令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

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平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

最高裁○○第000100号

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

最高裁○○第000100号

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

1DD CC A CA

4390CD461EB D090030AC8

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

B0B820DFD845F9DE49256B7D0002B34

平成  年(オ)第  号

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

83155C0D6A356F E6F0034B16

550E62CA E49256A CC

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

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Taro jtd

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

審決取消判決の拘束力

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

(イ係)

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

9FDEC1BE9116E B2F

第 2 事案の概要本件は, 原告が有する下記商標登録 ( 本件商標 ) について, 被告が行った商標法 51 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求に対し, 特許庁がこれを認容する審決をしたことから, 原告がその審決の取消しを求めた事案である 争点は,1 原告による下記の本件使用商標 1 及び2(

1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は, 平成 25 年 11 月 19 日, 山岸一雄 の文字を標準文字で表して成る商標 ( 以下 本願商標 という ) について, 商標登録出願をした ( 商願 号 以下 本願 という 甲 7) (2) 原告は, 上記商標登録出願に対

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

限され 当事者が商標を使用する能力に直接の影響はありません 異議申し立て手続きと取消手続きで最もよく見られる問題とは 混同のおそれ と 単なる記述 です TTAB は登録の内容のみを評価するため その分析の局面には 想定に基づくものもあります 通常 TTAB では どのように標章が実際の製品において

の商標権者である ( 甲 1,45) 登録商標 : 別紙 1 本件商標目録記載のとおり登録出願 : 平成 26 年 3 月 14 日登録査定日 : 平成 26 年 8 月 22 日設定登録 : 平成 26 年 9 月 26 日指定役務 : 第 35 類 広告業, 経営の診断又は経営に関する助言, 市

平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

事実及び理由 第 1 原告の求めた裁判特許庁が無効 号事件について平成 27 年 1 月 6 日にした審決のうち, 登録第 号の指定役務中 第 42 類ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供, オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラ

8823FF07EC A80018A5B

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

経済産業省 受託調査 ASEAN 主要国における司法動向調査 2016 年 3 月 日本貿易振興機構 (JETRO) バンコク事務所知的財産部

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

平成 25 年 5 月 30 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 4 月 25 日 判 決 原告 X 訴訟代理人弁理士田中聡 被告東洋エンタープライズ株式会社 訴訟代理人弁理士野原利雄 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

意匠法第十七条の三意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは その意匠登録出願は その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 2 前項に規定する新たな意匠登録出願があつたときは もとの意匠登

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

11総法不審第120号

最高裁○○第000100号

Microsoft Word - 一弁知的所有権研究部会2017年7月13日「商標登録無効の抗弁」(三村)

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

2 被控訴人は, 別紙標章目録記載の標章を付した薬剤を販売してはならない 3 被控訴人は, 前項記載の薬剤を廃棄せよ 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, PITAVA の標準文字からなる商標( 以下 本件商標 という ) の商標権者である控訴人が, 別紙標章目録記載の標章 ( 以下 被告標章

ある 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 23 年 6 月 8 日, 下記本願商標につき商標登録出願 ( 商願 号 ) をし, 平成 23 年 11 月 25 日, 指定商品の補正をしたが, 平成 24 年 1 月 30 日, 拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 4

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令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 10173 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫 同 藤 沼 光 太 同 平 田 慎 二 訴訟代理人弁理士 石 田 純 同 葦 原 エ ミ 同 角 田 智香子 同 吉 田 麻実子 同 関 原 亜希子 主 文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求 1

特許庁が無効 2017-890019 号事件について平成 30 年 10 月 29 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 以下の商標 ( 登録第 5779610 号 以下 本件商標 という ) の商標権者である ( 乙 1,2) 商標 KCP( 標準文字 ) 登録出願日登録査定日設定登録日指定商品 平成 27 年 2 月 18 日平成 27 年 6 月 1 日平成 27 年 7 月 17 日第 12 類 コンクリートポンプ車, コンクリートミキサー車 その他の自動車並びにその部品及び附属品, 陸上の乗物用の動力機械 ( その部品を除く ), 陸上の乗物用の機械要素, タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片 (2) 被告は, 平成 29 年 6 月 1 日, 本件商標について商標登録無効審判 ( 以下 本件審判 という ) を請求した 特許庁は, 上記請求を無効 2017-890019 号事件として審理を行い, 平成 30 年 10 月 29 日, 登録第 5779610 号の登録を無効とする との審決 ( 以下 本件審決 という ) をし, その謄本は, 同年 11 月 8 日, 原告に送達された (3) 原告は, 平成 30 年 12 月 5 日, 本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は, 別紙審決書 ( 写し ) のとおりである その要旨は, 本件商標は, 以下のとおり, 商標法 4 条 1 項 19 号に該当するものであるから, 同法 4 6 条 1 項により無効とすべきものであるというものである 2

(1) 当事者能力について被告は,2002 年 5 月 15 日に設立された, 現存する韓国法人であるから, 本件審判の請求について当事者能力を有する (2) 本件商標の商標法 4 条 1 項 19 号該当性についてア別紙記載の (1) ないし (4) の各標章 ( 以下, これらを併せて 被告商標 という ) は, 本件商標の登録出願時において, 被告が製造 販売する コンクリートポンプ, コンクリートポンプ車, コンクリートミキサー車並びにその部品及び附属品 ( 以下 被告商品 という ) を表示するものとして, 韓国国内におけるコンクリートポンプ車を取り扱う分野の取引者, 需要者の間において広く認識されていたものである 本件商標と被告商標は, 外観において近似し, 称呼において ケーシーピー の称呼が生じる点で共通し, 観念において区別することができない互いに紛れるおそれのある類似の商標である イ原告は, 本件商標の登録出願前には被告商品及び被告商標を知っており, 被告商標が我が国において登録されていないことを奇貨として, 被告による我が国への参入を阻止する等の目的で, 先取り的に, 本件商標の商標登録出願をした したがって, 原告は, 被告の業務に係る商品を表示するものとして韓国における需要者の間に広く認識されている被告商標を承知の上, 被告商標に化体した顧客吸引力を希釈化させ, その信用, 名声を毀損させ又はその信用に便乗し不当な利益を得る等の不正の目的のもとに, 被告商標と極めて類似する本件商標を出願し, 登録を受けようとしたというべきであるから, 本件商標は, 商標法 4 条 1 項 19 号に該当する 第 3 当事者の主張 1 原告の主張 (1) 被告は, 韓国の商業登記簿において, 韓国語で 케이씨이피중공업 とし 3

て登記されており, これをハングル ( 韓国語 ) 表記の原則に従って英語表記すると, KCEP HEAVY INDUSTRIES ( 甲 2) となる そして, 英語表記で KCP HEAVY INDUSTRIES CO., LTD という社名の企業は韓国に存在しないから, 被告 ( ケーシーピーヘビーインダストリーズカンパニーリミテッド ) は, 架空の企業であって, 当事者能力を欠くものである (2) 本件商標が商標法 4 条 1 項 19 号に該当するとした本件審決の判断は, 理不尽であるから, 誤りである (3) したがって, 本件審決は取り消されるべきである 2 被告の主張 (1) 被告は,2002 年 ( 平成 14 年 ) に設立された コンクリートポンプ車 等の製造販売を主たる業務として実在する韓国法人であるから ( 乙 106), 本件審判の請求について当事者能力を有する 케이씨이피중공업 の英語表記は, KCP HEAVY INDUST RIES CO.,LTD. であり, 被告は, 外国企業への見積り送り状や外国企業との契約書において, 上記英語表記を使用している ( 乙 137,14 4) 케이씨이피중공업 をハングル( 韓国語 ) 表記の原則に従って英語表記すると, KCEP HEAVY INDUSTRIES となるというのは, 原告独自の見解に基づくものであり, 理由がない (2) 本件商標が商標法 4 条 1 項 19 号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない (3) したがって, 原告主張の取消事由は理由がない 第 4 当裁判所の判断 1 認定事実前記第 2の1の事実と証拠 ( 乙 5ないし15,21,41,45,53ないし 63,83ないし98,103,106,112ないし127,142ないし1 4

47,149,152ないし155,174( いずれも枝番のあるものは枝番を含む 以下同じ )) 及び弁論の全趣旨を総合すれば, 以下の事実が認められる (1) ア原告は, 平成 26 年 7 月 15 日に設立された, 車両系建設機械の販売等を目的とする株式会社である イ被告は,2002 年 ( 平成 14 年 )5 月 15 日に韓国で設立された, コンクリートポンプ車の生産, 販売等を目的とする韓国法人である (2) ア被告は, その設立以降, 被告商標 ( 別紙記載の (1) ないし (4) の各標章 ) を車体に付したコンクリートポンプ車 ( 乙 7,8,45 等 以下 被告製コンクリートポンプ車 という場合がある ) を製造, 販売している また, 被告は, 被告商品の製品カタログ ( 乙 7,8) 及び被告の運営するウェブサイト ( 乙 6,9) において被告商標を使用している イ ( ア ) 平成 23 年から平成 27 年までの各年の韓国国内における被告製コンクリートポンプ車の販売台数及び売上高は, 以下のとおりである ( 括弧内は1 韓国ウォンを0.1 円で換算した金額 )( 乙 12,13,11 2) 2011 年 ( 平成 23 年 ) 52 台 163 億 0902 万 5000ウォン (16 億 3090 万 2500 円 ) 2012 年 ( 平成 24 年 ) 87 台 248 億 7800 万ウォン (24 億 8780 万円 ) 2013 年 ( 平成 25 年 ) 127 台 385 億 8250 万ウォン (38 億 5825 万円 ) 2014 年 ( 平成 26 年 ) 149 台 454 億 5700 万ウォン 5

(45 億 4570 万円 ) 2015 年 ( 平成 27 年 ) 206 台 669 億 2900 万ウォン (66 億 9290 万円 ) ( イ ) 平成 24 年から平成 27 年までの各年の韓国国内におけるコンクリートポンプ車市場における被告の市場占有率は, 以下のとおりであり, いずれの年度も第 1 位であった ( 乙 10,11) 2012 年 ( 平成 24 年 ) 約 36% 2013 年 ( 平成 25 年 ) 約 40% 2014 年 ( 平成 26 年 ) 約 32% 2015 年 ( 平成 27 年 ) 約 37% (3) ア GSF Inc. の名称でコンクリートポンプ車の輸入, 販売等を行っていた原告代表者 (A) は, 平成 24 年 12 月 24 日ころ, ウォンジン産業のBとともに, 韓国の被告本社を訪れ, 同社の社内理事であるCと面会し, 原告代表者等が日本における被告の販売代理店となることなどについて話合いをした その際, 販売代理店契約については合意に至らなかったものの, 当面の間, 原告代表者が, GSF Inc. として, 被告からウォンジン産業を通じて被告商品を購入し, これを日本国内において販売していくこととなった ( 乙 114) イ ( ア ) 原告代表者は, 平成 25 年 4 月 23 日ころ, GSF Inc. として, 中古コンクリートポンプ車販売等を行う有限会社 TPネット ( 乙 90) を訪れ, 被告発行のカタログに掲載された被告製コンクリートポンプ車の写真 ( 乙 91ないし93) を示して, 被告商品の営業活動を行った ( イ ) 原告代表者は, 平成 26 年 4 月発行の一般社団法人全国コンクリート圧送事業団体連合会の会員名簿に GSF Inc. による被告製コ 6

ンクリートポンプ車 (KCP35ZX5150) の広告 ( 乙 127) を掲載した ( ウ ) 原告代表者は, 平成 26 年 4 月 9 日, GSF Inc. として, 守山産業株式会社との間で, 被告製コンクリートポンプ車 1 台の売買契約を締結 ( 乙 113,124) し, 同年 5 月ころ, 被告からウォンジン産業を通じて仕入れた同製品を同社に引き渡した ( エ ) 原告代表者は, 平成 26 年 7 月 15 日, 原告を設立し, その代表取締役に就任した 原告は, 同年 10 月 10 日ころ, 2014 年製品案内 と題するパンフレット ( 乙 147) を作成した 同パンフレットには, 被告の商品カタログ ( 乙 146) から複数の被告製コンクリートポンプ車等の写真が転載され, 被告製コンクリートポンプ車である KCP65ZS170 が 韓国のトップ商品 として紹介されている ( オ ) 原告は, 平成 26 年 10 月 28 日にエスケーコンクリートポンプ株式会社との間で, 同年 11 月 7 日に有限会社札幌技建興業との間で, それぞれ被告製コンクリートポンプ車各 1 台の売買契約 ( 乙 113,12 5,126) を締結し, 平成 27 年 1 月ころ, 被告からウォンジン産業を通じて仕入れた同製品を上記各社に引き渡した (4) ア被告は, 平成 27 年 1 月, 日本に本格的に進出して事業展開することを決定し, 同月 15 日, 日本における営業活動を行う日本人職員として,D を雇用した Dは, そのころから, 営業活動を開始し, コンクリート圧送業界の関係者に対し, KCP の表示( 別紙記載の (4)) のある名刺 ( 乙 15 5) を配布した イ原告代表者は, 平成 27 年 2 月ころ, 知人のコンクリート圧送業者から, Dの名刺を示されて,Dが被告のディーラーとして日本で営業活動を行っている旨を知らされ, その際, 原告とDとの関係について聞かれることが 7

あった ウ原告は, 平成 27 年 2 月 18 日, 本件商標について, 指定商品を本件審判の請求に係る指定商品として, 商標登録出願をした 原告代表者は, その当時, 原告が本件商標の商標権を取得した場合, 被告が日本において被告商標を使用できなくなることは当然であると考えていた ( 乙 154) エ原告代表者は, 平成 27 年 5 月 28 日, 東京都内の飲食店で,D と面談した その際, 原告代表者は,Dに対して, KCP の商標権はあきらめずに握っているから, 被告が KCP の商標を使って日本で営業活動をしたければ, 原告から商標権を購入する必要がある旨を述べた ( 乙 152) (5) ア原告は, 平成 27 年 5 月ころ, ポンプ車のラジコン, 気軽に新しいものに取り換えるチャンス! と題するポンプ車の無線操縦機に関するパンフレット ( 乙 103) を作成した 同パンフレットには, 弊社では KC P の商標権を所有しております 弊社以外のところで KCP の商標がついているポンプ車の販売及び購入は商標権の侵害として民事賠償と刑事罰を受けることになることを, 予めお知らせ致します との記載がある イ原告は, 平成 27 年 6 月 1 日, 本件商標の登録査定を受け, 同年 7 月 17 日, その旨の設定登録を受けた ウ被告は, 平成 27 年 7 月 22 日, 被告の日本現地法人として, コンクリートポンプ打設機械, その付属品及び部品の開発, 製造, 販売等を目的とする KCPジャパン株式会社 ( 以下 KCPジャパン社 という ) を設立し, Dがその代表取締役に就任した また, 被告は, そのころ, 日本における被告商品の販売店の一つとして国際建機販売株式会社 ( 以下 国際建機販売 という ) を選定した なお,Dは, 同年 9 月 30 日,KCPジャパン社の代表取締役を退任し, 同年 10 月 1 日から, 同社の従業員として勤務している エ原告は,KCPジャパン社及び国際建機販売に対し, 国際建機販売では 8

韓国から導入したコンクリートポンプ車にKCPという文字は使用できないですから削除して下さい 書類にも部品でも, 日本に入った時点では商標法違反であります, KCP JAPANと言う名付けて, 日本語のホームページを展開していますが, このホームページの中に表現されたK CPという文字は使用できないですから削除して下さい などと記載した2015 年 ( 平成 27 年 )8 月 11 日付け催告書 ( 乙 121) を送付した (6) ア原告は, 平成 29 年 4 月 11 日ころ,D 及び国際建機販売を被告として, D 及び国際建機販売による被告商標が付された名刺の使用, コンクリートポンプ車の販売等が本件商標権の侵害に当たるなどと主張して, 商標法 3 6 条等に基づき, 被告商標を付したコンクリートポンプ車の販売及び営業活動の差止め等, 謝罪広告の掲載及び不法行為による損害賠償を求める訴訟 ( 東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 12058 号事件 以下 別件訴訟 という 乙 122) を提起した 被告は, 別件訴訟の係属中の同年 6 月 1 日, 本件審判を請求した イ東京地方裁判所は, 平成 30 年 6 月 28 日, 別件訴訟について, 本件商標が商標法 4 条 1 項 19 号に該当する旨の無効の抗弁を認め,D 及び国際建機販売に対し, 本件商標権に基づく権利行使ができないとして, 原告の請求をいずれも棄却する判決 ( 以下 別件原判決 という 乙 142) をした 原告は, 別件原判決のうち, 損害賠償請求を棄却した部分のみを不服として, 控訴 ( 知的財産高等裁判所平成 30 年 ( ネ ) 第 10057 号事件 ) を提起した その後, 特許庁は, 同年 10 月 29 日, 本件商標の商標登録を無効とする旨の本件審決をした ウ知的財産高等裁判所は, 平成 31 年 1 月 29 日, 別件原判決と同様の理由により, 原告の損害賠償請求は理由がないと判断し, 原告の控訴を棄却する判決 ( 乙 174) をした その後, 同判決は確定した 9

2 被告の当事者能力について原告は, 被告は, 韓国の商業登記簿において, 韓国語で 케이씨이피중공업 として登記されており, これをハングル ( 韓国語 ) 表記の原則に従って英語表記すると, KCEP HEAVY INDUSTRIES ( 甲 2) となるところ, 英語表記で KCP HEAVY INDUSTRIES CO.,LT D. という社名の企業は韓国に存在しないから, 被告 ( ケーシーピーヘビーインダストリーズカンパニーリミテッド ) は架空の企業であって, 当事者能力を欠く旨主張する しかしながら, 前記 1の認定事実によれば, 被告は,2002 年 ( 平成 14 年 ) 5 月 15 日に韓国で設立された, 自らが権利義務の主体となって事業活動を行う実在の法人であるから, 本件審判の請求及び本件訴訟について当事者能力を有するものと認められる また, 商号登記簿に韓国語で登記された法人が自らの名称をどのように英語表記するかという問題と当該法人を訴訟法律関係の主体として取り扱うことが適当かどうかという問題は別個の問題である したがって, 原告の上記主張は採用することができない 3 本件商標の商標法 4 条 1 項 19 号該当性について (1) 前記 1の認定事実によれば, 被告は,2002 年 ( 平成 14 年 )5 月 15 日の設立以後, 被告商標を付した被告製コンクリートポンプ車の販売を継続して行い, 平成 24 年から平成 27 年までの各年の韓国国内におけるコンクリートポンプ車市場における被告の市場占有率は,30% 台から40% 台を占め, いずれの年度も第 1 位であったこと, その間, 被告は, 被告商標を製品カタログやウェブサイトで使用して広告宣伝を行っていたことからすると, 被告商標は, 本件商標の登録出願時 ( 登録出願日同年 2 月 18 日 ) 及び登録査定時 ( 登録査定日同年 6 月 1 日 ) において, 韓国におけるコンクリートポンプ車を取り扱うコンクリート圧送業者等の需要者の間で, 被告製コンクリート 10

ポンプ車を含む被告商品を表示するものとして広く認識されていたものと認められる そして, 本件商標は, KCP の欧文字 3 字の標準文字を横書きに書してなり, ケーシーピー の称呼が生じ, 特定の観念を生じさせるものではないこと, 被告商標は, 別紙記載の (1) ないし (4) のとおり, 本件商標と書体は異なるものの, いずれも KCP の欧文字 3 字を横書きに書してなり, ケーシーピー の称呼が生じ, 特定の観点を生じさせるものではないことからすると, 本件商標はと被告商標は, 称呼が同一であり, 外観が極めて類似するものであって, 両商標が本件商標の指定商品であるコンクリートポンプ車に使用された場合には, その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものと認められるから, 本件商標は被告商標に類似する商標であるものと認められる (2) 前記 1の認定事実を総合すれば, GSF Inc. の名称でコンクリートポンプ車の輸入, 販売等を行っていた原告代表者は, 日本国内において, 原告代表者自らが又は原告が被告からウォンジン産業を通じて仕入れた被告製コンクリートポンプ車の販売及びその営業活動を行う中で, 本件商標の登録出願時点までに, 被告商標が付された被告製コンクリートポンプ車は, 韓国のトップ商品であること, 被告商標が被告製コンクリートポンプ車を表示するものとして韓国国内のコンクリート圧送業者の間で広く知られていたことを認識していたが, 被告が日本に進出してその営業拠点を作り, 事業展開を行うための営業活動に着手したことを知るや, 被告商標が商標登録されていないことを奇貨として, 被告の日本国内参入を阻止又は困難にするとともに, 本件商標を有償で被告に買い取らせ, あるいは原告が日本における被告の販売代理店となる販売代理店契約の締結を強制させるなどの不正の目的をもって, 原告による本件商標の商標登録出願をしたものと認められる (3) 以上によれば, 本件商標は, 被告の業務に係る被告商品を表示するものと 11

して, 韓国における需要者の間に広く認識されている被告商標と類似の商標であって, 不正の目的をもって使用をするものといえるから, 商標法 4 条 1 項 19 号に該当するものと認められる したがって, 本件商標が同号に該当するとした本件審決の判断に誤りはなく, これに反する原告の主張は理由がない 4 結論以上によれば, 原告主張の取消事由はいずれも理由がなく, 本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない したがって, 原告の請求は棄却されるべきものである 知的財産高等裁判所第 4 部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官古河謙一 裁判官岡山忠広 12

( 別紙 ) (1) (2) (3) (4) 13