特集 : 2014 年度の日本産業動向 ( 産業ガス ) 産業ガス 要約 2013 年度のエアセパレートガス販売量は エレクトロニクス向け依存度の高い窒素 アルゴンが前年度比減少した一方 鉄鋼等オンサイトが好調であった酸素は同増加となった 2014 年度については 製造業の活動が比較的堅調に推移する

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

<4D F736F F F696E74202D A4A8EA A F AFA96968C888E5A90E096BE89EF C835B83938E9197BF5F5A5A35>

2018年度 第3四半期累計 1-9月 実績 2017年 19月期 2018年 19月期 増減 () 9,302 9, % +4.1% 営業利益 % 0.0% % +9.7% 親会社の所有者に 帰属する四半期利

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

2018 年度上期の振り返り 代表取締役社長 小郷三朗 2018 SUNTORY BEVERAGE & FOOD LIMITED. All Rights Reserved. 2

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2009年3月期 第2四半期決算説明会

2018年3月期 決算説明会

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

2018 Brother Industries, Ltd. All Rights Reserved 年度第 3 四半期連結業績概要 16Q3 増減 増減率 () は為替影響 除く増減率 売上収益 1,878 1, % (+6.4%) 事業セグメント利益 224

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

プレゼン

目次 1. 経営成績営業利益分析 / 海外売上高 / 貸借対照表 2. 業績予想 ( 修正 : 有 ) 3. 研究開発費 / 減価償却費 / 設備投資 4. 株価の状況 5. トピックス P.2 P.10 P.14 P.16 P

2018 年度 第 2 四半期決算説明会資料 2018 年 11 月 6 日 当資料に掲載されている情報のうち歴史的事実以外のものは 発表時点で入手可能な情報に基づく当社の経営陣の判断による将来の業績に関する見通しであり 当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません 実際の業績は 経済動向

2017年度 JTI業績報告資料

目次 2011 年度業界需要動向 1 日経代販価格推移 2 主要原燃料価格の推移 年度連結業績概要 4 主要製品品種別売上実績 5 連結営業利益増減益内訳 (2010 年度対 2011 年度 ) 年度連結業績予想 7 連結営業利益増減益内訳 (2011 年度対 2012

証券ポストトレードへのブロックチェーン技術検証と今後の課題

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2017年12月期 第3四半期 JTI業績報告資料

CONTENTS

< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

目次 要旨 1 Ⅰ. 通信 放送業界 3 1. 放送業界の歩み (1) 年表 3 (2) これまでの主なケーブルテレビの制度に関する改正状況 4 2. 通信 放送業界における環境変化とケーブルテレビの位置づけ (1) コンテンツ視聴環境の多様化 5 (2) 通信 放送業界の業績動向 6 (3) 国民

部品メーカーの状況 自動車部品メーカー 75 社の 2017 年度通期 (2017 年 年 3 月 ) の業績は 以下のとおりとなった 1. 決算状況 1 日本基準適用企業 63 社 ( ) 前年同期差 前年同期比 売上高 14,135,817 15,044, ,912 +

Sony IR Day 2014-モバイル・コミュニケーション分野

決算概要

<4D F736F F F696E74202D A F95BD90AC E31308C8E8AFA5F8C888E5A90E096BE89EF81408DC58F4994C530362E70707

通期 連結の売上高 営業利益 経常利益としては 過去最高 のれん及び固定資産に係る減損損失を特別損失として 517 億円計上 当期純利益が 3 月 30 日付での予想数値より増加したのは 予想数値公表時の見込み額と比べ 最終決算数値により確定した減損損失額が 53 億円 減少したことによる 事業環境

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

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2014 中期経営計画総括 (2012 年度 ~2014 年度 )

2010年3月期決算説明会

決算概要

2018 年 ( 平成 30 年 )12 期 第 3 四半期累計 ( ) 連結決算の概要 花王株式会社 2018 年 10 24

2019 年 3 月期第 3 四半期連結業績概要 2019 年 3 月期通期見通しについて 常務執行役員山西哲司 2019 年 3 月期第 3 四半期決算説明会 TDK 株式会社 2019 広報グループ 2019/1/30 3

中期経営計画の前提となる環境認識 1 日本経済の予測 年初からの円高や株安の進行により 消費マインドは伸び悩み 景気動向は停滞している 今後は 消費税増税による駆け込み需要の発生とその反動減による景気縮小が予想される 中長期的には成熟社会として 多様な価値観とともに これまでとは異なる市場が生まれる

本日の説明内容 総括 2019 年 3 月期第 1 四半期実績 2019 年 3 月期通期見通し 主要施策の進捗 1

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第 2 四半期累計として 連結の売上高 営業利益 経常利益 四半期純利益とも 過去最高 上期で初の売上高 1 兆円を達成 4 月 27 日に発表した連結業績予想数値との比較でも それぞれプラス 事業環境に関する認識と確認 ( 物流業界の状況 ) 国内外ともに 景気の回復基調は続き 荷動きは おおむね

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トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の

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第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

2019年度第1四半期決算説明資料

当期実績前期実績 ( 平成 ~ 平成 ) ( 平成 ~ 平成 ) 業績予想前期比業績予想比 売 上 高 186, , ,400 +7,438 3,331 営 業 利 益 10,971 12,750 11,410 1,779

Q8: 為替変動が売上収益に与えたインパクトはどの程度か? A: 為替変動により 当第 4 四半期における売上収益は前年同期比で 49 億円増加しました また 通期では 為替変動により 売上収益は前年同期比で 565 億円増加しました HR テクノロジー事業 Q9:( 通期 ) 売上収益が米ドルベー

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2019 年 3 月期第 3 四半期決算 ご参考資料 2019 年 1 月 31 日日本通運株式会社経営企画部

第 1 四半期は好調なスタートとなり 通年でも好調を維持する見通しです 主要製品の販売量を高水準で維持しながら 他の主な指標すべてにおいても 非常に好調であった前年同期からさらに大幅に向上しました と コベストロのチーフ コマーシャル オフィサー (CCO) であり 次期最高経営責任者 (CEO)

2018年度第2四半期 決算概要

,112 1,630 1,992 1,879 2,674 3,912 はじめに ア

2014年3月期決算説明会

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

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目次 2019 年 3 月期第 2 四半期業績 第 2 四半期業績概要 セグメント別業績 2019 年 3 月期通期業績予想 通期業績予想 セグメント別業績予想 事業拡大に向けた取組み 国内メディカル事業 : アイ エム アイ買収米国ガス事業 : Weld Specialty 買収欧州事業買収

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2011年3月期決算説明会

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

化繊輸入は 近年上昇を続けており 2016 年は前年比 10% 増の 43 万トンとなりました 素材別には ポリエステル F 長繊維不織布が中心ですが 2016 年はポリエステル S の輸入も大幅増となりました 化学繊維輸出推移 化学繊維輸入推移 生産が微減 輸出が横ばい 輸

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2019年3月期決算説明会

2017年12月期 第3四半期 決算説明会資料

1 概 況

2013年3月期 決算説明会

連結財政状態計算書分析 資産 3,832 億円増 6 兆 2,638 億円 その他 +23 6,264 有形固定資産が減少したものの ビッグローブな どの連結子会社化に伴う資産の増加 au WALLET クレジットカード事業の拡大やau 携帯電話端末の 営業債権及びその他の債権 +16 割賦販売によ

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2017(平成29)年3月期第2四半期決算プレゼンテーション資料

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

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( 億円 ) 売上高 ( 億円 ) 15, 1, 金 12, 8, 額 9, 6, 営業利益 売上高営業利益率 経常利益 売上高経常利益率 当期利益 売上高当期利益 1.% 8.% 6.% 6, 4, 4.% 3, 2, 2.% '13- 上 '13- 上 '13- 上 '13- 上.% 売上高につ

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

2016 年 3 月期第 3 四半期半期決算ハイライト 業績 15 期連続過去最高売上 売上高 億円 ( 前年同期比 111.4%) 営業利益 6.34 億円 ( 前年同期比 151.5%) 定期購入会員数の増加により売上 11.4% 成長原価率 販促費のコントロール EC 以外の収益

目次 212 年の実績 P3~5 213 年の見通し P6~9 事業別詳細 (212 年 4Q 年間実績 /213 年最新見通し ) 財務状況参考資料 P1~15 P16~18 P19~24 2

2018年3月期 第1四半期決算概要

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1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

1. 各都市の不動産市場トレンド 1-1. オフィス価格指数 対前回変動率 (2016 年 4 月から 2016 年 10 月まで ) 図表 1-1は オフィス価格指数の各都市 対前回変動率 今回 (2016 年 10 月現在 ) 対前回変動率が最も高かったのは 東京 の +3.4% 次いで 大阪

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産業ガス 要約 213 年度のエアセパレートガス販売量は エレクトロニクス向け依存度の高い窒素 アルゴンが前年度比減少した一方 鉄鋼等オンサイトが好調であった酸素は同増加となった 214 年度については 製造業の活動が比較的堅調に推移するものと見られ 窒素 酸素 アルゴンともに増加するものと予想する 213 年度のその他主要ガス販売量は 炭酸ガス 圧縮水素 溶解アセチレンともに溶接向けやエレクトロニクス向けが低調であったこともあり前年度比減少した 214 年度は 溶接向け等が堅調な炭酸ガスが増加する一方 エレクトロニクス向けの伸び悩みや代替の影響もあり 圧縮水素 溶解アセチレンは前年度比減少するものと予想する グローバル産業ガス業界では No.2 のシェアを誇るドイツ Linde の成長が著しい 成長ドライバーは Asia-Pacific Americas である 前者においては 当社はリーディングポジションにあり 積極投資により事業規模を拡大する戦略をとっている 後者においては 212 年に米ヘルスケア用ガス最大手 Lincare を買収 米国の競争力を高める戦略をとっている 両戦略ともに 26 年に当時グローバル 4 位であった当社が同 2 位であった BOC を買収したことが大きい BOC の持つ新興国シェアと グローバル 2 位の事業基盤を手に入れたことで 両戦略を実現することができたからである 日系産業ガスメーカーもリージョナルメーカーに留まらずグローバルで成長を目指すためには 非連続な買収戦略も選択肢の一つではないかと考える Ⅰ. 産業の動き 1. エアセパレートガス販売量 213 年度の販売量は 窒素 アルゴンが前年度比で減少する一方 酸素が増加 産業ガス業界は 空気を分離して得られる酸素 窒素 アルゴンといったエアセパレートガスの製造 販売が主力の業界である 酸素 は 酸化性 支燃性という特徴を活かし 燃焼関連などに 窒素 は 不活性という特徴を活かし 半導体や金属化合物等の雰囲気ガスなどに アルゴン は 極めて不活性な特徴を活かし 溶接のような高温状態の金属等反応性の高い物質の雰囲気ガスなどに広く活用されている 213 年度の窒素販売量は 半導体や液晶パネルといったエレクトロニクス分野において停滞が続き 前年度比 1.1% の 4,365 百万 m3 となった 213 年度の酸素販売量は 鉄鋼や化学といったオンサイト需要が全体を牽引し 前年度比 +1.3% の 1,755 百万 m3 となった 213 年度のアルゴン販売量は 主力であるシリコンウェーハ向けの減少傾向が続き 前年度比.1% の 212 百万 m3 となった ( 図表 1-1 ) 83

5, 図表 1-1 エアセパレートガス品目別販売量推移 窒素販売量推移 酸素販売量推移 アルゴン販売量推移 2,5 3 4, 3, 2, 1. -1.1% - 2, 1,5 1, 1.3% 2.6% - 25 2 15 1. -.1% - 1, - 5-5 - 窒素増減率 ( 右軸 ) -1 酸素増減率 ( 右軸 ) -1 アルゴン増減率 ( 右軸 ) -1 ( 出所 ) 日本産業 医療ガス協会資料を基に作成 ( 注 )214 年度は予想 214 年度は 窒素 酸素 アルゴンともに販売増を予想 214 年度の販売量は 窒素が前年度比 +1. 酸素が同 +2.6% アルゴンが同 +. 増加するものと予想する 海外景気の回復を背景とした輸出増や企業業績の改善により顧客である製造業の活動が比較的堅調に推移するものと見られ 鉄鋼や化学工業などの重厚長大産業向けの比率が高いエアセパレートガスは 底堅く推移するものと考えられる 2. その他主要ガス販売量 炭酸ガス は 主に溶接用や飲料 食品向けに 水素 は 主にエレクトロニクス向けに 溶解アセチレン は 主に金属加工向けに活用されている 炭酸ガスは底を脱する見込み 圧縮水素は 減少傾向を継続 溶解アセチレンについても 減少傾向が継続 213 年度の炭酸ガス販売量は 主力の造船など溶接向けの消費量減少が響き 前年度比.6% の 76 千トンとなった ( 図表 1-2 ) 214 年度は 主力の溶接向けにおいて 造船等溶接向けで需要が復調傾向にあり 前年度比 +1.9% の 719 千トンを予想する 213 年の圧縮水素販売量は エレクトロニクス向けが低調であったことで 前年度比 1.3% の 91 百万 m3 となった 214 年についても エレクトロニクス向けが伸び悩むことに加え 液体水素への切り替え等の要因もあり前年度比 2.1% の 89 百万 m3 を予想する 213 年度の溶解アセチレン販売量は 造船など金属加工向けが低調であったことで 前年度比 2.2% の 11,862t となった 214 年度についても減少が予想される 造船等需要増が期待される一方で 低コストガスへの代替の影響もあり 前年度比 1.2% の 11,717t を予想する 84

( 千 t) 1, 図表 1-2 その他主要ガス品目別販売量推移 炭酸ガス販売量推移 圧縮水素販売量推移 溶解アセチレン販売量推移 (t) 16 2 16, 75 12 12, 1.9% 5 25 -.6% - 8 4-2.1% -1.3% - 8, 4, -2.2% -1.2% - - 9 1 11 12 13 14e 液化炭酸ガス 増減率 ( 右軸 ) -2 9 1 11 12 13 14e (CY) 圧縮水素 増減率 ( 右軸 ) - 9 1 11 12 13 14e 溶解アセチレン 増減率 ( 右軸 ) ( 出所 ) 日本産業 医療ガス協会資料を基に作成 ( 注 )214 年度は予想 3. 市況 エアセパレートガスの平均単価は低水準も 主要コストである電力料金は上昇 エアセパレートガスの平均単価は 緩やかに上昇傾向ではあるものの 窒素の単価低迷等により リーマンショック直後を除く 2 年以降で 未だ最低水準で推移している 他方 産業用電力料金については 原発再稼働の見通しが立っていない状況であり 電力料金の更なる値上げの可能性もある エアセパレートガス事業は製造コストの大半を電力代が占める電力多消費事業であることから 収益への影響が懸念される ( 図表 1-3 4 ) 図表 1-3 エアセパレートガス平均単価推移 図表 1-4 産業用電力料金平均単価推移 (=1.) ( 円 /kwh) 1.2 24 1.1 21 2 1..9.99.91 18 15 12.8.87 9.78 6.7 3.6 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 2 1 - - -1-2 酸素窒素アルゴンエアセパレートガス平均 産業用電力料金平均単価増減率 ( 右軸 ) ( 出所 ) 経済産業省 生産動態統計 よりみずほ銀行 ( 出所 ) 電気事業連合会より作成 産業調査部作成 ( 注 ) 産業用電力料金 : 東京電力販売単価 85

Ⅱ. 企業業績 213 年度の大手 2 社の業績は 大幅増収 増益を達成 213 年度の大手産業ガスメーカー 2 社の売上高 営業利益合計は 対前年度比 +15.4% の増収 +26.1% の増益で着地した ( 図表 1-5 ) 円安進行による為替の影響に伴う増収効果や国内オンサイト事業が好調に推移したこと等により産業ガス事業が増収 さらに 医療や農業 食品事業などの非産業ガス事業の拡大もあり 大幅増収となった 他方 産業ガス事業の利益については 電力料金高騰の影響もあり利益率が悪化したものの 全社ベースでは コスト削減や非産業ガス事業の貢献もあり大幅増益を達成した 図表 1-5 大手産業ガスメーカー 2 社の業績推移 実額 増減率 単位 12fy 13fy 14fy 12fy 13fy 14fy 単位 ( 実績 ) ( 実績 ) ( 見込 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 見込 ) 売上高 億円 1,84 11,64 12,2 % 3.9% 15.4% 4.8% 営業利益 億円 528 666 73 % 15.9% 26.1% 9.7% ( 出所 ) 各社資料より作成 ( 注 1) 214 年度は予想 ( 注 2) 大手産業メーカー 2 社 : 大陽日酸 エア ウォーター 214 年度も増収増益を予想 214 年度の業績は 国内産業ガス事業において エアセパレートガスが好調に推移することに加え 海外事業や非産業ガス事業の拡大により 前年度比 +4.8% の増収 増収に加えコスト削減施策の実施もあり 同 +9.7% の増益を予想する Ⅲ. トピックスグローバルリーディングカンパニーの最新動向 ~ 産業ガス ~ グローバル産業ガス業界は成長産業 グローバル産業ガス業界は 成長産業として市場成長を続けている 199 年代は先進国の経済成長により 2 年代は新興国の経済成長がさらに加わり成長ペースを拡大させてきた 産業ガスメーカーは 成長するマーケットの獲 図表 1-6 グローバル産業ガス市場シェア 図表 1-7 大手 5 社の売上高 / 利益増減 (FY9-FY13) 大陽日酸 6% others 2 Air Products 12% Praxair 14% Air Liquide 23% Linde 2 (9-13 Net income before tax 営業利益増減率 ) 12 1 4 Air 2 Liquide 大陽日酸 2 3 4 5 6 ( 出所 ) 各種資料より作成 ( 出所 ) 各社資料より作成 8 6 Air Products (9-13 Sales 増減率 ) Praxair Linde 86

抜群の成長力を誇る Linde に注目 Linde の成長は Asia-Pacific と Americas が牽引 得 と 規模拡大によるコスト削減 の両輪で収益成長を目指し 結果的に大手 4 社による寡占化が進行 212 年には 4 社のグローバルシェアが約 7 割に達している 大手 4 社の中でも 抜群の成長性を誇るグローバルシェア No2 のドイツ Linde の戦略について注目したい ( 図表 1-6 7 ) Linde のリーマンショック以降 (FY9-FY13) のエリア別売上高推移を見ると 全体では年平均 +1.4% の成長をしているが そのうち Asia-Pacific が同 +11.1% Americas が同 +26.1% であり 両エリアの成長が全体を牽引している ( 図表 1-8 ) (M ) 18, 16, 14, 12, 1, 8, 6, 4, 2, 図表 1-8 Linde のエリア別売上高の変化 (FY9-FY13) と年平均成長率 TOTAL +1.4% 9 13 Latin America +4.1% Africa/Middle East +4.9% Asia-Pacific +11.1% Americas +26.1% Europe +5.1% 成長戦略 Ⅰ Asia-Pacific をはじめとする成長マーケットで 高水準の投資による売上高成長 成長戦略 Ⅱ Americas において M&A による収益成長 ( 出所 ) 当社資料より作成 Asia-Pacific については 中国 東南アジアにおいて当社がトップシェアを有しており 強みとしているエリア 当社は全体に占める 新興国等成長エリアへの投資比率が 5 割前後と高水準に推移しており 結果として売上高の成長ドライバーとして寄与している ( 図表 1-9 1 ) 図表 1-9 Linde の成長エリアにおけるシェア Eastern Europe #1 Greater China #1 South &East Asia #1 図表 1-1 Linde の設備投資推移 (B ) 3. 2.3 2.5 46% 5 57% 2. 2. 4 48% 1.4 1.5 1.3 1. 1..5 7 6 5 4 3 2 South America #2. South Africa #1 9 1 11 12 13 Mature Markets Growth Markets Growth Markets 比率 ( 右軸 ) ( 出所 ) 当社資料より作成 ( 出所 ) 当社資料より作成 Americas については 212 年に米国の家庭向けヘルスケア用ガスやサービスを提供する Lincare を買収 Lincare は米国においてヘルスケア用ガスでトップシェアのポジションを有しており 高齢者人口が増加することに伴い成長が期待される米国ヘルスケアの市場で競争力を高める戦略と考えられる 87

Linde の成長の影には 26 年の当時 2 位の BOC 買収が貢献 日系産業ガスメーカーもグローバルで戦うために 非連続な買収戦略も選択肢と考える Linde は 成長するグローバル産業ガス業界において 新興国エリアにおける積極投資による売上高拡大と 先進国での M&A による収益力強化を両輪として成長を実現している それらを実現することができたのも 26 年当時 グローバル 4 位であった Linde が グローバル 2 位の BOC を買収したことが大きいと考える BOC の持つアジアをはじめとする新興国における高いシェアを獲得し 且つグローバル No.2 の規模となったことで 高水準の投資が可能になったからである 日系産業ガスメーカーは リージョナルメーカーとして収益を維持するという方法もあろうが 成長を実現するためにはグローバル化は避けて通れない 一方で グローバルマーケットでは 統合により広範なソリューション カバレッジエリア 高い投資余力を備えたグローバルメジャーと競争する必要がある 日系産業ガスメーカーの更なるグローバル化を実現するには 従来延長戦上にない非連続な買収戦略も選択肢として存在すると考えられる ( 素材チーム佐野雄一 ) yuichi.sano@mizuho-bk.co.jp /46 214 No.3 平成 26 年 8 月 21 日発行 214 株式会社みずほ銀行本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 取引の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 弊行が信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが 弊行はその正確性 確実性を保証するものではありません 本資料のご利用に際しては 貴社ご自身の判断にてなされますよう また必要な場合は 弁護士 会計士 税理士等にご相談のうえお取扱い下さいますようお願い申し上げます 本資料の一部または全部を 1 複写 写真複写 あるいはその他如何なる手段において複製すること 2 弊行の書面による許可なくして再配布することを禁じます 編集 / 発行東京都千代田区大手町 1-5-5 Tel. (3) 5222-575 88