技術セミナーテキスト AC モーター入門編
目次 1 AC モーターの位置付けと特徴 2 1-1 AC モーターの位置付け 1-2 AC モーターの特徴 2 AC モーターの基礎 6 2-1 構造 2-2 動作原理 2-3 特性と仕様の見方 2-4 ギヤヘッドの役割 2-5 ギヤヘッドの仕様 2-6 ギヤヘッドの種類 2-7 代表的な AC モーター 3 温度上昇と寿命 32 3-1 温度上昇の考え方 3-2 モーターの過熱保護 3-3 モーターの寿命 3-4 ギヤヘッドの寿命 4 AC モーターの位置制御 42 4-1 ブレーキパック 4-2 電磁ブレーキ付モーター 4-3 ブレーキ機能の種類 5 耐環境モーターとトルクモーター 52 6 AC モーターの選定 56 6-1 選定手順 6-2 機種選定フローチャート 6-3 選定計算の進め方
AC モーター入門編 1-2 AC モーターの特徴 1) 使い方が簡単 商用電源から電源を供給するだけで回転します 単相電源で使用する AC 小型標準モーターはすべてコンデンサを接続して使用するコンデンサランモーターです 三相電源で使用するモーターはコンデンサが必要なく 電源に接続するだけで動かせます 単相電源 ギヤヘッド 単相モーター コンデンサ 三相電源 ギヤヘッド 三相モーター 図 1 2 システム構成 CW 方向 CCW 方向 図 1 3 接続図 ( 例 : 単相インダクションモーターの一例 )
1 AC モーターの位置付けと特徴 2) 低コスト AC モーターは他のモーターに比べて 動作させるためのシステムが簡単で低コストです 3) 豊富なバリエーションモーター ギヤヘッドとも豊富なバリエーションがありますので 用途に合わせてモーターの種類や減速比を自由に選ぶことができます 一定速で運転 一方向に運転 減速させるトルク UP 瞬時停止させる インダクションモーター出力 :1~200W 平行軸ギヤヘッド減速比 : 約 20 種 正逆運転 レバーシブルモーター出力 :1~90W 停止中に保持力が必要電磁ブレーキ付モーター出力 :6~200W 直交軸ギヤヘッド減速比 :20 種直線動作に変換する ブレーキパック リニアヘッド ストローク : 100~1000mm インダクションモーター インバータ 一部の AC スピードコントロールモーターとは組み合わせられません 図 1 4 バリエーションと組み合わせ
AC モーター入門編 2 AC モーターの基礎 AC 小型標準モーターの基礎的な内容として 一定速度で使うモーターの構造や動作原理 仕様の見方と モーターと組み合わせるギヤについて説明します 2 1 構造 AC モーターは 堅牢で信頼性の高いモーターです 内部構造は基本的に 磁界を作るステーターと回転するローターの 2 つからできています ここでは 動力用モーターのインダクションモーターを例として説明します 1 ステーター 2 ローター 4 ボールベアリング 3 出力シャフト 6 フランジブラケット 5 ケース 塗装 図 2 1 インダクションモーターの構造 1 ステーター電磁鋼板を積層したステーターコア ポリエステル皮膜銅線の巻線 絶縁用フィルムなどから成ります 2 ローター積層した電磁鋼板とアルミダイキャストの導体からなります 3 出力シャフト丸シャフトタイプと歯切りシャフトタイプがあります 丸シャフトタイプにはフライスカット加工 ( 出力 25W 以上 ) がされています 歯切りシャフトタイプには 精密な歯切り加工がされています 材質は S45C です 4 ボールベアリング
2 AC モーターの基礎 5 ケース 塗装アルミダイキャスト品の内部切削したケースに アクリル樹脂またはメラミン樹脂の焼付け塗装をしています 6 フランジブラケットアルミダイキャスト品を切削加工したものです モーターケースに圧入されています
AC モーター入門編 3 温度上昇と寿命 AC モーターの温度上昇と寿命の考え方について説明します 3-1 温度上昇の考え方 モーターに入力された電力が出力に変換されるとき 損失が発生します この損失は 熱となって大気中に放出されます 入力 - 出力 = 損失 熱 損失 ( 熱 ) 出力 入力 図 3 1 モーターの発熱 当社の AC 小型モーターの耐熱クラスは JIS 規格による E または B になります ( シリーズにより異なる ) 表 3 1 耐熱クラス 90(Y) 105(A) 120(E) 130(B) 155(F) 180(H) 200(N) 220(R) 250(-) 耐熱クラス JIS C4003
3 温度上昇と寿命 コイルとケースの温度差は最大で 30 です 式で表すと 以下のような関係になります コイル許容温度 - コイルとの温度差 = ケース温度 したがって コイルの温度が 120 のときのケース温度は コイル許容温度 - コイルとの温度差 = ケース温度 120 30 90 モーターケース表面温度が 90 以下になるようにお使いください 1) 温度上昇の測定条件 当社では次のような条件で温度上昇 時間定格を規定しています 以下の条件で 定格運転後 温度上昇を測定します モーター単体 ( ギヤヘッドや放熱板がない ) 外部からの強制冷却なし ( 空気の流れ 外部ファンによる冷却がない ) 周囲温度 50 を想定 ( 使用周囲温度の上限 : 一部回路付モーター等は 40 ) ここでいう定格運転とは 定格電圧 定格周波数 定格コンデンサ容量 ( 単相モーターのみ ) を与えて 表 3 2 の負荷条件で 定格時間 連続運転することです 負荷条件は モーターの使用可能なトルク範囲内で最も温度上昇が高くなる場合としています 表 3 2 測定条件モーターの種類負荷条件単相モーター 無負荷三相モーター定格負荷 トルクモーターを除くコンデンサランモーター
AC モーター入門編 6 AC モーターの選定 AC モーターを選定するときの手順を説明します 6-1 選定手順 1) 要求仕様の確認 機構の種類 寸法やワークの質量 移動速度等を確認します 2)AC モーターの機種選定 1 の要求仕様を満足する機能を持つモーターを機種選定フロー チャートを参考に選定します 3) ギヤヘッド出力軸回転速度 ギヤヘッドに必要な回転速度を求めて ギヤヘッド減速比を 決定します 4) 必要トルクの確認 ギヤヘッドに必要なトルクを求めて カタログで確認します 5) モーター起動トルクの確認 ギヤヘッドに必要なトルクからモーターに必要なトルクに換算 して 起動トルクの値と比較します 6) ギヤヘッド許容負荷慣性モーメントの確認 ギヤヘッドにかかる負荷慣性モーメントが ギヤヘッドの許容 値以下であるか確認します 7) モーターの決定
6 AC モーターの選定 6-3 選定計算の進め方 1) 要求仕様の確認 例題 以下の機構 仕様で使えるモーターを選定します 図 6 1 ベルトコンベア ベルトとワークの総質量 m 4 [kg] 摺動面の摩擦係数 μ 0.3 ローラーの直径 D 80 [mm] = 0.08 [m] ローラーの質量 MR 0.5[kg] ベルト ローラーの効率 ηm 0.9 ベルトのスピード V 9.0 [m/min] 前後 モーター電源 単相 100V 50Hz 回転方向 一方向運転 停止方法 瞬時停止 機構駆動方法 水平駆動 外力 なし