J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc. Vol. 32 No. 2 Symposium I: Pathophysiology of the Esophagus 6. The Esophagoscopic Examination for the Functional Disease of the Esophagocardia Mitsuo Endo, M.D. Surgical Department, Institute of Gastroenterology, Tokyo Women's Medical College, Tokyo The esophagoscopic examination has been mainly utilized for the detection of the morphologic findings of the esophagus, especially the diagnosis of the tiny lesions of the esophagus. Moreover the esophagoscopy reveals some characteristic findings in the functional diseases of the esophagocardiac region. In achalasia, the endoscopy discloses the spasm of the distal part of the esophagus. And the tube-like appearance of the gastric mucosa surrounding the axis of the instrument-so-called" wrapping" phenomenon-is observed by the angle manipulation till 210 in the stomach. Such an endoscopic finding is specific for achalasia, because this is improved after the radical operation for achalasia. The esophagitis and the cancer have been sometimes observed in achalasia, so the endoscopic examination is considered to be more effective for the diagnosis of these two lesions accompanying with achalasia. The esophagoscopy reveals the hypotonic state of cardia, the prolapse of the gastric mucosa into the esophagus and pinch-cock action (Jackson) in the low grade of hiatus hernia. The esophagitis is accompanied in 93% of the middle and high grades of hiatus hernia. But the esophagitis is seen in 12% of low grade of hiatus hernia. In the diagnosis of low grade of hiatus hernia without esophagitis, the manometric examination and the ph measurement are required additionally to the endoscopic examination. Barrett syndrome is diagnosed clinically only with the esophagoscopic examination. Barrett syndrome is defined as the esophagus lined with columnar epithelium. But it is important that the esophagus is proved to be proper esophagus by the X-ray examination and the manometric study. In some cases, slight degree of hiatus hernia is observed. The ulcer and the adenocarcinoma have been observed in a few cases of Barrett syndrome. The endoscopy is advisable for the connection between the morphologic and functional findings in the functional diseases of the esophagus.
図1 日常使 用す る食 道 フ ァ イバ ー ス コ ー プ EF-B8(径13mm)とEF-P3(径9mm) で,と も に 先 端 部 は210度 まで 屈 曲 す る 図2 胃切 除 例 に お け る 胃内 よ り噴 門 の 逆視 (EF-P3) 食 道 胃接 合 部 の 形 態 は,zig-zag lineと い わ れ る よ うに,複 雑 に 入 り組 ん で い る もの の,食 図3 道 と胃 の粘 膜 は明瞭 に一 線 を画 してみ られ る 食 道 胃接 合 部( 印) 粘 膜 面 に わ ず か だ が 高低 の差 をみ る 胃内 か らの逆 視観 察 で は,蒼 白 な 食 道 粘 膜 が,胃 粘 膜 の上 に は りつ い てい るよ うにみ え る もの が 多 い 明 らか に両 粘 膜 面 に高 低 の差 をみ 1.食 道 胃接 合 部 の 内視 鏡 検 査 とめ る ものか ら,薄 くの っ てい る よ うにみ え る 下 部食 道 か ら噴 門部 にか けて の 内視 鏡 検 査 に は,前 方 直 視 式 の フ ァイ バ ー ス コー プ が用 い ら もの ま で あ る(図3) しか し,少 数 で は あ る が,噴 門部 の粘膜 の方 が 膨 隆 してみ え る もの も れ る が,先 端 部 が180度 以 上 の強 い ア ングル機 あ る こ の所 見 は,走 査 電顕 に よ る検 討 で も同 構 が必 要 で あ る 現 在 ル ー チ ン と して用 い てい る食 道 用 フ ァイ バ ー ス コ ー プ は,通 常 径(13 じ傾 向 をみ,食 道 粘 膜 が 胃の上 に重 積 す る タイ mm),細 食 道 胃接 合部 の観 察 には色 素法 も 用 い て い る ル ゴー ル液(3%沃 素沃 化 カ リ液)の 撒 布 径(9mm)と も,先 端 部 が 小廻 りに 210度 ま で屈 曲 で き る(図1) 噴 門 入 口部 を プが一 番 多 い と して い る1), 中心 とす る近 接 観 察 で は,ア ン グル 機構 が180 で,正 常 食道 粘 膜 上 皮 は 黒 く変 色 す るが,胃 粘 度 で は,部 位 に よ っ て斜 か ら の観 察 とな る が, 210度 の屈 曲が で き る と,先 端 部 に強 くア ング 膜 は 黒 変 せ ずル ゴー ル 液 の ま ま の赤褐 色 を呈 す ル を か けた 状 態 で大彎 方 向 か ら小彎 方 向へ と一 回転 し,噴 門 を全 周 に わ た って正 面 視 す る こ と 場 合 で も明瞭 に識 別 で き る2) 一方,食 道 炎 の あ る場 合 に は,0.5%メ が で き る(図2) ンブル ー液 や2%ト ま た こ の状 態 で 狙 撃 生 検 も るの で,食 道 胃接 合 部 の 形態 が裸 眼 で不 明瞭 な チレ ル イ ジ ンブル ー 液 が適 して い る これ ら青 色色 素液 が正 常 扁 平 上 皮 を 染 可 能 で あ る 49-115
色 しない こ と を利 用,内 視 鏡 下 色 素液 を撒 布 後 1分 で水 洗,余 分 な色 素液 を洗 い 流 して観 察 す る と,裸 眼 で は,び らん性 食 道 炎 像 と して,発 赤 したび らん 内 の 白苔 と して一 様 に み え る所 見 も,青 色 色 素 で青 染 す る フ ィ ブ リン様付 着 物 と,不 青 染 部 と して 白色 の ま ま でみ られ る び ら ん 内 の と りの こ し扁 平 上 皮 とを明 瞭 に識 別 す る こ とが で き る 2.食 道 ア カ ラ シア の 内視 鏡 所 見 食 道 ア カ ラシ ア の内 視 鏡 像 は,食 道 下 端 部 の 緊 張 性 収 縮 と,そ の 口側 食 道 の拡 張 が特 徴 で, 拡 張 した 食道 に正 常 にみ られ る収 縮 や 蠕 動 が欠 け,不 規 則 な運 動 がみ られ るの み で あ る ま た,拡 張 が高 度 に な る と,あ た か も結 腸 をみ て い る よ うな蛇 行 屈 曲 をみ る 図4 食 道 ア カ ラシ ア に お け る "ま きつ き像" 食物 は吻 合 口お よび本 来 の食 道 と も通 過 しに く 曳 コー プ を収 縮 閉 鎖 部 に挿 入 してい くと,抵 く,た だ,胃 液 な どの消 化 液 のみ が逆 流 して食 抗 を感 じな が らも,食 道 粘 膜 が め くれ 返 る よ う に して挿 入 で き,胃 に入 れ るこ とが で き る こ 道 内 に停 滞 す る状態 とな っ て高 度 のび らん性 食 れ は食 道 噴 門癌 との簡 単 な鑑 別 に もな り,噴 門 び ら ん と,と 癌 で 同 じよ うな狭 窄 が み られ る も ので は,口 側 の粘 膜 が健 常 にみ えて も胃 内 まで 挿 入 で き ない あた か も石 垣 状 の粘 膜 像 もみ られ る こ とが多 い く,諸 家 に よ り0.3%か 胃 内か らの逆 視観 察 で は,噴 門部 の粘 膜 が, 道 炎 を示 して くる 長 期 の罹 病 期 間 の 例 で は, りの こ し食 道 上 皮 の 増殖 とか ら, 食 道 ア カ ラシ アへ の 癌 の合 併頻 度 は か な り高 ら2.0%と 報 告 され てい るが4)-6),わ れ わ れ も121例 中8例(7%)に あ る長 さ内 視鏡 の ま わ りに筒 状 に み え る これ 食 道癌 の 合 併 を み,食 道 癌 の 自然 発 生 頻 度 を"ま きつ き像"と よん で い るが,こ れ は ア カ ラ シ アの 特徴 で あ る(図4) こ の"ま き つ き像" (0.02%)に 比 べ非 常 に高 い 値 で あ る しか も,ア カ ラ シ アの病 悩 期 間 の長 い もの に多 く, は,手 術 に よ り下 部 食 道 か ら噴 門 の筋 が切 離 さ 文 献 上75%以 上 が10年 以 上 の 病 悩 期 間 を もつ も の で あ る アカ ラシ アが 癌 と症状 の似 てい る こ れ,噴 門 の 開大 がみ られ,ま た,自 覚 症状 が改 善 す る とみ られ な くな り,内 視 鏡 所 見上 も噴 門 の ゆ るみ をみ る よ うに な る 内視 鏡所 見 か らは,X線 所 見 や 食道 内圧 曲線 にみ る よ うな明瞭 な分 類3)は と りに くい 硬 性 とか ら,嚥 下障 害 が や や 増 強 した位 で は気 付 か ず,胸 背 痛,咳,嗄 声,高 度 の嚥 下 障害 をみ て,は じめ て異 常 と気付 き,診 断 が遅 れ進 行 癌 と して発 見 され る こ とが 多 い 最 近,1例 表在 直 達鏡 とち が っ て,観 察 中常 に送 気 を行 っ てい 癌 で発 見 し得 た 例 が あ るが7),た る フ ァイ バ ー ス コ ー プで は,食 道 裂 孔 部 の 運 動 シ アの経 過 追 求 中 に診 断 し得 た も の で,X線 もか な り修 飾 され て しま い,拡 張 の程 度 は と も 上,F型,II度 か く,動 き の程 度 や 形態 の分 類 は,な か な か む 小 さい腫 瘤 状 陰影 と して み る(図5) ず か しい した が って 内視 鏡 所 見 は,随 伴 す る 内視 鏡 所 見 で,表 面 粗造 な小 腫 瘤 と し て み ら 食 道 炎 や 合 併 す る食 道 癌 の診 断 に よ り大 き い役 れ,そ の まわ りに は表 面 の粗造 なび らん状 病 変 割 りをお い て い る 部 を随 伴 し,さ らに そ の周 囲 の粘 膜 も正 常 の 食 食道 炎 は,罹 病 期 間や 拡 張 の程度 と も関 係 す またまアカラ の食 道 ア カ ラシ ア の 中部 食 道 に これ は 道 上 皮 の光 沢 を欠 い てい た 小 腫 瘤 と周 囲 の び 噴 門拡 張 術 の らん状 病変 部 よ りの生 検 で癌 と診 断,切 除 術 を とえ ばHey 行 った 摘 出標 本 で は,小 隆 起 は粘 膜 下 層 癌 で rovski法 で吻 合 口 の 十 分 に大 き くな い例 では, あ り,び ん ら状 にみ えた と こ ろは,粘 膜 癌 と上 るが,吻 合 術(Heyrovski法)や あ との逆 流 性 食 道 炎 も 関与 し,た 50-116
表1 食 道 裂孔 ヘル ニ アの 程度 と食 道 炎 表2 内視鏡所見 と食道 内圧曲線 度 食 道裂 孔 ヘル ニ ア,ま た,噴 門不 全 とす る も の に,疾 患 と して扱 うか ど うか の問 題 点 を み る 通 常検 査 での 内視 鏡 所 見 で,食 道 胃接合 部 の挙 上(多 く切 歯列 よ り38cm以 上),噴 門部 粘 膜 の食 道 内へ の脱 出,接 合 部 の緊 張 低 下,ヘ ル ニア嚢 をみ ない ものの 接 合 部肛 門側 の 胃粘 膜 部 に,食 道 裂 孔 部 に相 当す る と思 われ る呼 吸 に よ る開 閉(Jacksonの い うpinch-cock action) な どを軽 度 食道 裂 孔 ヘ ル ニ アの診 断 基 準 に して い る また 胃内 か らの逆 視観 察 で は,開 い た噴 図5 門 と,そ の 食道 側 に食 道 胃接 合 部 をみ る 食道 アカ ラシアに合併 した表在癌 食 道 炎 と食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア との関 係 で,逆 流 皮 内 癌 で,さ らに そ の周 囲 にはdysplasiaが 広 い範 囲 に随 伴 してみ られ た この 例 は表 在癌 の た めか も しれ な いが 前 癌 病 変 か ら癌 ま で の各 段 性 食 道 炎 食 道 潰 瘍 と した も の の90%以 上 に 内 視 鏡 上 食道 裂 孔 ヘル ニ ア をみ た が,食 道 裂 孔 ヘ ル ニ アの食 道 炎 合 併 率 は そ れ ほ ど高 くな い 有 階 が み られ た 食 道 ア カ ラシ アに癌 の合 併 頻 度 の高 い こ とか ら 早 期 診 断 に は,dysplasiaの 時 愁 訴 の外来 患者 を対 象 と して,637例 の食 道 裂 期 で の診 断 が重 要 で,内 視 鏡 検査 に よ る年1 2回 の定 期 的 検 診 の 意 義 を強 く感 じる が,こ れ も集 検 例 を対 象 と した場合 に は もっ と 孔 ヘ ル ニア 中,食 道 炎 の合 併 は43%に す ぎな い 少 な く,発 見 され た食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア患 者 の10 %台 とな っ て い る つ ぎに,食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア の程 度 との関 係 を 3. 食 道 裂 孔 ヘル ニ ア 滑 脱 型 食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア(以 下,食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア とす る)で,中 等 度 以 上 の典 型 例 の診 断 み てみ る と,中 等 度 か ら高 度 食 道裂 孔 ヘル ニ ア は,X線 軽 度食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア,噴 門不 全 と した もの で 検査,内 圧 測 定 と と もに 内視 鏡所 見上 も全 く問 題 は な い しか し,内 視 鏡 所 見 上,軽 51-117 例 に は93%に び らん性 食 道 炎 の合 併 をみ たが, は,食 道 炎 は,び らん 性食 道 炎,色 調変 化 型 の
食 道 炎 が そ れ ぞれ12%,11%に み られ た にす ぎ 食 道 炎 や食 道 潰 瘍 の多 くが,食 道 の 下 端 部 に み られ るが,胃 内 さ らに ヘ ル ニ ア嚢 内 か らの逆 また,食 道 内圧 曲線 との関 係 で は,中 等度 以 視 で,食 道 下端 部 のび らん の肛 門 側 に は わず か 上 の食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア で食 道 炎 の み られ る もの に は,内 圧 曲線 上 も食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア また そ の なが ら 白っ ぽ い食 道 粘 膜 が 観 察 され る これ は い わ ゆ るmarginal ulcerと い わ れ る食 道 潰 瘍 疑 い と して,正 常 と した例 は な か っ た もの の, で も同 じで,内 視 鏡 像,ま た切 除標 本 で,潰 瘍 軽 度 食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア と した 例 で は,内 圧 曲線 の肛 門側 に ご く少 な い部 分 で あ る が,食 道 粘 膜 なか った(表1) 上,食 道 裂 孔 ヘ ル ニ アか ら正 常 ま で とそ の診 断 を確 認 で き,逆 流性 食 道 炎,食 道 潰 瘍 は,下 端 は,分 散 してみ られ た(表2) 部 とい っ て も接合 部上 で な く,完 全 に食 道粘 膜 内 に あ る こ とが わ か る 以 上 の結 果 か ら,内 視 鏡 所 見 で軽 度 食 道裂 孔 ヘル ニ ア と よぶ 場合,も し食道 炎 の合 併 が み ら じよ うな所 食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア に は マ ロ リー ワイ ス症 候 群 を伴 いや す い こ と も経 験 して い る 大 出 血 を き 見 で も,食 道 炎 の合 併 が な けれ ば,臨 床 症状 や た さな い もの も多 く,ま た,無 症 状 例 で 白い線 内圧 曲線 の 検査 結果 を参 考 に して疾 患 とす るべ 状 の瘢 痕 像 と して た ま た まみ られ る も の も あ き で,内 視 鏡所 見 で の診 断 の み で は,や や過 剰 に よみ す ぎ る き らい もあ る れ る もので あ る 内視 鏡 上 軽度 食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア所 見 をみ る も の の な か に 胃切 除術 後 の 例 が あ る ビル ロー ト 縫 縮,噴 門 の還 納,逆 流 防 止 処 置 な どの外 科 治 れ れば 疾 患 と して よ い と思 うが,同 I法,II法 に か か わ らず,胃 切 除 例 の80%以 上 に,遠 隔 時 この よ うな所 見 をみ る が,わ が 国 で は,こ の場 合 に逆 流 性 食 道 炎 をみ る こ とは ほ と ん どな い しか し,外 国,た とえ ば アル ゼ ンチ ンな どでは,胃 切 除 ビル ロー トII法後 に,か な 食道 裂 孔 ヘ ル ニ アの 治療 と して,食 道 裂 孔 の 療 を行 うが,術 後 は,食 道 炎所 見 の改 善 と と も に 噴 門部 の低 緊 張 も消 失 する(図6) 4.パ レ ッ ト症候 群 パ レ ッ ト症 候 群 の 診 断 は,内 視 鏡 検査 に よ っ ての み診 断 が可 能 で あ るが,定 義 は か な り厳 密 りの頻 度 で逆流 性 食 道 炎 をみ てい る 図6 り,こ れ は以 前 に 生 じた裂 創 の治 癒 像 と考 え ら 滑 脱 型 食 道 裂 孔 ヘ ル ニ ア の治 療 前(左),治 ヘル ニ ア像 の 改善 をみ る 52-118 療 後(右)の 内視 鏡 所 見 で,
2) Nothmann, B.J. et al.: In vivo vital staining as an aid to identification of esophagogastric mucosal junction in man. Digestive Disease, 17: 919-924, 1972. 4) Carter, R. et al.: Achalasia and esophageal carcinoma. Amer. J. Surg., 130: 114, 1975. 8) Heitmann, P.: Lower esophagus lined with columnar epithelium. Diseases of the esophagus. Vantrappen, G. et al. ed. Spinger-Verlag, New York, p. 534, 1974.