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73 Technical Data Bull. Natl Inst. Health Sci., 134, 73-78 2016 国立衛研 違法ドラッグデータ閲覧システムについて 田中理恵 河村麻衣子 内山奈穂子 瀬川勝智 中野達也 斎藤嘉朗 緒方潤 最所和宏 花尻 木倉 瑠理 # 袴塚高志 Data search system for new psychoactive substances provided by the National Institute of Health Sciences in Japan Rie Tanaka, Maiko Kawamura, Nahoko Uchiyama, Katsunori Segawa, Tatsuya Nakano, Yoshiro Saito, Jun Ogata, Kazuhiro Saisho, Ruri Kikura-Hanajiri#, Takashi Hakamatsuka In the last few decades, many analogs of narcotic substances were widely distributed in Japan as easily available psychoactive substances and became a serious problem. To counter the spread of these new psychoactive substances (NPS), the Pharmaceutical Affairs Law in Japan was amended in 2006 to establish a new category, Designated Substances (Shitei-Yakubutsu) in order to more promptly control them. However, new analogs of controlled substances, especially synthetic cannabinoids and cathinone derivatives, have appeared continuously. Because information sharing among laboratories is the key to a fight against these NPS, we opened Data Search System for New Psychoactive Substances (NPSDB) (http://npsdb.nihs.go.jp/search/) on the web site in March 2014. This NPSDB provides information on products of NPS sold in Japan, as well as analytical data (such as spectra of GC-MS and LC-PDA-MS) and the pharmacological properties of NPS detected in the products. This database is available in both English and Japanese. As of April 2016, 710 NPSs and 2,128 products are listed in this database, and more than 300 laboratories or offices, including international organizations, are registered. To avoid health problems and abuse caused by NPS, we have to continuously monitor the distribution of these substances. Keywords: Database, New Psychoactive Substances, Designated Substances 1. はじめに に 31 化合物が指定薬物として指定された その後 一 日本において 危険ドラッグ いわゆる脱法ドラッグ 時期危険ドラッグ流通は減少したが 2008 年頃から乾 含有製品の流通は 1990 年代後半頃より報告されている 燥植物細片にカンナビノイド受容体に対し強い親和性を 2011 年頃からは 危険ドラッグが関与する救急搬送事例 有する化合物群 合成カンナビノイド が添加された や自動車事故の報告が増加し深刻な社会問題となった いわゆる 脱法ハーブ と呼ばれる製品の流通が問題と これまでに危険ドラッグの社会への蔓延を防ぐために なった 2014 年 6 月には東京の池袋で 脱法ハーブ を 地方自治体や国により様々な対策がなされてきた 吸引した運転手による自動車の暴走事件がおこり 1 人が 2006 年 6 月に薬事法 現在は医薬品医療機器等法 が 死亡 6 名が重軽傷を負った これが契機となり これ 改正され指定薬物制度が導入されて 2007 年 4 月に最初 まで以上に危険ドラックに対する規制が強化され 翌月 の 2014 年 7 月には指定薬物制度下 事件に関与した危険 ドラッグ製品に含まれていた 2 化合物に対して初の緊急 # To whom correspondence should be addressed: 指定が実施された 以降 指定薬物として規制される化 Ruri Kikura-Hanajiri; Division of Pharmacognosy, 合物数は増加し 2016 年 4 月時点で個別に規制されてい Phytochemistry and Narcotics, National Institute of る指定薬物は 239 化合物となった また その他 2013 Health Sciences, 1-18-1, Kamiyoga, Setagaya-ku, Tokyo 年 3 月に合成カンナビノイドの包括規制 770 化合物 158-8501, Japan; Tel: +81-03-3700-8764; Fax: 03-3707- 2014 年 1 月 2015 年 5 月に 2 回にわたりカチノン類の包 6950; E-mail: kikura@nihs.go.jp 括規制 計 1334 化合物 が行われた さらに これま

国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 報 告 74 でに 22 化合物が指定薬物から麻薬へと規制強化された 危険ドラッグに含まれる化合物を指定薬物として規制 第 134 号 2016 用が可能である 違法ドラッグデータ閲覧システムが公開されてから すると その規制化合物の構造を一部変えた別の化合物 2016 年 4 月で 2 年が経過した その間の利用状況や成果 が規制を逃れて新しく危険ドラッグ市場に出現する こ なども含めて以下に報告する れら続々と出現する化合物においては 試薬として流通 していれば標準品として入手可能であるが 多くの場 2. 利用状況 合 入手は困難であり 費用を差し置いたとしても す 違法ドラッグデータ閲覧システム http://npsdb.nihs. べての指定薬物及び関連化合物の物性情報や分析データ go.jp/search/ 以下 データシステム は ユーザー を個々の分析鑑定機関が独自に準備することは困難であ として危険ドラッグ関連の業務 研究に携わる公的分析 る 従って 国内外の研究機関の間で情報を公開し 共 機関 都道府県の地方衛生研究所 税関 警察等 及び 有化することが待望されていた 大学研究室 法医学教室等 に所属する人を対象として 国立衛研では 危険ドラッグ及び関連化合物に関する データベースである 違法ドラッグデータ閲覧システ いる 利用には事前の申請が必要で 承認後にアカウン トとパスワードが発効される ム を構築して 2014 年 3 月より公開している この 違 データシステムには 2016 年 4 月時点で 国内 277 機 法ドラッグデータ閲覧システム には 2016 年 4 月の時点 関 海外 29 機関が登録している 国内の登録機関の内 で 710 化合物 2128 製品が収載され 海外の機関も含め 訳は 警察 税関 地方衛研が 20 前後と同程度で つ 306 機関が登録している 本データ閲覧システムには いで各都道府県の薬務課 大学である Fig. 1 海外の 指定薬物やその構造類似化合物 また今後流通が予想さ 機関には国連薬物犯罪事務所 United Nations Office on れる未規制化合物について 各化合物情報及び実測分析 Drug and Crame, UNODC や欧州薬物 薬物依存監視 データを掲載するとともに これまで国立衛研が入手し センター European Monitoring Centre for Drugs and た危険ドラッグ製品の含有化合物一覧が掲載され 内容 Drug Addiction, EMCDDA も含む が検索可能となっている 日本語とともに 英語でも利 データシステム公開後 2 年間の利用状況について 月 別のアクセス数を Fig. 2 に示した 2014 年 6 月に前述の 池袋の自動車暴走事件がおこり その後に行なわれた緊 急指定を含む規制強化に伴いデータシステムへのアクセ ス数が増加した 特に 2014 年 8 10 月はひと月あたり 1000 件前後のアクセス数となり 一日に 100 件近いアク セスが認められた日もあった 2015 年 6 月及び 7 月は 外部からのアクセスを一時期遮断していたために 利用 数が減少している 2015 年 7 月には 厚生労働省が国内 の危険ドラッグ販売実店舗数がゼロとなったことを報告 Fig. 2 している その頃から データシステムへのアクセス数 は減少しているが 2016 年 4 月現在でも 毎月 400 件ほ Fig. 1 違法ドラッグデータ閲覧システムの登録機関 Fig. 2 どのアクセスがある 違法ドラッグデータ閲覧システムへの月別アクセス件数

国立衛研 違法ドラッグデータ閲覧システムについて 3. Fig. 3 違法ドラッグデータ閲覧システムに掲載されている化合物内訳 規制区分別 Fig. 4 違法ドラッグデータ閲覧システムに掲載されている化合物内訳 化合物種別 違法ドラッグデータ閲覧システムの構成 75 ン類 アンフェタミン類 フェネチルアミン類 トリプ データシステムは主に化合物情報と製品情報のデー タミン類 ピペラジン類となっている その他に分類し タ ベ ー ス で 構 成 さ れ て い る デ ー タ ベ ー ス 作 成 は た化合物には 近年流通が問題となっている向精神薬の ChemBioFinder が用いられている 以下にデータシス 構造類似化合物も含まれる Fig. 4 テムの掲載化合物と掲載含有製品について述べる これまでに個別指定された指定薬物はすべてデータシ ステムに収載しており 今後指定される化合物について 3-1. 掲載化合物について も随時収載していく予定である データシステムには710化合物が掲載されている 2016 年 4 月現在 これらの化合物の内訳を規制区分別にみ てみると 指定薬物がほぼ半数を占め 次に麻薬で こ 3-2. 掲載製品について 現在 データシステムには 2008 年以降入手し 当 の中にはこれまでに指定薬物から麻薬へ指定強化された 所で分析した危険ドラッグ 2128 製品が掲載されている 化合物を含む 未規制の化合物の中には 指定薬物の構 2016 年 4 月現在 これらの内訳は形態別にみると 乾 造異性体 代謝物 分解物が含まれる また 過去に強 燥植物細片が最も多く 次いでいわゆるアロマリキッド 壮用健康食品などからの検出事例が報告されている ED などの液体 パウダーと呼ばれる粉末の製品であり こ 治療薬の構造類似化合物も含む Fig. 3 れらで全体の 99%を占める その他の製品形態は 煙草 化合物の分類についてみてみると 合成カンナビノイ ド類が最も多く ほぼ半数を占めている ついでカチノ 状のもの シート状の紙片 固形物や樹脂状のものがあ る

国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 報 告 76 Fig. 5 第 134 号 2016 違法ドラッグデータ閲覧システムに掲載されている危険ドラッグ製品の内訳 違法ドラッグデータ閲覧システムの機能について も開く 化合物詳細データでは構造式をはじめ化合物 データシステムは 主に掲載化合物一覧 掲載含有製 の別名 IUPAC 名 化合物分類 CAS ナンバー 組成 品一覧 検索 化合物検索 化合物詳細データ 参考情 式 規制区分 規制日 試薬情報 文献情報などの基本 報 指定薬物一覧 参考文献 の項目で構成されている 情報を見ることができる さらに GC-MS スペクトル及 1 掲載化合物一覧 び LC-MS スペクトルのフラグメントイオン UV スペク 4. 掲載化合物一覧ではデータシステムに掲載された化合 トルの極大波長等の分析データも記載されている また 物の一覧が表示される 化合物のカテゴリ 化合物名 GC-MS スペクトル LC-PDA-MS スペクトル IR 別名 IUPAC 名 モノアイソトロピック質量 規制区分 スペクトル をクリックすると別ウィンドウで実測した 規制日 詳細データの項目があり 別名と詳細データ以 スペクトルデータが表示される またその化合物が検出 外の項目について並び替えが可能である 各化合物につ された製品が登録されている場合 化合物詳細の検出含 いて 詳細 をクリックすると後に説明する化合物詳細 有製品数の 表示 から含有製品一覧を見ることが可能 データのページが表示される である 2 掲載含有製品一覧 5 参考情報 掲載含有製品一覧では製品の一覧が表示される 入手 参考情報には指定薬物一覧と参考文献がある 指定薬 日 製品名 パッケージ名 形態 含有化合物 写真の 物一覧では個別に指定された指定薬物 包括的に指定さ 項目があり 含有化合物と写真以外の項目で並び替えが れた指定薬物 また指定薬物から麻薬になった化合物が できる 含有される化合物のうちデータシステムに掲載 規制日順に一覧表としてまとめられている 参考文献は されているものについては クリックすることで それ これまで国立衛研で報告した危険ドラッグ関連論文をま ぞれの化合物詳細ページが表示可能である また 写真 とめている をクリックすると 製品パッケージと内容物の写真を見 ることが可能である 3 検索 5. 新機能の追加 2016 年 3 月に これまでの使用経験やユーザーの要望 本データシステムにおいて 化合物検索と含有製品検 をもとに さらなる利便性の向上をめざしてシステムの 索が可能である 化合物検索では化合物名 別名 CAS 機能の一部変更 追加を行なった このうち最も大きな ナンバー 分子式 分子量 モノアイソトピック質量 変更が 化合物スペクトルデータの並列表示 機能の追 GC-MS LC-MS のフラグメントイオンにより 候補化 加である 化合物検索の検索結果の画面から表示したい 合物の検索ができ 分子量とモノアイソトピック質量は スペクトルデータにチェックを入れ スペクトル一覧表 下限値と上限値で絞り込みができる 構造未知の危険ド 示 をクリックすると 同一画面上 選択した複数のデー ラッグの構造推定に有効に使える 含有製品検索では タが表示可能となった これによりスペクトルデータの 製品の名称 含有化合物名で 候補製品の検索ができる 比較が容易になった 次に検索機能を向上させた 化合 4 化合物詳細データ 物検索と含有製品検索について検索名に記載されている 化合物検索の検索結果から化合物詳細データの画面が スペース ハイフン ドット カンマの検索枠が広がる 別ウィンドウで開く この画面は掲載化合物一覧から 仕様となり検索しやすくなった その他 一部の画面表

Fig. 6 国立衛研 違法ドラッグデータ閲覧システムについて Fig. 6 77 違法ドラッグデータ閲覧システムの化合物検索と含有製品検索 示の変更や更新履歴の表示機能追加等を行なった また GC-MS や LC-PDA-MS のスペクトルデータと同様に 化 これまで公開していなかった IR スペクトルデータにつ 合物詳細画面や検索結果の画面から表示が可能となるよ いて 財務省関税中央研究所よりデータの提供を受け うに機能追加を行った 18

78 国立医薬品食品衛生研究所報告第 134 号 (2016) 6. 今後の予定データシステム公開後,2014 年度に95 化合物,2015 年度には63 化合物と包括 827 化合物が, 指定薬物に追加された.2014 年度以降の規制 取締り強化により, 危険ドラッグ流通は減少したが, インターネット販売等が消失したわけではない. 今後も危険ドラッグの新規出現を継続的に監視し, それらの化合物情報及び分析データについて, データシステムに収載して活用できるようにしていく予定である. また引き続きシステムの機能改善, 掲載項目の追加も検討していく予定である. これにはユーザーからの意見も反映させていきたいと考えている. 最後にこの違法ドラッグデータ閲覧システムが危険ドラッグ並びにその他の違法薬物の社会への蔓延を防ぐ一助となることを切に望む. 謝辞本データシステム構築にご協力いただいた株式会社ヒューリンクスに深謝します.