Bulletin of Aichi Univ. of Education, 67-I(Natural Sciences), pp. 15-21, March, 2018 * 安本太一 ** 佐合尚子 * 情報教育講座 ** ICT 教育基盤センター Evaluation of Leaky Coaxial Cable Wireless LAN in Aichi University of Education Taichi YASUMOTO* and Naoko SAGO** *Department of Information Sciences, Aichi University of Education, Kariya 448-8542, Japan **Center for Information and Communication Technology, Aichi University of Education, Kariya 448-8542, Japan 1 はじめに 2015 年度末に 無線 LAN[1, 2, 3] が本学のいくつかの教室で整備された. は,Leaky Coaxial Cableの略で日本語では漏洩同軸ケーブルといい, 固定アンテナの代わりに, 特別に加工された同軸ケーブルから出る微弱電波によって, 無線 LANを実現するものである. 微弱電波を利用するので, 電波が飛び過ぎず不正アクセス防止に一役買い, マルチパスの心配がなくなり, ケーブルを引き回すことにより固定アンテナ ( モノポールアンテナなど ) を用いた場合に生じるような電波の死角をカバーできるという利点がある. 2016 年度 4 月から 無線 LANの供用を開始したが, 当初は遅いとか切れやすいといった接続状況であった. 納入業者に状況を粘り強く伝え,と組み合わせている無線 LANアクセスポイントの設定を変えてもらい,2016 年 9 月 5 日に接続状況の改善に至った. 本稿では, 伝送速度, ヒートマップ ( 受信信号強度などを可視化したもの ),Wi-Fi スキャンのデータを示しながら, 固定アンテナ無線 LAN( 通常の無線 LAN) との比較や改善の過程を交えて, 本学の 無線 LANの性能について報告する. 2 本学の 無線 LAN 303~309 412 教室に 無線 LAN が整備された. 天井懐に日立金属製 が敷設され, 無線 LAN アクセスポイントとしてフルノシステム製 ACERA 810を使用している.ACERA 810 は,802.11n,2 ストリーム対応で本来は2 本の固定アンテナ使用であるが, 一方の固定アンテナ接続端子に を, 他方の固定アンテナ接続端子には終端抵抗を接続している. 理論上 の無線 LANの伝送速度は最大 150Mbpsである.1 つの教室には, 教室の広さに応じて,とアクセスポイントの組が2~4 組設置されている.なら,4 組あって, 各組は教室の前のほうから約 4 分の1ずつ担当するように配置されている.306 教室なら,2 組あって, 教室の前方と後方を約半分にわけて, 担当するようになっている. 厳密に均等になっていない教室があるのは, 天井懐の構造の事情などによる. 3 改善前の 無線 LAN の性能 2016 年 5 月 9 日 4 限目終了後に計測したなどの 無線 LANの実効速度は, おおよそ最大 30Mbps 弱で,310~315 教室などの既設の固定アンテナ無線 LANと比べて, また一般的な無線 LANとしても, 極めて遅いものであった. 3.1 改善前の実効速度ノートパソコン同士で通信した時の実効速度を計測した結果を, 表 1に示す.で計測したものを示しているが, 無線 LANが設備された他の教室で計測しても, 同じような速度であった. 計測は, 教室には筆者以外はいない状態で,( 液晶プロジェクタやマイクアンプなどの操作卓の方ではなく ) 教卓に近い前の方の席で行っている. 比較のために,314 教室の固定アンテナ無線 LANと有線 LANの実効速度を併せて示す. 実効速度の計測は, 図 1に示すように, 速度計測ソフトウェアiperf2 を動作させた1 組のノートパソコン ( アップル製 Mac- Book(IEEE802.11n,2ストリーム,OS X El Capitan 10.11.4) を用いて行った.314 教室には, 固定アンテナ無線 LAN アクセスポイント ARUBA 製 AP-105 15
安本太一 佐合尚子 表 1:2016/5/9 の 無線 LAN などの実効速度 教室内のホスト間 無線 314 教室固定アンテナ無線 314 教室ギガビット有線 実効速度 18.5 89.7 941 表 2:2016/5/9 の 無線 LAN などの実効速度 教室外有線と教室内無線のホスト間 無線 314 教室固定アンテナ無線 314 教室ギガビット有線 実効速度 27.9 93.7 600 ー ー c ー ー c いは. R N ARA GHz AC RA AP c 教室 教室 ト ー ト ト. GHz 無線 LAN ス ト 教室 図 1: 実効速度のテスト環境 1 ト ー c ー ー 接続されて頭打ちになっているからであると推測さ れる. ー ス 学棟 教 室 c 学の 線と 線 NAP 図 2: 実効速度のテスト環境 2 ト ー 無線または有線プ ートス教室 c (802.11n,2 ストリーム, 固定アンテナは内蔵, 理論上最大 300Mbps) と有線 LAN が設備されている.314 教室の無線 LANと有線 LANはスイッチでブリッジ接続されているが,にはノートパソコンを接続するための有線 LAN が設備されていない. 図 1の方法では,2 台のノートパソコンはインフラストラクチャーモードで同一の無線 LANアクセスポイントを使用している状況で測定しているため, ごく短い時間で考えると 左側のノートパソコンと無線 LAN アクセスポイントの通信 と 無線 LAN アクセスポイントと右側のノートパソコンの通信 は同時にはできず, 実効速度が半分以下になってしまい, 表 1はそれを反映していると推測される. このことを, 確認するために, 一方のコンピュータを有線にして, 実効速度を計測した.には有線 LANの情報コンセントがないことから, 有線側は自然科学棟内の筆者の教員室から行うことにし, 図 2のような環境で, 実効速度を計測した. その結果を, 表 2 に示す. 無線 LAN の速度は, 約 1.5 倍になっている.2 倍にはなっていないが, 無線 LAN のホスト間より明らかに速くなっている.314 有線 LAN は, 教室内の情報コンセント間の場合 941Mbps と比べて, 実効速度が600Mbpsと大幅に落ちているが, これは NAPTや途中経由したルータなどによるオーバヘッドが原因であると推測される.600Mbps は, 計測して得られている 無線 LANの実効速度に比べて十分速いので, 無線 LANの実効速度の計測には影響を与えていないと推測できる. 理論上最大 300Mbps である 314 教室の固定アンテナ無線 LANの速度向上がわずかであり 93.7Mbps という結果で 100Mbps を超えていないのは,314 教室内の無線 LAN アクセスポイント AP-105の有線側が (1Gbps 対応であるのにかかわらず )100Mbps 3.2 改善前の受信信号強度 2016 年 5 月 24 日の 4 限終了後に, 受信信号強度 ( 以下 RSSI:Received signal strength indication という ) を macos El Capitan の Wi-Fi モニタを使って計測した. RSSI の計測場所は, 実効速度の計測場所と同じ ( 操作 卓ではなく ) 教卓に近い席である. 図 3 に 無線 LAN の結果を示す.5 分間計測した結果から, RSSI は 68dBm, ノイズは 93dBm,SNR(Signal to Noise Ratio) が 25dB(= 68 ( 93)) であると判断 される. リンク速度が 162Mbps となっているのは, ア クセスポイント ACERA 810 に 2 つあるアンテナ端子 の一方だけに を接続している形態では有り得な いが, 他方のアンテナ端子に接続している終端抵抗付 近から電波が漏れ出ていることが原因と推測される. 図 3:2016/5/24 の の RSSI など 図 4:2016/5/24 の 314 教室の RSSI など 16
無線 LANが安定するRSSIなどの目安を, 複数の情報関係の企業が示している. バッファロー社のホームページでは, 30dBm ~ 40dBm で無線 LAN 接続が安定, 60dBm 以下は無線 LAN 接続が不安定になる場合があると説明している. 無線 LAN 分析ソフトの開発元である米国のEtwork 社のホームページでは, RSSI が 40dBm 以下は心配, 70dBm 以下は危機的と説明している.SNR については,10~15dB が信頼できない接続を確立するための最低限の値,16~24dBが不足,25~40dBが良い,41dB 以上が優秀と説明されている. バッファロー社は SNR の目安を示していない. は, バッファロー社の目安では RSSIは不安定,Netspot 社の目安では,RSSI は ( 心配の範囲であるが ) 危機的に近い値,SNR は ( 良いの範囲ではあるが ) 不足に近い値である. 総合的には,は電波が弱いと判定される. 一方, 比較のために計測した314 教室の結果を図 4に示す. 先ほど示した目安によれば,RSSI は 33dBmで 2 社の目安で十分高いといえる. ノイズは 94dBmで, SNRは61dBm で優秀である. のノイズは 93dBm,314 教室のノイズは 94dBmで,2つは似たような値になっている. 他の場所はどうだろうということで,2016 年 5 月 29 日に, イトーヨーカドー刈谷店の地下一階フードコートのセブンスポットで計測した時のノイズは 86dBm, ミニストップ刈谷今川店の Softbank Wi-Fi スポットで計測した時のノイズは 88dBm であった. 学外の2 箇所を調べただけで結論づけるのは適切ではないかもしれないが,Wi-Fiモニタの信号強度の目盛の下限が 100dBm であることもあわせて考えれば, 本学の第一共通棟 3 階のノイズは少ないと考えられる. 通棟の3 階ではノイズは少なく, 教室による差もないと推測される. 加えて, 世間では圧倒的にシュアが高いWindowsパソコンでは, パソコンに内蔵されている無線 LANインタフェースで,OSのレベルで獲得できるのはRSSIのみでノイズは獲得できないようだからである. 実際のところ,macOS 版のNetSpotではノイズが測定できるが,Windows 版のNetSpotではノイズは測定できない. いくつかのWi-Fiスキャナソフトを調べた限りでも,Windows 用はノイズの測定ができず, macos 用はノイズの測定ができるという結果だった. 無線 LANのヒートマップとしては, いままでとりあげてきたではなく,306 教室のヒートマップを作成した. ヒートマップの作成に使用した NetSpotは ( 大学の予算では購入が難しいオンライン販売の有償版ではなく ) 無料版で, 同時に追跡できる無線 LANアクセスポイントの電波の数に上限があり, 4つの無線 LANアクセスポイントがある広いには不適だったからである.306 教室は普通の広さの教室であり, 無線 LANアクセスポイントは2つで, 無料版で十分ヒートマップを作成できる. 図 5に306 教室の前方の無線 LANアクセスポイントの電波のヒートマップを, 図 6に306 教室の後方の無線廊下前後 3.3 改善前の教室のヒートマップ RSSIやSNRを可視化するために, 地図や建物図面上に,RSSIやSNRのレベルに対応した色付けをする方法がある. レベルが低いのは涼しく感じる青色の方に, レベルが高いのは暑く感じる赤色の方に対応づけるので, このように色付けしたものは, ヒートマップと呼ばれる. 無線 LANの状況をさらに把握するために, 米国のEtwork 社のNetSpotというソフトウェアを用いて,2016 年 9 月 2 日時点でのヒートマップを作成することにした.NetSpot は, ヒートマップ作成やWi-Fiスキャナなどの機能を有した無線 LAN 分析ソフトウェアで,macOS 版と Windows 版がある. 電波の強さだけでなく, ノイズに対して電波がどれだけ強いのかが, 無線 LANの評価として重要とされているので, ヒートマップはSNRについて作成するのが望ましい. しかしながら, 次の理由で,SNR ではなく RSSIについてヒートマップを作成することにした. 本学の第一共 外図 5:2016/9/2 の 306 教室の前方 AP 36ch(5GHz) のヒートマップ廊下前後外図 6:2016/9/2 の 306 教室の後方 AP 44ch(5GHz) のヒートマップ 17
安本太一 佐合尚子 LAN アクセスポイントの電波のヒートマップを示す. 306 教室は, 約 7.4m 約 11m の広さで, 赤い点は筆者 が RSSI( や SNR) を測定した地点である. 測定する ときは,NetSpot を動作させるノーパソコンを学生用 机の天板の上において測定した. 天井から机の天板ま での距離は約 2m30cm であった. 学生用机がないとこ ろでは, 机の天板と同じ高さにノートパソコンを支え て, 測定した. NetSpot は, 測定地点の RSSI( や SNR) をもとに補間 して,RSSI( や SNR) のヒートマップを作成する. 筆者 が NetSpot を調整して, 寒く感じる青に対応する下限 を 75dBm, 暑く感じる赤に対応する上限を 30dBm に設定して, ヒートマップを表示させている. ヒート マップを作成するときに測定した一連の RSSI の最低 値が 75dBm より少し大きい値, 最高値が 30dBm より少し小さい値だったからである. 色の上限と下限 を, 出現する RSSI の上限と下限に合わせれば,RSSI の値の変化を適切に表示できる. 敷設図を入手していないが,306 教室では は図 7 の赤い線のように天井懐に敷設されていると推測さ れる. 赤い四角形は無線 LAN アクセスポイントの位 置で, 天井面近くで目視できる. いくつかの のカ タログでは, から端末までの距離は最大 5m ぐら いまでとされていたので, 前後で 3 等分したところの 境界に を配置するのが, 典型的な考え方であろ う. 廊下と外の間で 3 等分するのは, 前後で 3 等分よ り, が長くなってしまい減衰が増えるので, 良く ない. 実際には, この推測に一致するようにはなって いないかもしれないが, 近づけるように努めて敷設さ れているはずである. 図 5 と図 6 を合わせてみると, 前のアクセスポイント に接続されている が教室の前半分の方を, 後のア クセスポイントに接続されている が教室の後半 分の方をカバーしていることがわかる. 図 6 の前から 7.5m 外から 3.5m( 赤い点でいうと, 前から 5 つ, 外か 前 梁 ス ト 廊下 後 ら3つの点 ) 付近でRSSIが低くなっているのは. 天井懐に遮蔽物となるものがあるのかもしれない. 比較のために,314 教室の固定アンテナ無線 LANのヒートマップを, 図 8と図 9に示す.5G AUEWANと表示されているのは,NetSpotがRSSIの強度と傾きから推定したアクセスポイントの位置であり, 天井面に実際に取りつけられているARUBA 製 AP-105の位置と全く同じではないが大きくはずれてはいない.RSSI の分布もアクセスポイントの配置を反映していて,2 つのアクセスポイントが左上半分と右下半分を分担できている様子が, 見て取れる. 図 5が特にわかりやすいのだが,の周辺に低い RSSIで電波が届いている. 周辺から外れると, さらに RSSIは著しく低くなることから, マルチパスの影響はないと思われる. これが, 無線 LANの特徴なのであろう. 図 8と図 9をみると, 固定アンテナ無線 LAN は, 無線 LANアクスポイントある地点のRSSIがとても高く, 無線 LANアクセスポイントを離れるとRSSI は低下していくが, 教室内のRSSIの最低値 ( 黄緑色 ) は, 無線 LANのRSSIの最高値 ( 黄緑色に近い水色 ) より高い. 図 5の前の方のRSSIが特に低いのは, 図 10に示す天井の厚い梁が原因だと思われる. 梁の右側がの廊下前後外図 8:2016/6/2 の 314 教室の前廊下側 AP 124ch(5GHz) のヒートマップ廊下前後... 外 図 7:306 教室の の敷設推定図 ス ト 外図 9:2016/6/2 の 314 教室の後外側 AP 132ch(5GHz) のヒートマップ 18
左 右 前 アクセス ポイント 後 図 11 2016/9/5 の 306 教室の前方 AP 36ch 5GHz の 図 10 306 教室の天井の梁 ヒートマップ ある方である がない梁の左側に対して 梁が遮 蔽物としてどれくらい影響を及ぼしているかは が天井懐のどこに配置されているかに依存する が天井コンクリート面に近いところ 懐の上の方 に 配置されているならば 天井面から突き出て見えてい 前 る以上に 梁は高い遮蔽物として作用するからであ 後 る 測定誤差があるかもしれないし 電波の減衰があ るのでなんとも言えないが 図 6 の前方で 図 5 の同一 地点より RSSI が高い 明るい色 になっている場所 があるのは 前方の机の天板から後方の をみたと きに 角度的に梁が遮蔽物になっていないからかもし 図 12 2016/9/5 の 306 教室の後方 AP 44ch 5GHz の れない 4 ヒートマップ の分 図 12 は教室の後方のアクセスポイントの分を 改善後の 無線 LAN の性能 示す 2016 年 9 月 5 日に業者による 無線 LAN の改善 図 5 図 6 と比べると 図 11 図 12 は緑色がでてき 作業が行われた 無線 LAN アクセスポイントにおい ているので 業者が説明したようにアクセスポイント て 送信出力を上げた ガードインターバルの短縮と の送信出力を上げたことが明らかにわかる 306 教室 パケット集約の設定を行ったと報告を受けた 無線 の の RSSI の最高値が 312 教室の固定アンテナの LAN アクセスポイントの送信出力の設定は 具体的 RSSI の最低値の近くになっている 改善前は な送信出力の絶対値を指定するものではなく 5 段階 の RSSI は固定アンテナの足元にも及ばなかった 業 の数値1 5を指定するものである ガードインターバ 者からは 9 月 5 日に 5 段階のいくつにしたかの説明は ル短縮は無線フレームを送る間隔を短くして スルー 受けていないが ACERA810 の出荷時設定は送信出力 プットを上げる技術である パケット集約は 1 つの無 は 5 段階の最上の 5 であったものを 教室外に電波が 線フレームの中に 複数のイーサーネットフレームを 漏れることを懸念して 納入時には送信出力を出荷時 含め 無線ヘッダ 無線 LAN に固有なヘッダ の分の 設定より下げていたことは聞いていた による損 節約をして スループットを上げる技術である ガー 失があるので 5 段階のいくつであるかはあまり意味 ドインターバル短縮とパケット集約は データが少な がなく RSSI が測定できればそれで良い では意 いセグメントが多く含まれる通信の場合に効果が期待 味がないことであるが RSSI の差が広がったためか できるもので 実効速度を測るテストのようなデータ NetSpot がアクセスポイントを推定している が多いセグメントを用いる場合には劇的な速度向上が 得られるものではない 4.2 改善後の実効速度 4.1 度を示す 表3は図1の環境で測定したもの 表4は図2 表 3 と表 4 に 2016 年 9 月 7 日の夕方に計測した実効速 改善後の教室のヒートマップ 2016 年 9 月 5 日の夕方に測定した 306 教室のヒート マップを示す 図11は教室の前方のアクセスポイント の環境で測定したものである 夏休み中であることも あって 教室で無線 LAN を使用している者はいない 19
安本太一 佐合尚子 表 3:2016.9.7 の 無線 LAN などの実効速度 教室内のホスト間 無線 5/9 無線 9/7 314 教室固定アンテナ無線 5/9 実効速度 18.5 59.3 89.7 表 4:2016.9.7 の 無線 LAN などの実効速度 教室外有線と教室内無線のホスト間 無線 5/9 無線 9/7 314 教室固定アンテナ無線 5/9 実効速度 27.9 127.2 93.7 ホー 廊下 上 廊下 ー 図 13: 第一共通棟 3 階平面図 教室内での無線 LAN ホストどうし間の実効速度は約 3 倍に向上し, 無線 LANと有線 LANのホスト間は約 4 倍に向上した.3 倍と 4 倍の差は, 測定誤差や実効速度のゆらぎによるものと推測される. 無線 LANと有線 LANの間の実効速度は, インフラストラクチャーモードの影響を受けず, 無線 LAN どうし間の約 2 倍になっていると推測される. 無線 LAN と有線 LANの間の実効速度が100Mbps を超えているのは,ACERA810 の有線 LANインタフェースが1Gbpsで接続されているからであろう. 先述のようにガードインターバル短縮とパケット集約が実効速度測定のようなケースで劇的な速度向上に関与しないならば, 速度向上は送信出力を上げることによって得られたものである. 固定アンテナ無線 LANの2.4GHz 帯の電波である.8 番目と9 番目は308 教室の 無線 LANの5GHz 帯の電波であるが, 78, 79dBm とRSSIがとても小さいので問題がない.7 番目はの液晶プロジェクタの固定アンテナ無線 LANインタフェースによるものである.308 教室ではなく,307 教室をとりあげたのは, 固定アンテナの電波が5,6 番目と比較的高い方にみられ, 固定アンテナの電波の漏れ過ぎの例を示したかったからである. 図 15に312 教室のWi-Fiスキャンの結果を示す.SNR 5 教室外への電波の漏れについて 2016 年 9 月 5 日に 無線 LAN のアクセスポイントの送信出力を上げたが, 他の教室への電波の漏れ具合はどうなっているのかをを調べてみた.macOS 版の NetSpotのWi-Fiスキャナ機能で, 教室で感知できる無線 LANの電波を.301, 303~315, 412 教室で調べた. 各教室の位置関係を図 13に示す.412 教室は, 第一共通棟と向かいの建物の1 階にある教室である.Wi-Fiスキャンを行った場所は, 教卓から2 列目の机の上である.303~309 と 412 教室は 無線 LAN( ベンダー名はFURUNOで5GHz 帯のみ運用 ),301, 310~315 教室は固定アンテナ無線 LAN( ベンダー名はArubaで 2.4GHz 帯と5GHz 帯の運用 ) である. ここでは,307 312 教室の状況について説明する. 図 14に307 教室のWi-Fiスキャンの結果を示す. macos 版のNetSport を使用したので (RSSI ではなく ) SNRが高い順から出現するようにソートされている. 上から4つの64チャンネルと60チャネルが,307 教室の 無線 LANである.5 番目と6 番目は310 教室の 図 14:307 教室で感知できた無線 LAN の電波 ( 上位 22 個 ) 図 15:312 教室で感知できた無線 LAN の電波 ( 上位 22 個 ) 20
が高い順から出現するようにソートされている. 上から4つの124, 108, 1, 6 チャンネルが,312 教室の固定アンテナ無線 LAN である.5 番目以下は隣などの他教室の固定アンテナ無線 LANの電波が続いている.5~9 番目はRSSIが 60dBm 以上なのでバッファロー社の目安でいえば不安定ではないことになり, 期待していないところまで電波が届いてしまっている典型的な例である. 紙面の都合で2つの教室の状況の説明に留めたが, 他の教室を含め全体としては,RSSIは,は漏れていても問題にならないレベル, 固定アンテナは漏れ過ぎであることがわかった. 周りが固定アンテナ無線 LANの教室である図 15 の Level(SNR) の棒グラフの幅が大きくて, 他教室の固定アンテナ (Aruba) が多く出現している. 一方, 周りが の教室である図 14 のLevel(SNR) は棒グラフの幅は小さめであり, 他教室の(FURUNO) の出現は少ない. 図 13に示す第一共通棟に接している中庭 ( の中庭と記している地点あたり ) において,Wi-Fiスキャンを行い, 教室からの無線 LANの電波が到達しているか, 調べて見た.SNR の高い方が上にくるようにソートして, 上位 33 番目以内 ( スクロールしないでみえる範囲 ) には,(FURUNO) のアクセスポイントは見つからなかった.33 番目の RSSI は, 84dBm であった. 33 番目以内に, 固定アンテナ (Aruba) は出現していた. このことからも,(FURUNO) は, 電波を不必要に遠くに飛ばしていないと考えられる. のコストや敷設のコストを考えると,である必然性は薄れると筆者は考えている.の定価( 税抜 ) は, バッファロー社のコネクターと終端抵抗が付いた製品で,10m で約 9 万 5 千円,20m で約 14 万円,30m で約 19 万円と決して安くない. 電波漏れやマルチパスの問題は, 固定アンテナであっても, ビームフォーミングを備えた無線 LANアクセスポイント ( とビームフォーミンングに対応した端末 ) を用いるならば, 送信出力を厳密に管理して抑えればある程度解決できるかもしれない.ほど問題が解決できなくても, 対費用効果の点で, ビームフォーミングを備えた無線 LANアクセスポイントを調整する方に分があるか否かを, 今後, 機会があれば実験で確認してみたい. 参考文献 [1] 杉山智則, 後藤幾, 野田敬介 : 金属構造物の多い製鉄所で安定した通信を可能とする漏洩同軸ケーブル方式無線 LAN, 東芝レビュー,Vol.64,No.11,pp.43 48(2009). [2] 松下尚弘, 杉山智則, 柳沼順 : 漏洩同軸ケーブル方式無線 LAN, 東芝レビュー,Vol.58,No.11,pp.41 44(2014). [3] 塚本悟司, 侯亜飛, 鈴木文生, 丹羽敦彦 :( 漏えい同軸ケーブル ) を用いた LAN システム, 通信ソサイエティマガジン,No.38,pp.86 91, 秋号 (2016). (2017 年 9 月 25 日受理 ) 6 まとめ本学 無線 LANの不調をきっかけとして, いくつかの手段を用いて, 無線 LAN の評価を行った. 無線は, アンテナの役割をしているから電波が遠くまで飛ばないという利点があるが, 送信出力を絞り過ぎると,RSSI が低くなり安定した接続ができなかったり, 実効速度が遅くなる. 天井懐に を配置するよりも, 机の天板の下に を配置できるのであれば, 距離による電波の減衰が少なく, より好ましいと推測される. 天井の厚い梁による電波減衰の影響もなくなる. 固定アンテナは, 電波が部屋の外に不必要に漏れ, 盗聴による情報漏洩の可能性が心配されることはもちろんのこと, 他の部屋の無線 LANの電波と干渉するといった公害ともいえる事態を招くことに留意しなければならない. 棚や衝立などの遮蔽物の間に利用者がいたり,L 字型のような見通しの悪い部屋の場合は, 固定アンテナでは電波が届かない箇所が発生するため, 確かに が向いている. 共通棟の教室のように遮蔽物がない長方形の部屋の場合は, 電波漏れの問題を除けば, 21