 の利点を考慮し ラック 1 本の故障は全ラックの故障よりもビジネスに与える影響は少ないものと仮定します 結果 この分析の目的は理論上の可用性をケース間で比較することであり まずこれを理解することが大切です 5 つのケースで使用される全てのコンポーネントに同じ故障率のデータを適用しています ケース間の違いは 数 MTTR コンポーネントの配置だけです この方法はある構成の可用性を他の構成と比較するときに効果的な検証を提示します 可用性は重要な機器の接続コンセントに供給される電力を基に測定されます どのケースにも同じコンポーネント信頼性データが適用されています ケース 1 では どのコンポーネントに故障が起きても機器停止の原因になります これが基準となるケースです ケース 2 とケース 3 では 両方の冗長経路のコンポーネントが同時に故障しない限り機器は停止しませんが STS とその下流のコンポーネントが 1 つでも故障すると機器は停止します このケースで注目すべき点は STS を導入してもシステムの可用性はほとんど増加しないということです 上流の UPS に比べて STS の信頼性がそれほど高くないのは STS 自体が故障する可能性があるからです さらにケース 2 では変圧器の MTTR に妨げられ STS から得られる利点が生かされません APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 9

ケース 4 では 両方の冗長経路のコンポーネントが同時に故障しない限り機器は停止しません ラックマウント ATS が故障する可能性はありますが 予備ユニットが常備されていれば素早く取り換えることができ MTTR を短縮できます これは重要なポイントです 大きな STS と比べてラックマウント ATS の信頼性は高くありませんが MTTR が低ければ多大な可用性が得られます 表 2 可用性の結果一覧 ケース 5 では 両方の冗長経路のコンポーネントが同時に故障しない限り機器は停止しません 表 2 は各ケースの可用性の計算結果を示します ケース設定可用性 9 の桁数 ケース 1 シングルコードの機器 99.985 % 3.8 ケース 2 STS を用いたシングルコードの機器 ( 単一の変圧器 ) 99.98596 % 3.85 ケース 3 STS を用いたシングルコードの機器 ( 複数の変圧器 ) 99.99715 % 4.5 ケース 4 ラックマウント ATS を用いたシングルコードの機器 99.999931 % 6.2 ケース 5 デュアルコードの機器 99.9999977 % 7.6 この分析で デュアルの配電構成で高可用性を得るにはデュアルコード機器が重要であることがわかりました どんな設計をしてもシングルコードの機器では完全にその利点を生かせませんが ラックマウント ATS を使用することで少しでも利点を活用することはできます 上記の結果から 機器に冗長性を加えることで可用性が向上することは明らかです 図 8 は 製品の信頼性 (MTTF) が数段階高くなっても その可用性は冗長システムの最低信頼レベルの可用性にも及ばないことを示しています 冗長システムにはほぼ 100% に近い可用性があります APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 10

可用性対 MTTF 0.999995 0.999985 図 8 可用性と MTTF システム全体の可用性 0.999975 0.999965 0.999955 0.999945 0.999935 スタンドアローンシステム 冗長システム 0.999925 0.999915 50,000 107,000 164,000 221,000 278,000 335,000 392,000 449,000 506,000 563,000 620,000 677,000 734,000 791,000 MTTF ( 時間 ) APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 11

結論 高可用性が求められる構成を適用するときは ラックへの給電について入念に計画します 本書で説明した典型的な給電方式の違いによって 発生するダウンタイムは 10,000 倍も変化します この分析で 重要なデータセンタにはデュアルコード機器の使用が重要であることがはっきりと示されました 完全なデュアル経路構成とシングル経路構成を比較すると ダウンタイムは最大 1 万分の 1 にまで削減できます 一般的にシングルコード機器の可用性を増加するために切換スイッチを利用しますが その結果は導入方法によって大きく異なります 大型の STS を使用してもほとんど効果を得られない場合もあります 反対に 切換スイッチをラックに移動すると 給電が原因で発生するシステムダウンタイムが 250 分の 1 に減少します その上 ラックベースに切換スイッチを付けることによって故障が局所化され 使用不可能になるのは単一のラックのみです デュアル経路構造内では 必要なときに必要な場所へラックベースの切換スイッチを設置することができます このデータは 大きな STS システムでシングルコード機器に配電する一般的な方法には再考慮を促し 同等の経費で著しい利益を得られるラックベースの切換スイッチを推奨しています つまり この分析は可用性を改善するには機器に冗長性を与えるという一般的な原則を提案しています 慎重な分析は高可用性システムに投資する前の必須条件です 電須インフラの強化に出費可能な金額によって選択肢が変わってきます 個々のビジネスでそのプロセスを正しく理解し ダウンタイム経費を算出してみましょう この経費が最終的に可用性への投資額を左右します About the author Victor Avelar is a Senior Research Analyst at APC by Schneider Electric. He is responsible for data center design and operations research, and consults with clients on risk assessment and design practices to optimize the availability and efficiency of their data center environments. Victor holds a Bachelor s degree in Mechanical Engineering from Rensselaer Polytechnic Institute and an MBA from Babson College. He is a member of AFCOM and the American Society for Quality. APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 12

リソース Powering Single Corded Equipment in a Dual Path Environment APC White Paper 62 すべてのホワイトペーパーを閲覧する whitepapers.apc.com すべての APC TradeOff Tools を閲覧する tools.apc.com お問い合わせ このホワイトペーパーに関するご意見やお問い合わせに関して Data Center Science Center, APC by Schneider Electric DCSC@Schneider-Electric.com 計画中のデータセンタープロジェクトに関する具体的なご質問がありましたら シュナイダーエレクトリックグループ APC までお問い合わせください APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 13

付録 表 A1 コンポーネントと検討に用いた数値コンポーネント故障率修復率データソース備考 UPS 675kW / 750kVA 4.0000E-06 0.125 故障率はPower Quality Magazineから 修復率のデータは保守担当者の到着までに 4 時間 システムの修理に 4 時間を要するものとして計算 交流の電力を無停電で分電回路に供給します 静止型切換スイッチ (STS) 4.1600E-06 0.1667 ノースカロライナ州ロ ーリーのGordon Associates 制御装置を含みます 降圧変圧器 7.0776E-07 0.00641 MTBFはIEEE Gold Book Std 493-1997 (40 ページ ) から MTTRはMarcus Transformer Dataによる平均 400 VAC の入力を機器に必要な 200-100V に降圧します サーキットブレーカ 3.9954E-07 0.45455 IEEE Gold Book Std 493-1997 40 ページ 故障の局部化や点検のために電力を分離します 6 個の端子 8.6988E-008 0.26316 IEEE 値の 6 倍 IEEE Gold Book Std 493-1997( ページ 41) の値から計算 8 個の端子 1.1598E-007 0.26316 8 x IEEE value IEEE Gold Book Std 493-1997( ページ 41) の値から計算 ラックマウント ATS 2.0E-06 3 APC 冗長スイッチフィー ルドデータ 変圧器の一次側 3 相接続ごとに 3 個の端子が存在します コンポーネント間には 2 セットの端子が存在するので 合計で 6 個の端子が使用されています 変圧器の二次側 3 相接続とニュートラルごとに 4 個の端子が存在します コンポーネント間には 2 セットの端子が存在するので 合計で 8 個の端子が使用されています APC ラックマウント ATS の MTTF は 100 万時間と算出されていますが より無難な 50 万時間を採用しました シングルコード機器の可用性 [ ケース 1] シングルコード機器の可用性 ( 図 2) を以下の RBD を基準に計算しました 図 9 は一連のコンポーネントの安定した可用性を算出する RBD のトップレイヤを示しています この RBD は 変圧器部 と 分電盤部 という 分解可能な ブロックを組み込んでいます 拡張可能なブロックがあるということは それらのサブコンポーネントを定義する下位レベルの RBD が存在するということです このように RBD を図示すると可用性の計算が容易になります 分電盤は重 APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 14

要な機器に直接電力を供給するときに使用します これらのブロックの内容は図 10 と図 11 に示されています 図 9 シングルコード機器 ë = 3. 9954 e - 007 ë = 8. 6988e- 008 ë =3. 9954e- 007 ë =8. 6988e- 008 ë =4e- 006 ë = 8. 6988e- 008 ë =3. 9954e- 007 ì = 0. 45455 ì = 0. 26316 ì =0. 45455 ì =0. 26316 ì =0. 125 ì = 0. 26316 ì =0. 45455 675 kw ブレーカ 6 x 端子ブレーカ 6 x 端子 6 x 端子ブレーカ UPS 分電盤部 変圧器部 ë =8. 6988e- 008 ì =0. 26316 6 x 端子 図 10 変圧器部 ë ì =3. 9954 e-007 =0. 45455 ë ì =8. 6988 e-008 =0. 26316 =7. 0776 e-007 =0. 00641 =1. 1598 e-007 =0. 26316 ブレーカ 6 x 端子変圧器 8 x 端子 ë ì ë ì 図 11 分電盤部 ë =3. 9954e- 007 ì =0. 45455 ë =1. 1598e-007 ì =0. 26316 ë = 3. 9954 e - 007 ì = 0. 45455 ブレーカ 8 x 端子 ブレーカ 表 A2 シングルコード機器の可用性 [ ケース 1] 上記の RBD を基準にしたシングルコードシステムの可用性は下記のとおりです モデル名可用性非可用性 MTTR ( 時間 ) MTTF ( 時間 ) 年間のダウンタイム ( 時間 ) シングルコードの機器 99.98498 % 1.5021E-04 19.3 128,665 1.3158 UPS システム 99.99640 % 3.5958E-05 6.5 180291 0.31499 変圧器部 99.98879 % 1.1205E-04 85.5 763,201 0.98158 分電盤部 99.99978 % 2.1987E-06 2.4 1,092,825 0.01926 分析されるデータは 5 桁の数値なので 非可用性を結果として示すことも 1 つの方法です 非可用性は (1- 可用性 ) で計算します APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 15

静止型切換スイッチ (STS) を用いたシングルコード機器の可用性 ( 単一の変圧器 )[ ケース 2] 図 3 の配電方法は STS を使っています STS の上位のコンポーネントには冗長性がありますが STS とその下流に配置された変圧器には冗長性がありません この方法の可用性は わかりやすくするために分割された RBD の 7 つのストリングを基準に計算されます 図 12 は RBD のトップレイヤを示しています UPS システム ブロックは 2 つあり そのうちの一方です つまり そのブロック内の全てのコンポーネントに冗長性があります 図 13 は UPS システム ブロックの内容です 図 12 STS を用いたシングルコードの機器 2 ブロックの一方 UPS システム STS 区分 ë = 3. 9954 e - 007 ë = 8. 6988e- 008 ë =3. 9954e- 007 ë =8. 6988e- 008 ë =4e- 006 ë = 8. 6988 e - 008 ë =3. 9954e- 007 ì = 0. 45455 ì = 0. 26316 ì =0. 45455 ì =0. 26316 ì =0. 125 ì = 0. 26316 ì =0. 45455 図 13 UPS システム 675 kw ブレーカ 6 x 端子ブレーカ 6 x 端子 6 x 端子ブレーカ UPS ë =8. 6988e- 008 ì =0. 26316 6 x 端子 STS の上流側のコンポーネントは全て冗長性がありますが 図 12 の STS 区分 ブロック内のコンポーネントは故障によってダウンタイムを引き起こす可能性があります 図 14 が示すように STS 区分 ブロックには STS システム 変圧器部 分電盤部が含まれています STS システムは上流のどの冗長コンポーネントを使用するかを決定します STS システムはブレーカ 端子 静止型切換スイッチを含みます その RBD が図 15 です 図 14 STS 区分 STS システム 変圧器部 分電盤部 APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 16

図 15 ë=4.1 e-006 ì =0.166 =3.995 e-007 ì ë =0. 4545 =8.698e-008 ì ë =0.2631 STS システム 静止型スイッチ ブレーカ 6 x 端子 図 14 の 変圧器部 と 分電盤部 ブロックの内容を図 16 と図 17 で示します 図 16 変圧器部 ë ì =3. 9954e- 007 =0. 45455 ë ì =8. 6988e- 008 =0. 26316 =7. 0776 e - 007 =0. 00641 = 1. 1598e- 007 = 0. 26316 ブレーカ 6 x 端子変圧器 8 x 端子 ë ì ë ì 図 17 ë=3.995 e-007 ì =0. 4545 ë=1.159 e-007 ì=0. 2631 ë=3.995 e-007 ì =0. 4545 分電盤部 ブレーカ 8 x 端子 ブレーカ 上記の RBD を基準に STS を用いたシングルコードシステムの可用性 ( 単一の変圧器 ) を算出しました 結果は下記のとおりです 表 A3 STS を用いたシングルコード機器の可用性 ( 単一の変圧器 ) [ ケース 2] モデル名可用性非可用性 STS を用いたシングルコードの機器 ( 単一の変圧器 ) UPS システム MTTR ( 時間 ) MTTF ( 時間 ) 99.98596% 1.4041E-04 20.4 145,513 1.23002 99.99999987% 1.2930E-09 6.5 5,025,125,628 0.00001 単一の UPS 99.99640% 3.5958E-05 6.5 180,291 0.31499 年間のダウンタイム ( 時間 ) STS 区分 99.98596% 1.4041E-04 20.4 145,518 1.23001 STS システム 99.99738% 2.6164E-05 5.6 215,214 0.22920 変圧器部 99.98879% 1.1205E-04 85.53 763,201 0.98158 分電盤部 99.99978% 2.1987E-06 2.4 1,092,825 0.01926 APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 17

静止型切換スイッチ (STS) を用いたシングルコード機器の可用性 ( 複数の変圧器 ) [ ケース 3] 図 4 の給電方法は STS を使用し 変圧器を含む STS の上位のコンポーネントに冗長性があります この方法の可用性は 前述の分析と類似する RBD の 7 つのストリングを基準に計算されます 図 18 は RBD のトップレイヤを示しています UPS システムと変圧器 ブロックは 2 つあり そのうちの一方です つまり そのブロック内の全てのコンポーネントに冗長性があることを意味します 図 19 は UPS システムと変圧器 ブロックの内容を示します 変圧器部 ブロックの内容は図 16 と同じです ここまでの全てのコンポーネントは冗長性がありますが 図 18 の STS 区分 ブロック内のコンポーネントは故障によってダウンタイムを引き起こす可能性があります 図 18 STS を用いたシングルコードの機器 2 ブロックの一方 UPS システムと変圧器 STS 区分 図 19 UPS システムと変圧器 ë = 3. 9954 e - 007 ì = 0. 45455 ë = 8. 6988e- 008 ì = 0. 26316 ë =3. 9954e- 007 ì =0. 45455 ë =8. 6988e- 008 ì =0. 26316 ë =4e - 006 ì =0. 125 ë = 8. 6988e- 008 ì = 0. 26316 ë =3. 9954e- 007 ì =0. 45455 ブレーカ 675 kw 6 x 端子ブレーカ 6 x 端子 6 x 端子 UPS ブレーカ ë =8. 6988e- 008 ì =0. 26316 変圧器部 6 x 端子 このケースでは 図 20 のように STS 区分 ブロックは STS システムと分電盤部のみを有し 変圧器は冗長コンポーネントとして上位に配置されています 図 21 の STS システム は 6 端子から 8 端子に変わっている以外は図 16 と同じで 分電盤部 は図 17 と同じです 図 20 STS 区分 STS システム 分電盤部 図 21 STS システム ë=4.1 e-006 ì =0.166 静止型スイッチ ë =3.995 e-007 ë =1.159 e-007 ì =0. 4545 ì=0. 2631 ブレーカ 8 x 端子 APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 18

表 A4 STS を用いたシングルコード機器の可用性 ( 複数の変圧器 ) [ ケース 3] 上記の RBD を基準に STS を用いたシングルコードシステムの可用性 ( 複数の変圧器 ) を算出しました 結果は下記のとおりです モデル名可用性非可用性 STS を用いたシングルコードの機器 ( 複数の変圧器 ) MTTR ( 時間 ) MTTF ( 時間 ) 年間のダウンタイム ( 時間 ) 99.99715% 2.8495E-05 5.1 178,839 0.24961 UPS システムと変圧器 99.9999978% 2.1906E-08 21.6 985,221,675 0.00019 UPS システム 99.99640% 3.5958E-05 6.5 180,291 0.31499 変圧器部 99.98879% 1.1205E-04 85.5 763,201 0.98158 STS 区分 99.99715% 2.8473E-05 5.1 178,872 0.24942 STS システム 99.99737% 2.6274E-05 5.6 213,880 0.23016 分電盤部 99.99978% 2.19867E-06 2.4 1,092,825 0.01926 ラックマウント ATS を用いたシングルコード機器の可用性 [ ケース 4] ラックマウント ATS を用いたシングルコードの機器 ( 図 5) は RBD のトップレイヤを示す図 22 を基準に計算されました このモデルはラックに冗長性を与えますが ラックマウント ATS が故障することでダウンタイムが発生する可能性があります 図 23 は UPS システム区分 ブロックのコンポーネントを示します 変圧器部 と 分電盤部 ブロックの内容は それぞれ図 16 と図 17 と同じです 図 22 ラックマウント ATS を用いたシングルコードの機器 ë =2e-006 2ブロックの一方 ì =3 UPS システム区分 POU スイッチ ë = 3. 9954 e - 007 ë = 8. 6988e- 008 ë =3. 9954e- 007 ë =8. 6988e- 008 ë =4e- 006 ë = 8. 6988e- 008 ë =3. 9954e- 007 ì = 0. 45455 ì = 0. 26316 ì =0. 45455 ì =0. 26316 ì =0. 125 ì = 0. 26316 ì =0. 45455 図 23 UPS システム区分 675 kw ブレーカ 6 x 端子ブレーカ 6 x 端子 6 x 端子ブレーカ UPS ë =8. 6988e- 008 ì =0. 26316 分電盤部 変圧器部 6 x 端子 APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 19

表 A5 ATS を用いたシングルコード機器の可用性 [ ケース 4] これらの RBD を基準に ATS を用いたシングルコードシステムの可用性を算出しました 結果は下記のとおりです モデル名可用性非可用性 ラックマウント ATS を用いたシングルコードの機器 UPS システム区分 MTTR ( 時間 ) MTTF ( 時間 ) 99.999931 % 3.558950E-07 0.4 499,705 0.00604 99.999998 % 2.2562E-08 19.3 856,898,029 0.00018 変圧器部 99.98879 % 1.1205E-04 85.5 763,201 0.98158 年間のダウンタイム ( 時間 ) 分電盤部 99.99978 % 2.1987E-06 2.4 1,092,825 0.01926 ラックマウント ATS 99.999933% 3.3333E-07 0.3 500,000 0.00584 このケースでは PDU をもう 1 つ追加すると可用性が大幅に向上します しかしながら ラックマウント ATS がダウンタイムの原因となる可能性があるので 全体的な可用性は 6 桁の 9 が限界です ラックマウント ATS はその信頼性で選び MTTR を最小限に抑えるためにスペアを常にサイト内で確保しておきます デュアルコード機器の可用性 [ ケース 5] デュアルコードの機器 ( 図 6) は RBD のトップレイヤを示す図 24 を基準に計算されました ラックマウント ATS を用いたシステムと同様に この RBD も全体的な UPS と PDU の故障率と回復率を基に安定した状態の可用性を算出しています このケースはデュアルコードの機器で冗長経路を十分に利用できるので ラックマウント ATS は使用していません 2 つの経路のうち 片方が稼働していれば機器を維持できます 一カ所が故障してもダウンタイムは発生しません 電源も冗長になっています 図 24 デュアルコードの機器 2 ブロックの一方 UPS システム区分 下位レベルの RBD UPS システム区分 ブロックの内容は図 9~ 図 11 と同じです これらのブロックを基準にしたデュアルコードシステムの可用性は下記のとおりです APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 20

表 A6 デュアルコード機器の可用性 [ ケース 5] モデル名可用性非可用性 デュアルコードの機器 MTTR ( 時間 ) MTTF ( 時間 ) 年間のダウンタイム ( 時間 ) 99.9999977 % 2.2562E-08 19.3 856,898,029 0.0001976 UPS システム区分 99.9999977 % 2.2562E-08 19.3 856,898,029 0.0001976 変圧器部 99.98879 % 1.1205E-04 85.5 763,201 0.98158 分電盤部 99.99978 % 2.1987E-06 2.4 1,092,825 0.01926 UPS システム区分 の可用性はケース 4 と同じですが 全体的な可用性は 7 桁の 9 に増えています デュアルコードの機器を使用することでラックマウント ATS が不必要になり この違いが生じました ケース 4 で記したように ラックマウント ATS を使用する方法では ラックマウント ATS 自体が故障することでダウンタイムが発生する可能性があり 6 桁の 9 が限界です APC by Schneider Electric White Paper 48 改訂 1 21